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INTERVIEW
「VALU」仕掛け人、中村洋基さんに聞く「個人の時代」をどう生きるか?
INTERVIEW

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BOOK MARK

ビットコインやブロックチェーン、ICO(仮想通貨による資金調達)など、新たなテクノロジーによるエコシステムが登場し、私たちの暮らしに変化が起きようとしています。

最近特に話題となっているのが、個人の価値をビットコインで売買するマイクロトレードサービス「VALU」です。

「VALU」
「VALU」

個人が簡単に「VALU」を発行。その個人を応援したい人がVALUを購入すれば、発行した人は集めた資金で活動を始めたり、加速したりすることができるーー。

「個人」であっても、必要なリソースを気軽に調達できるこれまでにないサービスであることから、自己実現のあり方を変えるのでは、と囁かれているのです。

VALUが到来を促すこれからの「個人の時代」に、私たちの働き方や生き方はどう変わるのかーー。VALUの生みの親の一人である、中村洋基さんにお話を伺いました。

株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー 中村洋基

PROFILE

株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー 中村洋基
中村洋基
株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー
1979年栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、2000年株式会社電通入社、テクニカルディレクターとして活躍。2011年に独立し4人のメンバーとともにクリエイティブ・ラボ「PARTY」を設立、クリエイティブ・ディレクター/ファウンダーに就任。2016年11月にVALU創業、取締役に就任

「個人の価値」をトレーディングカードのようにやり取り

—「VALU」はどんなしくみなのでしょうか?

分かりやすく言えば、自分の客観的な「価値」を分配して売れるサービスです。

トレーディングカードに近くて、例えば、今あなたに「10万円」の価値があるとします。それを、1000枚のトレーディングカードを発行して、一枚100円で売るようなイメージ。

企画の背景には、ネット界隈で最近よく聞かれる、「評価経済社会」という言葉があります。

これまでの資本主義社会では、人生の成否は「お金」が左右することが大きかった。それが評価経済社会の場合、「世の中にどうコミットするか」「それに対してどれくらい賛同者がついてくるのか」が、お金には代えられない新たな「価値」となりつつあります。

そこで考えたのが、自分の価値を「VA」という単位で発行し、やり取りするVALUのしくみでした。VALUという名前も、「VAL(VALUE:価値)+ U(YOU:あなた)」という意味から来ています。

「VALU」での取り引きの流れ
「VALU」での取り引きの流れ

—どのようなVALUのやりとりが考えられるでしょうか。

例えば、とある地下アイドルがVALUを発行し、その価値が100円でスタートしたとします。

そのアイドルが少しずつ認知を広げ、ライブ会場も大きくなり、楽曲やグッズも売れ・・・とブレイクしていけば、おのずとVALUの価値も高くなります。すると、その子のVALUを初期に購入した人が持つ価値は、100倍にもなっているはずです。

そのタイミングでその子のVALUを売ってもいいし、持ち続けたり追加で購入したりして支援を続けてもいい。いずれにせよ、VALUを買った人は価値が下がらないよう、ある意味責任を持って応援にコミットし続けることになります。

アイドルにかぎらず、起業家やエディター、カメラマンも・・・ 「こんなことを形にしたい」「こんなキャリアを描きたい」と思う人が、それを実現するために世の中にアイデアを問い、まわりから応援してもらうエコシステムを作りたい。

「人の価値を発掘し、高める」というのが、VALUのコンセプトです。

思わぬ反響で実感、「個人の価値」が重視される時代の流れ

—今までにないサービスということで、良くも悪くも大きな話題になっています。

中村さん自身のVALUアカウント
中村さん自身のVALUアカウント

2017年5月31日にβ版をリリースして、9月5日時点でユーザー数は6万7000人、MY VALU発行者が1万7000人と、想像以上に広がりました。

そんな中で、VALUのプラットフォームを利用した悪用、炎上事例も出てきています。金融庁や専門家・弁護士と規約改定や利用者保護のためにどうルールを作るべきか、やり取りしながら進めています。

人気YouTuberらが自身の高騰したVALUを一気に売り出し、価格が急落する騒動が起きた。これを受け、一日に売買できるVALUの上限を決めるなど対応している。

ここまで反響があるとは思っていなかった、というのが正直なところ・・・。アカウントを開設する人が想像以上に多かったのは、それだけ「個人の価値を可視化する」ことへのニーズがあったということかもしれません。

思えば、「Airbnb」や「UberX」といった今流行りのシェアリングエコノミーサービスも、ユーザーの信頼度という、個人の価値にもとづいたサービスですよね。

「もっと信頼してもいいんじゃね?」、もしくは「信頼できない人を回避できるしくみがあればいいんじゃね?」と、信頼をベースに今までは想像できなかったCtoC(個人間の)サービスが成立し始めている、ということだと思います。

芸術家に見る、個人の時代に活躍できる人の「3つの条件」

—VALUが到来を促す「個人の時代」に活躍するのはどのような人でしょうか?

