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INTERVIEW
ハーバードMBA生が実践、学びを最大化するデータに基づく振り返り術
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同じ人である以上、能力の差はさほどないはず。にも関わらず、成果に大きな差が生まれてしまうのは、日々の些細な意思決定に差があるからだと考えられています。

どうすれば、意思決定の精度を高め、自らの仕事や学習を大きな成果につなげられるでしょうかーー。

そこで今回は、ハーバード・ビジネス・スクールに留学中で、日々の学習について「データに基づく振り返り」を実践している伊藤彰彦さんにお話を伺いました。

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 伊藤彰彦

PROFILE

ハーバード・ビジネス・スクール(HBS) 伊藤彰彦
伊藤彰彦
ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)
2009年に東京大学大学院を卒業。学生時代は英語ディベートや国際ビジネスコンテストで活躍。その後ソニーに入社し、ブルーレイホームシアターシステムやオーディオシステムなどの商品企画を担当。2013年1月にトリップアドバイザーに移籍。2015年9月、ハーバード・ビジネス・スクールに入学

ハイパフォーマンス発揮の条件を浮き彫りにする振り返りの方法

ーまずは、ハーバード・ビジネス・スクール(以下、HBS)での学生生活についてお聞かせください。

HBSには、優秀な学生が集まっており、授業はもちろん、同級生との交流からも多くを学んでいます。1年目は「セクション」と呼ばれるクラスに所属し、私には93人のクラスメイトがいますが、彼らの中に「誰一人として同じような人がいない」と言い切れるほど、多種多様なキャリアの持ち主ばかりです。

アメリカの「Navy SEALs(海軍特殊部隊)」出身の同級生は、「5日間不眠不休でトレーニングを積んだときには幻覚が見えた」とか、「イラクで物資を輸送するオペレーションを指揮したときに、輸送機をすぐに着陸させられなかったことがあった。あのときは無防備で、ミサイルで狙撃されていたら死んでいた」という話をします。

同様に、ミャンマーでエレベーターを売っていたイギリス人の同級生は、「ミャンマーで政府から認可を受けるためにどのようなトラブルがあり、どのように物事を進めていったか」を話してくれたり、サウジアラビア出身の同級生は「中東に関するニュースの背景」を解説してくれたりします。

多様な背景をもつ彼らと議論し、学び合うことは楽しく、自分の世界観が日々広がっていくのを感じています。彼らと学べる2年間という機会を、自分のキャリアに活かせるよう日々励んでいます。

ーHBSでの学びの機会を活かすために、独自の「振り返り」を行っているそうですね。

はい。HBSに入る前までは年に一度、四半期に一度といった長期間で振り返りをしていましたが、入学後は毎日という短期間、かつ生活のログというデータに基づいて振り返るようにしています。

  • その日の目標を設定し、
  • 1日に何にどれくらいの時間を使ったを15分単位で記録し、
  • 毎日夜に5分くらいその日を振り返り、
  • 目標の達成度を1〜5段階で評価します。

これは、そのログを集計して作成した私のHBS1年めの生活を記録したグラフです。

1 year at HBS

「自習」「授業」「友人」「キャリア」「イベント/クラブ」「睡眠」「その他」の項目を設け、それぞれにどれくらい時間を割いたのかを記録しています。

入学して間もなかった昨年9月は、一日の時間の37%を「自習」と「授業」に割いていたことがわかります。今年4月はそれを意識的に26%にまで下げ、その代わり、「友人」や「キャリア」の割合を増やしました。

授業では、自己評価のログも取っています。「授業でどれだけ発言できたか」が半分、「どれくらいいい発言だったか」が半分で点数化。これを繰り返すことで、クラスで評価される発言の質の傾向がわかるようになってきました。

ー生活や学習のログを取ることで、どのようなことが見えてきましたか?

