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INTERVIEW
上場企業から非営利組織に「レンタル移籍」して強みががらっと変わった話
INTERVIEW

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BOOK MARK

パラレルワークや起業、社会人経験を経ての就学など、さまざまなキャリア構築のロールモデルが提示されています。

けれどもいざ、自分自身に置き換えてみると、今の働き方や会社を辞めてまで、新たなキャリアに望みをかけるのは、現実的ではないかもしれません。

とはいえ、現代は「人生100年時代」と称されるように、「定年60歳まで一つの会社で働き続ける」というイメージが湧きづらいのも確かです。

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

株式会社PR TIMESでPRプランナーを務める千田英史さんは、2016年6月から半年間、一般社団法人防災ガールに「レンタル移籍」し、初めて非営利組織の仕事に携わりました。

期間限定で他の組織へと移り、異質な経験を積むレンタル移籍・・・プロスポーツの世界では馴染みのあるものの、ビジネスにおいてはまさに前代未聞。

そんな「人生100年時代」らしいキャリアの新しい選択肢と、そこで得られたものについて、千田さんに振り返っていただきました。

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

PROFILE

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史
千田英史
株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー
熊本県出身。青山学院大学卒業後、不動産会社を経て2011年PR TIMES社入社。セールス・マーケティング担当を経て、消費財メーカー、酒類、コスメブランドなどのPRプランニング、企画領域に従事。2016年6月から一般社団法人防災ガールにレンタル移籍し、「#beORANGE」の広報・PR担当者に就任。その功績が認められ、2017年7月には国際PR協会の「ゴールデン・ワールド・アワーズ・フォー・エクセレンス」の「環境(エンバイロメンタル/エージェンシー)部門」、8月には「In2 SABREアワード アジア・パシフィック」の「BRANDING AND IDENTITY部門」で最優秀賞を受賞

企業間の期間限定「レンタル移籍」

—まず、PR TIMESでの業務内容はどういったものですか。

大手消費財メーカーからBtoBのベンチャーなど、領域や規模問わずさまざまな企業のPRプランニングやマーケティング支援などに携わっています。

PRのプランニングというのは、ある種「未来をデザイン」するようなこと。先を見据えながら、そこから逆算して考えて、「何がどんな人に刺さるか」をマーケットインで発想し、企画を考えます。

僕自身、まったくの異業種からの転職で、当初は戸惑いもありましたが、プランナー的な発想にも慣れ、自分の思考体系に若干のマンネリを覚えているところでした。

そんなときに、企業間レンタル移籍プラットフォーム「LoanDEAL」を運営されているロンディールさんから声をかけていただいたんです。

—企業間の「レンタル移籍」とは、どういったことなのでしょうか。

「レンタル移籍」というとプロサッカー界では一般的ですよね。チームでなかなか出場機会が得られないときなど、新たな活躍の場を求めて、既存のチームに所属を置いたまま、他チームで活動を行います。

「企業間レンタル移籍」も同様に、元の企業に籍を置いたまま、給与もそこから出してもらって、業務だけ移籍先の組織で行います。僕の場合、週3日は一般社団法人防災ガールで、残り週2日は今まで通り、PR TIMESで業務を行っていました。

—レンタル移籍を持ちかけられて、どう感じましたか。

思いがけないことではありましたけど、チャレンジングで面白そうだなと。業務でもスタートアップのPR支援は行っていましたが、自らジョインする、というわけではありませんから。

それにレンタル移籍という手法自体、雇用の流動性を図るという意味でも有効ですよね。日本ではまだ転職にネガティブな印象もあって、「会社での恩義を忘れて裏切るのか」みたいに言う経営者もいまだにいる。

それに今、「働き方改革」として、フリーアドレスやテレワークなどが提示されていますが、勤務時間や働く場所ばかりに関心が集まっていることに対して、個人的には懐疑的なところがあって、それでレンタル移籍に関心を持ったのもあります。

「働く場所」ってそこまで重要なんだろうか、テレワークだって一過性の流行なんじゃないか。それよりも、仕事を通じて何をしたいのか、何を成し遂げたいかが重要なのではないか、と感じていました。

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

それで何か新たな社会貢献のあり方を模索しようと考えていたところに、「防災」という、通常の市場メカニズムではある種敬遠されがちな課題領域に取り組む防災ガールとの出会いがあった。

「防災が当たり前の世の中にする」と、代表の田中美咲さんをはじめ、有志が活動をされているのは素直に尊敬できましたし、私のこれまでの知見を試す、良い機会だと思ったんです。

移籍先でぶつかった思わぬ壁と得られた成果

—千田さんは防災ガールでどんな業務に携わったのですか。

防災ガールでは災害時後方支援に関するノウハウを提供していて、その新プロジェクトとして2016年6月から「#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)」というものを始めました。

#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)

津波避難ビルやタワーにオレンジのフラッグを掲げ、緊急時の避難場所を分かりやすくする、というのがコアアイデアで、そのメディアリレーションズと広報、およびそのための体制作りを私が担うことになりました。

防災ガールのコアメンバーで専任体制が取れているのは代表の田中さんのみ、それ以外は皆さん本業と兼務されていたので、専任の広報担当者はいなかったんです。

—防災ガールで業務を行ってみて、想定と違っていたことなどはありますか。

私自身、「広報のプロフェッショナル」として業務に携わる、という意気込みで始めたのですが・・・あっさり覆されたんですよ(笑) 組織体系や考え方など、すでに確固たるものが築かれている中に「部外者」の私が入るということに、難しさを感じました。

移籍してすぐ、#beORANGEのタグラインを決める際、Facebookグループ内でアンケートを取ったのですが、私が提案した「波と生きる日本をつくる」という言葉は惨敗(笑) 9割方、代表が提示した「オレンジは、津波防災の色。」という言葉に賛成票が集まりました。

