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INTERVIEW
ハーバードで確信した、日本人とグローバルリーダーの「良い相性」
INTERVIEW

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BOOK MARK

「日本企業のリーダー研修は実際の現場では活かされない」という声がよく聞かれます。その原因は、研修の内容が実務に必要なスキルの習得に偏っているからだ、とも。

それでは、真にリーダーに必要なマインドセットや意思決定に必要な価値観を私たちが形成するには、どのような学びが必要で、どのようにして取り組めばよいのでしょうか?

ハーバード・ビジネス・スクールのリーダーシップ開発プログラムを修了し、現在はアメリカにある三菱商事の100%子会社で活躍する小島秀毅さんは、

日本人はグローバルリーダーと比べて著しく能力が低いわけではない。ただ、『世界に変化を起こす』という意識が極端に足りない

と感じたそうです。小島さんがハーバードで実感したリーダーシップの本質とその育み方、グローバルビジネスで発揮すべき「日本人強み」に迫ります。

Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager 小島秀毅

PROFILE

Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager 小島秀毅
小島秀毅
Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager
2003年東京外国語大学外国語学部卒業。2009年一橋大学大学院商学研究科経営学修士課程(MBA)修了。2019年ハーバード・ビジネス・スクールPLD修了(PLDA)。大和証券、GCAを経て、2011年に三菱商事に入社。国内外のM&A案件に携わると共にPMIにも取り組む。特に米国駐在の経験から北米を中心とするクロスボーダーM&A/PMI戦略の立案と実行を強みとする。近年は事業投資先や外部団体が主催するM&Aに関するセミナー講師やM&A専門誌等への寄稿も多数担当。米国公認会計士。日本CFO協会グローバルCFO。

ハーバードで見つけた「日本人の強み」

―小島さんがハーバード・ビジネス・スクール(以下、ハーバード)でPLD(Program for Leadership Development:リーダーシップ開発プログラム)を受講しようと考えたきっかけは何だったのですか。

私はもともと証券会社やM&Aのアドバイザリーファームでキャリアを積んできたのですが、より当事者として経営に携わりたいと思っていたところ、三菱商事が新たにライフサイエンス本部(現・食品化学本部)を立ち上げてM&A戦略を推進していくにあたり、その一員として入社することになりました。

それから希望通り、企業のM&AやPMI(経営統合)に携わっていたのですが、将来的に海外での事業経営にも関与したいという希望もあって、同世代のグローバルリーダーの中で学びを深めたいという思いが募ってきました。

そんなときにハーバードのPLDを知ったのです。プログラムの全課程を修了すれば、アルムナイ資格を取得できるため、ハーバードのネットワークを最大限に活用することもできる。そこで社内公募にエントリーし、その後、私の想いを書き込んだアプリケーションをハーバードに提出、無事に入学許可を得ることができました。

―PLDはどういったプログラムなのでしょうか。

PLD受講生たち
PLD受講生たち

ハーバードではPLDを「10〜15年ほどプロフェッショナルとしての実務経験があり、将来リーダーとして活躍できる見込みのある者を次世代のパワフルリーダーにするためのプログラム」と位置づけています。約8カ月に渡る受講期間のうち、実際にキャンパスへ通学する「オン・キャンパス」とオンラインで受講する「オフ・キャンパス」を組み合わせたプログラムが行われました。

受講生はプロフェッショナルファームの出身者や投資ファンドの創設者、大手金融機関、IT企業、食品会社などさまざまなバックグラウンドを持っていて、みんな仕事と両立しながら通っていました。エグゼクティブには健康に対する意識の高い人も多いと言われていますが、ご多聞に漏れずチームメンバーもそうで、朝6時からマラソンやキャンパス内のジムでヨガなどを行い、7時すぎから朝食。8時から22時までみっちり授業やチームでの課題を行った後、自主的に夜中までチームメンバーと議論する。そして翌日はまた朝6時から始まるんです。月曜から土曜まではそんな感じで、日曜だけが休みでした。

休日に仲間とボストン湾のクルーズ
休日に仲間とボストン湾のクルーズ

一方で、オフ・キャンパスはオンラインで好きなときに授業を受けられて、試験もオンラインでした。バランスとしては、オフ・キャンパスでマクロ経済や経営学、マーケティング、ネゴシエーション、企業会計、ファイナンスなどの基礎的な学習を行いつつ、100以上のケースと関連する課題図書を読むこと、それにグループワークがあり、オン・キャンパスでそれらを踏まえて授業したり議論したりする。

