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INTERVIEW
キーワードは「おせっかい」BUSINESS INSIDER JAPAN編集長・浜田敬子の人脈構築術
INTERVIEW

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BOOK MARK

ビジネスを成功に導く上で、キーパーソンとのつながりが不可欠なのは確か。どうすれば、臆することなく人とつながり、仕事に活かすことができるでしょうか。

2017年1月にローンチされた『BUSINESS INSIDER』日本版の統括編集長を務める浜田敬子さんは、前職の朝日新聞社では週刊誌『AERA』編集部に17年間在籍し、2014年から2年間編集長を務めました。

その間、ほぼ日やNewsPicksとのコラボ企画や、秋元康氏など外部プロデューサーによる「特別編集長号」など次々に新機軸を打ち出し、大きな話題を呼びました。浜田さんは編集長として、どのように人脈を築き、仕事に活かしてこられたのでしょうか。

キーパーソンの心を掴み、さまざまな人と人をつなげる、その仕事術に迫りました。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

PROFILE

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子
浜田敬子
株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長
1989年朝日新聞社入社。前橋・仙台支局、週刊朝日編集部などを経て99年からAERA編集部。女性の働き方・雇用問題、国際ニュースを中心に取材。副編集長、編集長代理を経て2014年から編集長。16年5月から朝日新聞社総合プロデュース室プロデューサーとして新規プロジェクトの開発などに取り組む。「働くと子育てを考えるWORKO」「Change Working Style」などのプロジェクトを立ち上げる。17年同社を退社し、株式会社メディアジーンに入社、現職に就任。テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の水曜コメンテーターなども務める

「ゆるやかなつながり」が生んだ転職のきっかけ

—長年勤められた朝日新聞社を退社し、この4月から『BUSINESS INSIDER JAPAN』編集長に着任されました。ご自身の働き方に変化はありましたか。

企画の立て方や基本的な仕事の流れは変わりませんが、圧倒的に違うのはスピード感ですね。競合となる経済ニュースメディアもたくさんありますし、タイミングを逃すと他媒体に読者を総取りされてしまいかねない。

毎日12、3本は記事を更新しています。夕方に取材してもらってから、深夜に原稿が上がってきて、それをチェックして翌朝に出す・・・ということもありますから、まだ慣れるのはちょっと時間がかかりそうです(笑)

—浜田さんは職業柄、さまざまな人とつながりがあるかと思いますが、「人脈」をどのように捉えていますか。

実は今回の転職自体、友人からの誘いがきっかけだったんですよ。2、3年ほど前に友人に誘われて、丙午生まれの同世代の集まりに参加するようになったんです。C Channelの森川亮さんやプロノバの岡島悦子さんなど、さまざまな分野で活躍する同い年の方々が集まる会で。

3カ月に一度くらいのスパンで会食をして、お互いの近況を話して・・・年末は必ずカラオケ大会を開催して、”80年代選曲縛り”で盛り上がる(笑)30人くらいの規模で、みんなゆるくつながってるんですけど、そこで出会ったのが今田(素子 メディアジーン代表取締役CEO)だったんです。

「2年くらいかかってようやくBUSINESS INSIDERのライセンスが取れそうだから、ぜひ編集長をやってもらえないか」と頼まれて。

彼女としては、これだけデジタルメディアが影響力を持っていく中で、若い世代にもきちんとしたニュースを届けたい、という思いがあった。そこは私も大きく共感するところでしたし、引き受けることにしました。

『BUSINESS INSIDER』日本版
『BUSINESS INSIDER』日本版

—その集まりは、同い年ということ以外に何か共通点はあるのですか。

いや、もう本当に歳が同じ、ということだけ。無理にその輪を広げようという性質でもないから、紹介ベースでつながっている感じです。

でも世代が同じというのはすごく大きくて、丙午1966年生まれって、迷信の影響もあってその前後と出生率が極端に下がっていて、受験や就職には優位に働いたけど、その時々の流れに翻弄されてきた世代だと思うんです。

今やビジネスの現場にも勢いのあるベンチャーがどんどん入ってきて、若い世代が主役となりつつある。でも、私たちもまだまだやれるし、がんばれるよね、って励まし合っています。

趣味でバンドをやってる人のライブを観に行ったり、ルワンダでナッツ農園をやってる人がいるから、「行ってみよう」と有志でルワンダに行ったり・・・友人としてのつながりがなければ、きっと行くことのなかった場所へ行けるし、知ることのなかった新たな体験を得られる。精神的な深いつながりがあるんです。

—そこではあまりビジネスの話はしないのですか。

やはり日常の多くを仕事に費やしていますから、近況を話す中でビジネスの話になることもあります。

私もAERAの編集長から総合プロデュース室というビジネス部門に移ったとき、それまでとは異なる仕事だったので、迷いもあったんです。そのときに「こういうことをやろうとしてるんだよね」と話したら、アドバイスをくれたり、個別に連絡をくれて相談に乗ってもらったりしました。

ビジネスの匂いがまったくしない、というよりは、「今こんなこと考えてる」「あ、それならこういうのがあるよ」・・・と率直に話し合える。「この人を利用しよう」みたいなギラついた感じは一切ないし、心の拠りどころというか、本当になんでも話せる友達ですね。

