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INTERVIEW
中東一有名な日本人に聞く、日本に依存しないキャリアを築く2つの鍵
INTERVIEW

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グローバル市場の中で、少しずつプレゼンスを失いつつある日本企業。足元では労働人口が減少し、国内市場もシュリンク傾向にあります。

海外拠点を持たない企業で働き続けることがリスクにもなりかねない状況で、個人として海外へ活路を見いだすことはできないかと、考える人もいるのではないでしょうか。

かといって、これまでの経験が海外で通用するのかどうか。海外で転職・起業するとしても、どんなことから手をつければいいのかーー。

今回は日本の大手企業で勤めた後、現在は中東と日本を結ぶ橋渡し役を務め、Instagramではフォロワー数7万超、現地テレビCMにも出演するなど「中東一有名な日本人」として活躍する鷹鳥屋明さんに、個人のグローバルキャリア戦略について話を伺いました。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

PROFILE

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明
鷹鳥屋明
株式会社CulturesFactory 商品企画部部長
1985年生まれ。大分県出身。筑波大学卒業後、メーカーや商社、NGOに勤務。日立製作所時代にサウジアラビアに滞在。その後バーレーン、カタール、UAE、ヨルダン、パレスチナを巡り中東世界へ興味を持ち、中東情勢を学びながら日本と中東をつなげるべく、メディアを活用し日本文化のアラブ向け宣伝活動を行う。SNSでは現在、数万単位のアラブ人たちからのフォローを集め、いいね!数は200万超え。さらなる中東における日本の認知度を上げるために日本と中東を行き来しながら活動中。

中東一有名な日本人「鷹鳥屋明」とは?

鷹鳥屋さんの現在の職務内容についてお教えください。

分かりやすくいうと「よろず屋」というか、中東というフィールドでなんでもやっています(笑)

先日は「Arab Health 2018」という中東最大級規模のヘルスケア業界の国際見本市が行われていたのですが、そこへ東京都の方をアテンドして、現地の商工会議所や現地企業とつなぐ仕事やイベントの客寄せを行いました。

つい最近は、ドバイで行われたeスポーツの大会のレポートを書いたのですが、公開した3時間後に「サウジアラビアと日本のゲーム会社をつないでくれないか」と依頼が来ました。その記事に書かれていた内容が「賞品がマセラッティ1台」なんて景気がよかったからでしょう(笑)

「うちのコマーシャルに出てくれ」というのもあります。クウェートのプロテイン会社や現地向け自動車の宣伝ムービーにも出ました。日本で言うところの厚切りジェイソンさんのような、「アラブの面白さを分かったうえでネタにしている 外国人タレント」的な位置づけでしょうか。

会社役員でありながら、現地でタレント活動もされている、ということですね。

そうですね。ただ、僕は中東を絶賛するようなポジショントークは一切しません。中東では、契約を守らないとか踏み倒されるとか日常茶飯事。今の時代に景気の良い「石油王」なんていません(笑)他の国に比べて、所得の高い層の比率が多いのは確かですが。

ビジネスのライバルは少ないしマーケットのポテンシャルはありますが、日本だけでなく欧米企業もなかなかうまく進出できていない。本気で開拓する気がないなら、戦いやすい東南アジアに進出したほうがいいですよ、とアラブマネーに期待する日本のビジネスパーソンに率直に申し上げています。

そこまでシビアな世界なのに、なぜ鷹鳥屋さんは中東へ?

お酒が一滴も飲めないんですよ、九州出身なんですけど。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

でも多くの日本企業では、いまだに「アルハラ(アルコールハラスメント)」が残っているじゃないですか。「飲むのも仕事の一環」と思ってそれを手段とすることが当然、と思考停止している人たちと一緒にいるのが苦痛で・・・お酒から逃れよう逃れようとしているうちに、中東関連の仕事にたどり着いたというわけです。

アニメ・ゲームの次を見いだせない、安いだけの日本

鷹鳥屋さんは海外における日本のプレゼンスをどうお感じでしょうか。

そもそも、あらゆる物量が違う、という気がします。

例えばドバイには日本人が3000人ほどいるのですが、韓国人は1万人、中国人は30万人いるんです。それぞれの母国の人口比率から考えても、差がありすぎますよね。モール内で屋外広告を見渡してみても、中国勢、韓国勢が多勢を占めていて、日本メーカーのものはあまりありません。

アメリカは鉄鋼や自動車産業が斜陽になった後、ITに活路を見いだして、今も存在感を見せていますけど、日本は・・・。もちろん今も自動車が強いから、というのもあるのでしょうが、その次をまだ見いだせていないと思います。

