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INTERVIEW
日本人初のGoogleマインドフルネスプログラム認定講師が語る「心の調え方」
INTERVIEW

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BOOK MARK

SNSやテクノロジーによって複雑化した現代社会において、「マインドフルネス」の有用性が注目されています。GoogleやIntel、Adobeなど数々の企業が独自にプログラムを導入し、また多くの研究によってストレス対処法としても実証されつつあります。

そこで、日本人初のGoogle社・マインドフルネスプログラム認定講師として活動されている清水ハン栄治さんに、マインドフルネスがもたらすメリットや実践法、そしてこれからのビジネスパーソンに必要なスキルについて伺いました。

Cultivating Emotional Balance(CEB)認定講師/Google社発のマインドフルネスプログラムSearch Inside Yourself(SIY)認定講師 清水ハン栄治

PROFILE

Cultivating Emotional Balance(CEB)認定講師/Google社発のマインドフルネスプログラムSearch Inside Yourself(SIY)認定講師 清水ハン栄治
清水ハン栄治
Cultivating Emotional Balance(CEB)認定講師/Google社発のマインドフルネスプログラムSearch Inside Yourself(SIY)認定講師
横浜市出身。University of MiamiにてMBAを取得後、アメリカでの起業を経て帰国。サン・マイクロシステムズ(現・オラクル)の最年少事業部長としてメディア向けソリューション事業を担当。その後リクルートにてR25、じゃらんなどメディア事業に従事する一方、社員モチベーションアップのプログラム策定を指揮し、年間最優秀社員賞を受賞。独立後、渡米。伝記漫画シリーズの出版やドキュメンタリー映画『happy – しあわせを探すあなたへ』をプロデュース。現在は幸福度に関するプログラム「HAPPINESSトレーニング」を開発し、Google社、スウェーデン・五輪チーム、各種教育機関など国内外に提供。TEDや大学などでの講演多数

清水さんのWebサイト「HAPPINESSトレーニング」

気軽にマインドフルネスを学べるキャンプ「THE LIFE SCHOOL」

ストレスフルな状況下でハイパフォーマンスを生みだすには

ー近年マインドフルネスが注目されているのはどういった背景があるのでしょうか。

マインドフルネスとは端的に言えば、心を調えるスキルのこと。人生において、仕事だけでもいろんなことが起こりますよね。予算を達成できず、上司には怒鳴られ・・・ 悲しみ、怒り、いらだちといった日常の中で、成果を出していかなくてはなりません。そこで、心を調えるスキルが重要になってくるんです。

例えば、Googleともなると元NASAやMIT出身者など、世界中から優秀な人材が集まっています。そういった人びとでさえ、さまざまな要因で十分にパフォーマンスを発揮できなかったりする。そこでGoogle社107番目の社員であるエンジニアのチャディー・メン・タンが、脳医学や心理学などさまざまな分野の先生に研究を依頼したところ、禅や瞑想に行き着いたんです。

それをもとに開発したのが「サーチ・インサイド・ユアセルフ(Search Inside Yourself=SIY)」というプログラムで、その重要な要素の一つがマインドフルネスでした。それが社内でも評価され、一番人気のある人材開発プログラムとなり、2年前からは社外的にも提供されるようになりました。

僕自身、以前は世間で一流と呼ばれるような企業に勤め、成果を出して、いい車に乗って、端から見れば ”勝ち組” でした。けれども心の平穏がなかったんです。それで一念発起して独立して、旅に出ました。そこでわかったのは、仕事や人生の充実感を得るためには心を調えることが大切で、それにはさまざまな方法があるということです。

 

ー現代人はさまざまなタスクを抱え、ストレスにさらされながら、いわば平常じゃない状態でパフォーマンスを出すことがデフォルトとして求められていますよね。

はい。現代では「マルチタスキングができる人は能力が高い」と見なされていますが、心理学的にはどうしてもタスクからタスクへ移動する間に「スラックタイム」と呼ばれるギャップが生じるんです。それに一つの物事に取りかかって、トップスピードに入るまでには時間がかかりますし、総合的に考えれば、パフォーマンスが低いと言わざるを得ません。

一つのことに集中して作業したほうがクオリティも高いし、たくさんのものをアウトプットできるでしょう。ただ、現実的には「16時からのプレゼンに備えて、資料をダウンロードして、パワポをチェックして・・・」と、いろいろマルチに考え、心のスイッチを切り替える機会はいくらでもあります。

ビジネスにおいて、心のスイッチの切り方を知らない同僚や上司ほど困った人はいませんよね。考えなしに叱咤激励するばかりだったり、忙しいことが美徳だと考えていたり・・・ けれども今の時代、「イケイケドンドン」をもてはやすより、アイデアを考えたり、冷静に判断したりできる心が必要なんじゃないかな。

 

ー冷静さを取り戻し、判断するために必要なのがマインドフルネスということなんですね。

アメリカの軍事用語で ”VUCA(=Volatility, uncertainty, complexity and ambiguity)WORLD” という言葉があるんですけど、不安定で不確実、複雑で混沌とした世界という意味なんです。以前の戦争なら、敵と味方に別れていて、単純でわかりやすかった。けれども現代においては、テロに代表されるように、いつどこで何が起こるか、混沌としていてわからない状態。これは、ビジネスの世界でもそうなんですよ。

