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INTERVIEW
チームの生産性を高めたいなら、部下の「超集中時間」を削り出せ
INTERVIEW

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BOOK MARK

生産性の向上は企業にとって喫緊の課題。そんな中、人の「集中力」を最大限に引き出すという斬新なアプローチで、社員の生産性を高め、企業の業績向上につなげようとしているのが、アイウェアブランドのJINS(ジンズ)です。

ジンズの「集中力」プロジェクトを主導するJINS MEME(ジンズ・ミーム)グループの井上一鷹マネジャーはこう断言します。

そもそも人は、集中力を一日最大4時間以上保てないと言われています。朝型に切り替えて朝の時間を有効活用するのが良しとされる風潮がありますが、事実、夜型の人もいる。すべての社員に画一的な生産性向上の施策というものはありえないのです。

井上さん主導のプロジェクトでは、人の集中力にまつわる延べ「20000時間分」ものビックデータを蓄積し分析。そこから分かってきた「新事実」、チームメンバーが「超集中」できる組織作りの秘訣とはーー。

株式会社ジンズ JINS MEMEグループ マネジャー 井上一鷹

PROFILE

株式会社ジンズ JINS MEMEグループ マネジャー 井上一鷹
井上一鷹
株式会社ジンズ JINS MEMEグループ マネジャー
1983年生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業後、アーサー・D・リトルに入社。大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。2012年にジンズに入社。社長室、商品企画グループマネジャーを経て現職。学生時代に算数オリンピックアジア4位、数学オリンピック日本最終選考に進んだ経験がある

生産性を測る上でも「目は口ほどにものを言う」

—どうして井上さんは人の「集中力」に目をつけたのでしょうか。

日本のホワイトワーカーは生産性が低い。ですが、一方で「どのような工夫が社員の生産性を高めるのか?」に対する解が定まっていないのもまた事実。

そこで、「生産性」というものを再定義、あるいは別の言葉に言い換えてみようと、成果の上がる仕事環境に関するサーベイを取ってみたのです。すると・・・

他人からの会話など突発的なコミュニケーションに邪魔されず、自分のアウトプットに集中できるまとまった時間を確保できるときに生産性が高いと感じる。

とにかく「集中力」を多くの人がキーワードとして挙げました。詳しくは後述しますが、実際・・・

  • 人は集中すると「まばたき」の回数が1/6にまで減る
  • その集中状態をハイパフォーマーの人は普通の人の「倍」以上作れている

ことが検証で分かっています。

業績や利益率は「組織」の論理に立った生産性。「個人」が直観的に理解できる生産性とは集中し続けられる時間のことなのではないか。この仮説が出発点でした。

—そもそも、人が「集中している」とはどのような状態を指すのでしょうか。

ひとくちに「集中」といっても、その定義は心理学的に見るか脳科学的に見るかによっても異なりますし、何を分析したいのかによっても、指標は変わってきます。

私たちが目指すのは、持続性のある集中力が続いている「超集中状態」。心理学者ミハイ・チクセントミハイが提唱した、いわゆる「フロー状態」に近いものです。

—「超集中」して仕事をしているとき、人は普段とどう違うのでしょうか。

ある大学との共同研究において、ジンズのスタッフ80名に一斉に伝票処理の作業をしてもらったところ、たくさんの伝票を処理できた人たちの共通項が見えてきました。それは、「まばたきの回数」と「まばたきの強さのばらつき」です。

人はモノゴトに集中して没頭しているとき、まばたきの回数が減ります。例えば、「テトリス」をプレイ中、余裕があるときには1分間に20回ほど。ブロックが積み上がり、「あともう少しでゲームオーバー」だと1分間に3、4回ほど・・・ 実に1/6にもなるのです。

JINS MEME」には3点式眼電位センサーと加速度センサー、ジャイロセンサーが搭載されていて、起きてから寝る前までのまばたきの回数と強度の安定度合い、視線移動、それから体軸の変化を測定します。これらのデータから集中力を判定するのです。

「JINS MEME」
「JINS MEME」

まばたきの回数が減ると没頭状態となり、まばたきの強さが安定すると、リラックスしていると言えます。このとき、視線移動は少なくなり、体軸はブレずに安定している。これが、持続性のある集中力が続いている「超集中状態」です。

現在、「JINS MEME」を使っている方のデータを収集し、延べ「20000時間分」のデータが蓄積されています。分析すると、さまざまな示唆が得られました。

例えば・・・

  • 最も多くの人が集中できる曜日は水曜日
  • 月曜日と木曜日は多くの人の集中力が低い
  • 朝イチと夜に集中できる人が多いこと

など。つまり、多くの企業が導入している「水曜日はノー残業デー」が逆効果である可能性があるのです。

しかし、「では、せっかく集中できる日だから水曜日をノー残業デーにするのは止めて、他の曜日にしよう」と考えるのは短絡的です。本質的には、そもそも「人によって集中できる環境は違う」というのを理解することが重要です。

株式会社ジンズ JINS MEMEグループ マネジャー 井上一鷹

—全社員に適用される画一的な施策というのは、かならずしも効果的ではないのですね。

はい。例えば、ジンズの社員のワークスタイルを比較してみると、この社員は典型的な朝型で、朝のほうが集中できる。こちらは夜型で、15〜20時くらいに集中が高まっている。こうなると、夜型の社員を無理に朝型のワークスタイルにシフトさせても、効果は上がりません。

僕なんかははっきりとデータに表れているんですよ。16時以降にならないと集中できないって。ですから、深夜のファミレスで無心にパソコンと向き合ってる時間がいちばんクリエイティブかもしれません(笑)

