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INTERVIEW
離職率0%で売上5倍に。26歳、最年少事業部長が疲弊したチームを完全復活させた方法
INTERVIEW

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BOOK MARK

上から降ってきた無理な目標を達成するために、メンバー一人あたりの業務量は過多、労働時間は規定を超過し、仲間同士を気づかう余裕もなくなっていく…。

こうした疲弊した状況は、どの業界、どの会社でも起こりそうなもの。業界そのものの成長や変化のスピードが速く、それゆえ競争も激しく、各社が掲げる目標が高くなりがちなIT業界も、決して例外ではないでしょう。ガイアックス社のソーシャルメディアマーケティング事業部も、かつてはそうだったといいます。

ところが、2015年9月に同社最年少の26歳(当時)で管大輔さんが事業部長に就任すると、2年前まで約40%だった離職率は0%に。なおかつ売上は1年半で5倍まで伸びたといいます。目標に追われ、疲弊したチームを蘇らせるために管さんが取り組んだことを聞きました。

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

PROFILE

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔
管大輔
株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長
1989年生まれ、早稲田大学教育学部を卒業後、2013年に株式会社ガイアックスに入社。転職寸前に会社の課題と対策を本部長にぶつけたところ、それが採用され、26歳(当時)という同社史上最年少で事業部長に就任。部の改革に取り組み、就任当時約40%だった離職率は0%、売上は5倍にまで伸長。「3年で売上10倍」の目標達成に向けて邁進中

「3年で売上10倍」数字を掲げればメンバーはついてくると思ったが…

―管さんが事業部長に就任した当時、ソーシャルメディア事業部はどういう状況にあったのでしょうか?

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

前体制の一番のミッションはとにかく利益を出すことに置かれていました。うちの仕事の性質上、利益率をよくしようと思うと、一人あたりの案件数をいかに増やすかという発想になります。

すると当然、一人ひとりの負荷は増え、終電帰りが当たり前の状態に。でも利益を出さなければならないから給料はそんなに上がらず、メンバーは疲弊し、離職率が38%と高くなってしまっていました。

離職が相次ぐと組織にスキルが蓄積されないので、お客さまに対しても高い価値を提供し続けられなくなってしまいます。今はまだ良くても、数年先に利益を出し続けられるかは厳しいと思える状況でした。

―そんななか、管さんが事業部長に就任することになったのはなぜですか?

僕は新卒で今の部署に入り、最年少ながら部署内でのキャリアは一番長かったのですが、SNSという市場の伸びを考えると、会社の現状には強い危機感を持っていました。

実は、当時の僕はすでに転職を考えていて、実際に内定をもらっている会社もありました。なので「これで最後。失うものもない」と思って、常々感じていた部署の課題やその対策をすべて、事業部長のさらに上にいる本部長に直接ぶつけたんです。

そうしたら本部長は意外なことに「確かにそうかもね」という反応で。部署の方針が変わるタイミングで「じゃあお前がやってみろ」みたいな感じになったんです。

―部署の方針はどんなふうに変わったんですか?

利益の確保がミッションだった前体制は、どちらかというと原価を削るという発想に目が向いていましたが、新体制では利益ではなく売上をとにかく伸ばすという方針に変わりました。新規のお客さまをどんどん取りに行って、部署も大きくして、もっと成長角度を上げるということです。

僕自身、今あるリソースを使えばすぐにでも新しく提供できるサービスがあることには薄々気づいていましたし、営業担当としてお客さまと日々会う中でも、ここを攻めればもっと伸ばせるはずという勝算がありました。それで「3年で売上を10倍にしてみせます!できます!」って言っちゃったんです。まさか本当に通るとは思わなかったので内心焦りましたが(笑)

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

―売上アップの目標を掲げて最初に取り組んだのが労働環境の改善だったのはなぜですか?

