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INTERVIEW
世界で話題になるアイデアは分析から生まれる、敏腕広告プランナーの知見
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BOOK MARK

作品を世に出せば、かならず世界で話題になるーー。そんな気鋭の広告プランナーが、TBWA HAKUHODOの栗林和明さんです。

日産自動車と手がけた、手を叩くと元の位置に自動で戻るイス『INTELLIGENT PARKING CHAIR』の動画は、「ABC」「BBC」など海外大手メディアに掲載されるなどして世界中に拡散。

Lyrical Schoolのミュージックビデオ『RUN and RUN』は、曲は日本語だったにも関わらず「縦型動画の決定版」としてSNS上で海外でも話題に。読者の方々も、「ヤフーニュース」などを通じて気づかぬうちに彼の作品に触れているかもしれません。

栗林さんと彼のチームは、どのような手法で世界中の人びとを魅了するアイデアが生み出しているのでしょうか。お話を伺いました。

株式会社TBWAHAKUHODO、Digital Arts Network所属 Interactive Planner  Buzz Machine 栗林和明

PROFILE

株式会社TBWAHAKUHODO、Digital Arts Network所属 Interactive Planner  Buzz Machine 栗林和明
栗林和明
株式会社TBWAHAKUHODO、Digital Arts Network所属 Interactive Planner Buzz Machine
専門は「バズ」。Webコンテンツのデータ分析をベースとした戦略立案・コンテンツ開発を一気通貫で行い、 ”話題”の質と精度を高める。趣味はYoutube再生数予想クイズ。2016年、カンヌ広告祭サイバー部門ゴールド受賞、モバイル部門・ダイレクト部門ブロンズ受賞。他、メディア芸術祭 審査委員会推薦作品、オンライン動画コンテストBOVAグランプリ受賞など

「世界」を目指すから大きなインパクトが生まれる

ー栗林さんが所属するチームと、ご自身の仕事内容について教えてください。

「Digital Arts Network」というデジタル専門のチームに所属しています。その中にはデジタルストラテジスト、データサイエンティスト、メディアプロデューサー、インタラクティブプロデューサーなど、デジタル領域に特化したさまざまな人材がいるのですが、私はそこでインタラクティブプランナーとしてはたらいています。

キャンペーンが企画されるときの流れでいうと、「Disruption Lab(ディスラプション・ラボ)」というクリエイティブやマーケティングを手がける組織があって、そこに所属するさまざまなクリエイターやプランナーと一つのチームを結成します。

中でも「バズを考える」、つまりインターネット上で話題作りを行うことで、企業のブランディングを図ったり、売り上げを伸ばしたりしたいというニーズがあるときに私がアサインされます。だから、名刺にも「Buzz Machine」と。世の中にない職業なので、ちょっと引っかかるかもしれませんが。

ー栗林さんが手がけている作品は海外でも受け入れられていますが、制作されている時点ではどのくらいのスケール感を想定されているのでしょうか。

基本的にはある一定の層をターゲットに定め、その周囲の人に企業やサービスの良さがクチコミで広まっていく手法を取るのが定石です。けれども、そのターゲットが広く、話題の総量が重要な場合には「世界中の人に届けよう」というところから企画を考えることもあります。

日本だけでしか伝わらないものは、大企業がやったからといって世界では伝わりません。始めから「世界」を目指すからこそ、より大きなインパクトが生まれるのです。

ーターゲットを広げると、イメージがボヤけてしまうんじゃないかと思うのですが。

確かに、「世界中を幸せにする商品を作る」というアイデアを出すのは難しいでしょう。けれどもかならず、世界中の人びとが感じている「課題の共通項(インサイト)」があるはずなんです。

例えば、日産自動車の『INTELLIGENT PARKING CHAIR』は、オフィスの会議室などに無造作に置かれた椅子が、手を叩くと元の位置に自動で戻るというもの。これは、「散らかった会議室のイスを戻すのは面倒くさい」という誰もが体験したことのある不満を解決したことで共感を呼びました。

Lyrical Schoolのミュージックビデオ『RUN and RUN』は、曲そのものは日本語だったものの、スマホで観るからこそ楽しめる縦型動画ということで海外でも話題になりました。「スマホが乗っ取られる感覚」というのが、万国共通で面白がられたからこそですね。

