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INTERVIEW
世界第二位のビットコイン起業家が語る、キャリアを加速させるお金の使い方
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「50代、60代で◯◯を成し遂げ、70代は◯◯をして過ごす」・・・ このように10年単位でゆるやかな人生設計を描く人がいる一方で、「ここぞ」という自分でさえ予期していなかったタイミングで勝負を仕掛ける人もいます。

今日活況を迎えている、金融(ファイナンス)とIT(情報テクノロジー)を掛け合わせたFinTech(フィンテック)業界で、仮想通貨「ビットコイン」の取引所を運営するbitFlyer社を2014年に創業した加納裕三さんもその一人です。

加納さんはゴールドマン・サックスなど証券会社で活躍するも、ビットコインの可能性を見い出した「3カ月後」には起業。今年4月には「30億円」という巨額の資金を調達し、ビットコイン取引所としては資本金額で世界第二位となるなど勢いに乗っています。

そんな加納さんに、前職での好待遇を投げ打ってでも、成功するか不確実性の高い挑戦に踏みきれた理由、その決断を支えた「お金」に対する自身の価値観について、お話を伺いました。

株式会社bitFlyer 代表取締役 加納裕三

PROFILE

株式会社bitFlyer 代表取締役 加納裕三
加納裕三
株式会社bitFlyer 代表取締役
1976年生まれ。2001年に東京大学大学院工学系研究科修了後、ゴールドマン・サックス証券にてエンジニアとして自社決済システムの開発を行う。BNPパリバ証券を経て、2007年よりゴールドマン・サックス証券に再入社し、デリバティブ・転換社債トレーダーとして機関投資家向けマーケットメイク、自己資産運用や企業の資金調達を行う。2014年1月に株式会社bitFlyerを設立

「世の中が変わる瞬間って、生きている間にそう多くない」

ーまずは、bitFlyer社の事業内容について教えてください。

「ビットコイン」の取引所を運営しています。従来の仮想通貨は、実は企業が自社サービス内にユーザーを囲い込むために作られたものであるのに対し、ビットコインは「円」や「ドル」と同じく、日常生活で使われることを目指して作られたものです。

ATMの引き出し手数料やオンラインバンキングの振込手数料が高いと感じたことは誰しもあるでしょう。ビットコインなら銀行を介さず個人間で直接送金できるため手数料は格安で、通貨単位も世界共通で煩わしい手続きもありません。

つまり、お金の流通を今よりもずっと自由にしてくれる。ビットコインは今はまだ普及の初期段階ですから「使える場所が少ない」など課題はありますが、普及すれば、多くの人の生活が便利かつ豊かになり、社会を幸せにすると信じています。

bitFlyer社が運営するビットコインの販売所
bitFlyer社が運営するビットコインの販売所

ー今年4月には「30億円」という巨額の資金を調達しました。

はい。ビットコインの取引所のユーザー数は約20万人とまだまだこれからですが、資本金額だけ見れば、アメリカのCoinbase社に続いて世界第二位の仮想通貨取引所。これでグローバル市場での競争、そのスタートラインにようやく立ったような感触です。

ビットコイン市場のなかでもどの国、分野が特に伸びるかはわかっていません。ですから、色々な分野のサービス開発のために今回の資金調達を行いました。直近ではヨーロッパ市場への進出と、ブロックチェーンの研究開発を加速するための組織強化に充てます。

社会人になって間もなく、副業での飲食店経営などあまり真剣に取り組めなかった起業は何度かしたことがありました。今回のようにベンチャーキャピタルなど外部から出資を受けて、スケールするビジネスに挑むというのは初めてです。

ーそれだけの巨額のお金を集めるのは、苦労されましたか。

出資の相談って、基本断られます(苦笑) 野球選手なんかとは比べ物にならないくらい “打率” は低くて、何十社とプレゼンして頭を下げました。ですから、断られることを失敗とか挫折とかは、途中からは考えないようになりました。

資金調達のほかに取り組んでいるのが、ロビー活動です。国内での仮想通貨の法整備の必要を訴え、具体的に進めるために一般社団法人(日本価値記録事業社協会、現・日本ブロックチェーン協会)の幹事役企業として、行政にはたらきかけてきました。

その甲斐あって仮想通貨交換所の監督官庁が「金融庁」に決まり、実際に法律の改正も進んでいます。これによってセキュリティ強化がますます厳しく求められるようになりますが、ユーザーがビットコインを安心して使える環境作りとしては、大前進です。