ぶっちゃけて言えば、まず労働環境の改善に取り組んだのは、メンバーの不満がすごかったからでした。8月に就任することが決まり、正式に就任する前に「3年で10倍を目指す」という目標をみんなの前で話すことになったんですが、まあ反発がすごかったです。「今でさえこんなに大変なのに、なんで10倍も働かなきゃいけないんだ!」「管さんが勝手に決めた目標になんで付き合わなきゃいけないの?」って。

なので、一旦その不満を吸収するためにも、労働環境の改善に取り組まないわけにはいかないという状況だったんです。私自身マネジメントの経験は皆無でしたし、個人的には営業時代から数字を追いかけるのが大好きだったので、「3年で10倍」という数字を掲げさえすれば、みんなついてきてくれるものだと思い込んでいました。そうじゃないんだなと気づけたことが最初の発見でしたね。

売上アップ目的で取り組んだ労働環境の改善が信頼の文化を生んだ

―そういう反発を受けて管さんとしてはすぐに現実を受け入れられたんですか?

メンバーから「なぜ目標を追わなきゃいけないの?」と問い詰められて、僕自身、そこで初めて「なぜ仕事をしなければいけないのか?」ということに向き合わなければならなくなったんです。言われてみれば、確かになぜ僕らは10倍の売上を目指さなければならないのか。もっと言うと、僕自身なぜ仕事をしているのか。仕事の目的とはなんなのか。そもそも生きている目的は何か…。

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

そう考えていってたどり着いたのが「人は幸せになるために生きているんだな」ということでした。数字を追うことがすべてだった僕の価値観がここでガラッと変わったことが、その後に向けて非常に大きな出来事でした。

―ちょっと唐突に変わりすぎのような気もするのですが?

そうですよね(笑)きっかけは色々あるんですが、就任が発表されて2カ月はメンバーから全然受け入れられず、そこで内省したのが大きかったというのは本当です。10月からは完全に切り替わって、実際に施策を打ち始めていました。

その間には、尊敬する先輩社員2人が「今、最先端の経営の仕方はハピネス経営だ」みたいな話をしていたのをたまたま聞いて、紹介していただいた書籍や記事を読んだりもしました。最初はかじった程度だったんですけど、ここを真剣に考えないとマネジメントはできないだろうという思いがありました。

自分にはそれまでマネジメント経験が一切なく、変な自信がなかったからこそ、受け入れやすかったというのもあったかもしれません。

―具体的にはどういうことにどんな順番で手をつけていったんですか?

本当にパツパツの状態だったので、まずはメンバーの手を空かせることが重要と考えました。3年で10倍という非連続的な成長を成し遂げるには、それまでのやり方を少しずつ改善するというのでは無理。なおかつ、僕からのトップダウンだけではダメだとも思っていたので、いかにみんなが主体的に取り組んでくれて、アイデアを出しやすい環境を作れるかがカギだと考えていました。それで最初に取り組んだのが、クラウドソーシングとリモートワークの導入でした。

クラウドソーシングを導入したのは、僕らはやるべき仕事に集中して、それ以外の領域についてはそれぞれプロがいるので、そういう方におまかせした方がいいだろうという考えでした。そうやって業務量を減らしたことで、空いたリソースは新たに取り組んだ周辺サービスにまわすことができました。結果として、新しく取り組んだサービスが期待通りの伸びを見せてくれたことが、全体として順調に目標を達成していく大きな要因にもなりました。

リモートワークで使用しているグループウェアの画面
リモートワークで使用しているグループウェアの画面

リモートワークに関しては、うちには子どもがいる人もいたので、そういう人にとっても働きやすい環境作りをしていかないと離職率は高いままだろうと思い、導入しました。

―それまでなかったリモートワークの文化を浸透させるのに苦労はありませんでしたか?

僕ら上のメンバーが率先して実践することで引っ張ろうと思ったのですが、「今日からリモートOK」となってからも、本当にみんな毎日ちゃんと会社にきていました(笑)しかし来たくて来ているというよりは不安そうにしているのが伺えました。

そこでオフィスの座席数を3分の1に減らして、半ば無理やりに「大丈夫だよ」というメッセージを発信しました。でも、会社に来るのがダメというのではなくて、あくまで自分が仕事に本当に集中できる環境を選んでほしいというふうに、伝え方には気をつけていました。

会議の仕方一つとっても対面でやるのとは勝手が違うし、実際にやってみて難しさを感じたのは事実です。でもそれ以上に個人が受けたメリットのほうが大きかったと感じています。