Facebookグループ

プランナー目線だと、防災ってそもそもお説教くさいところがあるので、なるべく押しつけがましくなく、ストーリーとして共感しやすいものを・・・と言葉を考えていたので、「いやぁ、すんなりと受け入れてもらえないものなんだなぁ」と実感しました。

—最初からつまずきを感じたんですね。

でも、しかたなかったんですよ。防災ガールのメンバーは全国各地にいて、会ったことのない人がほとんど。彼女たちからすれば、私は「急に仲間になったけど、よく知らない人」ですからね(笑)

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

ですからまずはFacebookグループ上で写真や動画をシェアしたり、GIFアニメや絵文字を使ったりして、「私はこういう人間です」というのを分かってもらえるようにしながら、一方で合議形成としては新たな方法を提案しました。

メンバー全員で多数決を取るのも一つですが、良くも悪くも代表の考えが多くの人の意思決定に影響してしまうことを理解してもらい、コアメンバーのみで合意を取り、決定事項としてメンバーに周知する、という形式を取ることにしたんです。

その結果、PRの新施策として、高知県で津波避難ビルへのオレンジフラッグ掲示が決まった際、「未来号外」というものを1万部発行し、配布することになりました。

2016年10月23日に、「2017年10月23日に地震が起こり、高知市潮江地区に津波が襲ったものの、オレンジ色の旗が津波避難ビルに掲げられていたため、住民全員が助かった」という号外です。

未来号外

恐怖で煽るのではなく、期待できるような文脈、「実現するといいな」と思ってもらいやすい入口を設計したことなどを評価していただき、2017年7月に国際PR協会の「ゴールデン・ワールド・アワーズ・フォー・エクセレンス」(GWA)の「環境(エンバイロメンタル/エージェンシー)部門」、8月には「In2 SABREアワード アジア・パシフィック」の「BRANDING AND IDENTITY部門」で、#beORANGEが最優秀賞を受賞することになりました。

—半年というかぎられた時間を考えると、十二分な成果ですね。

ホッとしましたね。僕自身が活動に加わるからには、事業を推進するために戦略的なPRを行いたかったので、その思いが報われた気がしました。受賞は、レンタル移籍の「卒業証書」みたいな感じでしたね。

「GWA」の最優秀賞受賞の報せ
「GWA」の最優秀賞受賞の報せ

社外経験で培われた「現状打開力」と「創造への自信」

—半年のレンタル移籍は千田さんに何をもたらしたのでしょうか。

千田さんと防災ガールの方々
千田さんと防災ガールの方々

客観的な数値でいうと、移籍前後でどんな変化があったのか、約60問ほどの適性診断テストを受けたんです。

その結果では、移籍前よりも「現状打開力」「実験力」「創造への自信」が飛躍的に伸びていました。ベンチャーらしさが滲み出ていますよね。逆に「詳細運用力」「計画力」「分析力」は少し下がったんですけど、これは上場企業の通常業務ですぐに取り戻せます(笑)

適性診断テスト

PR TIMESに戻ってきてからもう半年以上経ちますが、実感しているのは、以前と比べて「やりながら考える」ということが格段に増えたこと。

それと、クライアントから言われた課題を再定義することが多くなりました。クライアントからヒアリングしながらも、「それって本当に課題ですか?」「それよりむしろこれが課題じゃないですか?」と。

解決策の幅は課題設定の大きさに比例しますから、そもそもの課題設定を疑いつつ、より本質的なソリューションを提案できるようになったと思います。

—レンタル移籍は、キャリア構築の新たな手段としていかがですか。

組織の理解さえあれば、オススメできますね。私は半年という期間でしたが、今では1年間移籍する人もいるようです。正直なところ、半年で明確な成果を出すというのは本当に厳しくて、難しいなと感じましたし、その中でやり抜く、アウトプットするという意味では、相当鍛えられました。

普段は組織体系や作業分担が整っている環境ですが、移籍先はベンチャーや社団法人で、リソースもかぎられている。そこからゼロベースで何をやるか、何ができるかを考え、しがらみなくスピード感を持って進められる環境というのは、キャリア形成においては有効だと思います。

—最後に、レンタル移籍のようなキャリアの選択肢の多様化が個人にもたらすものはどんなことだと思いますか。

個人的に、「ワークライフバランス」という言葉に違和感があって、「仕事と人生」というより、あくまで「ワークインライフ・・・人生における仕事」ということだと思うんです。

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

「みんな違ってみんな良い」という価値観が、ますますその幅も選択肢も広がってきている中で、現実感を伴うようになってきている。私自身、肩書きはプランナーでも、プロマネや渉外活動、ライティングや映像撮影・編集もやりますし、別の側面では、仏教徒、夫、株主、ペットオーナー、ランナーでもある。

自分が何者かを語るとき、その場や組織、チームに合わせてさまざまに編集して語れる人は、キャリアとしても強いなと思います。「〇〇インライフ」の「〇〇」へ何を入れるのか、それは言われて決めるのではなく、自分の欲求と向き合うことで見えてくるのではないか、と。

現に、働き方の選択肢はありすぎるほどあるじゃないですか。でも「働き方改革」という言葉はメディア受けの良い言葉に過ぎないと思っていて、新しい働き方がその人に合っているとはかぎらない。

そこは結局自分の欲求に従って、決めていくしかないと思います。私自身、もともとパラレルワークに興味はありましたが、レンタル移籍という形で実践できたのは、自分に合った働き方を見つめ直すにも良い機会でしたね。

株式会社PR TIMES PR・コミュニケーションDiv. PRプランナー 千田英史

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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