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INTERVIEW
副業で始めた「本当にやりたいこと」を仕事にするために、私がしたすべてのこと
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副業として週末や平日夜間に独自製品を開発し、収益化。このほど会社を退職し、新会社を立ち上げた「たった一人のヒットメーカー」がいます。

いつでも、どこへでも持ち運びができ、アイデアをひらめいた瞬間に可視化するための小型軽量型ホワイトボード「バタフライボード」を開発する、Fさん(匿名希望)です。

小型軽量型ホワイトボード「バタフライボード」

Fさんは時間や貯蓄がかぎられる中、クラウドファンディングで約1,500万円の資金を集め、いくつものパートナー候補企業に門前払いされるも説得し、アイデアを形にしました。

「副業」「一人起業」「クラウドファンディング」・・・今の時代らしい働き方を実践してきたFさんに、会社員時代から今にいたるまでの道のりについて寄稿していただきました。

「私はこの10月に自分の会社を立ち上げましたが、それまではいち会社員として25年ほど企業に勤めてきました。『まさか、起業なんてできるわけない』と思っていたんです。

そんな私が、なぜ起業するに至ったのか。極めて個人的な経験ではありますが、読者の皆さんにとってこれからのキャリアを考える一助になればと思い、筆を執りました。

とはいえ、今はまだプロダクトに注目していただきたいこともたしか。会社員時代と同様、名前を明かさずに話を進めることをご容赦ください」(Fさん)

バタフライボード株式会社 代表取締役 CEO Fさん(匿名希望)

PROFILE

バタフライボード株式会社 代表取締役 CEO Fさん(匿名希望)
Fさん(匿名希望)
バタフライボード株式会社 代表取締役 CEO
副業として小型軽量のホワイトボード「バタフライボード」の開発にたった一人で着手。クラウドファンディングサイト「Makuake」で目標金額の4,932%に相当する約1,500万円を調達し、加速。国内音響メーカー、外資系音響メーカーなどを経て、それまでは副業だったバタフライボードの収益化を機にバタフライボード株式会社を設立し、現職に就任

「職場が失くなる経験」で副業を決断、作業場は自宅の寝室

新卒で入社したのは某国内音響メーカー、スピーカーの開発に従事していました。その後、外資系音響メーカーへと転職。そこでもスピーカーの開発にアコースティックエンジニアとして17年間携わりました。

自分の置かれた環境には何の不満もありませんでした。しかし、「予想外の事態」が起きたのです。開発拠点がアメリカ本社に集約され、日本の開発部署は廃止されることに。会社の決定に従うしかありませんでした。

ただ、そこで「会社を辞めよう」とは思いませんでした。ブランディングに長けたその会社のマーケティング部門で再出発することに。作った製品の価値をいかにユーザーへと伝えていくかを学ぶ、いい機会だと思ったのです。

マーケティング部門に3年ほど勤めた後、海外企業の日本進出を支援する会社に転職。「バタフライボード」のプロトタイプを作り始めたのは、ちょうどそのころ(2013年)でした。

これまでに販売してきたバリエーション。ユーザーの声を反映させマイナーチェンジを高速で繰り返し、常にプロダクトを進化させています。
これまでに販売してきたバリエーション。ユーザーの声を反映させマイナーチェンジを高速で繰り返し、常にプロダクトを進化させています。

しかし、当時在籍していた会社は「副業禁止」。当然、会社に相談できる人はいませんでした。打ち明けていたのは、近しい友人と妻だけ。平日夜と休日を使って、自宅の寝室で開発を始め、コツコツと続けました。

「副業禁止なんて関係ない」・・・そう吹っ切れたのは、先ほど記した「職場が失くなる」経験をして、「たとえ安定した会社にいたからといって、やりたいことが永遠に続けられるとはかぎらない。自分の身は自分で守るしかない」と身にしみていたからかもしれません。

本業へのモチベーション低下で葛藤・・・ そして決断のとき

副業ですから、すべてのことを自分だけで決め、会社のようなしがらみなく進めていけます。例えば、プロダクトの方向性や生産パートナーとの折衝、そして販売するためのマーケティングやチャネル戦略を決定したり。

開発過程で最も苦戦したという、0.5mmの極細ホワイトボードマーカー。いくつものパートナー候補企業に門前払いされるも説得し、アイデアを形に。
開発過程で最も苦戦したという、0.5mmの極細ホワイトボードマーカー。いくつものパートナー候補企業に門前払いされるも説得し、アイデアを形に。

一方、本業ではさまざまな事情が絡み合いますから、自分の思い通りにいかない部分が多いことに少しずつフラストレーションが溜まっていきました。「もっとこうすればいいのに」と思いながらも、納得のいく理由もなく会社の事情で叶わないことも。

