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INTERVIEW
チームワークを精神論で終わらせない、ロジカルに実践するサイボウズのノウハウ
INTERVIEW

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BOOK MARK

組織で仕事をする上で「チームワーク」は欠かせない。そのことに異論はなくても、人によって言葉の捉え方があいまいだったり、精神論にとどまっていたりするところはないでしょうか。

チームワークを「ロジカルに理解し、改善できるもの」と捉え、その質を向上させるためのメソッドを研修サービスとして提供しているのが、サイボウズの「チームワーク総研」です。

サイボウズは過去、一時は28%にまで高まった離職率をチームワークの質向上によって改善した経験から、その知見を発信したり、チームワークの重要性を啓蒙したりする活動に力を入れてきました。

もともとは社内向けに開発・実践してきたメソッドですが、評判が評判を呼び、現在ではさまざまな企業にセミナーやワークショップという形でノウハウをシェアしています。

今回はそんなサイボウズ・チームワーク総研のメンバー、青野誠さんとなかむらアサミさんに、チームワークを改善し、向上させるためのポイントを伺ってきました。

サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー なかむらアサミ、サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長 青野誠

チームワークとは「理想を達成するために役割分担し協働すること」

―サイボウズでチームワーク研修が始まった経緯から教えてください。

なかむら 主にITソフトウェアを売る会社として知られるサイボウズですが、目指す理念は「チームワークにあふれる社会をつくる」ことです。そのためには、まずは自分たち自身がチームワークにあふれた状態でなければ嘘だろうということで、10年以上前から、チームワークを向上させるためいろんな取り組みをしてきました。

サイボウズ

PROFILE

サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー なかむらアサミ
なかむらアサミ
サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー
教育、IT企業の人事担当を経て、2006年サイボウズ株式会社に入社。休職し、法政大学大学院経営学研究科キャリアデザイン学専攻修了。復職後、広報・ブランディング担当として広報やPRイベントの実施に加え、チームワークを教える活動を始め、その後現職に至る。

「チームワーク」というとふわっとした概念をイメージしがちですが、海外にはチームワークに関するさまざまな研究があります。私たちはこうした文献をあたり、要素を抽出し、たまったノウハウを元に独自のチームワークメソッドを開発しました。最初は社内向けに行っていたのですが、学校など教育機関で披露したところとても好評で、徐々に他の企業からもご依頼いただくようになりました。

最近は「働き方改革」の文脈で、サイボウズのこの10年間の取り組みにご注目いただく機会が増えています。そういった世の中のニーズの高まりを感じる中、サイボウズの働き方とチームワークのノウハウを研修サービスとして提供しようということになり、昨年11月にチームワーク総研を立ち上げました。

―サイボウズでは「チームワーク」をどう定義していますか?

サイボウズはチームの表彰イベントも過去に開催
サイボウズはチームの表彰イベントも過去に開催

なかむら チームワークに関する研究は、実は海外のほうが進んでいます。「チームワーク=和」というイメージがあるかもしれませんが、これは「和を重んじる」という日本古来の考え方に、後になって海外から入ってきた「チームワーク」という言葉が結びついただけ。もともとは別の概念なんです。

私たちはすぐに「絆」とか「一致団結」ということを連想してしまうけれども、これらはすべてチームワークの「結果」に過ぎません。絆を生むためにはどうすればいいか、一致団結するためにどうすればいいかということは、これまで日本ではあまり言及されてきませんでした。

普段の会話の中で「グループ」と「チーム」という2つの言葉を意識して使い分けている方は少ないかも知れませんが、厳密に言うと定義は異なります。「グループ」とは単なる集団のこと。家族とか、東京都民とか、ある電車の車両に乗り合わせた人たちも「グループ」です。一方、「チーム」とは何かしらの目的を達成するための集団を指します。

こうした前提を踏まえて、サイボウズではチームを「理想に共感してつながっている人たち」とし、チームワークを「理想を達成するためにチームでワークすること」と定義しました。チームは目的を達成するための集団なので、チームワークにはまず最初に「理想」が必要です

サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー なかむらアサミ、サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長 青野誠

チームワークの4つの成果と発揮するための5つのポイント

―チームが機能しているかどうかはどう判断すればいいでしょうか?

なかむら チームのアウトプットには「効果」「効率」「満足」「学習」の4つがあると言われています。「効果」というのは、そのチームが組まれた目的が達成されること。一人でやるよりチームでやったほうが捗るよね、というのが「効率」。このメンバーでいてよかったなと思えるのが「満足」で、何かしらを学べたというのが「学習」です。

例えばサッカーの試合に臨む場合、試合に勝って満足もして、おまけに技術も向上したとなれば、この4つすべてが満たされているわけですから、もちろん最高の成果と言えるでしょう。けれども、仮に負けたとしても、このメンバーでいてよかったと思えるとか、負けたけど試合をする前より上手くなったというのであれば「満足」と「学習」が満たされたことを意味するので、それはそれでチームワークの成果と言えるのです。

ですから、ひとくちに「チームワーク」と言っても、なにがなんでも成果を出すことを目指すのか、それともメンバーの満足、あるいは一人ひとりが学習するところを重視するのかで、チームの運営の仕方は変わってくることになります。

―どうすればチームワークを発揮できますか?

