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INTERVIEW
社内で本音を話す空気を作る、Sansan企業内コーチに聞くメンター上司の在り方
INTERVIEW

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BOOK MARK

「メンタリング」は人材育成の手法として有用な方法ですが、直接利害関係のある上司と部下が、本音で話し合えるような真の安全地帯をつくり、「メンター/メンティー」の関係になるのは難しいことも事実です。

けれどもそういった社内の「限界」を突破し、メンタリングを仕組み化することで、社員一人ひとりのモチベーションを向上させ、さまざまな課題解決の手立てとしている会社があります。クラウド名刺管理サービスを提供するSansan株式会社です。

人事部で「社内コーチ」として活動する三橋新さんに、その役割とメンタリング/コーチングの手法についてお伺いしました。

Sansan株式会社 人事部 コーチ 三橋新

PROFILE

Sansan株式会社 人事部 コーチ 三橋新
三橋新
Sansan株式会社 人事部 コーチ
1979年、埼玉県生まれ。順天堂大学を卒業後、株式会社フルキャストを経て、Sansan株式会社に入社。2015年、米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC)取得。名刺のデータ化を行うオペレーション部とIT&ロジスティクス部を兼務しながら、同年11月から人事制度として導入されたコーチング制度「コーチャ」を企業内コーチとして推進する。2016年9月より人事部専任となり、コーチングならびに社内制度設計を担当

「企業内コーチ」の役割とは?

ー三橋さんは企業内コーチとして活動しているとのことですが、どのような業務を行っているのでしょうか。

業務内容としてはシンプルに、「誰かと1対1で話を聴く」というものです。「コーチャ」という制度なのですが、希望者と30分から60分程度、話をしています。

頻度は基本的には月に1回、人によっては週1回、隔週1回の人もいます。だいたい40名ほど希望者がいますので、僕自身は1日につき朝、ランチ、夜の3回・・・ それも平日は毎日。常に誰かの話を聴いている感覚ですね。

ー具体的にどのような対話を行っているのでしょうか。

コーチングの肝は、一人ひとりのPDCAサイクルをしっかり回すことです。セッションを通して、自分自身の考え方や行動パターンに気づき、「私はこうする」という宣言に基づく「宿題」を持って帰り、次回のセッションまでにそれをクリアしていく。そして次のセッションではその振り返りから始めて・・・ というサイクルを繰り返していきます。

ただ、それは業務内容に関連することとは限りません。業務の生産性は必ずしも業務に関わることだけが主因ではないんです。「彼氏に振られた」「妻とうまくいっていない」「身体の不調を感じている」・・・ さまざまな要因から、仕事でもパフォーマンスを発揮できない。

よくあるのは中間管理職で、上司や部下、同僚にも家族にも言えず、八方ふさがりになるような悩みがあるひと。そういうひとにとっては、第三者である僕だからこそ、気兼ねなく話せる側面もあるようです。

「三橋さんは話をしたくなるキャラクターが強み」と言われ、コーチングに目覚めました
「三橋さんは話をしたくなるキャラクターが強み」と言われ、コーチングに目覚めました

コーチング手法のひとつに「人生の輪」というものがあるのですが、

  1. 仕事・キャリア
  2. お金・経済
  3. 健康
  4. 家族・パートナー
  5. 人間関係
  6. 学び・自己啓発
  7. 遊び・余暇
  8. 物理的環境

出典:「コーチング・バイブル」第3版(東洋経済)

8つの分野でそれぞれの点数をつけてもらい、現時点での「人生の満足度」を可視化することで、レーダーチャートを振り返り、コーチングしていくこともあります。

対話のテーマを決めるのは僕ではなく、あくまで本人であること。それは大事にしています。レーダーチャートがへこんでいるからといってそれが大事なこととは限らず、やはり、話をしている人自身が話したいと思っていることが鍵になっていることが多いんです。

ー対話の際、気をつけていることはどんなことですか。

ひとことで言うと「傾聴」です。自分が話すのは2割くらいでいいと考えています。

質問はできるだけシンプルなものを。そして質問した後、相手が考えられる余白を与えるようにしています。3分くらい考えてから答えるひともいますね。意外とそういう ”間合い” って、普段の生活ではなかなか作れないものです。無言状態が怖くて、考えがまとまらないうちにあわててしゃべることも多いじゃないですか。

そうやって自分の心の赴くまま、話したいことを話してもらう。そして、その時の表情や手振り、声のトーンなどをフィードバックするんです。「今、表情が明るくなってますね」と言ってあげると、「あ、そうですか?」と自分の感情に気づくことができます。

あと意識しているのは、「なぜ?」と聞かないこと。追及の矢が自分に向けられているように感じられて、責められているような気分になってしまうんです。もし失敗したことがあるのなら、「どんな要素があれば失敗しなくて済んだ?」などと、事柄そのものや改善策のほうにフォーカスします。

価値観を知ることでその人の本質をひもとく

ー人事制度としてコーチングを導入されて半年を経て、社員にはどのような影響が現れていますか。

まだ数値として明確に表れているものはありませんが、社員単位で見ていると、「自分について考えること」を仕組み化できているひとが増えてきました。

仕事の優先度を割り出して、ToDoリストに挙げて、それを月曜から金曜の5日間でこなしながら、PDCAサイクルを回して・・・ というやり方は、すでに多くの社員がやっていたことではあるけれど、その中で「自分が本当にやりたいことは何か」「なぜ今モチベーションが下がっているのか」などと自らを客観視できるようになってきたんです。

ー自らを客観視することは自分ひとりでもできそうな気がしますが、対話をすることで得られるメリットはなんでしょうか。

対話相手がいることで、自分だけでは思い浮かばない問いを投げかけられるんです。例えば、「自分が思う理想を10としたとき、今は何点ですか?」という問いがあったとします。自分ひとりではなかなか自分の理想を問う機会はないんじゃないでしょうか。

