DeNA流、良質な「運動・食事・睡眠・メンタル」を手に入れるHowのすべて
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ハイパフォーマンスを継続して発揮することが求められるビジネスパーソンにとって、「健康」は大事な資本。健康経営を掲げる企業が増える中、際立った取り組みを行っているのがDeNAです。
DeNAは会長の南場智子さんが自ら旗振り役となり、CHO(Chief Health Officer:最高健康責任者)室を2016年1月に設置。運動・食事・睡眠・メンタルの4本柱で、社員の健康作りを支援しています。
設置以来、取り組みを続けた結果、デスクワークの妨げとなる腰痛に悩む社員が改善を実感するなど生産性向上に貢献。産業医との連携も評価され、経済産業省からは「健康経営優良法人」に認定されました。
DeNAの社員たちは、良質な運動・食事・睡眠・メンタルを手に入れるため、日々どのような取り組みを行っているのかーー。CHO室 室長代理の平井孝幸さんにお話を伺いました。
PROFILE
- 平井孝幸
株式会社ディー・エヌ・エー CHO室 室長代理 - 慶應義塾大学卒業。健康本を半年で300冊以上読み、得た知識で3カ月で体重を15キロ減らした。仲間たちにも健康を広げたいとの思いから、2016年1月CHO室を設置。産業医との連携などが評価され、DeNAは「健康経営優良法人2017」を取得。健康経営に取り組む渋谷の企業を中心とした団体「渋谷ウェルネスシティ・コンソーシアム」理事長。東京商工会議所公認健康経営アドバイザー
社員の不調による「23.6億円」の経済損失をゼロに
ーDeNAのCHO室はどのような取り組みを行っているのでしょうか。
「運動・食事・睡眠・メンタル」を4本柱とし、社員が最大限のパフォーマンスを常に発揮できるよう、からだの健康を維持したり、不調を改善したりする支援を行っています。
4つの柱すべてで社員が不調をきたし、生産性が低下してしまうと仮定した場合、健康経営の専門家の試算方法を用いると会社にとって一年で23.6億円、運動面だけでも10.6億円もの経済損失になるという試算結果が出ました。
それをゼロにするべく、健康リテラシーがすでに高い社員に対しては、産業医などをゲストに迎えて健康の知識を学べるセミナーをこれまで100回以上開催。
全社員の約70%が腰痛・肩こりに悩んでおり、「腰痛撲滅プロジェクト」と銘打って、希望者にはオリジナルプログラムを提供しました。
その結果、参加者の85%が腰痛が改善されたと実感し、その社員の上司からも「おかげでチームの生産性が上がった」と高く評価されるなど、著しい成果が現れ始めています。
DeNAのようなIT企業で働く人は特に、一日8〜10時間座りっぱなしのときもあり、どうしてもからだに負荷がかかってしまいます。かといって、「運動しなさい」と押しつけても耳を傾けてはもらえません。
「自分でもやってみたい」、ワクワクして自発的に始められる取り組みを社員の悩みに寄り添うなかで見つけることがカギでした。
運動:目的に応じた歩き方を試してみよう
ー4本柱のうち、まず「運動」を改善するための実践的な方法を教えてください。
運動の中でも「歩くこと」に着目してみましょう。歩くことの目的は、大きく3つ、「移動」「痩せる」「気分転換」に分けられます。そのときの目的に応じた歩き方をすることです。
「痩せる」なら、からだの代謝を良くするために負荷がかかるような歩き方をしましょう。かといって、足を高く上げて太ももに圧がかかりすぎてしまうと、今度は足が太くなってしまいます。膝が緩まないようまっすぐ伸ばして、腰で(正確には股関節から)歩くようにするのがお勧めです。ヒップアップ効果もあります。
「気分転換」のための歩き方については少し長くなりますが、月曜日から金曜日までの平日、渋谷駅から(DeNAのオフィスがある)渋谷ヒカリエまで歩く人たちを観察していると、月曜日の朝がみなさん一番覇気がないんです。金曜日の夜になると楽しそうに歩いているのに(笑)
これはアスリートも同じで、たくさん歩く競技といえばゴルフですが、プロゴルファーも良いスコアのときは意気揚々と歩き、逆にスコアが下がったときは歩幅がせまくなったり、目線が下がったりします。心の状態は、運動に現れてしまうものなんです。
そこで、月曜日の朝にあえて大股で歩いたり、早歩きしてみたり、目線を上げて歩いてみたり、金曜日の夜のように勢いよく歩いてみましょう。すると、月曜日の朝に金曜日の気分を持っていけることもある。つまり、動きで心のコンディションは変えられるんです。
同じ気分転換でもリラックスしたいときなら、歩くときにお腹を意識して腹筋の緊張を取ると心が落ち着きますよ。毎日の移動に工夫を加えるだけならとっつきやすくもありますよね。
食事:腸内環境を整え、血糖値をコントロールする
ー2本目の柱である「食事」に関するノウハウについて教えてください。
DeNAにはゲームの企画者や開発者など、常に思考し続けることが求められる職種の人が多く、そのため脳の状態を健康に保つことへの意欲や関心はとても高いんです。
そこで推奨しているのが、「腸内環境を整備すること」と「血糖値をコントロールすること」。ニューヨークで活動している栄養療法の専門家によると、脳と腸、脳と血糖値は実は密接に関わり合っているようです。
腸内環境が改善されると、「幸せホルモン」とも呼ばれる人に安らぎを感じさせる神経伝達物質、セロトニンが分泌されやすくなり、うつ予防やストレスマネジメントにつながるとも。
腸内環境を整備するには、「発酵食品」を摂るのが効果的で、オフィスのカフェスペースで販売する食品のうち納豆やヨーグルトの種類を増やして、社員がより手に取りやすくしています。
