ログインして記事ブックマーク、コメント投稿などすべての機能を使う。

close

INTERVIEW
社会のリスクを解決する使命感が原動力 freee代表 佐々木大輔
INTERVIEW

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
BOOK MARK

「誰もがうまくいかないと言われていることに挑戦しないなら、人類は進歩しない」

そう語るのは、全自動のクラウド会計ソフト freee(フリー)を開発した佐々木大輔さん。これまでのやり方に多くのひとが疑いを持つことがなかった「会計」の業務に着目し、バックオフィスでもっとも原始的だったその分野にテクノロジーを持ち込むことで、これまでの形態を一新しようとしています。

GoogleというグローバルなIT企業で広い視点を持って働いた末に「社会にインパクトを与える」ことこそが自分の次のキャリアパスだと感じた。そう語る佐々木さんに、社会のリスクと個人のキャリアの関係について語っていただきました。

freee株式会社 代表取締役 佐々木大輔

PROFILE

佐々木大輔
佐々木大輔
freee株式会社 代表取締役
一橋大学商学部在学中に、インターネットリサーチ会社のインタースコープ(現マクロミル)でインターンを経験。大学卒業後、博報堂にてマーケティングプランナーとして従事。退職後、投資アナリスト、スタートアップ企業の最高財務責任者を経て、2008年、Googleに参画。日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括を担当。2012年、freee設立と同時に現職に就任。

起業に挑戦しやすい社会を作りたい

ークラウド会計ソフト freee(フリー)はどのようなサービスですか?

「中小企業に携わる全てのひとが、創造的な作業にだけフォーカスできるような世の中を作りたい」という想いでfreee(フリー)を提供しています。

その特徴は大きく2つあります。1つは「経理作業の圧倒的な簡易化」です。従来の会計ソフトは専門的な知識がないと操作が難しかったのですが、freee(フリー)はこれを圧倒的に簡易化し、誰でも簡単に使えるソフトにしました。

もう1つが「銀行やクレジットカードのウェブ明細を使った自動帳簿付け機能」です。昨今、オンラインバンキングが頻繁に使われるようになりましたが、設定さえしておけば定期的にウェブ明細を自動で読み込み、会計帳簿のフォーマットに変換するという機能です。請求書の発行や経費精算といった日常の経理業務を自動化することもできます。

このような体験を提供することで、会計周辺のバックオフィス業務全般を最適化することを目指しています。

2013年3月にサービスを開始して、約6カ月で1万社以上に導入していただきました。2年目を迎えた今年(2015年)は、前年と比較してユーザー数が急激に上昇し、2度目の確定申告期を迎えた3月には30万社を超えました。

また、今年、中小企業の業務の最適化という目標に向けたネクストステップとして、会社設立に必要な書類をオンライン上で作成できるサービス「会社設立 freee」も開始しました。

 

ーなぜ会計の分野に着目したのでしょうか?

freee(フリー)を始める前は、Googleで5年ほどアジア・パシフィック地域における中小企業のマーケティングの統括を担当し、各国のビジネスデータの分析を行っていました。

当時(2008年頃)、日本の中小企業のテクノロジーの活用度はとても低く、Googleは「中小企業が抱える問題をテクノロジーで解決すれば、彼らも大企業に匹敵するほどのパフォーマンスを生み出せるようになるのではないか」と考えていました。しかし、中小企業へのアプローチは難しいものでした。

あらゆる手を尽くしても中小企業のテクノロジー化は進まず、もっと彼らの背骨にあたるような部分を変えなければいけないと、そのとき強く感じました。

そんな思いではたらいていた中で、Googleの前にスタートアップでCFO(最高財務責任者)として勤めていた頃の経験を思い出しました。経理担当者と接する機会が多かったのですが、間近で彼らの仕事を見ていて「こんなに優秀なのに、情報を入力することだけにかなりの時間を費やしているのはもったいない」と感じていました。

会計や経理はあらゆるビジネスの中枢であるため、ここを簡易化させることができるテクノロジーならば中小企業にも浸透するのでは、と考えたのです。

とはいえ、私はその分野のプロフェッショナルでもなく、会計士や税理士の資格も持っていません。「なぜ会計ソフトを?」とよく聞かれますが、もし私が会計士として会計ソフトを使いこなしていたら、そのやり方に対して懐疑的な視点は生まれなかったと思います。

第三者の視点で会計や経理業務を見ていたからこそ、社会に広く共通する課題に気がつき、ユーザー目線でソフトの開発をすることができました。

佐々木さんはほかの社員と同じデスクで仕事をしています。そのため、ユーザーが抱える課題やサービスに関する率直なやりとりも生まれやすいそうです。
佐々木さんはほかの社員と同じデスクで仕事をしています。そのため、ユーザーが抱える課題やサービスに関する率直なやりとりも生まれやすいそうです。

日本のためにGoogleに入社

ーGoogleに入社した動機も「社会」の視点から芽生えたそうですね。

2007年頃は国産の検索エンジンが主流で「黒船のようなグーグルに国内の情報をすべて握られるのは危険」みたいな風潮があったんです。外資が参入することで、日本の伝統的な技術が盗まれてしまうかもしれない。日本人である私が入社することは身売りなのでは、と足踏みしていました。

