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INTERVIEW
優秀な人材を巻き込み続けるヘルステックベンチャーFiNCの求心力の正体
INTERVIEW

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BOOK MARK

モバイルヘルスに特化したテクノロジーベンチャーの「FiNC」が立ち上がったのは、いまから4年前。現在は100人強の従業員を抱え、取材翌日には手狭になったオフィスを移転するほどに急成長していました。

同社は、「人材」の面から注目を集めています。事業の成長性から投資を呼び込んでいるだけでなく、次々と名だたる人物がサポートに携わるからです。

2014年7月に入社した、乗松文夫さんもその一人。日本興業銀行からキャリアをスタートさせ、みずほ銀行ほか数々の大企業でマネジメントを担ってきました。

かつては黒塗りのクルマで移動していた乗松さんが、新興ベンチャーへの転身を決めた理由。それは、息子ほどに歳の離れた溝口勇児社長の人物像に惚れ込んだからです。

彼の会社がどうして人々を “巻き込んでいく“ のでしょうか。巻き込まれた側の視点から、同社の乗松文夫副社長(元みずほ銀行常務)に明かしていただきます。

FiNC代表取締役副社長CAO(チーフ・アドミニストレート・オフィサー)/CWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)乗松文夫

PROFILE

FiNC代表取締役副社長CAO(チーフ・アドミニストレート・オフィサー)/CWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)乗松文夫
乗松文夫
FiNC代表取締役副社長CAO(チーフ・アドミニストレート・オフィサー)/CWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)
1949年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。73年日本興業銀行入社。審査部、ニューヨーク支店、ボンドチーフディーラー、執行役員個人営業推進部長など多くの部門を経験し、みずほフィナンシャルグループの発足とともにみずほ銀行営業部門担当常務。2003年協和発酵工業に転じ、協和発酵フーズ社長、協和発酵キリン常務を歴任。09年中堅総合商社ミヤコ化学社長、12年社会システムデザイン副社長に就任し、津波後の東北にて、産業振興、医療ICT連携などのプロジェクト従事。金融、メーカー、商社、シンクタンクなど幅広い業界に通じ、豊富な人脈をもつオールラウンドなマネジメントのプロ

最初に巻き込まれたCTOの活躍で注目ベンチャーに

—まず、FiNCの手がける事業についてご解説ください。

私たちは「モバイルヘルス」に特化したテクノロジーベンチャーです。

健康管理や食生活の改善は、従来は人と人とのつながりによってできるものでした。スマホが出てきたことで、複数の人びとに対して、遠く離れていてもできるようになったんですね。

FiNCの創業はフィットネスジムなどのリアルな現場から始まりましたが、スマホアプリを通じてFiNCREW(フィンクルー)と呼ぶ管理栄養士やトレーナーなどの専門家による指導が一対一でできるようになりました。

昨年7月には、ヘルスケアパートナーのソフトバンクとIBMの人工知能「ワトソン」を活用したアプリ開発で合意し、この4月にリリースすることが決まりました。また、企業の従業員の食事や生活習慣指導を行う、ウェルネス家庭教師も開始。一人のフィンクルーが企業の複数の従業員の状況を把握して、綿密に指導できるような仕組みです。

さらに、今年4月1日には法人向けウェルネスサービス「FiNCプラス」を開発、リリースしました。

「FiNCプラス」
「FiNCプラス」

—どんなことが「FiNCプラス」でできるのですか?

月額約500円/人で、従業員やそのご家族のための福利厚生や健康増進プログラムなどがオールインワンパッケージで含まれたアプリです。まず、一人ひとりの従業員の健康状態を分析して、健康診断の結果、生活のログ、日々の運動、どういう体質なのかというアンケートをします。

単にデータを入れるのではなく、どんな健康グッズやサプリを使っているのか、ヨガ教室に行きたいという志向があるのかなど、いろんな人の情報をカバーする機能があります。

その状況に合わせてアルゴリズムが組まれ、一人ひとりに適した運動や食事の改善などサポートを行っていくんです。

 