―そのメリットについて詳しく教えてください。

例えば、以前はメッセージを送ってもなかなかすぐに返ってこないメンバーもいたんですけど、そうすると仲間からサボっていると思われちゃうから、だんだんとレスが早くなってくる。

あとは助け合いというか、例えば印刷物とかって会社に来てやらなければならない仕事なので、たまたま会社に来ているメンバーにお願いするということが増えて、そうすると逆に自分が会社にいるときは快くそれを引き受けるようになるとか。

以前は上司の目をいかに誤魔化すかとか、上司に怒られないように朝ちゃんと出社しようとかだったのが、上司ではなく、メンバー・仲間の信頼を裏切らないようにしようという意識に変わっていった気がします。

やっていて気づいたのは、信頼関係で仕事をするのが一番うまくいく、いい循環を生むということです。会社のためとか上司のためとかで働くよりも、今いるメンバーと一緒にいい仕事がしたいから働くというほうが本質的だと思ったんです

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

そういう思いのほうがきっと真面目に取り組みやすくなるだろうし、主体的に他のメンバーを助けたりという動きにもつながりやすいんだろうなと。そこは意識して作ってきた部分でもあります。

―こうした労働環境の改善は、パフォーマンスにどうつながっていったんですか?

施策が直接的に数字につながったと言うのは難しいと思うんですが、実際に離職率でいうと、2015年当時38%だったのが、昨年は8%、今年は0%と改善しています。メンバーでいうと2年前が9人だったのが今は25人まで増えました。リファラルで採用できているので、浮いた採用費を給料やボーナス、福利厚生に回せている側面もあります。

以前は社内で「あそこの部署だけにはいきたくない」と言われていたのが、昨年は2人、今年は4人が異動を希望して実際に入って来てくれました。目標としている売上の方も、この1年半で5倍と着実に伸びています。

幸福の形はみんな違う。きめ細やかなコミュニケーションがカギ

―リモートワークやクラウドソーシングの導入の他に意識して取り組んでいることはありますか?

うちは1on1のミーティングをすごく重視していて、今でも僕は部署の全メンバーと月2回、30分のミーティングをしています。その時間は直近の案件とか業務の話とかではなくて、今働きづらいことはないかとか、自分の志向するキャリア的に今の仕事が合ってるかとか、その他諸々業務に関係ないこととかを聞く時間にしています。

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

そういう会話を通していろいろな施策のアイデアを思いつくこともあります。例えば、今はうちの部署だけがオフィス1階にあるレストランで300円でランチが食べられるのですが、これも1on1の中から生まれたアイデアです。五反田にあった前のオフィス環境から比べると、現在の永田町オフィスの周辺には安くランチを食べられるお店が極端に少ない。何人かのメンバーからそういう声が寄せられたことで、これはどうにかしなきゃと気づくことができたんです。

―仕事以外のことも含めて全人格的にサポートするという発想は自然と生まれたものですか? それともどこかで教わったノウハウなんですか?

ノウハウを学んだということはあまりないかなと思います。先ほどお話ししたように、誰しも幸福が大事だということは学んだんですけど、同時に幸福の形って人それぞれじゃないですか。だとすると、それを知らないとちゃんとコミュニケーションは取れないし、組織を引っ張ることができないと思ったんです。

そのためには1on1で時間をもらって、その人の幸せに本当に近づいているのかとか、今の仕事がその人にとってどういう位置づけなのかというのを、常にキャッチアップしたいと思いました。最初は月1時間でやってみたり、最近は隔週で30分に分けてみたりと、色々と試しながらですが、そういう時間を一貫して大事にしています。

―そういうふうに接すると年上のメンバーの方もみなさんちゃんと話してくれるんですか?