うーん、そうですね。「芸術家の価値の上がり方」ってご存じですか?

先日、ZOZO(TOWNを運営するスタートトゥデイ)の前澤社長が、アートオークションでジャン=ミシェル・バスキアの絵を123億円で落札したことが話題になりました。あれは、金持ちが浪費しているわけではなくて、「上がりそうだから買う」んです。

アート作品の値づけは、アーティストの活動年数、人気度、展示の回数、作品の大きさなどを踏まえ、決まります。買うほうは、「なんかカッチョいいから買う」だけではなくて、「その値が上がりそうだし、応援したいから買う」んです。

その資金で、アーティストは次の個展を開ける。そこで披露される新作がより高値で売れれば、前作の価値も上がり、購入していた人は、「安いうちにゲットしてラッキーな人」となるわけです。

これを知ったとき、「スタートアップの資金調達と同じだな」と思いました。作品は、公開前の株式にとても似ています。個展は、調達の1ラウンド。そして、アートを買うというのは投資行為です。VALUはこれと同じ。さらに作品を「人の価値」に簡略化したものだといえます。

そこで共通するのは、

  1. 「何年活動を続けたか」=信用
  2. 「一定の個性を保ち続けているか」=期待を裏切らないこと
  3. 「個性はブレず、かつ斬新か」=キャッチーに。興味喚起を怠らない

という要素が大事になるということです。

株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー 中村洋基

VALUで言えば、「私は支援をしてもらったら、何をして成功したいのか」と具体的に表明するホワイトペーパー的な宣言が大事だと思います。

人生や仕事の中で得られた「個人の軸」は誰しも持っている

—個人の価値が可視化されると、その評価が下がらないように、何かとまわりを気にしたり、失敗しにくくなったりしませんか。

確かに、適当にできなくなりますよね。1週間くらい会社をサボるとか、「もうダメだー!」と仕事を投げ出すとか(笑)

でも、若いときは誰だってそういうのありますよね。それが許されなくなって、「評価が下がらないように」と自分を追い詰めていく社会になっていくのは、本意ではありません。

その人が本当にがんばって、公明正大に生きているのなら、報われてほしい。挫折したっていい。まわりから優しくされたなら、その1.1倍くらいは他人に優しくありたい。失敗を吊るし上げるのではなく、応援しあえる社会になったらいいなあ、と思うんです。

株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー 中村洋基

—「個人として評価を高めなくても、会社でうまくやっていけばいい」と考える人にとっては、生きづらい時代になりそうです。

僕も以前、大企業にいたから分かりますけど、会社員ってラクなんですよね、確かに。会社で働いている人は会社に守られているので、別にそのコミュニティで評価されればいいんじゃないでしょうか、今は。

ところが今の10〜20代は、平均寿命が100歳まで延びるだろうと言われています。65歳で定年を迎えたとして、そのあと「35年も無職」ってことじゃないですか。

それに、世代間格差の問題は歴然としてありますよね。僕らの世代はすでに、親の世代より生涯にわたって国から支給されるお金が一億円くらい安いって、知っていますか? 僕らがもらえる年金なんておそらく微々たるものです。しかも、格差はどんどん広がります。

さらにAIに取って代わられる仕事もあるかも…そう考えると、「大企業だけのワンキャリア」は、不安で仕方ないじゃないですか。

一方で、そんな厳しい時代でも、40〜50代になっても承認欲求や自己実現欲求は変わらずにあるはず。かつては「そろそろ定年というゴールも見えてきた」というマインドの人が、「またイチから始めないといけないのか…」と思うと、面倒ですけどね。そういう時代は終わったんじゃないでしょうか。

株式会社VALU 取締役、株式会社パーティー クリエイティブ・ディレクター/ファウンダー 中村洋基

そういう僕も、これまで15年くらいデジタルクリエイティブに一途で、他の事業をやってみようとか、考えたことなんてなかったんですよ。

だったんですけど、がむしゃらにやる中で、「何が人の心を動かすのか」「何をどうデザインすれば人の共感を得られるのか」という軸が生まれ、自分は、コミュニケーションが介在するしくみを作るのが好きなのだな、とようやく気づいたりして・・・そこからVALUだったり、コーヒー屋だったり、ようやく最近、新たな挑戦が形になり始めたんです。

きっとみんな、人生や仕事の中で得られた軸があるはずですから、その軸を基に個人としての活動にフォーカスし始めて、それをみんなで応援しあう。社会はひとりでに、そうなろうとしているのかもしれません。

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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