—健康系のアプリはダウンロードしても使われない、継続するのが難しいという声もよく聞かれます。

そうした事態を防ぐために、タスクを実行するとポイントが貯まって使える仕組みや栄養士へのチャット機能など、楽しめる機能をふんだんに盛り込んでいます。スポーツジムでアプリを見せれば格安で利用できる特典もつけました。

SNS的な要素もあります。料理研究家、スポーツ選手などのライフスタイルをフォローすることができるんです。いずれも弊社のCTOである南野充則さんをはじめ、多くのエンジニアが会社に加わったことで実現しています。

彼はFiNCに入ってから、あっという間にアプリを開発してしまいました。2年前にIVS(インフィニティー・ベンチャーズ・サミット)という札幌で行われたイベントでは5位に選出。その頃からベンチャー界隈やマスコミから注目されるようになりました。

左から、代表取締役社長 CEO 溝口勇児さん、常務執行役員 CMO マーケティング戦略本部長 野林徳行さん、代表取締役副社長 CWO兼CAO 乗松文夫さん、代表取締役副社長 CFO兼CSO 小泉泰郎さん
左から、代表取締役社長 CEO 溝口勇児さん、常務執行役員 CMO マーケティング戦略本部長 野林徳行さん、代表取締役副社長 CWO兼CAO 乗松文夫さん、代表取締役副社長 CFO兼CSO 小泉泰郎さん

思わず、夢を手伝いたくなるから人が集まる

—FiNCの社外取締役には元ガリバーインターナショナルの吉田行宏さんや元ナイキジャパン社長の秋元さん、戦略顧問に元LINEの森川亮さん、取締役CHOに元テラモーターズの岡野求さんなど、過去に有名企業を創業したそうそうたるメンバーが参画しています。

ほかにも、エンジニアや弁護士、会計士や医師など、多様なバックグラウンドを持つメンバーがいます。でも、目先のお金目当てという人はいなくて、企業として面白い、手伝いたくなるというところがあったのだと思います。

私も前職まで、黒塗りのクルマや自分の大きな部屋が用意される役職に就いていました。銀行の秘書室からはほかのポストを提示されていたんですが、それに乗っかっても楽しくないなと思っていたんです。

 

—溝口社長とはどうやって知り合ったのですか。

2011年に東日本大震災が起こって私自身の人生観も大きく変わりました。翌年から岩手県の大船渡市と陸前高田市など、復興の取り組みで東京と現地を行ったり来たりしたんです。

被災地で病院のICTなどを手がけたとき、南野CTOにも手伝ってもらっていました。その行き帰りに「溝口さんに会ってもらえないか」と彼から誘われ、話すことになったのです。

 

—そこで、いったいどんな話を?

彼が苦労して育った人だと知りました。若い頃から「自分の力で稼いで、家族兄弟を支えなくては」という境遇だったんですね。

自分の体を鍛えるためにジムに通い、そのうちトレーナーとしての評価を高めていきました。そうこうしている間にスポーツクラブのマネジメントを担当し、自身の店舗に留まらず複数の企業の業績を回復させるまでになったんです。

勉強家かつ、理念や理想を見定めた人間なので、生まれて1万日目(27歳4カ月)には起業すると決めていたそうです。そのために経営やマネジメントの勉強をしていたんですね。

当時参加していた勉強会で多くの人に認められたと聞きます。質問を重ねて食い下がって、いろんな経営の肝を教わっていたそうです。だから、教えているほうもただならぬ青年であると感じ、サポートするようになりました。

 

—乗松さん自身は、若い溝口社長のどこに惹かれたのですか。

最初は、彼の会社がどんなことをやっているのかさえ知りませんでしたよ。ただ、理念の語り口に熱があり、社員のはたらきやすい環境への考えなど、メリハリがついていました。

彼にはベンチャー界隈のつながりや同世代の付き合いがありましたが、持っていないものも多かった。それを自分が外から持って来れば、すごいことになるなと直感しました。

自分は銀行の役員までやったので大企業の論理がわかるし、企業のトップと面談がセッティングできます。また溝口さんはとてもマメで、自ら飛び込んでいける。そこにビビッときました。

