あの女性が職場で輝いている理由 キャリア志向に合わせたマネジメント術 小紫恵美子さん

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女性活躍推進法も成立し、部下にも女性がいるし、何かしなくてはならないことはわかっている。でもどうすれば本当に女性の活躍推進に結び付くのか? 仕事をさせようとすれば嫌がることもあるし、逆に配慮をしたつもりが、モチベーションが下がってしまうこともあるーー読者のみなさんもそんな風に悩むお一人かもしれません。

みなさんが思う活躍してほしい “女性” とは、どのようなひとたちのことを指しているか、一度イメージしてみてください。すると、女性にもさまざまなタイプがいることにお気づきかと思います。

女性を “女性” とひとくくりにしない。そのことが一人ひとりの女性の力を最大限に発揮するために必要な最初の一歩です。

企業の女性活躍推進に詳しい経営コンサルタントの小紫恵美子さんはこう語ります。それでは、その ”女性” をどのように捉えなおせばよいのか。そして、どのようにコミュニケーションをしていけばよいのか。具体的に上司や家族が押さえておくとよいコツを中心に、お話を伺いました。

PROFILE

株式会社チャレンジ&グロー 代表取締役 小紫恵美子
小紫恵美子
株式会社チャレンジ&グロー 代表取締役
経営コンサルタント。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、退職。10年間の “ブランク” を経て、OfficeCOMを開業。現在は中小企業への経営支援や企業研修、執筆活動を行う。最近は、自身の大企業勤務→専業主婦→二児の子育て中に独立という経験や実績を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている

”女性” とひとくくりにしていませんか?

ー企業が抱える女性の活躍推進に関する課題を教えてください。

女性の職業生活における活躍を推進するための法律「女性活躍推進法」が制定されたことで、平成28年4月1日から労働者が301人以上の企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定を義務付けられることになります。しかし、実際のところ企業の担当者からは、「女性活躍推進というけれど、何をどこから手を付けたらいいのかわからない」という声がよく聞かれます。そして、そのような方々と話をしていると、「 “女性” をひとくくりにされているのではないか?」と思うことがたびたびあるのです。

 

ー「 “女性” をひとくくりにする」とはどういうことでしょうか?

例えば、「女性は子どもを産んだらあまりタフな仕事はまかせられない」といった思い込みもその一つですね。もちろん、それは女性に対する “配慮” なのですが、なかには「子どもを産んでもなるべく早く復帰して元に近い形ではたらきたい、キャリアを積みたい」と考えているひともいます。そういったひとにとってその ”配慮” は、「間違った配慮」になっているのですよね。つまり、「女性だったらこうだろう」とひとくくりにして見ているひとが多いということなのです。

 

ーなぜ、そのようなことが企業において起こっているのでしょうか?

「制度を作れば女性は働きやすくなるはず」という多くの男性の考え方と、「そうではない。女性は一人ひとり違うのだから」という女性の考え方とがうまく噛み合っていないからかもしれません。よくよく考えてみれば、男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年のこと。あれから約30年が経つのに、企業の女性管理職はまだ1割ほどしかいない。つまり、制度を整えるだけではダメだということは明白なのです。

産休や育休、時短勤務といった仕事と育児の「両立」を支援する制度は整ってきているけれど、子どもを産んでからも仕事を頑張りたいと考える女性の「キャリア」の支援がうまくいっていないのだと思います。

はたらく女性の4タイプ

ーひとくくりにはできない「女性」をどのように捉えればよいでしょうか?

「女性の4類型」という考え方を提唱しています。「能力」と「仕事をセーブする要因」の2軸を使って、「キャリア追求型」「ワークライフ・バランス(WLB)考慮キャリア型」「定型業務型」「新人型」の4つに女性を分けて捉えてみようというアプローチです。

みなさん、もしくは、みなさんと同じ職場にいらっしゃる女性の方々はどれに当てはまるでしょうか?

「女性の4類型」(株式会社チャレンジ&グロー作成)
「女性の4類型」(株式会社チャレンジ&グロー作成)

「1. キャリア追求型」は、ハイパフォーマーであるかもしくはそれを目指しており、また出産や子育てなどはたらき方を制約する要因がないタイプを指します。いわゆる、「バリキャリ女性」と呼ばれる方々です。

「2. ワークライフ・バランス(WLB)考慮キャリア型」は、家事や子育て、介護などはたらき方に影響をおよぼす時間的、空間的な制約があるものの、ルーチンワーク以上の価値を生み出す仕事をすることを望んでいるタイプです。

「3. 定型業務型」は、家事や子育て、介護などはたらく時間を制約する要因があり、ルーチンワーク的な仕事をこなすことを望んでいるタイプ。実は、企業の方から特にご相談を受けることが多いのは、このタイプの方々についてです。

「4. 新人型」は、はたらく時間を制約する要因がなく、いまは自分のスキルを伸ばすためにルーチンワークに励んでいるタイプ。新入社員など、若くて入社間もない方々がこれに当てはまります。

タイプ別の適切なコミュニケーション

ーそれぞれのタイプの女性に対して、上司や同僚はどのように接するべきでしょうか?