なかむら この4つの成果を出すために必要なものを、私たちは「①理想を創る」「②役割分担」「③コミュニケーション」「④情報共有」「⑤モチベーション」の5つのポイント(プロセス)にまとめました。

チームワークのプロセス

「①理想」というのは、そもそもこのチームは何を目的としているのか。優勝を目指すのか、ベスト8なのか、それとも単に楽しくやれればいいのか・・・まずはそこを共有しておく必要があります。

次に「②役割分担」。学生などを集めて4人のグループワークをやると、2人はすごく頑張っているんだけれど、残りの2人は寝ている、みたいなことがよく起こります。これは、役割分担が明確になされていないため、ということが多い。逆に役割分担が明確になされたうえで残りの2人が寝ているのなら、それは問題ないことになります。

まず「①理想を創る」。次に「②役割分担」。この2つがチームにとって一番大事なところで、それ以外に「③コミュニケーション」や「④情報共有」がちゃんとなされているか、「⑤やる気」をちゃんと上げられているかが、チームが機能するためのポイントになります。

この5つのポイントを明らかにしておくと、チームがうまくいかなかったのは、そもそも理想がズレていたからなのか、それとも役割分担ができていなかったのか、あるいは情報が一箇所に集中して共有できていなかったのかなど、チェックポイントのようにして使うことで、チームワーク向上の助けになるはずです。

―なるほど、分かりやすいです。

なかむら こうしたことは組織で仕事をするうえでとても重要ですが、学生時代を含めて、チームワークについて教えられる機会はこれまでほとんどありませんでした。チームワークを精神的なものとして捉えるのではなく、噛み砕いて構造的に理解することが向上の第一歩になると、私たちは考えているのです。

チームワークをはぐくむ2つのメソッド

―実際にどんな研修をしているのか教えてください。

PROFILE

サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長 青野誠
青野誠
サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長
早稲田大学理工学部情報学科を卒業後、2006年サイボウズ株式会社に入社。営業やマーケティング、新規事業立ち上げなどを経験後に人事部へ配属。現在は人事部での採用・育成・制度づくりとチームワーク総研を兼務。2016年よりNPO法人フローレンスの人事部門にも参加し、複業中。

青野 まず、「①理想を創る」「③コミュニケーション」のためのノウハウとして、サイボウズ独自の「問題解決メソッド」というものがあります。

多様な価値観を持つ社員が問題解決に向けて議論をする際、いきなり話し合えと言っても非効率だし、議論があっちこっちへ拡散してしまって、ただの言い合いで終わってしまうことも多いです。そこで、事前にフレームワークを作り、それに沿って議論しましょうということを徹底しています。これが「問題解決メソッド」です。

その際には「共通言語」を持つことをかなり強く意識しています。例えば、サイボウズ社員に「問題」とは何かと尋ねれば、決まって「理想と現実のギャップのこと」と答えが返ってきます。「事実」とは何か。「解釈」とは何か。そういった一つひとつについてすり合わせができているので、「ああ、それは事実だよね」とか、「それは事実ではなく、あなたの解釈だな」といったことを共通言語にしてコミュニケーションができるのです。

この「事実」と「解釈」という言葉は、中でも特によく出てきます。「事実」というのは「五感で確認できる確かさの高い事象」。例えば「この部屋には今、4人にいる」というのは、誰が見ても疑いようのない「事実」です。一方、「この部屋、なんだか雰囲気が暗いね」というのは「解釈」です。意見の対立が起きてしまう原因は、この「解釈」に頼った話し方をしているから、ということが多いです。

誰かにスムーズに意見を伝えるためには、人によって異なる「解釈」ではなく、「事実」をベースに話すことが重要になります。問題の裏側には必ず「事実」があるはずなので、それを探し出し、「事実」をベースに議論する。ですから研修でも、いかに要素を分解して、「解釈」に頼らずに「事実」を見つけるかという練習をしてもらいます。

事実、解釈・・・チームワークを築くうえで「共通言語」は重要
事実、解釈・・・チームワークを築くうえで「共通言語」は重要

―シンプルですが忘れがちなポイントですね。

青野 次に、「②役割分担」のところでは「チームワーク創造メソッド」というものがあります。チームメンバー同士でお互いの強み・弱みを認識するという目的を持って行うもので、5、6人のグループになって、順番に「この人の強みをとにかく3分間言ってください」ということをします。本人はそれをひたすらメモし、続いて今度は自分で弱みを挙げていきます。そうすると、みんなからは強そうと思われていた人が、「実は自信がないんです」とか、「矢面に立つのが苦手」などと意外な一面を覗かせることになります。

なぜこれが「役割分担」をするうえで大事かというと、根底には「チームは補完関係である」という考え方があります。要は、それぞれが強いところを生かせばいい。「ロジカル・シンキングが弱い」と吐露した人がいたとして、5、6人もいれば必ずロジックに強い人もいるものなので、そういう人に補ってもらえばいい、ということです。

なかむら 例えば私の場合、チームのメンバーには「大きな絵、ビジョンを思い描くことは得意。だけど、それを細かく落とし込むことが苦手で・・・」と正直伝えていますし。

青野 私も「事務作業が本当に苦手だから、なにか抜けていたらフォローしてね・・・」と(苦笑)。

サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー なかむらアサミ、サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長 青野誠

―強みだけじゃなく弱みも明らかにするのがポイント?