僕が対話の際に意識しているのは、そのひとが大事にしている価値観を聴くこと。もしそのひとが自由やゆとりを大事にするひとならば、仕事に関わるすべてのことがキッチリと決まっている職場だと、それだけで疲弊していくはず。そうすれば、「どうやって職場の自由度を上げるか」「ゆとりを持てるようにするか」という改善策が見出せます。

ーそのひとが大事にしている価値観と、会社が大事にしている価値観が一致しないケースも出てくるのではないでしょうか。

その場合、「ベン図」を考えればいいのです。「会社」という大きな円と「自分」という円の中にいくつか優先したい価値観を挙げて、その円が重なる部分を自分で見つけていくんです。

その円の重なりは、自分の見方次第でいくらでも変わるはず。重なりをどんどん広げ、「自分の人生を充実させるために会社をどう活かそうか」と考えることもできる。そのためにまず、自分の人生を考え、大切にしたい価値観を明確にしていくことが重要です。

ーコーチングを通じて、特に変化があったのはどんな社員でしたか。

コーチングは守秘義務を守ることが前提なので、今回は本人の同意の上お話ししますが、ある営業部長の例があります。彼はもともと非常に優秀な営業マンで、自分でどんどん開拓して予算をクリアしていって、ミッションとして目標を達成するようなひと。ただ、自分が優秀だからこそ、部下をコントロールしようとする傾向がありました。なかなかメンバーに対して聴く耳を持つことができず、イライラしていたんです。それで、セッションを始めました。

彼は僕の同期ということもあり、フランクに話しやすかったという面もあるのですが、日常生活について聴いてみると、「最近、家の近くのバーによく行くんだけど、いろんなお客さんが集まっていて、話しているとつい長居してしまうんだ」などと話しているときが一番楽しそうだったんです。「今、すごく楽しそうに話していたよ」とフィードバックしたり、対話を続ける中で、彼は未知のものに対する好奇心が強く、それを開拓したいという欲求が強いことがわかりました。

「対話中は相手の声や表情の変化に気をつけています」
「対話中は相手の声や表情の変化に気をつけています」

そして「イライラの正体はなんだろう」と追究していくと、「自分は自分に今できることをやっているのに、なぜこの人はやらないのだろう」「なぜ指示しているのに、動いてくれないんだろう」と、「相手をコントロールしたいのにうまくいかない」ことにイライラしていたんです。

イライラの正体がわかったこと、そして彼自身が「傾聴してもらうことで解きほぐされていく実感」を得られたことで、「部下の話を聴いて、いいところを引き出そう」「ダメなところは引き受けて、サポートしよう」というスタンスに変わりました。当の本人はそこまで変わったとは思っていなかったようですけれど、傍目には意識も変わったように感じられました。

上司がメンターとしての役割を果たすには

ー三橋さんのように第三者的な立場のひとなら、気がねなくなんでも話せそうな気がしますが、例えば直属の上司と部下となると、なかなか本音で相談するのは難しそうです。

確かにそうですね。ただ少なくとも、「なんでも話せるような場を作ること」と「傾聴に努めること」で、上司と部下がメンター/メンティーの関係性に近づいていくことは可能だと思います。

その際、上司に求められるのは「胆力」でしょうね。対話を進めていけばいくほど本質的な話になり、部下の生い立ちや人間関係などディープな内容になっていくことが予想されます。僕でさえ、1日セッションを繰り返していると、少し疲れを感じることがあります。

傾聴するってすごくエネルギーが必要なんですよ。どこまで話を広げていくかはある程度考慮しながら、やはり第三者的に立ち振る舞えるようなひとと役割分担するのが理想的です。

ーとはいえ、上司が部下をメンタリングしていくことで、状況の好転を図ることはありえそうです。上司が部下の本心を引き出すためには、どうすればいいのでしょうか。

一番重要なのは、「相手の可能性を信じられるかどうか」ですね。

コーチングではよく、「生まれたばかりの赤ちゃんの可能性を信じるのと同じように、相手に接しましょう」というのですが、生まれたばかりの赤ちゃんはしゃべることも歩くこともできないことは当たり前。過去にミスをしたことがある部下の可能性を信じるというのは難しいかもしれませんが、それを受け入れることも上司としての度量です。

部下の気持ちを理解しようと、自分から腹を割り、本音で話すこと。そうすれば、相手も自分の鎧を脱いで、本音で話すことができます。聴き手として振る舞うために、まずは「自分自身が安定すること」も重要です。僕自身、家族との関わりはとても大事だと自覚しているので、家庭では妻としっかり向き合うようにしています。

三橋さんも自分に合ったツールを使って自分自身と向き合っています
三橋さんも自分に合ったツールを使って自分自身と向き合っています

ーメンタリングがうまく機能するようになってくると、どのような効果があるのでしょうか。

やはり、個人のモチベーションが変わってきます。例えばセッションで、お互いの理想を表明するとします。僕はよく「満員電車で憂鬱になっている日本人の目の輝きを取り戻したい」などと夢を語るのですが、そうすれば気恥ずかしさを感じることなく、相手も語ってくれる。そうやって、「自ら選択して会社に来ている」「自分の夢を叶えるためにこの会社にいる」と考えていくと、「月曜日は憂鬱」という状況もなくなるはず。

上司が結果を求めていくと、つい「こうすべき」という指示になってしまいがちですが、その言葉をグッと飲み込んで待つ。そうすればおのずと一人ひとりが主体的に考えるようになり、自走するようになるんです。それは会社にとって大きなプラスとなるはずです。

Sansan株式会社 人事部 コーチ 三橋新

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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