そのうち、始めは1日のうち10%ほどだった副業にかける時間が、だんだんと増えていきました。モチベーションという意味での葛藤が多くなっていったのです。

それでも、踏ん切りはつきませんでした。バタフライボードがどんなにすばらしいプロダクトだったとしても、「これだけで食える」という自信がまだなかったのです。

私自身、40代半ばで家族もいて、守らないといけないことだらけ。20代なら4割の「行ける」でも走り出せたかもしれませんが、40代なら「8割」は手応えがないと。しかもその8割という数値は、確信が持てる水準でないといけない。

「これだけで食える」という自信がまだなかった

私の場合、それが今年8月、Makuakeで達成したバタフライボード2での支援総額「14,840,528円」でした。その金額と支援者数を見て、ようやく意志が固まったんです。9月末に会社を退職し、10月にバタフライボード株式会社を立ち上げ、やっと専念できる体制が整いました。

決断するも「嫁ブロック」・・・ 夫婦の足並みがそろうまで

クラウドファンディングで約1,500万円を調達。しかし・・・
クラウドファンディングで約1,500万円を調達。しかし・・・

40代半ばで家族もいて・・・自分一人で起業を決断しても仕方がありません。

いわゆる「嫁ブロック」もありました。今振り返れば、それがいちばんのハードルだったかもしれません。「ホワイトボードで起業するなんて、ありえない」「スタートアップ? 何それ」って感じで。

これが「IoTで世界を変える」なら分かりやすいんでしょうけど、ホワイトボードという極めてアナログなプロダクトですからね。

極めてアナログなプロダクト

それでも少しずつ、それこそプロトタイプを作っていたころから「将来的には」とほのめかしつつ、販売実績を積み上げて妻を説得していきました。

半ば強引なやり方だったと反省していますが、Makuakeの支援金が振り込まれるという事実を先に作ってしまい、「それならどうしようもないじゃない」と妻も折れてくれました。

その後、こうしてメディアで紹介されることも増え、「世の中に受け入れられている」という認識が妻の中でも生まれていったのかもしれません。NHKの「おはよう日本」で大きく取り上げられたときには、「すごいじゃない」ととても喜んでくれました。

今でも妻には、「5年後、10年後にはかならず多くの人に『バタフライボードでアイデアをシェアする』ことの価値が見いだされ、バタフライボードが世界のスタンダードになる」と言い続けています。

バタフライボードが世界のスタンダードになると妻に言い続けています

しかし足下では、私の作業場は今でも自宅の寝室。なんとか専用の「開発部屋」を作ってもらえるよう、最近はお願いをしています(笑) 「自社オフィス」なんて、まだまだ遠い道のりです。

やりたいことを仕事にするうえで「最も重要なこと」

自分が今いる会社や仕事の内容に、モヤモヤを感じることは誰にでもあるでしょう。私もそんな一人でしたが、バタフライボードを着想してからは「副業禁止」という会社のルールに耳を傾けもしませんでした。

大切なのは、そうしたリスクを引き受けてでも「やりたい」と思えることがあるか、ということ。もし本業で見つけられるのなら、それに越したことはないかもしれません。

これまでに販売してきたバリエーション

これからの時代、なかなかキャリアのロールモデルを持ちづらい中ですが、「組織の中でうまく立ちまわっていく人」「小規模ながらやりたいことを仕事としてやっていく人」、その2つの方向に人は分かれていくのではないかと思います。

組織の中で100を110、120とスケールさせていくのか、自らの手で0を1にしていくのか、どちらが自分に合っているのかどうかーー。目の前のことで精一杯になりがちですが、遅かれ早かれ、選択すべきときは誰の身にも迫ってくるのではないか、と。

私は、小規模ながらやりたいことを、なるべくリスクを取らずにやる、という最上の答えを求めて仕事をしていますが、そのうえで最も重要なのは、やはり「人とのつながり」。

儲かっているときに寄ってくる人はいくらでもいるわけで、苦しいときにこそ手を差し伸べてくれる人、身銭を切って助けてくれる人と、どれだけ関係を構築できるかどうかだと思うんです。

それは、大きな決断をするときよりももっと前、会社員である普段の自分の行動や姿勢から生まれるものなのだと思います。私も、これからも真摯に取り組んでいきたいと考えています。

バタフライボードはこれからも進化し続ける

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
副業解禁で激変するこれからのキャリア形成術
個人・企業それぞれにとって「副業」の持つ意味を深掘りします。

[編集協力] 大矢幸世、岡徳之

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