期間中は5つのモジュールに分かれていて、モジュール1から4まではそんな感じです。モジュール5は学校から許可された人でなければ参加できません。5まで修了しなければアルムナイの資格が得られないのですが、なんとか最後まで参加することができました。

モジュール5のチームメンバー
モジュール5のチームメンバー

―やはり、ハードなプログラムだったのですね。

私も大学時代にアメリカに留学して、駐在前から北米を担当していたとはいえ、ネイティブスピーカーではありませんから、少し話が脱線するとなかなかついていくのが大変です。文化的背景も理解しなければなりませんし、そもそも「日本人はおとなしい」と思われていて、両手を上げて「発言したい」とアピールする人もいる中で存在感を見せるのは難しいことです。ですから、とりあえず議論が深まる前に、早いタイミングで一旦発言し、気持ちに余裕を持って参加できるよう心がけていました。

ただ、一方で「日本人としての強み」を感じることも多々ありました。

PLDでは「イノベーションを起こす人を育てる」というより、「既存事業を変革できるリーダーを育てる」ことに重きが置かれています。大きな組織ほど、一人ひとりがリーダーシップを持って、チームとして動いたほうが高いパフォーマンスを発揮できるその考え方は私たち日本人の特性に非常にフィットするものだと感じたのです。

アメリカはどちらかと言うと自分中心主義で、トップの考えにそぐわなければクビ切りに遭うこともある。カリスマ性のある創業者がいて、強力なリーダーシップを発揮する、という感じですよね。けれども日本では全体観や調和を重んじて、バランスを考えて、チームワークに取り組もうとする。社内でもさまざまな部署の人と話をして、根まわししたり調整したりするじゃないですか。

しかも、日本ではジェネラリストが求められて、さまざまな部署を浅く広く経験するアメリカのように自分の専門分野でのキャリアアップだけを目指す国では専門性の高い人材は育ちますが、ビジネス全体を俯瞰する力を持った人材を育てるのは難しい。だけれど、経営者には状況を総合的に判断し、意思決定を行うことが重要ですからね。

いまのところ、ビジネスの世界で名を轟かせるような日本人はさほど多くないけれど、トップとしてリーダーシップを発揮する機会と環境があれば、どんな人よりも圧倒的に活躍できる素地はあるのではないかと、本気で思うのです。だから、日本人はどことなく自信がないせいか、価値ある意見がなかなか相手に伝わらないのはもったいない。もっと自信を持っていいのでは、と感じました。

「身のまわりから変化を」ハーバード流リーダーシップ

―他にもPLDで印象的だったことはありますか。

Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager 小島秀毅

PLDの参加者は170名余りが世界37カ国から集まりましたが、国籍も業界も多様な中で意思決定するのは非常に難しいなと感じました。

モジュールごとに7〜9名ほどのチームに分かれて各チームにリーダーを立てます。私も投票で選ばれてリーダーを務めましたが、みんな自分の意見をしっかりと持っていて、必ずしも正解がハッキリしているわけではありません。そんな中でなんとか意見を集約し、うまくアレンジして一つの答えにしなければならない。

けれどもあえてバックグラウンドの異なる人を集め、ある種の異分子を入れることでイノベーションが起こるのは、確かだと感じました。

例えば、PLDでは「アルムナイチャレンジ」というのがあったのですが、ハーバードの卒業生が勤める会社から実際のデータを提供してもらい、秘密保持とコンサルティング契約を結び、3カ月ほどかけて新規事業の立案および業務改善の提案を行いました。

コンサルティングですから、当然コンサルファームで働くプロの意見が最も優れているのではないかと考えていましたが、意外とアメリカ空軍で働く人の課題意識とビジネス上の課題がリンクすることもある。正直、私が持っている知識よりも多面的で参考になると感じました。実際、チームでプレゼンした提案が採用され、コンサル先の会社で実行してもらっています。

―かなり実践的な取り組みを行うんですね。

Michael L. Tushman教授からアルムナイチャレンジのフィードバックをもらう
Michael L. Tushman教授からアルムナイチャレンジのフィードバックをもらう

ハーバードは「We educate leaders who make a difference in the world.(世界で変革を起こすリーダーを育てる)」をミッションに掲げていますが、ことあるごとに教授からは「変化を起こせ」「変革しよう」と言われます。世の中を変えるのは簡単なことではありませんが、身のまわりからでも変化を起こすことが大切なんだと、プログラムを通じて感じました。