血糖値が安定するようコントロールすることも、脳を良い状態に保ち、生産性を向上させるうえでは大切。血糖値が急上昇、急降下すると、眠気が生じるなどからだがだるくなってしまうといいます。
例えばランチで、血糖値が上がりやすい白米の代わりに玄米を食べるだとか、白米にしても一口につき60回以上噛んで食べると、食中、食後の急上昇を防ぐことができると専門家に聞きました。
他にも、定食を頼んだら、白米やメインのおかずの前に、血糖値が上がりにくい野菜を食べるとか。食べる順番を変えることで防ぐこともできるようです。
最近は「マインドフルネス・イーティング」とも呼ばれ、注目されていますが、デスクで仕事をしたり、音楽を聞いたりしながら食事をするのではなく、食べることに集中するのも大切。
消化吸収率が上がったり、普段自分がどれだけ味の濃いものを食べているのか気づけたりします。そうやって、食べるものにも気をつけるようになれるといいですね。
睡眠:週末も平日と同じサイクル、ベッドでスマホは触らない
ー3本目の柱である「睡眠」についてはいかがでしょう。
睡眠に関するセミナーは、社内で一番人気があるんですよ。それだけ眠りが浅く、翌朝になっても疲れが取れていないだとか、悩んでいる人が多いということでしょう。
睡眠の専門家の人に、さまざまな性別、年齢、職種の社員へのヒアリングをしてもらったところ、睡眠に関して特に深刻な課題が3つ明らかになり、多くのことを学びました。
1つは「毎日起きる時間がバラバラなこと」、2つ目は「朝起きたときに太陽の光を浴びていないこと」、3つ目は「夜寝る前にベッドでスマホを触っていること」。
起きる時間がバラバラで、朝起きたときに太陽の光を浴びていないと、「体内時計」がくるってしまい、メラトニンなど睡眠を司る脳内物質の分泌リズムに変調をきたしてしまうと聞きました。
すると、ある日は深夜になっても眠くならないのに、また別の日は夜8時にはもう眠くなってしまうなど、眠気が生じる時間がずれてきてしまう。仕事のコントロールもしづらくなりますね。
これは2つ目の「太陽の光」にも通じるのですが、改善するためのポイントは、「週末も平日と同じ時間に起きて、朝日を浴び、いつも同じサイクルで生活すること」。
慣れないうち、日中のどこかで眠くなってしまったら昼寝を入れても大丈夫。少しずつ平日と週末のサイクルのズレをなくすといいです。
ー「ベッドでスマホを触わらない」というのは現代人には難しそうです。
分かります。DeNAで働くようなインターネットが好きな人にとってはより酷でしょう(笑)
なぜベッドでスマホを触ってはいけないかというと、「ここ(ベッドの上)は寝て、自分を休ませる場所だ」と脳にモードの切り替えをさせるためなんです。モードが切り替わっていないのに頑張って寝ても、脳は休まらず、次の日に疲れが残ってしまいます。
どうしてもスマホを使いたくなったら、ベッドから出て触ることです。寝室から出るまでしなくてもいいですが、少しでも布団から出る。そして、眠くなるまでいじり続ける。眠くなったらスマホを置き、ベッドに入ったらいじらない。
人って、場所によってバイアスがかかるというか、人の脳って場所に影響を受けやすいんです。プロレスラーがリングに上がったら人が変わるのと同じで。ですから、場所と脳のモードをしっかりと切り替えることが大切です。
睡眠含めて各分野の専門家に学ぶことから始め、それを自分で実践した上で、自信を持って勧めたいことをDeNAの健康の取り組みに活かしていくよう心がけています。
メンタル:呼吸をコントロールしてリラックスを感じよう
ー最後に、4本目の柱である「メンタル」について。
メンタルを良い状態に保つ秘訣は実は「呼吸」だと、呼吸法を指導されている方から学びました。呼吸法を変え、コントロールできれば、メンタルヘルスはコントロールできると思っています。
人って、呼吸が止まっている瞬間が意外とあるんです。例えば、自分の上司と話をしているとき、歯を磨いているとき、食器を洗っているときなど。そんなときは「ふうっ」と息を吐いて、リラックスし、そのあとは息を細く長く吐くことを意識するといいです。
ーしかし、自分の呼吸が止まっていることに気づけるでしょうか。
一つの目安として、なんだか必要以上に力が入っているときというのは、呼吸が止まっているか、少なくとも浅くなっている場合が多いと思います。
例えば、歯を磨くだけなのに腕に力が入りすぎて歯茎まで傷つけていないか、パソコンのキーボードを打つときにも、そこまでパーンと音を立てる必要はないんじゃないか、とか。
からだに力が入る、呼吸が止まる、ストレスを受ける、この3つは相互作用で悪循環になりやすい。このなかでは、おそらく「からだに力が入っていること」が、一番気づきやすいのではないでしょうか。気づいたら一度息を吐いてて、呼吸を安定させるといいかもしれません。
ー実践的なノウハウをありがとうございました。
私はCHO室にいますけど、実は最近、「健康」という言葉を極力使わないように心がけているんです。
健康という言葉が響くのって、すでに健康に関心がある人たち。でもほんとうに変えたいと思っているのは、そうではない、その他大勢の健康に興味がない人たちで。
そういう人たちが、例えば、同僚の体型が変わっただとか、一緒に弁当を買いに行く人の飲み物が最近甘いジュースから水に変わっただとか、自分たちで「Will」を見つけられる環境を作っていきたいと考えています。
[取材・文] 岡徳之、大矢幸世
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