アニメやゲームなどコンテンツ産業は、日本は一日の長があり、まだ強く、引き合いもあるので私もいろいろとお手伝いをさせていただいていますけど、出資だけではなく制作現場も徐々に中国や韓国にその牙城を崩されていて、今後間違いなく厳しい戦いになると思います。

今でも人気のある『NARUTO』や『ONE PIECE(ワンピース)』は、もう20年前からのコンテンツです。20年続いているコンテンツを作り出す日本の力はすばらしいと思います。が、いくら根強いファンやマニアがいても、彼らが歳を取り、40歳、50歳を過ぎてもずっと買い続けてくれるかどうかというと、そうではない。次のファン層を育てていかないといけない、という危機感は強く持っています。

日本の現状を憂う中で、どういった点が世界に通用していない、とお感じになりますか。

ドバイモールの中で旧正月の展示を行う中国ブース
ドバイモールの中で旧正月の展示を行う中国ブース

よく言われますが、日本は業務プロセスのスピード感がとても遅いですよね。現地ではいかに臨機応変かつスピーディに対応できるかがモノを言いますから。

現地法人とのJVだったり、ベンチャー企業だったりすれば柔軟な対応力が身についているのでしょうけど、いわゆる重厚長大系の産業、「親方日の丸」みたいな企業では予算が決まっていて、稟議を通して、承認をもらって・・・といった指示系統に慣れているため、現地のコロコロ変わる状況に柔軟に対応し考えを転換するのは難しいでしょうね。

それと、予算が全然違います。人員だけでなく日本企業や政府などが中東に割り振る予算は、韓国や中国などに比べて圧倒的に少ないんです。かけているコストが違えば見返りが変わるのは当然です。

短期の予算にとらわれすぎな点も気になります。これは私が歴史学をやっていたからかもしれませんが、大局の中では50年、100年さえ短いスパン。ぜひ長いスパンで物事を考えてほしいです。

例えば、今は中東、アラブ圏はある種の存在感を示しています。しかし、アラブの西側、産油国側のゾーンは石油の価値いかんによっては今後、インド経済圏に飲み込まれる可能性が高いと考えています。アラビア語を話すのが6億人程度に対して、インドは1314億人でありその多くが中東にいるのです。

現に今、中東の経済を支えるホワイトカラー、ブルーカラーの多くはインド人やパキスタン人など南アジアの方々。例えばバーレーンのマナマではケララ出身の人が多い、シャルジャの自動車産業ではパキスタン人とパシュトゥーン人が多い、など職業別の国籍、民族などの分析をするのもなかなか面白いと思います。

大局かつ広義的に捉えて、どのダイナミズムに飲み込まれて、どうプレゼンスを維持するか。日本企業はもっとそのことを念頭に置きながら、ユーラシア、アラブ、周辺諸国でどうプレゼンスを築くのかを考えたほうがいいのではないでしょうか。

日本製品はそれでもまだ、海外で人気があるように感じるのですが。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

日本の大企業が最高益を叩き出しているのは、海外と比較しても給与水準が低く抑えられているからではないでしょうか。高品質な製品やサービスを低コストで作れているから、人気がある。

日本はかつて、世界の中でも単一民族系で労働人口層を多く持つ国でした。この人口によって支えられてきた労働力を活用した結果、今もなんとかそれを保てている、ということです。

けれども労働人口がシュリンクしていく中、どこまでそれを我慢して保ち続けられるのか。しかも、日本人は極端に我慢強く働くので、雇用側としては都合がいい。

よく言えば日本人の特性を引き出していると言えますが、悪く言えば人的資源をゆっくり摩耗させて国を維持していると言えます。

日本人が海外でキャリアを成功させる「2つの鍵」

これまでずっと日本企業で勤めてきた身からすると、「自分が海外に出たところで何ができるだろう」と考えてしまいます。

日本企業ではジェネラリストを育てるキャリアパスが定着しているので、よく日本人の笑い話で「あなたは何ができますか?」「私は部長ができます」なんて冗談が言われます。調整能力に長けている、ということでしょうが、それもあくまで「日本人ばかりの組織の中で」ということ。

スリランカ人、フランス人、アメリカ人、中国人など、さまざまな民族のいる組織の中で調整ができるか?と問われて、なかなかYESと答えられる日本人の方はいないのではないでしょうか。

日本企業で培われた “マネジメント能力” が通用しない中、かといって丸腰で海外に行くのもためらわれてしまう・・・そんな人はどうすればいいでしょうか。

前提として必要なのは、今の自分の仕事を客観的に見つめて、海外のどんな現場でどんな能力が発揮できるか、その中でどんなことをやっていきたいのか、というのを明確にしていくこと。そのうえで、新たなことを学ぼうとする「柔軟性」を持つことです。