なかむら 私たちはみんな思春期を通ってきているので、弱みをさらけ出すのが苦手です。弱いところは隠したり、なんとかして克服したりしようとする。でも、本当は弱みは隠すのではなく、むしろ伝え合って補い合うことが大事なのではないかと思うんです。もちろん自分も得意なところで誰かを助ける。それができると、チームとして気持ちのいい関係になります。苦手なことを無理矢理頑張って「仕事をやっている感」を出すのは違うのではないか、と。それをやるから、鬱とかそういうことも起きてしまうのだと思うので。

青野 ここまでお話しした5つのポイントとは別に、チームワーク総研として「どんなチームづくりをお手伝いしたいか」を表現した5つのキーワードがあるのですが、その1つが「多様性」です。最近よく聞く言葉だとは思うんですが、企業がその言葉を使うと、すぐに「じゃあ女性を入れましょう」とか「外国人を採用しよう」という話になってしまうじゃないですか。でも、サイボウズの考え方は違っていて。

多様な人はすでに社内にいる。だからそれをそのまま生かせばいいんですよ。社内にユニークな人がいないのだとしたら、それは組織側の問題であって。新卒の時には十分にユニークだったのに、どんどん角が削られてしまうことが起きている。それはやめようね、ということです。家庭の事情、プライベートの事情、あるいは趣味もすべて持ち込んで、それを認識してもらって、強みを生かそう、と。

だから、多くの会社でやられているのが規格が統一されたレンガみたいなものを積み上げて強固な組織を作ることだとすると、僕らの考えるチームワークは、でこぼこの石が積み上がった石垣のようなものです。日本の石垣って、石の一つひとつは大きさも形も違うけれど、結構頑丈なんですよね。

サイボウズ・チームワーク総研アドバイザー/チームワークブランディングプロデューサー なかむらアサミ、サイボウズ・チームワーク総研研究員兼サイボウズ人事部副部長 青野誠

メソッドだけではダメ。本当に機能するには風土が必要

―このメソッドを持ち込めば、どこの組織であってもうまくいきますか?

青野 例えば「問題解決メソッド」を使って、「なぜこんな問題が起こっているのか」とその原因を探求しようとする際、サイボウズ社内であればなんの遠慮もなく、ズバズバと指摘する声が上がるのですが、他の企業でこれをやると、気を遣って言えないという人が多い。本当は「マネジメントが悪い」とか、「この人のこの言動が悪い」とか分かっているはずなのに、忖度をして。だから、やはりメソッドだけではうまくいかない。なんでも言えるような企業風土に変えていく必要もあるのだろうと思います。

―どうすれば変わりますか? 風土は変えられますか?

なかむら サイボウズも10年前はなんでも言い合える会社ではなかったんです。創業してまだ10年で、「これから頑張ろう」というフェーズだったにもかかわらず、離職率は28%。4人に1人は辞めていくような状況で、いわゆるブラックな労働環境だったんです。

当時はまだITバブル期でしたが、サイボウズはBtoBだから学生にあまり知られておらず、そもそも新卒採用では不利な立場にあります。そのうえ、中途でとってもこれだけ辞めてしまうというので、人事としてはかなり危機感を持っていました。そこで、「せめて今いる人は長く働けるようにしよう」ということで、今でいう「働き方改革」に取り組み始めた。今お話ししているようなノウハウや制度が生まれたのはその結果であって。

青野 なんでも言える風土になるために取り組んだこととして一つ具体例を挙げるなら、「説明責任」「質問責任」という言葉を作ったことでしょうか。気になることがあったら質問しなければいけない、それは義務であるというのが「質問責任」。それに対して、求められたら答えなくてはならないというのが「説明責任」です。ですから、仕事終わりに飲み屋で「会社が・・・」と愚痴るのは質問責任を果たしていないことになる。そのモヤモヤは全部言語化してぶつけなければならないというルールを作ったことで、「社歴2年の自分が発言していいのかな?」みたいなことは社内からなくなりました。

サイボウズ

―言葉さえ作れば変わるものですか?

なかむら もちろん時間はかかっています。ただ、私たちが幸運だったのは、グループウェアを作っている会社であったがゆえに、もともと社内の情報共有が進んでいたことです。情報は全社員に平等に公開されており、あとはそれを見に行くか行かないかの違いだけ、という感じ。質問したことに対して「説明責任」が果たされ、改善されていくプロセスもすべてWeb上の掲示板で可視化されていたので、そういうものを目にするうちに、徐々に「なるほど、こう尋ねればいいのか」と広がっていったところがあるだろうと思います。

とはいえ重要なのは、風土は変えられるものだということです。サイボウズも最初からいい会社だったわけではなく。いい会社に「なった」んですよ。

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[取材・文] 鈴木陸夫、岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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