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INTERVIEW
人工知能に仕事を奪われる前に!今から学習すべき3つのテーマ
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「人工知能」について語られるとき、しばしば起こるのが「人間の仕事は人工知能に置き換えられてしまうのか」という議論。実際、大手金融機関が人工知能コンピュータの質問応答機能をコールセンターに導入するケースなども出始めています。

近年ではグーグルやフェイスブック、国内ではドワンゴなど、私たちがユーザーとして関わっている身近な企業なども人工知能の分野に参入し、徐々にその技術が私たちの生活、さらには仕事に入り込んでくる日が近づいてきたように感じます。

もしも人間の仕事の一部が人工知能に置き換えられてしまう未来が来るとするならば、それに備えるために私たちは今から何を学習すべきでしょうか。人工知能とウェブ工学が専門の東京大学 松尾豊准教授にお話を聞きました。

PROFILE

東京大学准教授  松尾豊氏
松尾豊
東京大学准教授
東京大学工学部電子情報工学科卒業。同大学院博士課程修了。人工知能とウェブ工学が専門分野で、人工知能学会では2012年から2年間編集委員長を務めた。ウェブに関する学術会議の中で最も権威の高い、ウェブ国際会議(World Wide Web Conference)では、Webマイニング部門のトラックチェアを務めた。現在は大学で、ウェブと人工知能、ビジネスモデルの研究を行っている。 ウェブの情報処理を人工知能を使って高度化すること、人工知能のブレークスルーをウェブデータを通じて検証することを目指している。

人工知能によって起こる未来の「仕事」の変化

ー人工知能は1950年代から研究が始まり、幾度かの冬の時代を経て、いまあらためて注目を集めています。その背景は何でしょうか。

人工知能はいま、50年来のブレークスルーを迎えつつあります。それは「ディープラーニング」と呼ばれる学習技術の登場です。インターネット上のさまざまなビッグデータから、自らその特徴や傾向を抽出したり意味を見いだしたりすることができるようになる。いわばコンピュータが「表現」を獲得することを意味します。

この技術が高度化すれば、また今でも一部はすでに実現されていますが、画像からその特徴を抽象化する認識精度の向上や、観測したデータに基づく行動予測、人工知能自身が行った行動とその結果の観測データに基づく自律的な行動計画、さらにはより高度な状況の理解、言語理解なども行えるようになります。

こうした技術の発達とともに、人工知能がおよぼす社会への影響について語られることが多くなりました。そしてそのインパクトは、非常に広範囲に渡るもので、かつ大きい。

例えば、2020年までに起こることとして、先述の通り認識精度が向上すれば広告や画像からの診断が可能になります。行動予測ができるようになればビッグデータに基づく防犯や監視が可能に。行動計画ができるようになればクルマの自動運転や農業の自動化、物流機能のロボットへの置き換えなどが起こるでしょう。

2025年までには、高度な状況の理解が可能になることで家事や介護といった他者理解が求められる仕事も担えるようになるでしょう。言語理解ができるようになることで外国語の翻訳なども可能に。さらにその後、2030年以降には、大規模な知識理解が可能になり、秘書業などホワイトカラーの仕事の支援や教育も人工知能が行えるようになるかもしれません。

 

ー人間が行う仕事と、人工知能が担える仕事は、どのように棲み分けされていきますか。

人間の仕事が人工知能に奪われるのではないかという議論がありますが、どちらかというと、人間の仕事が無くなるというよりは、人間の仕事の質が変わっていきます。

例えば、「学校の先生」の役割は、これまではコンテンツを教えることが主でした。しかしこれからは、「あなたの夢はなにか」「それを実現するためにどのような努力をするべきか」など、生徒に語りかけることの比重が大きくなっていくと思います。

こうしたことが、段階的にさまざまな業界で起こっていくのです。

5年以内の短期的では、各分野、特に法律や医療、会計、税務などのデータに基づく、かつ現在多くのコストが支払われている分野でビッグデータ化、人工知能化が進み、一部の作業が自動化されていくでしょう。

5〜15年の中期的では、いまは監視員や警備員などが担っている監視系業務、商品の数を数えたり店の売り上げをエクセルにまとめるなどのルーティーンワークがコンピュータによって置き換えられ、ひとはよりクリエイティブな仕事に専念できるようになります。

15年以上先に起こるのは、ひとが担う仕事が2極化していくということ。データに基づく試行錯誤が難しい状況下での「大局的な判断」が求められる仕事か、営業、星付きレストランの店員など「対人間の高級なインターフェース」が求められる仕事か、だと考えています。