どうしても、セクショナリズム(縄張り意識)やこれまでの経験にとらわれて、食わず嫌いしてしまう人が多いと思うのですが、あのIBMでも会社の創業期は食肉用のスライサーを作っていたわけです。ノキアはゴム長靴でしたっけ。時代の流れに合わせて商品や業態を変えています。

私自身、貿易、コンサル、なんでも貪欲に取り組んでいるのは、選り好みできる状況ではない、ということも正直なところなんです。外資系企業のアジア・パシフィックのヘッドオフィスが東京ではなく、香港やシンガポールなどへどんどん移っていることが如実に表しているように、「日本人でないとできない仕事」というのは、世界の中で少なくなってきていますから。

日本という国が優位性を持っていた時代ではなくなると、日本人という国民の価値も相対的に下がっていくと言えます。だとすると、海外へポンと放り出されたときの現地適応の柔軟さが、リトマス試験紙になっているのだと思います。

その次に必要なのは、本気でその国を理解しようとする「吸収力」でしょう。

私の場合、メーカー勤務時代にサウジアラビアへ滞在したことがきっかけでしたが、「現地に溶け込むこと」で活路を見いだしてきました。民族衣装に身を包み、現地の人と食卓をともにし、所作を真似ることで、彼らの思考パターンや考え方、価値観がおのずと身体を通して理解できるようになってくる。「ミラーリング」のようなものです。

そうした思いがあって、鷹鳥屋さんは現地の方のような格好をするようになったのですね。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

最初は軽い気持ちだったんですよ。屁理屈ですけど、スーツだって欧米の民族衣装の派生みたいなものなんですからアラブの民族衣装を着てもいいじゃないですか、と(笑)

現地の格好をしてみたら、ことのほか喜んでもらえて、大使館や要人の方に招待してもらえるようになって。「楽しいし、これは使えるぞ」と。それで、何事も突き詰める性分なもので、それぞれの国の様式や着こなし、トレンドなんかをしっかり踏まえた上で民族衣装を着るようになったんです。

例えば、頭にかぶる布。白赤のものはサウジアラビアやバーレーンでは「シュマッグ」、白だとカタールやクウェートでは「ゴトラ」とよく呼ばれます。黒い縄のような留め具はアガールと言って民族や地域ごとに形状が若干異なります。そのわずかな違いで国籍や民族を推察することができるのです。

他にも、挨拶の作法が西岸地方と東岸地方、内陸部のベドウィンとではすべて異なります。相手の住んでいる地域まで聞いて、その作法で挨拶をするとだいたい驚かれますね。

会話の内容も「いやぁ、やはりファイサル国王陛下の治世時代のサウジは力強かったですねぇ」なんて歴史の内容を詳しく話すと、「こいつ、分かってるな!」と一気に胸襟を開いてくれる。だって、日本でももし、海外の人が紋付袴で扇子と脇差しをしながら、「私は足利義輝がなかなか好きで・・・」なんて話したら、嬉しくなるじゃないですか(笑)

結局、本気で現地を理解しようとしている日本人が少ないぶん、私が目立っているのだと思います。現地に赴任しても、家と会社とショッピングモールを往復して、現地の日本料理屋さんに行って、酒を飲んで家に帰ってくるだけでは、マーケット事情はいつまで経っても分かりません。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

その国や産業についてとことん強くなるためには、自分の膝まで積み上がるくらいの本を読めば道々の者として必要な知識は身につきます。けれどもその努力をできるかどうかというと、本当にその国やその産業のことが好きかどうか、その仕事を本当にやりたいかどうか、ということに尽きると思うんです。

そして、より多くのことを吸収するためには、下手でもいいのでなるべく現地の言葉で話すこと。私もビジネスのシビアな場面では齟齬があるとマズいのと、私の現地の言葉が恥ずかしながら下手なので英語で話しますが、日常会話や挨拶は極力現地の言葉を話します。

例えば、UAE人が相手の場合、最初は「メルハバッ、サァアー!」とバリバリの現地訛り(アンミーヤ)で挨拶をします。日本人相手に英語で挨拶するドイツ人と、関西弁で挨拶するドイツ人がいたら、やっぱり後者のほうが親しみが湧くじゃないですか。

私のアラビア語なんて本当にひどくて、私より上手く喋れる日本人は山ほどいます。でもなぜか私のほうが有名になっています。それは、恥も外聞もなく、もうまわりのことを気にせずガシガシと現地で溶け込んでいるからなんでしょう。

日本人的な発想やマネジメント手法が、そのまま海外でも通用するとは思わないほうがいい。一旦それを捨て去って、それから自分がその国でどんなことができるのか、どんな能力を発揮できるかを考え抜いて、実行へ移していくしかないんだと思います。

株式会社CulturesFactory 商品企画部部長 鷹鳥屋明

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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