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INTERVIEW
人を育てるのが上手い上司は、部下の「得意な教わり方」を知っている
INTERVIEW

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BOOK MARK

「部下が何度注意しても同じミスを繰り返す。いろんなアドバイスをしても仕事の成果が上がらない・・・」、上司にとっては悩みのタネですが、実はこれ、部下に意欲がないわけでも、能力が低いわけでもないのかもしれません。

なぜなら、 同じモノごとでも「文字」で伝えられるとしっくりくるのか、それとも「絵」なのか、はたまた「音」なのか・・・「得意な情報の受け取り方」=「認知特性」が、自分と部下とで異なっているだけかもしれないからです。

今回はこの「認知特性」という新しいコミュニケーションの切り口から、「部下の能力の伸ばし方、引き出し方」について、人間の学習と脳科学に詳しい3名の対談を通じて考えます。

  • 電通でアクティブラーニングの先端研究チームのリーダーを務める倉成英俊さん
  • 同じく電通で子どもたちの発想力を鍛えるプログラムを企画運営する本田晶大さん
  • UCLAを飛び級で卒業、脳を軸に発明活動し特許を持つ脳神経科学者の青砥瑞人さん
株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通Bチーム 代表 倉成英俊, 株式会社電通 第5CRプランニング局 アートディレクター 本田晶大, 株式会社DAncing Einstein 代表取締役 青砥瑞人

PROFILE

株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通Bチーム 代表 倉成英俊
倉成英俊
株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通Bチーム 代表
写真中央。1975年佐賀県生まれ。2000年電通入社。クリエーティブ局に配属以降、各社新規事業部とのプロジェクトや「APEC JAPAN 2010」「東京モーターショー2011」「IMF/世界銀行総会2012」の総合プロデュース他さまざまなプロジェクトに携わる。電通「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」の所長としては「変な宿題」プロジェクトや佐賀県で藩校を21世紀に復活させる「弘道館2」他、教育が面白くなることをいろんな人びとと連携し推進中
株式会社電通 第5CRプランニング局 アートディレクター 本田晶大
本田晶大
株式会社電通 第5CRプランニング局 アートディレクター
写真右。1967年石川県生まれ。2003年電通入社。雑誌『ソトコト』の制作に創刊当初から携わるなど、アートディレクターとして活躍中。「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」にも所属し、小児科クリニックなど子どもが育つ環境を総合プロデュース。発達に偏りを持つ子もそうでない子も自ら考え、発想し、一緒に楽しめる独自のクリエーティブプログラムを多数提案
株式会社DAncing Einstein 代表取締役 青砥瑞人
青砥瑞人
株式会社DAncing Einstein 代表取締役
写真左。1985年東京都生まれ。日本の高校を中退し、渡米。アメリカの最上位である公立大学 UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を飛び級で卒業。帰国後、株式会社DAncing Einsteinを設立し、脳神経化学を教育・人財育成へ応用し大手企業・学校を支援。脳神経化学と教育、ITを掛け合わせた「NeuroEdTech®」の分野でいくつも発明し特許を取得

「教わり方」にも、人によって得意・不得意がある

ー部下の伸び悩みに頭を抱える上司は多いです。倉成さんは電通で「アクティブラーニング こんなのどうだろう研究所」の所長を務めていますが、そんな上司へのヒントはありませんか?

左から本田さん、倉成さん、青砥さん
左から本田さん、倉成さん、青砥さん

倉成 そうですね。僕自身が悩んでいる1人かもしれませんが、人が自ら課題を発見し、答えを導き出す能動的な学習法をいろんな方と実践してきた中からお話ししてみたいと思います。

参考になるかなとまず思ったのは、隣にいる同僚の本田(晶大)さんの奥さんである、みくりキッズクリニック院長の本田真美さんから聞いた「認知特性」の話です。

人によって情報の得意な「受け取り方」が異なる、という特性があるそうなんです。目「見て」理解するのが得意な人もいれば、文章を「読または、音で「聞」ほうが理解しやすい人もいる、と。

例えば、本田さんは「視覚優位」で、同じ「目で見る」でも文字ではなく「絵」でモノごとを理解するのが得意。「この人(本田さん)は頭の中にカメラが入っている」と奥さんは、おっしゃっていました

青砥 おもしろいですね。頭の中に「カメラ」、ですか。

本田 はい。昔、こんなことがありました。奥さんが「青いセーター」を着て家に帰ってきたとき、「そのセーター、実は嫌いなんだ」って彼女に言ったんです。

株式会社電通 第5CRプランニング局 アートディレクター 本田晶大

前に夫婦喧嘩をしたときに奥さんがそれを着ていたこと、それと奥さんがヒットラーに関するテレビ番組を見ていたときにもそのセーターを着ていたことを思い出したんですね。その2つの記憶が負の化学反応のようなものを起こして「嫌いだ」って思ったんです。

倉成 それを聞いて、本田さんの奥さんは「この人は頭の中にカメラがあって、そのカメラで情報を処理しているんです」って言ったんです。おもしろいなあと。たしかに、テレビアナウンサーの人の中には声など「音」を「聞いて」モノごとを理解するのが得意、という人も多いですし。

他にも、ライターさんのように「言語優位」で、「文字」を「読んで」理解するのが得意という人もいるでしょうし、そう考えると、モノごとの「教わり方」も、人によって吸収のしやすさというか、効率のいいやり方は違うんだろうなと思っているんです。