「人工知能の発達によって、人間の仕事が奪われる」という論調がありますが、それはこれまで教育に投資をしてきたひとが、対価としての将来のベネフィットを得られないのは不公平だと考えられているからではないでしょうか。そして人工知能がインパクトを与える範囲はあまりにも広すぎる。

だからといって、この進化を止めるべきではありません。人工知能の技術は社会全体の生産性を上げるものですから、進化としては自然な流れだと思います。であるならば、これから到来する時代に自分には何ができるのか、そのためにいまから何を学ぶべきなのかを考えることが大切だと思います。

人工知能時代にビジネスパーソンが学ぶべきテーマについて語る松尾氏
人工知能時代にビジネスパーソンが学ぶべきテーマについて語る松尾氏

人工知能時代に学ぶべき「3つ」のテーマ

ー私たちは人工知能時代に向けて、どのようなテーマについて学習すべきでしょうか。

それは非常に難しい質問ですが、3つ考えられます。1つめは「データに基づく試行錯誤がしにくい職業に求められるスキル」。2つめは「人工知能」。3つめは「人間性」を磨くということです。

1つめについて。学習する目的を人工知能によって置き換えられにくい仕事に就くこととするならば、人工知能が得意とする「データに基づく試行錯誤」がしにくい職業に求められるスキルを学び、培うのがよいでしょう。

例えば「経営」のスキル。なぜなら、経営者は刻々と変化する市場の環境などさまざまな要素を踏まえ経営判断を行っていかなければなりません。しかし、企業が過去にも類似した局面を迎えることは稀ですから、人工知能が行動予測を行うために必要なデータは限られてしまうのです。優れた経営者がよく言う「歴史に学ぶ」ということは、人工知能には難しいのです。

クリエイティブな分野では、「建築デザイン」も当てはまるかもしれません。なぜならば、その建築のデザインが良かったのか、悪かったのかを評価するには比較的長い時間を要します。さらに、似たような建築物、それを取り囲む環境というのは限られますからデータによる試行錯誤もしにくい。このような特徴を持つ職業のコアスキルは、これからも人間に求められていくでしょう。

2つめについて。今後、中期的には「人工知能」、またそれに付随する「ビッグデータ」「データ分析」を学ぶことが重要になるでしょう。

具体的には何を学ぶのかというと、必ずしもプログラミングだけに限られません。プログラミングはこれからも有効なスキルであり続けると思います。しかし、それよりも重要になってくるのは、必要なプログラムを組むためにどのような情報をどこから引っ張ってきてどのように組み合わせるかというメタ的な思考力です。このような素養は、たとえプログラミングができなくても身につけられます。

私が学生だった頃、大学の「情報」系の学部というとパソコンについて学ぶことだと思われており、これにとても違和感を感じていました。情報を学ぶということは、どこからか情報を引っ張ってきて、それらを組み合わせることで新しいことを発見する、その方法を学ぶということです。

3つめ。最後は漠然としてしまいますが、社会的存在である人間としての「人間性」を磨くとよいでしょう。

 

ー私たちが磨くべき「人間性」とは。

東京大学准教授  松尾豊氏

人間らしさのことです。例えば、嗜好、つまり何かを好むという性質もその一つ。以前、ある方からこんな話を聞きました。「昔のキャピタル(資本)は筋肉だった。労働者が筋肉を最初の資本として徐々に資本家になっていった。いまのキャピタルは頭脳。そして、将来のキャピタルは嗜好になるだろう」と。

嗜好、つまり自分が何を好んでいるかという情報が資本になり得るのはなぜか。それは、企業はいま嗜好に関する情報を欲しがっており、それを把握できれば、自社の製品やサービスが売れるからです。自分が何を好むのかという情報はこれから価値になります。

 

例えば、私たちがほぼ無料で毎日のように使っているグーグルやフェイスブック。なぜ無料で使えているかというと、さまざまな情報を運営者や広告主企業に提供しているからで、これはお金を払っていることと同じです。

これまでは嗜好に関するデータそれ自体はお金にはならなかったはずですが、いまはデータをお金に替えて、そこから消費活動をスタートし始めています。アドテクノロジーの業界などではすでに取り組みが始まっていますが、いつかはすべての製品やサービスが無料になる日も来るかもしれません。

嗜好はあくまで一例で、私たちが磨くべきは、人に共感したり、人とコミュニケーションをしたり、文化や芸術を理解するような、人工知能にはどうしても再現の難しい人間らしさです。それが、人間がより人間らしい生活を送ることを可能にするでしょう。

ーテクノロジーが発達した今の時代だからこそ、人間らしさを大切にしようという意外な結論に至りました。貴重なお話をありがとうございました。

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[取材・文] 岡徳之

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