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INTERVIEW
若手とベテランのシナジーを生み出す、アジアの農業ITベンチャーAGRIBUDDYのフラットな働き方
INTERVIEW

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職場のジェネレーションギャップは、価値観や商習慣の違いなどなにかとネガティブに語られがちです。若手社員からすれば「ベテラン社員が思うようにやらせてくれない」といった歯がゆさが、ベテラン社員からすれば「若手社員の芽を摘んでいるのかもしれない」といった戸惑いなどがあるのでしょう。

しかし、それをイノベーションの源泉と言われる「多様性」と捉えるならば、ビジネスに前向きに生かすことができるはず。それを実践するあるベンチャー企業AGRIBUDDYのお二人を取材しました。若手とベテラン、それぞれの視点でジェネレーションギャップをテコにビジネスを加速させるノウハウをご紹介します。

前編は、若手の視点でAGRIBUDDYの原永淳さんのインタビューを、後編はベテランの視点で加藤順彦さんのインタビューをお届けします。

AGRIBUDDY CTO 原永淳

PROFILE

AGRIBUDDY CTO 原永淳
原永淳
AGRIBUDDY CTO
写真右。1977年、兵庫県生まれ。青山学院大学理工学研究科機械工学専攻博士前期課程修了。ヤフー株式会社にエンジニアとして新卒第一期生として入社。その後独立し、スパーク・ラボ株式会社を設立。ハンドメイド製品のオンラインマーケットプレイス「cooboo」を運営し、GMOペパボに事業譲渡。株式会社ブラケットの取締役兼CTO、株式会社ピースオブケイクの取締役兼CTOを歴任。2013年4月にシンガポールに移住し、現在はREAPRAのCTOおよび、2015年9月よりAGRIBUDDYに参画している。

ITの力で新興国の農業の問題を解決する

「AGRIBUDDY」は、アジアの新興国における農業の課題解決に取り組んでいます。アジア×農業×ITというアプローチで要注目のベンチャー企業です。

そのCEOである北浦健伍さんをふくむ中心人物3名のうちのお二人が、CTOで現在37歳の原永淳さんと、彼と11歳年上(10学年)のエンジェル投資家の加藤順彦さんです。

「11歳」という年の差は、インターネット業界においては決して小さいものではありません。変化が激しいこの業界においては、その間に状況が一変してしまうからです。そんななか異世代のお二人は、お互いのジェネレーションギャップにとらわれず、化学反応を起こし、ビジネスにおける相乗効果につなげています。

まず、AGRIBUDDYのそのユニークな事業内容をご紹介しましょう。

AGRIBUDDYは現在、最初のターゲットとして、カンボジア郊外ではたらく農家をITの力を駆使してサポートしています。アジアの新興国で普及しているアンドロイド端末対応のアプリを使って農作業の進捗状況や農作物の発育状況を記録。GPS技術を活用した最適な工程管理や、アプリ上での病害虫の予防法などの情報の提供しています。さらに、生産者の貧困そのものを解決する試みを検証中とのこと。

多くの農家は農夫それぞれの作業範囲を計測し、それに見合った賃金を支払います。しかし、広大な農地と大勢の農夫を管理するのは至難の業。創業当時、AGRIBUDDYが当初β版を検証していた農地は東京都台東区とほぼ同じ広さ、農夫は最大で200人もいたそうです。また、正確な情報が蓄積されていないがために天災や農作物の疫病のリスクもありました。

原永さんは、AGRIBUDDYのサービスをCTOとして主に技術面で支えています。原永さんは、大学卒業後、ヤフーに新卒第一期生として参画。その後、日本で急成長する複数のベンチャー企業のCTOを歴任。2013年にシンガポールに移住し、主にアジアを拠点にITを使ったビジネスを展開しています。

そんな原永さんとAGRIBUDDYのCEOである北浦さんとを引き合わせたのが、創業期のDeNAなどに出資した実績もあり、現在はシンガポールを拠点に、アジアに進出する日系企業を支援するエンジェル投資家の加藤さんです。アジアをよく知る加藤さんをして、原永さんは「いまこの地域に必要な日本人人材」。出会った翌日に原永さんに参画のオファーを出したそうです。

まずは一緒にカンボジアに視察に行こう。旅費は自腹だけど(加藤さん)

AGRIBUDDY

ネット第1世代、第2世代、それぞれの強み

加藤さんとともにカンボジアを視察で訪れ、そこで聞かされたAGRIBUDDYの「今後世界が直面するであろう食糧難や産業としての農業の未来予測」というビジョン、そして現地で目にした広大なキャッサバ畑の光景に圧倒された原永さん。