確かに、私自身も大きな組織で働いていると、変化を起こすことに難しさを感じることもあります。私のミッションは北米で新規事業開発やM&A、PMIを行い、組織に資することですが、動く予算も大規模なので、それこそさまざまな段階での意思決定が必要となります。ですから、私一人で変えられることにも限界はある。

だけれども、そもそもいま、私がこのアメリカにいられるのも、かなり挑戦的なことではあるんです。アメリカの会社を買収したことに伴いアメリカへ赴任したのですが、「自分がアメリカへ行ってPMIに関わりたい。さらにその先の北米での新規事業開発やM&Aの立案・実行を行いたい」と、機会があるたびに言っていました。そして結果的にアメリカへ来ることができた。

日本の大組織だって、本気でやりたいという思いがあれば、まかせてくれる余地、身のまわりに変化を起こせる可能性は大いにあるんじゃないかと思うのです。

Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager 小島秀毅

「やりたいことを言葉にする」ことから始める

―小島さんはなぜ、そこまで強い思いを持つことができたのでしょうか。

学生時代から比較的逆算して動いているところはあるんです。いつか自分で会社を経営したいという思いがあって、そのための知識や経験を得るために証券会社やM&Aのアドバイザリーファームで働いていた。そこで総合商社を客観的に捉えたとき、これからは単にモノの売買するだけでなく、事業投資会社として事業経営していくべき時代だろう、と。それで、三菱商事に入ってまずは国内でM&A、そして海外と領域を広げる中、海外に通用するマネジメントスキルが必要だと考えてハーバードに来ました。

アメリカでビジネスしていると、同年代でも大きな事業に取り組んで、世の中に影響をもたらしている人が大勢いる。一度きりの人生ですし、私もチャレンジしてみよう、と思うのです。

Mitsubishi International Food Ingredients, Inc. Corporate Planning & Administration, General Manager 小島秀毅

―少しずつ変わってきているとはいえ、まだまだ日本企業では、組織の論理や非効率的な不文律に左右されることも多いですよね。

みんな忙しいですしね。同年代の人と話していると、3年、5年先のビジョンを明確に持っている人はそう多くない。なかなかそういうマインドになれませんよね。でも、そうこうしているうちにあっという間に時間が経ってしまう。まずは大きい軸を持って、計画を立ててみるといいのではないでしょうか。

―小島さんが「ビジョンを持って逆算して動く」ために意識していることは何ですか。

私自身、会社で働いていて、細かい日々の業務に追われることは多々ありました。いつまでにこれを提出しなきゃ、とか・・・。

でも、まずは目の前の業務をおろそかにせず、しっかりと効率化した上でこなせるようになって、少しずつ信頼を積み上げていく。言い訳せず、プロジェクトで成果を出して、一つ歯車がまわり始めると、どんどん良い方向へまわり出すのです。

それと、自分のやりたいことをまわりにしっかりと発信すること。言葉にすると、やらざるを得ませんからね。常にいい意味でプレッシャーをかけることで、日々の忙しさに埋もれないようにする。すると、関連した情報が自分に集まるようになって、人のネットワークも広がっていく。自分をサポートしてくれる人がたくさん社内外に生まれてくるんです。だからいま、私はここにいられるんです。

―ある意味、小島さんのような中途入社社員を登用して、アメリカの子会社をまかせることが、変革の表れと言えるかもしれませんね。

そうですね。2011年に入社した当時、グループCEOから「会社の色に染まらないうちに、何かおかしいと思ったら、どんどん報告して」と言われたんです。そのときは「どういう意味だろう?」と思ったけど、確かにそれが組織にとって必要な場面もあるのでしょうね。幸い、私自身は入社してからずっとM&Aによる新規事業の立ち上げやPMIに関わっているので、特にしがらみもない。だからこそ新しいチャレンジができるのかもしれません。

―もしいま、日本企業で働くビジネスリーダーにエールを送るとしたら、どんな言葉を送りますか。

繰り返しになりますが、日本人のポテンシャルはグローバルで考えてもかなり高い。だからこそ、自分の可能性を目の前の世界だけにとどめず、「自分たちも世界に伍していけるポテンシャルがある」という意識改革さえできれば、さまざまなことに挑戦できるはず。自分の想像できる世界の中だけで行動しようとせず、勇気を持って一歩外の世界に踏み出せば、キャリアの可能性も広がるのではないでしょうか。

修了書授与式にて(左はFaculty ChairのJoshua D. Margolis教授)
修了書授与式にて(左はFaculty ChairのJoshua D. Margolis教授)

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[取材・文] 大矢幸世 [企画・編集] 岡徳之

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