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INTERVIEW
家族を仕事のハンデにしない!グッドパッチ流 家族優先の組織文化のつくり方
INTERVIEW

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「新規事業」と聞けば、特に立ち上げの時期は寝る間も惜しんでがむしゃらに取り組むイメージを想起するひともいるかもしれません。しかし、仕事と家庭のバランスを崩してしまえば、結果的に事業に支障をきたすことになりかねません。しかし、言うは易く行うは難し。事業への思い入れが強ければ強いほど、そのバランスは崩れやすく、むしろそれをいとわないと考えるひともいるかもしれません。

人気のニュースキュレーションアプリ「グノシー」のUI(ユーザーインターフェース)デザインを手がけるなど、その卓越したUIの企画・設計力で知られるデザイン会社グッドパッチには「家族が最優先」と考えるカルチャーがあります。設立以来、定時で帰宅し、土日出勤はしないことを貫き通してきた代表の土屋尚史さんに、その企業文化が生まれた背景と実践法について語っていただきました。

PROFILE

株式会社グッドパッチ 代表取締役兼CEO 土屋尚史
土屋尚史
株式会社グッドパッチ 代表取締役兼CEO
Webディレクターとしてキャリアを重ねた後、2011年にサンフランシスコに渡りコンサルティング会社btrax Inc.にて日本企業の海外進出サポート、SFNewTech JapanNight等のイベント企画に従事。帰国後、2011年9月にUI設計・デザインに特化した株式会社グッドパッチを設立。サービス開始直後の「Gunosy」にUIデザインを提供し、サービス成長に貢献。自社開発のプロトタイピングツール「Prott」やアットホーム株式会社との共同事業サービス「TALKIE」の運営にも携わる。

家族は仕事の「ハンデ」じゃない

ーまず、グッドパッチの事業について教えてください。

グッドパッチを設立する前はWeb制作会社でディレクターとしてはたらき、27歳のときに起業を決意し退職しました。前職とは違うことをしたい、はたらく場所を日本に限定したくないと考え、企業の視察を兼ねてシリコンバレーに渡りました。現地のWebデザイン、マーケティング、リサーチ・ブランディングを提供するコンサルティング会社 btraxで約3カ月間インターンシップを経験し、帰国してグッドパッチを設立しました。

3年前にグッドパッチで携わったニュースキュレーションアプリ「グノシー」のUIデザインが多くの方に支持されたことがきっかけで、現在までUIデザインを主力事業にしています。いまは東京とドイツの首都ベルリンに拠点を構え、全従業員あわせて65名の規模にまで拡大しました。

 

ー1年間で退職、渡米、起業を経験され、苦労も多かったのでは?

一番大変だったのは妻だと思います。生後間もない娘を連れて、英語も話せないのにサンフランシスコに行くことになったので。そして日本に帰国したと思ったら、今度は起業をするために大阪から東京に引っ越し。たった1年で大阪〜サンフランシスコ〜大阪〜東京という大移動を、小さい娘を育てながらこなしてくれました。本当に感謝しています。

起業した直後も、事業がなかなかうまくいかず大変でした。会社は私ともう一人の共同創業者の2人で運営していたのですが、会社の存続が難しくなった際に彼が他社に転職することになりました。その頃、会社の資金はあと3カ月で底を尽くという状況で、一人で会社を建て直すにはどうすればよいのか、相当悩みました。

「失敗」という文字が頭に浮かぶ状況で、妻もとても心配していました。そこで、家族のため、自分のためにも「意地でもここであきらめたくない、あと3カ月は事業を継続できるチャンスがある」と思考を切り替え、何としても結果を出そうと奮闘しました。

そのタイミングで、本当に運がよかったとしか言いようがないのですが、縁あって手がけたグノシーが大ヒット。アプリのUIが話題になり、それを手がけた弊社も注目されるようになったことをきっかけにお問い合わせをいただけるようになりました。

サンフランシスコ生活の様子
サンフランシスコ生活の様子

ーそうした苦労があって家族の大切さを強く認識するようになったのですね。

私は、自分がやりたいことも実現したいし、子どもの成長も間近で見守りたいのです。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、起業家は不可能なことに挑戦し続ける存在。であれば、どんなに多忙であろうとも、家庭も仕事も当然二兎追うべきだと考えています。

起業家や経営者は、家族よりも仕事を優先するイメージを持たれがちです。特に家族がいる状況で起業するひとの中には「家庭をハンデ」だと思ってしまうひともいるでしょう。たしかにビジネスにおいて、そのように感じてしまう状況があることは否めず、家族に譲歩してもらう場面もあります。

しかし、家族を犠牲にしてまで成し遂げたいことはなにか。それを成し遂げたときに家族が笑っていなかったら自分はどう思うのか。そこまでして事業をやることに人生における意義はあるのか。事業に責任を持つ立場にあるひとなら、がむしゃらになりすぎる前に、一度立ち止まって考えなければなりません。

仕事と育児は両立させるべきで、その可否は自分のマネジメント力次第です。

トップが積極的に体現し、会社の方向性を示す

ー土屋さんが家族の理解を得るために心がけていることは?