これは人生をかけて解決する価値がある。自分はこのひとたちが思い描いている世界をITを駆使して必ず形にする。

そう、AGRIBUDDYへの参画を決意しました。そうして、それぞれの役割が明確になった原永さんと加藤さんですが、インターネット業界においてはひと世代異なります。

1967年生まれの加藤さんは、日本のインターネット業界における「第1世代」。楽天やライブドアなどネットベンチャーが頭角を現し始めた時代を若手として過ごしました。しかしその後、自身もネット広告の会社を経営しているときに「ライブドアショック」を経験。ビジネスの世界で栄枯盛衰をくぐり抜けるための力が自然と磨かれていきました。

一方、1977年生まれの原永さんは、ナナロク世代とも呼ばれる「第2世代」。先ほどの時代を学生として過ごし、ネットサービスに囲まれて育ってきたことから、ユーザー目線でのサービス開発が得意だと言われます。ちなみに原永さんは大学生の頃、情報系の学部の学生ではないにもかかわらず、通っていた大学のアドミニストレーターとして学内LANの構築を手がけていたそう。

しかし、「実はこれまで加藤さんとの間で “世代差” を意識してはたらいたことはないんですよね」と言う原永さん。どのようにしてフラットな関係を構築しているのでしょうか。

AGRIBUDDY CTO 原永淳

自分のスペシャリティーと相手とのシナジーを見極める

原永さんは自然に、加藤さんと「上下」ではなく、「横」に並ぶフラットな関係ではたらいています。その秘訣をあえてノウハウに落としこむならば、それは彼がITに関する知識に長けているからだけではありません。原永さんの上の世代のひととの仕事におけるインタラクションを観察すると、そこには2つのステップがあるように思います。

まず第一歩は、自分のスキルを棚卸しし、参画するチームにおいて自分にしかできない貢献を具体的に示すこと。AGRIBUDDYにおける原永さんの場合、それは3つ。ITを使ったサービスを作るノウハウ、加藤さんらビジネスサイドの人材と対話しプロダクトにできるハイブリッドな思考力、国籍関係なくエンジニアをマネジメントする力。

加藤さんはこう話します。

私には “こういう未来を作りたい”というビジョンやアイデアはありますが、それを実現するためにはデジタルネイティブ世代のエンジニアが必要でした。それに、アジアを拠点にしており、ビジネスとエンジニアリングの両方がわかるというスキルを掛け合わせると、当時の私のまわりには、もう原永さん以外にはいませんでした。

こうなれば、たとえ若手社員であろうと、そのひとはチームにおいて欠かせない、ビジネス経験が豊富なベテラン社員から頼られる存在になります。

第二歩は、上の世代のそのひととのシナジーを考えること。原永さんは、特定の領域における垂直型の事業、それを運営する経営者をITに関する知識でサポートし、社会に大きなインパクトを与えたいと思っています。それに対して加藤さんは、商売に対する優れた嗅覚をもってそのような機会を提供してくれると言います。

自分がプロフェッショナルである領域をクリアにすると同時に、相手がもっていないものを自分がもっていて、自分がもっていないものを相手が持っているか。異なるピースを合わせたとき、化学反応が起こりそうかを見極めるようにしています。
AGRIBUDDY CTO 原永淳

興味深いことに、このようにして築かれたフラットな関係というものは、組織やプロジェクトを離れたところでも続くようです。

例えば、加藤さんはAGRIBUDDY以外にも、アジア進出を目指す起業家から数多くの投資の相談を受けます。加藤さんが起業家から事業のプレゼンテーションを受ける際には、原永さんにも同席してもらいエンジニアとしてのアドバイスをもらうようにしています。

原永さんも、加藤さんのことを「ロールモデル」の一人と言い、そのような場には積極的に参加。AGRIBUDDY以外の場でも、加藤さんの強みを盗みたいと考えているからです。お二人の間には「ひとについていく」という昔ながらの関わりあいのようなものを感じます。

私も、下の世代にとってのロールモデルにならなくてはいけませんね。

若手が自分のスペシャリティーを見いだし、ベテランとのシナジーを見極める。そうして、上下、教える側と教わる側という関係を壊し、お互いの強みを引き出す関係を再構築して、プロジェクトにコミットし合うこと。それが、ジェネレーションギャップにとらわれないための土台を形作るのです。

そしてその先には、「プロフェッショナルである以上、世代なんて関係ない」。そう語る、原永さんのようなはたらき方が待っています。

 

(後編)世代のバイアスを拭い去れ!次世代と共鳴しあうエンジェル投資家 加藤順彦さんの仕事術

 

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https://mirai.doda.jp/theme/generation-gap/3-approaches-for-innovation/

[取材・文] 早川すみれ、岡徳之

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