世界の「課題の共通項」を見つけるための手法

ー「課題の共通項」を見つけることは、商品やサービスを開発するうえでもヒントになりそうです。見つけるためのポイントは何でしょうか。

われわれは、あらゆる分野の最新情報を独自のスキームでリアルタイムで収集し、人びとが何に関心をもっているかを常に探っています。その関心の背景にこそ、「課題の共通項」が眠っています。

そうして集められた情報を元に、「このネタやトレンドは、このクライアントにこういうふうに活かせるんじゃないか」というアイデアの交換を毎日行っています。そういったプロアクティブな会議と、得意先から与えられたお題に応える会議、その2種類を週に10〜20回行い、アイデアを出しています。

ー海外でも通じるアイデアを生み出すためには莫大なインプットとアウトプットを要すると思います。どのようにされていますか?

話題になっているニュースや動画をSNSで毎日数百件単位で確認し、気になったものを見つけてはFacebookの「保存する」機能などを使ってクリッピングしています。そして、「なぜこれが世界で話題になっているのか」を分析し、要素を分解。この解釈が、新しい企画を考えるための材料になります。

この手法は、広告業界だけでなく、メーカーの新製品企画や新規事業の創出など、あらゆるアイデアが求められる場面に適用できます。

会議は社内だけのときもありますし、クライアントと一緒に実施することも。社内の会議なら3〜10人くらいが集まって、それぞれが3〜30案程度をA4の紙に書いて持ち寄り、テーブルの上に並べます。

そのアイデアに付随する話題や乗っかれるアイデアを話して、どんどんふくらませていく。「これはもっと研ぎすまそう」「これとこれは合体させよう」とか、紙を分類していくんです。紙に書くアイデアや言葉は、議論のなかで自分が考える時間をもつためのツールでもあります。

会議室のモニターにはあらゆる分野の最新情報が映し出されている
会議室のモニターにはあらゆる分野の最新情報が映し出されている

顧客をアイデアのデコンストラクションに巻き込み、かたちにする

ー数あるアイデアの中から海外でも評価されるであろうアイデアを見極めるための秘訣は何でしょうか。

普遍的な感覚をもち続けること。日本人もしくは業界人の感覚では「今までにない新しいアイデア」だったとしても、その他の人からすると「ただの突飛なアイデア」でしかない、ということになりかねません。普遍的な感覚が、海外でも通じる共感の深さにつながるんです。

オーストラリア政府観光局のプロモーションで行った『GIGA SELFIE』という企画では、指定の場所に立ってスマホを起動させると、遠方に設置されたカメラがオーストラリアの大自然とその人の笑顔を撮影するシステムを作りました。

この場合の課題の共通項は、「自撮りだと後ろに広がる壮大な景色までは記録できない」でした。これは、誰しも共感するはず。アイデアの評価軸において強いのは、やはり共感なんです。

日本人ならではの感覚からいったん離れるために、海外で報じられた日本のニュースへの反応を見たり、「ロボットレストラン」のような日本にいるわれわれでさえ見たことのないカオスなものに触れてみるのもいいですね。そうすることで、アイデアにジャンプ力が出てきます。

ーアイデアを顧客と一緒にかたちにするためのコツはありますか。

プレゼンではなく、「ディスカッションをする」モードで臨むというのが大前提。スピーディーにアイデアを生むチームでは、その姿勢をクライアントに対しても求めています。会議は一方が企画を提案して、もう一方がそれを評価するのではなく、お互いにディスカッションをする場なのだと。

『INTELLIGENT PARKING CHAIR』も、日産さんと彼らのニーズや問題意識について同じ目線で話し合い、何が最良なのか吟味を重ねることで生まれたアイデアでした。

また会議の場では、クリエイターやプランナーだけでなく、プロデューサーや営業なども立場関係なく、フラットにアイデアを出すべきだと思います。それぞれの役職が日頃から注目している視点はやはり違うので、アイデアに多面性が生まれます。

アイデアはかならず何かと何かの組み合わせ。「AといえばB」という連想や、「もしもAがすべてBだったら」という仮説など、法則を理解することが、良いアイデアを出すための一番の近道です。

そうやって既存のものに新しい要素を入れて行うデコンストラクション(破壊と再構築)を、クライアントを巻き込みながら繰り返すことでアイデアは研ぎすまされていくのだと思います。

TBWA HAKUHODO インタラクティブプラナー 栗林和明

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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