妻が自分のはたらき方についてどのように感じているのか、彼女は自身の人生をどのようにしていきたいのかを常に思いやれるよう、日頃からコミュニケーションを頻繁に取るようにしています。幸い、妻も同業なので共通の話題がたくさんありますし、はたらく業界の習慣への理解もあります。

また彼女の意志を尊重し、それぞれが家族のためにできること、夫婦間でかたよりが出ないような子育ての役割分担、お互いのしたいことを実現するためにどのように協力し合うかといったことをよく話し合っています。

 

ーグッドパッチの企業文化にも「家族優先」を掲げていますね。

代表の私がそのような考え方なので、会社も当然「家族優先」のカルチャーです。

当たり前のことなのですが、創業当時からなるべく遅くまで会社に残って残業はしない、土日出勤はしないようにすることを心がけています。また、家族が体調不良のときは、会社の許可を得るまでもなく家庭を最優先し早退したり、休暇を取りやすくするための環境づくりをしています。

日本でもこうした制度を取り入れる会社は増えていると思いますが、それでもうまくいかない会社は、家族優先のカルチャーを認める社員の意識変革や職場の雰囲気づくりができていないように感じます。

小中規模な企業で成長段階にある弊社がカルチャーをつくっていくには、まずはトップが積極的に体現して、会社の方向性を示す必要があります。ですから、私は起業以来、定時の10時に出社し、定時後の20時までには退社し、家族と夕食を摂り、子どもを風呂に入れてから寝かしつけ、家族が寝静まった夜中にその日残った仕事をする生活を続けています。

正直、会社の代表として、もっと会社に残って自分が持っている時間のすべてを仕事に注ぎ込みたい気持ちはあります。家族がいなかったらそうしてると思います。しかし、家族を言い訳にしたくなかったので、意地でもこのスタイルで成功してやろうとここまで続けてきました。

 

ー社員の方々のはたらき方は?

弊社は、社員年齢が平均28歳のスタートアップでありながら、20時以降に残業している社員はほとんどいません。社員の3分の1は既婚者ですが、家庭を持っても安心して働けると感じてもらえる会社になるよう、経営者として努力しています。

ある日の平日20時をまわった頃のグッドパッチのオフィスの風景
ある日の平日20時をまわった頃のグッドパッチのオフィスの風景

社員のよりよいワークライフバランスを実現するための策

ー社員が安心してはたらける職場環境作りのための取り組みは?

具体的な取り組みは2つあります。

1つめは、全社員で毎日10時に朝礼をし、19時に「終礼」を行います。この終礼が、退社してよいという合図になっており、残業を防ぐことにつながっています。全社員で朝礼と終礼をするのは、一緒に働く時間を共有することを大切にしているからでもあります。

2つめは、勤務時間を選べるフレックス制度を「導入しない」ことです。フレックス制度を導入すると帰宅時間がバラバラになり、定時で出勤した社員が昼から出勤した社員につられて遅くまで残ってしまうような状況が生まれてしまうからです。

こうした社員のよりよいワークライフバランスを実現させる取り組みが、実は事業にも効いています。同じ時間、同じ場所で働く環境を整えることが、社員間のオープンなコミュケーションにつながっていますし、65名の社員への私の意志の共有にも役立っています。

「終礼」の風景
「終礼」の風景

ー家族優先に変革するために経営者や社員が意識すべきことは?

大切なのは、限られた時間の中で最大のパフォーマンスとクリエイティビティを発揮する方法を考えることです。単に大きな成果を上げることだけを目指すのではありません。

今年の父の日に、妻と子どもからこんなものをもらったんですよ。

土屋さんがご家族からもらったという「No家族サービスday」のチケット
土屋さんがご家族からもらったという「No家族サービスday」のチケット

No残業dayならぬ、No家族サービスday。せっかくリフレッシュする時間をもらったので、その日は家族優先のはたらき方について思いをめぐらせていました。

社員が家族優先のはたらき方でも、たしかなブランドや実績を築くことはできると思うんです。自分の時間のすべてを仕事に注ぎ込みたいと思っても、私はこれからもこのカルチャーを貫きますよ。

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[取材・文] 井上美穂

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