いや個人差はあって、中には全然話してくれないメンバーもいます。せっかく1時間とってるのに15分で終わっちゃうとか(笑)まあそれでもいいと伝えてあるんですけど。

ただ、このレビューではあまり意図的に何かを聞き出すということをしないようには気をつけています。そうしたら意味がないというか、みんな話してくれないので。それに何より、やっている僕自身もヒアリングシートを持って一個一個聞いていくというのでは楽しくないですからね。なので、なんの意味もない話だけすることもありますし、僕が自分の彼女の話を一方的にしただけで1時間終わったこともあります(笑)

―コミュニケーションを非常に大事にしているんですね。

はい。前体制のころって、報酬に対する不満が多かったんですよね。なぜそうなるのかと考えて、僕が重要だと思ったのがコミュニケーションでした。というのも、自分のことをちゃんと見てくれていないと思ってしまうと、その人に評価されること自体が嫌になって、いくら報酬をもらおうが納得なんていかなくなっちゃうんですよね。今は助け合いの文化ができてきているとお話ししましたけど、逆に信頼関係のない中では、無茶なお願いって絶対通用しない。

当時はルールや目標がどうという以前に、コミュニケーションが絶対的に足りていなかったのだと思っています。だから、さっきの1on1にしてもそうですし、毎月1回食事会をやったりして、部署全体のコミュニケーションが活発になるようにというのは心がけています。

もちろんそうやって会話を重ねる中では、お互いの方向性が違うということが判明するケースもあるかと思うんですけど、それはそれで大事なことだと思っていて。

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

一番良くないのは、なんとなく合っていないとは思いながらも盲目的に働き続けること。これは幸福の話にもつながるんです。やっぱりメンバーの中には「あなたの幸せってなんですか?」と聞かれても答えられない人っているんですけど、それでも向き合い続けることが大事なのかなと思います。

彼らが本当に仕事だけになってしまって、他に考える余裕がなく、3年経って振り返ったときに「あの3年はなんだったんだ」となってしまうのが僕としても嫌なんです。なので、そうやって自分と向き合い続ける時間を組織として作るということこそが、部長としての僕の役目なんじゃないかと思っています。

育んだ信頼の文化を組織外にも広げられないか

―理想的な職場のように聞こえますが、課題はないですか?

いえ、もちろんあります。この2年で、確かに組織の中での助け合いというか、信頼をした上でいい意味でのおせっかいをするような文化というのは結構できてきているんです。今後はそれをもっとお客さまに対しても出していけるようになるのが次のフェーズかなと思っていて。

現状は正直、「働きやすい環境」というのに目が行き過ぎています。「この環境で働けるのが楽しくて」というのはそれはそれでいいんですけど、元々の目的は、お客さまに最大限の価値を提供するために、メンバーのストレスを減らして、そっちに向かえるようにしたいということでした。そこはまだ成し遂げられていないと思っています。

来年以降はお客さまとのコミュニケーションをいかに高めるかとか、どうやってお客さまにいい意味でのおせっかいをできるかとか、そういうところを突き詰めていって、お客さまから「ガイアックスさんと仕事ができてすごく楽しいです」とか「ずっと付き合っていきたいです」という言葉をもらえるようになっていけたらと思っています。

―ここまでも売上は伸びているけれども、目標の達成に向かうためにはもう一段階変わらないといけない?

そうですね。ここまではテクニックというか、「こういう商材を作れば売れる」という意味では、誰でも伸ばせるような部分だったと思います。でも、ここからは個々人のパフォーマンスがもっと上がらないと、これ以上の成長の速度は望めないと思っているんです。

これまでは一体感を作れていたからこそ、チームで施策をちゃんとやり切るということができてきたんですけど、これからは施策を全員が生み出していって、個人が主体性を持って「これをやるべき」と言える組織にしていかないといけないと思っています。

―そのための道筋は見えていますか?

まさに今インプット中なんですが、最近話題のホラクラシー型の組織のような、非管理型で、メンバーの自主性を重んじた取り組みが大事かなと思っています。今はチームがあって、マネジャーがいてという管理型の組織形態なんですけど、それを徐々に崩していこうかと。メンバーそれぞれが自分で今の組織やお客さま、トレンドを見て、やるべきプロジェクトを立ち上げて、そこに仲間を募って進めていくとか。

案件に関しても、今はアサイン制なんですけど、挙手制でやれる組織形態にもっと変えていきたいと思っています。今まではトップダウンの色が強かったんですけど、より情報の共有をすることによって、メンバーが意見を出してくれるような組織にしないといけないというのが、僕に課された直近の課題ですね。

株式会社ガイアックス ソーシャルメディアマーケティング事業部長 管大輔

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[取材・文] 鈴木陸夫、岡徳之

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