長期間で行う振り返りからでは見えなかった、自分の性格や調子の起伏を理解できるようになりました。そして、自分の調子を高めるための条件がわかってきました。

私の場合は、「人にコミット」するよう場作りをすることが調子を上げる一つの条件です。学習するにしてもグループワークでいつまでに何を仕上げなければいけない状況を作る、運動するにしても友人と大会にエントリーするとか。先日は体力自慢の友人とマラソン大会にエントリーしました。

それまで感覚的にわかっていたようなことでも、データで振り返るとどれくらいそれぞれの条件が大事かが見えてきます。ログからの学びにより、自分の行動習慣をよりコントロールできるようになってきました。

ー学ぶ内容が同じでも、その見方や得られるものが変わりそうですね。

自分の行動習慣を理解し、変えることで、得られるものは変わると思います。ログを取ることは、自分が理想とする時間の使い方と現実の間に差があることに気づけ、日々「やらないこと」を意思決定する手助けにもなります。

例えば、HBSはとにかく機会が多く、私は最初は目的が明確でないイベントにも多く参加していました。しかし、結果として薄く広い活動になってしまい、得たいものが得られていないことに気づきました。そこから活動を絞ることでより得たいものに時間を使うようにし、理想に近い時間の使い方に近づけられたと感じています。

前職のトリップアドバイザーの共同創業者、スティーブ・カウファーは、「もしそれがやる価値のあるものならば、測定するべきだ」と言っていましたが、この言葉はビジネスのみならず、個人の生活についても当てはまると思います。

振り返りと長期的な自己実現とをつなげる

ー自分の生活のログを取る上で気をつけるべきことはありますか。

長期的な目標やビジョンと連動させたログの取り方をしたほうが良いのではないかと思います。

将来何を達成したくて、そのためには何が必要で、何に今時間を使うべきか。理想的な時間の使い方を描ければ、ログを取ることで理想と現実の差がわかり、PDCAサイクルを回すことができます。逆に何をやりたいかが明確でないと、何を測定すべきかがわからず、「ただのログ」で終わってしまうかもしれません。

私の場合、将来は海外でビジネスを起こしたいと考えています。そのためのHBSでの2年めの目標の一つが、「人生における取締役会」を作ることです。HBSでは教授、同級生、卒業生、皆とても親しみやすく、ビジネスから人生まで幅広く話します。私は在学中のみならず、卒業後もずっと、定期的に人生とビジネスについて何でも話し、お互いを応援し合えるような仲間を作りたい。

そのためにも、来年度は意図的に、「友人」「キャリア」の割合を増やそうと計画しています。例えば、友人を家に招いて、より深い話をする機会を週に数回持ちたいと考えています。また、今進めているプロジェクトに教授やHBS卒業生のメンターも巻き込んで進めていきたいです。

「人生における取締役会」と出会うべく、同級生とも交流
「人生における取締役会」と出会うべく、同級生とも交流

また、ログを取る際、特に意識したいことを項目に加えるのも一つの手かと思います。私の場合であれば、「情報発信」です。私自身、奨学金をいただきながら学ばせてもらっているので、今自分が得ている知識や経験を共有して、世の中に還元したいと思っています。

一方、留学中はインプットがメインで、日々の生活に放っておくとアウトプットが少なくなりがちです。ログを取りながらアウトプットに割く時間を意識して確保することで、インプット/アウトプットのいいバランスを保つことを助けてくれています。

こうした短期間かつデータに基づいた振り返りは、「Quantified Self(自己の定量化)」とも呼ばれ、アメリカのエグゼクティブの間でちょっとしたムーブメントになっているようです。

長期間で行う振り返りで自分という人間を大局的に知ると同時に、短期的な振り返りで自分の性格や調子、つまり一瞬一瞬の注意や直観の癖を認識することが、長期的なビジョンを達成するための日々の積み上げにおいて、とても大切だと感じています。

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[取材]・文] 大矢幸世、岡徳之

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