青砥 なるほど。

倉成 会社でも「自分が考えたこの案、すごくいいはずなのに、なんで上に通っていかないんだろう」っていうときありますよね。

それだって、上司にも「数字が好きな人」もいれば「ロマンが好きな人」もいるし、「緻密なものが好きな人」もいれば「ラフなものが好きな人」もいるから分かってもらえないことがある・・・そう理解して、伝え方をチューニングできたら、と思うんです。

株式会社電通 ビジネス・クリエーション・センター 電通Bチーム 代表 倉成英俊, 株式会社DAncing Einstein 代表取締役 青砥瑞人

部下の得意な教わり方・伝え方を見つけ、手助けするのが上司の役割

倉成 「脳のつくり」からしても、人によって異なる認知特性、つまり情報の受け取り方、教わり方の特性というものがあるのでしょうか?

青砥 そうですね。人が情報をどう認知して、頭の中で処理するかは、生まれた時点でのDNAの情報、またその後の「経験」によっても差が出るでしょう。とりわけ、10歳くらいまでの脳の情報処理の経験は、視覚優位、聴覚優位など、その人の特性に大きく作用すると言われているんです。

また、これはよいアイデアではないかもしれませんが、経験だけでなく「男女」によっても特性に違いがあらわれるのかもしれませんし、たとえ同じ性別、同じ親の子どもであっても、育った「環境」によって違ってきます。その違いのせいで、本人が苦労することもあるでしょう。

例えば、ある学校に、絵を描くのは得意なんだけど、文字を書くのは苦手という子どもがいたとして。担任の先生が「文章を書いて」提出するのを求めている場合、その子がどんなに「絵を描く」のが上手かったとしても、「表現としては認められない」となってしまいます。

しかし、今は子どもであってもスマホやタブレットを使うのが当たり前。「情報の伝え方」だって、いろいろあっていいはずです。なのに、文字を書くのが苦手なだけで、どんなにその子の「頭の中に」すばらしいアイデアがあったとしても、「下手」の一言で片づけられてしまう・・・。

株式会社DAncing Einstein 代表取締役 青砥瑞人

そんなふうに否定されたら、「もういいや」って、アイデアを考えることすら拒んでしまう子になっても仕方ありません。こういう認知特性の違いは、学校もそうですし、会社のような大人、ビジネスの世界でももっと知られたほうがいいと思っています。

本田 青砥さんご自身はモノごとをどんなふうに理解するのが得意なんですか?

青砥 僕は、話を「聞いて」理解するのが得意だと、自分では思っています。人によっては、文章で伝えられたほうが理解しやすいという人もいますが、話を「聞く」のと文章を「読む」のとでは、使う「脳の機構」が違うんですよ。

アメリカにいたとき、こんな子どもに出会いました。「”I am a hero.(僕はヒーローだ)” って書いて」と言うと、書ける。だけど、「じゃあ、今書いた言葉を読んで」と言うと、読めない。「自分で書いた文字なのにどうして読めないの?」と、当時はとても驚きました。

しかし、それはある意味当然なんです。「読む」「聞く」「書く」「描く」「話す」・・・同じ情報をあつかうにしても、脳では違う回路を経て行われるわけですから。

本田 そうなんですね。

青砥 さらに付け加えると、情報を「読む」という作業のプロセスは、「理解する」「思考する」「共感する」に分けられますが、それら3つもまったく別の脳の機能。

ですから、指導者や上司の好みだけで子どもや部下への情報の伝え方を決めるのは得策ではないかもしれません。「なんでこの子は、この部下は自分の言うことを聞かないんだ」と怒るのは簡単ですが、それではいつまで経っても能力は伸びないんです。それぞれの強みを引き出し、活かすことが大切です。

倉成 部下それぞれの強みを引き出し、活かすためのヒントはありますか?

青砥 例えば、会議で「間」を上手く取ることは有効だったりします。

議論がどんどん進むと、「視覚」で情報を処理することが得意なタイプの人が置いてきぼりになるということはよくあります。ならば、資料に目を通す時間を取ったり、議論をホワイトボードに可視化してあげたり・・・間を取ることで、視覚優位の部下の能力を引き出すことにつながるはずです。

逆に、視覚で文字を追うことばかりを求められるプレゼンなどでは、「対話」が得意なタイプの人が議論についていけなくなる可能性が高いです。それに「聞く」のが得意な人でさえ、目の前に資料を広げられると本来の聞くことへの注意が削がれ、情報を受け取りづらくなる場合もあります。

そういう部下がいる場合には、資料を読むことを止め、聞くことに専念させたほうがよっぽどいいでしょう。ですが、部下が資料にもきちんと目を向けていないと、怒りたくなる上司は多いでしょうね。だからこそ、部下一人ひとりの認知特性を把握することが大切なんです。

倉成 なるほど。

青砥 指導者や上司は、自分が得意な情報の受け取り方をとかく他人にも押しつけがちですが、それは問題かもしれません。子どもや部下と認知特性が一致していればいいのでしょうが、そうでないケースはその子や部下の強みをつぶしかねません。

脳神経科学の発達でさまざまなタイプの認知特性があることが分かってきています。会社でも、そうした知見にもとづいてより部下が「個の強み」を発揮するのを手助けできるようになるといいですね。

株式会社DAncing Einstein 代表取締役 青砥瑞人

[取材・文] 岡徳之、大矢幸世

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