一説には朝型か夜型かというのは時計遺伝子によって決まっていると言いますから、抗いようのないことに取り組んでも意味がありませんよね。

集中力は「筋力」と同じく鍛えられる。そのための環境作り

—自分に適した集中環境を作るため、どのような取り組みが手がかりになるのでしょうか。

大前提として、「人はマルチタスクはできない」ことがすでに証明されています。「マルチタスクが得意」な人は、モノゴトを瞬間的に分類して優先順位を判断し、細かくシングルタスクに切り分けて、その一つひとつの処理に集中できている、ということなんです。

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また、先ほど話した通り、深い集中に入るためには最低23分必要と言われています。ですが、その時間を待たずして、メール通知が届いたり、誰かに話しかけられたりしますよね。つまり、現代人はますます一つのことに集中できなくなっているんです。

集中力というのは「筋力」のようなもの。筋肉と同じく鍛えることはできますが、集中できない状態が続くと、集中しようとする力はどんどんと落ちていきます。

—どのように集中力を鍛えればいいのでしょうか。

自分が集中できる環境を自ら生み出す力を培う、ということですね。例えば、帰宅したら玄関にスマートフォンを置いて、プライベートな時間には見ないようにしたり、集中したい作業中はあらゆる通知をオフにしたり・・・。

ただ、難しいのは、多くの人がそれを許されない環境にいるということ。入社したての新人が休日に上司からかかってきた電話を無視したら、「なんで取らなかったんだ」と怒られるだろうし、取引先からの連絡は無下にできない。

日本のホワイトワーカーの生産性が低いのは、「無理なのに無駄にがんばらざるを得ない」からです。根性論が強すぎて、「仕事が終わっていないのに帰るなんてもってのほか」となってしまっている。

—では、どうすればいいでしょうか。

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まずは、上司が根性論から脱して、集中することの重要性を理解すること。

「集中力は有限」なんです。休息をはさんだとしても、1日4時間が限界。知人は、「根詰めて4時間以上集中して作業したけど、翌日はまるで二日酔いになったみたいに使い物にならなかった」と。エナジードリンクを飲めば30分は集中できるかもしれないけど、持続はしません。

アスリート界でも「アクティブ・レスト」という考え方がありますけど、積極的に休むからこそ、持続的に集中できる。そして集中力には限りがあることに理解がある組織にしていくべきなんです。

「プロ」のホワイトワーカーなら、集中する環境を整えた上で生産的な仕事に取り組まないといけないのに、ただなんとなくオフィスに来て、なんとなくPCを開いてしまっている。メジャーリーガーのイチロー選手はなんとなくバッターボックスには立たないじゃないですか(笑)

—上司は「生産性を上げろ」とは言いますけど、「集中できる環境を整えろ」とは言いませんね。

そうです。なぜなら、集中すること自体やその効果が数字で可視化できなかったから。多くの企業が能力開発や研修に力を入れるのは、それが明確に成果を定義できるからですよね。ただ、これだけ仕事が高度化していくと、それだけでは差別化できなくなっていく。

日本でも経営のトップには、知識や知恵だけでなく精神・・・心を鍛える重要性に気づいて、自ら取り組む人も多い。「週末、滝に打たれてきた」とか「ロードバイクでロングライドした」とか。それは、結果的には平日、自分がパフォーマンスを上げるための一環。

先進企業の経営者だけでなく、ミドルマネジメント層やリーダーにもっと「集中する」ことの重要性に気づいてほしいのです。

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部下が「なぜ?」を突き詰めることが生産性向上につながる

—では、個人として生産性を上げるためにどういうことから始めていけばいいのでしょうか。

例えば、すぐに仕事に取り掛かるのではなく、その前に「Why」=なぜその仕事をしているのかを徹底的に突き詰めることです。

例を挙げましょう。あるデザイン会社に協力してもらった調査で、新人デザイナーとベテランデザイナーとでは図表のように作業効率が違いました。

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全計測時間中、集中状態にあった割合は新人デザイナーが34.5%、それに対してベテランデザイナーは69.1%と倍以上。新人は集中度にムラがあるのに対して、ベテランは安定的かつ継続的に集中できていたのです。

仕事の進め方を比べると、ベテランは作業に取りかかる前、徹底的に「Why」を考えていた。一方、新人は最初の10分は集中できるけど、途中から「なんでこれをやっているんだろう」「クライアントに何を提案しよう」と迷い始め、だんだんと集中力が落ちてしまったのです。

つまり、一人ひとりが内省して「Why」、また「How」=よりよく働くためにはどうすればいいかを考え尽くして仕事をしたほうがいい。「働き方改革」にしてもトップダウンではなく、社員が自発的に取り組まないと意味がありません。

社員が自発的に取り組めるよう、上司としてできることはどんなことでしょうか。

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部下が自ら「Why」を問いかけることに寄り添うこと。

上から「Why」をガンと押しつけるのではなく、自分の考えを持っている部下にはその余地を与え、画一的な部下には画一的な指示ではなく、「そもそもどうしたいのか」と問いかけるような姿勢が必要です。

実は、人というのは、生産性を上げて仕事がうまくいっているから幸せなのではありません。むしろ、その逆。幸せを感じやすくて、自分が幸せだと思っている人ほど、生産性が上がり仕事がうまくいくようにできています。

だとすれば、「自分のこうしたい」と「組織としてやるべきこと」が連動していれば、おのずと生産性の高い組織は生まれるはず。チームのマネジャーの役割は、その2つをつなげることではないでしょうか。

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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