「1. キャリア追求型」の女性に対しては、男性社員と同様に働いてもらえばいいということではなく、彼女が5〜10年後にどうなっていたいか、どのような仕事をしたいかを聞いてサポートすること。そして、それらを実現するために仕事や人脈を提供するといったスポンサーシップが大切でしょう。

「2. ワークライフ・バランス(WLB)考慮キャリア型」の女性に対しては、さまざまな制度を活用しながら働くことを支援し、彼女たちの制約を緩和するだけでなく、キャリア追求型と同じように先を見せることが大切です。ただし「1. キャリア追求型」よりも、「少し先」を見せることが重要。「いまは子どもが1歳で手がかかるけど、子どもが3歳になって育児にも慣れ、いまより少し余裕ができたときに自分がどのよう仕事をしていたいか」をイメージさせてあげましょう。

「3. 定型業務型」の女性のなかには、いまの仕事で満足してしまっていて、先のことをあまり考えられていないひともいます。まず、ご自身も定年延長などで、この先65歳、私たちの世代であれば70歳まで働くかもしれないときに、その仕事を続けることで本当に満足かという「自分ゴト」としての将来をイメージしてもらいましょう。この先2050年くらいには生産年齢人口(15歳から64歳の人口)の割合が総人口のおよそ半分になると言われており、またルーチンワークの分野によっては今後ロボットや人工知能に取って代わられる可能性が高いとも言われています。だからこそ、会社のために自分は何ができるかを考えてもらえるような声がけをすることが必要です。ゆくゆくは、「2. ワークライフ・バランス(WLB)考慮キャリア型」へシフトすることを視野に入れて、そのひとの適性をふまえ新しい仕事を提案してあげることが大切です。

「4. 新人型」の女性には、ロールモデルを示してあげることが効果的です。でも、一人で完璧なロールモデルなんて本当はいないし、いなくていいのです。「仕事においてはこのひと、プライベートにおいてはこのひと」と、断片的なロールモデルを設定してあげてもよいでしょう。女性にはとても真面目なひとが多いので、ものすごく頭の中でシミュレーションをする。「仕事も子育ても、そして妻としてもきちんとしないと」と思ってしまいがち。そんなときにいろんなロールモデルがいると、先々をイメージすることができて、より働きやすくなるのです。

 

ーひとくくりにしていた「女性」に対する想像力が高まりそうです。

この女性の4類型という考え方には、「注意点」があります。それは、「女性はずっと同じタイプで固定するわけではなく、ライフステージの中で異なるタイプを行ったり来たりする」ということです。「1. キャリア追求型」だった女性が、結婚や出産を経て、「3. 定型業務型」へと移行することもあります。アドバイスやアプローチも臨機応変にする必要があるのです。

そのためにはやはり、基本的なことではありますが、「女性社員と会話する時間をしっかりと確保する」、これが大切でしょう。繰り返しになりますが、この4類型を提唱している背景には、男性の多くがもっている女性に対する「思い込み」があります。しかし自分の思い込みというものは、自分ではなかなか気づくことができません。だから、会話が大切なのです。

実は男性にも当てはまる

ーあらためて、「女性」との対話が大切だと感じました。

ちょっと待ってください。実はこの4類型、「男性」にも当てはまるのですよ

 

ーどういうことでしょうか?

特に独身男性の場合なのですが、「親の介護」という切実な問題があります。「保育園のお迎えがあるので帰ります」とワーキングマザーの女性が言うように、「親がデイサービスから戻ってくるので帰ります」と男性社員が言わないといけなくなる日がやってくるということです。実際に、管理職に就くくらいの年齢層の男性社員の方々のなかにも、介護を理由に離職するひとも増えています。ですから、男性の方々はワーキングマザーの問題を他人事ではなく、自分ゴトとして捉えるべきなのです

 

ーこれからは男女問わず、さまざまな事情を抱えた社員が職場に増えますね。

だからこそ、仕事は社員ではなく、チームですることを意識すべきです。たとえば、チーム全員がお互いにどのような仕事をしているかを把握し、一つの仕事を複数のメンバーで対応できるように日頃からしておくことです。こうすることで、子育てや介護で、あるいはご本人の病気治療で急に出社できなくなった場合であっても、仕事がとまってしまう、ということは防ぐことができます。「限られたリソースの中でいかに付加価値を出して会社の利益を確保するか」を、ビジネスパーソン全員が考えるべきなのです。

 

ー最後に、夫など「パートナー」として女性をサポートするためには?

なによりも、夫婦でよく話し合うことが大事です。仕事の相談などを聞いてあげるのもよいでしょう。その際には、女性には解決策をズバッと伝えるよりも、話を聞いて共感してあげることを意識しましょう。

また、女性が子育てから復帰することを望む場合、できる範囲でいいので、育休をとっているときから二人とも短時間で働く練習をして、一緒に復帰後のシミュレーションをすることをお薦めします。少しずつ慣らしておけば、女性もスムーズに復帰することができるでしょう。

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[取材・文] 大井あゆみ、岡徳之

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