異業種が参入したり、新しいテクノロジーによって業界縮図がひっくり返ったり・・・ どうなるのかわからない。そうすると、臨機応変にどんな状況にも対応できることが必要なんです。そのためにはやはりマインドフルネスによって「エモーショナル・インテリジェンス(EQ=自らを理解し、適切に表現することで、対人関係を円滑に行う能力)」を高めるといった、基本的な人間力が求められてくるのです。

研修風景、後ろ姿が清水さん
研修風景、後ろ姿が清水さん

「今の自分」に意識を置くことで心の平穏を作り出す

ーマインドフルネスを取り入れるにはどんな方法があるのでしょうか。

難しく捉えられがちだけど、まずは一つのことに集中して、そこにずっと意識を留めておくということ。一番簡単なのは、鼻呼吸を意識的に行うことです。呼吸をすると、温度や風圧、においを感じますよね? 遠くで音がするかもしれない。少し意識するだけで、いろいろと注意が払えます。そこで一番顕著に感じられることに、アンカー(船の碇)を置くイメージで、スッとそこに意識を集中してみる。

すると、人はかならず雑念が出てくるもの。「隣の席で会話しはじめたな」「そういえば、お腹が空いたな」とか。けれども、「今は呼吸の時間だ」と戻す。そうやって愚直に意識の往来を繰り返すと、ダンベルを上げて筋トレするのと同じで、意識にもスナップ力がついてくるんです。雑念が生まれても、あまり遠くにいかないうちに、すぐ戻せるようになる。そうすると、自分が意図した瞬間に集中でき、効率も上がるんです。

人は過去を後悔し、未来を憂うものだけど、「今」の状態に戻ると、心が安定する。それが「心を調える」ということ。訓練することで、その状態をオンデマンドに作り出すことが可能です。

 

ー今の自分の状態を適切に把握することが、心の平穏につながるんですね。

頭やマインドは自由に過去と未来を行ったり来たりできるけど、からだはかならず現在にある。そこにフレームを合わせることで安定するんです。

マサチューセッツ大学のマインドフルネスセンターの創設所長であるジョン・カバット・ジン博士が問いかけていたのですが、「シャワーを浴びるとき、一体どれだけの人がシャワー室にいますか?」と。

からだはシャワー室にあっても、頭は明日の会議や仕事の予定・・・ しかもたいていはネガティブバイアスがかかっていたりする。けれども今、その瞬間にシャワーのことだけを感じればいい。水の弾ける音、せっけんの香り・・・ すると未来への心配、過去の後悔から解き放たれる。その安定からは、幸福感や感謝の気持ち、慈悲の心、集中力、そしてクリエイティビティーが生まれます。

Cultivating Emotional Balance(CEB)認定講師/Google社発のマインドフルネスプログラムSearch Inside Yourself(SIY)認定講師 清水ハン栄治

ニュートラルな思考からクリエイティビティーが生まれる

人間の考え方は、パターンや心のクセでできている。そして、行動パターンや思考パターンは経験によって形成されています。物事を考えるとき、常に使っている思考回路を利用すると、普段通りのクリエイティビティーしか出てきません。けれども、いったんクセを取って、ニュートラルにすると、思いもよらないようなアイデアが出てくる。

脳医学で「ニューロ・プラスティシティ」という言葉があるのですが、脳神経(ニューロ)はプラスチックのように(プラスティシティ)造形できるということ。ある思考パターンを繰り返していくと、畑の畝(うね)のように、溝が太くなっていく。けれどもあえてその思考パターンを使わないようにすると、干上がって、別のところから水が流れるようになってくる。そうやって脳の形状が変わってくると、機能や考え方も変わってくるんです。

 

ーそうすると仕事のやり方や向き合い方も変わってくるのでしょうか。

そうですね。今のビジネスパーソンは研修などでいろいろ学んでいるけれど、それはスマホにいろんなアプリをダウンロードしている状態ですよね。けれどもツールボックスを見てみると同じようなアプリが並んでいて、すべて使い切れていない。

今、必要なのは、OSのアップグレードだと思うんです。マインドフルネスを体得すると、クライアントからの怒りの電話や、上司からの叱咤の最中でも、ストレスフルにならずに集中できるようになる。決して相手を無視するわけではなく、ただ、いったん受けとめる状態をつくると、適切に受け答えしたり、解決策を考えられるようになるんです。感情をぶつけられても、それにおぼれることなく、冷静に判断する力がビジネスリーダーには求められていると思います。

 

ーこれからのビジネスリーダーに必要なのが、マインドフルネスによってハイパフォーマンスを自ら生みだせる能力ということですね。

マインドフルネスは、ともするとスピリチュアルなものと誤解されがちだけれど、人間の長い歴史の中で積み重ねられ、検証されてきた叡智なのでとても有効性があると思います。人間の根源的な話であり、時代が求めていること。

そもそもマインドフルネスの元となっている禅の概念は東洋の文化ですよね。たまたま逆輸入される形で注目されていますが、「襟元を正す」と言うように、何かをはじめる前に姿勢を整えることが日本では当たりまえだったはず。「グローバル人材を育成する」とよく言われていますが、プレゼンで自分をよく見せるような小手先の技術ではなく、本来日本人に脈々と受け継がれている日本人らしさを再構築することによって、真にグローバルに通用する人材が生まれるのではないかと考えています。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
ハイパフォーマーだけが実践する、本当のマインドフルネスの活かし方
マインドフルネスのフレームと具体的なアクションをご紹介します。
https://mirai.doda.jp/theme/wellness/mindfulness/

 

[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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