しかし、親友に相談したところ「それは違う。もしこのタイミングで日本の情報がGoogleのプラットフォームに入り込んでいかないと、情報という分野で完全に日本が世界から孤立してしまう」と言われたんです。

そう指摘されたとき、学生時代に行ったヨーロッパ留学を思い出して、その意見がすごくしっくりときました。2002年にEU統合が行われ、国という概念が溶ける状況をまじまじと体感しました。国という概念は言語や法律が違うことでできあがったもの。しかし、いま自分が生きているのは地球で、本質的にはそこが重要なんだと思いました。

日本であるかは関係なく「世界」を見据えて働こう。そう考えたときにふに落ちたんです。

 

ー佐々木さんのように社会が抱える課題やリスクを自分ゴト化するには?

未来がこうなるといった未来予測的な話って、実はちまたによく出ている話なんですね。結局は、自分がそれを信じるか信じないか次第。

若い頃は私も、世の中が絶対にこうなると言うことに対して斜に構えていました。例えば、学生時代に大手IT企業でインターンをしたのですが、世の中では「インターネットが今後絶対来る」と言われていました。しかし私は、Googleを使って検索するのは一部の知識層だけだろうし、一般の人は使わないんじゃないかって思っていたんです。

Googleはテレビに絶対勝てないとさえ思った時期もあります。個人的にもググってなにか調べたいとも思えず、むしろ調べたいと思うきっかけを与えることの方が重要じゃないかと考えていました。

しかし、それは大きな間違いでした。いまとなっては面白い情報は全部インターネットに流れているし、実際にGoogleは世界一成功した検索エンジンになりました。

この経験を通して学んだのは、こうなると言われていることに対して斜に構えるのではなくて、むしろそれによってどんな問題が起きるかを建設的に考えて、その解決策を考える心構えが必要だということです。

これは先見の明がある、ないではなく「信じるか、信じないか」ということなんです。例えば「人工知能」と言われたら、結構すでに世の中でいろいろ言われているので、そうなんじゃないかということでとりあえず走ってみることが大事。まずはなんでも信じてみて、建設的に考えようとすることが大切です。

社会のリスクを解決したいという佐々木さんの思いにたくさんの仲間が集まっています。
社会のリスクを解決したいという佐々木さんの思いにたくさんの仲間が集まっています。

誰もがうまくいかないことに挑戦しないなら世の中は進歩しない

ー社会が抱える課題やリスクを解決することを次のキャリアパスにするためには?

マインドセットという面で、自信が必要不可欠になると思います。自分はなにかしらのインパクトを社会に与えられるという意識が無いと、世の中を変えるという発想は生まれません。freeeが生まれたのも、そうした問題意識と自分ならできるという自信があったからです。

自信を持てるようになるためには、自分にしかできないことを身につける必要があります。1つのことばかりを続けていると飽きがきて、新しいことをやりたいと思うかもしれません。そのときに「これまで培ってきたスキルを生かして、世の中をより良くするにはどうすればよいか?」と社会貢献に思考をシフトさせるんです。

私がそう考えるようになったのには、やはりGoogleで働いていたことが大きなきっかけになっていると思います。シリコンバレーには、Google を卒業して培った技術を異なる分野に持ち込んで社会の課題解決に取り組む、いわゆる「ex-Googler」と呼ばれるひとたちがたくさんいます。

彼らを見て、私もそんなカルチャーをさらに世の中に拡げたいと思うようになったんです。つまり、自分の頭でよく考えながら経験したこと、その結果得た知識や出会いは、後に自分にとって有意義な仕事やキャリアパスにつながってきますし、そうするうちに自分の人生において意味のある一貫した社会的なテーマを見つけることもできるでしょう。

 

ー佐々木さんのリスクに対する考え方を教えて下さい。

freee(フリー)を開発したばかりのときはよく、会計ソフトのような企業の根幹にあるものを変えるなんて絶対にうまくいかないと言われていたんです。たしかに前例がない挑戦でしたので、うまくいくという確信はありませんでした。

しかし、誰もがうまくいかないことに挑戦しないなら、世の中は変わりません。それに、しっかりとした目標を設定しているのであれば、失敗してもそれは学びになります。なにかに挑戦するときに、揺らがない目的を決めるのはとても重要です。一方で、目的をお金にしてしまうと失敗したときにお金を失うだけで学びが得られません。私にとっては、そのことの方がリスクです。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
打ち手が驚くほど変わる〜リスクを活かす仕事術
変化が激しい時代を楽しむためのリスクの捉え方に関するヒントをご紹介します。
https://mirai.doda.jp/theme/risk/workhacks/

[取材・文] 井上美穂

あなたの強み・弱みや能力、
適した働き方や企業風土などを、無料で診断します。
“あなたの可能性”と出会える
キャリアタイプ診断
キャリアタイプ診断
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
BOOK MARK

いいね!していただくと
最新記事をお届けします。

コメントを送る

関連する記事

連載一覧を見る

タグ

タグ一覧を見る