ベンチャーに参加するのはリスクだとも感じました。でも、病気や健康には関心があったので、最初はアドバイザーくらいのつもりだったのに気がついたら巻き込まれていたんですよ。

 

—若い経営者の下ではたらくことに、抵抗はなかったのでしょうか。

歳を取ってから変なことはしたくない、自身の経歴の晩節を汚したくないという思いもありました。と同時に、いい人と働いて世界中を幸せにしたいという願いを心に持っていたんです。

初出社の日はよく覚えていますよ。オフィスに入るとエンジニアが足元で寝ている(笑)。ただ、不思議とその光景に抵抗はありませんでした。

給料とか住み心地とかは、あまり気にならなかった。それより「どういう仲間と何をするか」のほうが、自分にとってはるかに大事だったんです。いまは若者たちと、いつも興奮状態ではたらいている感じですね。

FiNC代表取締役副社長CAO(チーフ・アドミニストレート・オフィサー)/CWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)乗松文夫

ギブ・アンド・ギブで人は共鳴してくれる

—巻き込まれたひとが、さらに新しいひとを巻き込むような連鎖があると想像しますが、乗松さんも誰かを「巻き込んだ」のでしょうか?

ええ。CFOの小泉泰郎さんがその代表ですね。猛獣のようなアグレッシブさがあって、人間味、実行力、人脈がある。

彼とは興銀時代からの先輩・後輩の間柄ですが、同じ銀行員とは思えないほど(笑)。その後、興銀証券からゴールドマン・サックス証券のマネージング・ディレクターを務めた人物です。

私がFacebookで「FiNCでCFOを募集している」と書いたら、彼が「いろんな人に紹介したいからオフィスを見せてよ」と反応してきた。そしたら彼には次に重たいポストが待っていたのに、それを投げ捨てて自分が来てくれたんです。彼をテコにして、さらに人が集まってきました。

一生懸命何かをすると、人は共鳴してくれるんですね。人のつながりって、ギブ・アンド・テイクというよりは、ギブ・アンド・ギブ。トップ人材に近い人には、そのまわりに何十人といった人がいます。それらの人が、また違う世界を持っているんです。

溝口社長のところには「自分も起業したい」と言う若い人も集まってきます。そんなとき、彼は「あなたは自分が声をかけて3日で1000万を集められますか?」と返すんです。その信頼がないうちは、まだ無理だよと。

 

—人を巻き込むときに気をつけることはなんでしょう。

あくまで企業の将来を見据え、それぞれのステージで必要な人材を、明確な目標をもって巻き込んでいくことでしょう。

お客さまが増えてくるとエンジニアを増やしていかないといけないし、そのうち売り上げがたってくるとマーケティングのプロフェッショナルも必要です。

出資してくれる方についても同じ。これまでベンチャーキャピタルや事業法人に支援してもらっていますが、単にお金のリターンを求める人たちは端からお断りしてきました。

また、組織も急速に大きくなっていくとコンプライアンスも大きなひずみが出てきてしまうし、空中分解もしがちです。ですから、規模が小さい頃から全員が共有してきた「FiNC SPIRIT」という価値観やファミリー感を失わないようにして、伸びゆく会社でも共通の目標をもとうと心がけています。

新入社員・中途社員に関係なく、入社後1~2カ月の間に、かならず先輩社員と一緒にランチに行き、FiNC SPIRITについて語り合う「バリューランチ」という制度もありますね。

「FiNC SPIRIT」
「FiNC SPIRIT」

—これから巻き込みたいひとは?

エンジニアも人工知能などもっと高度な技術進化させたいですし、人事のプロも採用したいと考えています。

目標が果てしなく大きいので、いま注力しているのはグローバルチームです。海外にもどんどん事業の良さを伝えていきたいですね。米国、韓国、タイ、中国、スウェーデンなどから、いろんなひとを巻き込んでいるところです。

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[取材・文] 神吉弘邦、岡徳之

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