オフィスに設置されたビットコイン自販機
オフィスに設置されたビットコイン自販機

ーものすごい行動力です。加納さんの「ここぞ」という意気込みはどこからくるのでしょう。

「世の中が変わる瞬間」って、自分が生きている間にそう多くない。インターネットが産声を上げたときのような。しかも、証券会社でエンジニアとして経験を積んできた自分がそんな瞬間に関われる機会・・・ 私にとっては、今しかありませんでした。

bitFlyerを立ち上げようと思ったのは、2013年の暮れでした。当時はまだFRB(連邦準備制度理事会)の議長だったベン・バーナンキ氏が、「ビットコインには長期的には可能性をもつ領域があるかもしれない」という趣旨の発言をしたんですね。

ちょうどその頃、私自身、ビットコインやブロックチェーンに関心があり、この技術を金融システムに応用すれば世の中は変わるかもしれないと思っていました。そんなときに、先ほどの彼の発言。「10年後、いや5年後には金融業界は変わる」と確信しました。

しかも、元々起業することも視野に入れ証券会社に勤めていて、ファイナンスについてはある程度専門的な知識を学ばせてもらえました。年齢的には30代半ば、資金調達できる可能性も上がっていると考えました。

いくつも事業アイデアは考えていましたが、そのようないくつかの要素が重なって、「本気でやるなら今、ビットコインとブロックチェーン。ここが勝負どころだ」と考えました。その3カ月後には会社を辞めて、起業していました。

逆に言うと、「10年後であってもフィンテックで起業しますか?」と聞かれたら、「しない」ですよ(笑) それくらい、社会に大きなインパクトを与えられるかもしれない、私にとっては今が貴重なタイミングです。

株式会社bitFlyer 代表取締役 加納裕三

お金を失うこと以上の「最大のリスク」とは

ー好待遇の証券会社を辞めて挑戦することに迷いはありませんでしたか。

証券会社でのキャリアアップ、サラリーアップの可能性を捨てることに、抵抗感はありませんでした。きっと、「キャリアにおけるリスクとは何か?」ということに、自分のなかで解が出ていたからでしょう。

ー金銭的なマイナスは、ご自身にとってはリスクではなかったと。

多くの人にとって、「お金」は不安要素で、それを失うことはリスクに感じられるでしょう。でも、私は起業して報酬が下がったとしても、それをリスクだとは思いません。

元々お金を消費することに対しては、もったいないと感じています。報酬をたくさんもらったから、なにか高いものを買うとか、あるいはワイン教室に通うとか、そんなふうに使おうとはあまり思いません。

もしお金を使うとしたら、その使いどころは「世の中を変えたくてそのためにお金が必要なとき」だと思います。証券会社時代も平均よりは高い報酬だったと思いますが、生活はシンプルで、起業するときのためにお金を取っておきました。

株式会社bitFlyer

それにお金のリスクと言いますが、たとえ起業して失敗したとしても、必死になって転職活動をすればかならずどこかの会社に再就職できるでしょう。なにより、「日本にいるかぎり死ぬことはあり得ない」、これでもうリスクは回避されるわけです。

ちなみに報酬や職を失うという意味では、ゴールドマン・サックスは結構リスクですよ。 誰も定年までいられると思っていませんし、「定年まではたらく職場」という感じでもないですから(笑) 社員の多くが、常に次の挑戦のことを考え続けています。

ー加納さんがそこまでお金にとらわれずにいられる理由は。

お金は大事ですが、私にとっては、お金を失うことよりも「時間を浪費すること」のほうがリスクだからです。

これは、証券会社という競争が激しい環境で学びました。まわりの誰もが、「この会社で10年後どうするか」なんていう長い時間軸で自分のキャリアを捉えてはいない。短いスパンで結果を出し続けるために、成長しようと必死だと思います。

そんな職場ではたらいていると、「自分も彼らに追いつきたい」と、同じようにより短い時間軸で自分のキャリアというものを想像せざるを得なくなりました。

ーだから、今何もおそれず勝負を仕掛けられるのですね。

自分がビジネスパーソンとしてきちんと健康ではたらける時間ってものすごく限られていて、その間しか自分のやりたいことはできない。

たとえ、証券会社がハイサラリーかつ一生いられる安泰な会社であっても、そこでの仕事が自分にとってやりたい仕事じゃなかったら、自分の人生の時間がただ削られていくだけに思えます。

そうやって時間を削られた結果、自分のやりたいことをやれずに終わったら後悔する。その後悔は、未知の領域に挑戦する恐怖感よりもきっと大きいと想像します。

だから、今一番やりたいことをやるべきかと。

株式会社bitFlyer 代表取締役 加納裕三

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[取材・文] 井上晶夫、岡徳之

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