つながりたい相手を「その気にさせる」一通の手紙

—日本では「人脈」という言葉に若干ギラついたイメージがついているというか、「目的を果たすために誰かとつながる」ことに抵抗感を持つ人もいます。浜田さんはどうお考えですか。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

でも、もし目的を果たすためにその人が必要だとしたら、その思いを伝えるべきですよね。伝えるだけなら0円じゃない(笑)もし相手からNOと言われても、ちょっと落ち込むぐらいなんだから、どんどん伝えるべきだと思います。

みんな、やる前からすごく考え過ぎなのでは、と思います。「この人はムリなんじゃないか」「メールしても返事もらえないんじゃないか」・・・って。でも、それならそれでしかたない。次、次!って。

私がAERAの特別編集長号を作ったときも、1号かぎりの編集長をお願いした秋元康さんは一緒に書籍を作ったのでつながりはありましたが、小山薫堂さんやスタジオジブリの鈴木敏夫さんと特につながりがあったわけではありませんでした。

なぜその方にお願いしたいのか。雑誌の売上が右肩下がりで、厳しい環境ではあるけれど、その中でも新しい挑戦をしたい・・・だからこそ、ぜひ力を貸してほしいと言って、なぜ「あなたにお願いしたいのか」という理由を手紙に書いて送りました。

「今どき手紙なんて」という声もありますけど、私たちの世代では手紙なんですよ。1号作るのに3カ月ほどの時間をいただくわけですから、その方に「面白そう」と思ってもらえるようなことを考えました。

—具体的にそれはどういうことですか。

「1号かぎりの編集長をやってみませんか」「あなたが考えるAERAを作ってみませんか」というからには、かぎられた一部のページをお願いするのではなく、表紙から連載も含めて、丸ごと1冊お願いするということです。

その方が「こんなことをやりたい」と言えば、私たちはすぐにNOと言わないようにしました。例えば、小山薫堂さんから与えられたテーマは「やさしくなりたい。」というもの。「このテーマに共感してくれる企業を集めたい」と、広告も含めてプロデュースしていただきました。

その際、ダブル表紙にして、表4(裏表紙)は「AERU(あえる)」とロゴを置いて、「会える」「和える」と言葉をもじって、その企画に乗ってくれたJALの広告にしたんです。プロデューサーって、アイデアが形になることにワクワクすると思うんですよね。

スタジオジブリの鈴木敏夫さんも、最初は乗り気でなかったんです。でも彼は『アサヒ芸能』出身だから、きっと雑誌は好きなのでは、という確信があった。2、3度目かの訪問で、私たちが考えた巻頭特集を提案したんです。「ジブリのキーマン7人」みたいな群像劇を。

そうしたら、「それ、誰が読みたいの?」とあえなく却下されて。そして鈴木さんが立ち上がって、ホワイトボードに書き出したんです。「読者が今、何を読みたいか。それは、『引退した宮崎駿が、今何をしているか』です」。

プロデューサー魂に火を点けるというか、なんとか「面白そうだな」と思ってもらえるように、こちらも真剣に思いやアイデアをぶつけました。「秋元康さんのときは何万部売れたの」とまで聞かれましたからね。

表紙には、宮崎駿さんが当時行われていた「クルミわり人形とネズミの王さま展」のために描き下ろした絵を、宮崎さんには内緒で持ってこられた。やると決めたら、どうしたら売れるか、話題になるかを徹底的に考えてくださいました。

—相手にとって「面白い」と思ってもらえることを考えることで、まったくつながりのなかったところに人脈が生まれたんですね。

やはり、単に「人脈を作る」というより、「何のためにつながりたいのか」が明確にあるということだと思います。

「Will」が明確な人にはつながりが生まれる

私の場合、女性同士のつながりも多いのですが、女性ならではの課題や悩みがあって、その解決のために一緒に何かをやろう、ということがあります。

今年の3月にもユニリーバ・ジャパンの島田由香さんから誘われて、PwC Japanと共同で開催している「Project WOMEN」という、女性のためのセミナーに参加したのですが、そこでは参加者同士のつながりも強くなったんですよね。それはやはり、同じ課題を共有しているからだと思います。

子育て支援プロジェクト「iction!」を立ち上げた小安美和さんとのつながりも、彼女がAERAに売り込みに来てくれたことがきっかけです。その少し前に、元日本IBMで社会変革に取り組む一般社団法人re:terra lab.の渡邉さやかさんも飛び込みでシンポジウムのモデレーターをお願いに来てくれていました。小安さんがリクルートを退社してやりたいことを聞いたら、日本の地方や世界で「女性に仕事を作っていくこと」と聞き、これはさやかさんとつながったら面白そうだと。課題感ややりたいことも似ているな、と感じたんです。

それで、小安さんと渡邉さんをつなげて、思惑通り意気投合しました。そして、絶対合いそうだから、とユニリーバの島田さんも紹介して・・・まるで「おせっかいおばさん」みたいな感じで(笑)、どんどん紹介して、気づいたらみんながつながって、仲良くなっている感じになって。

確かなのは、それぞれやりたいことや「Will(意志)」がはっきりしている、ということ。Willがよく分からない人には、あまり紹介できません。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

—ただやみくもに人とつながろうとするのではなく、「Will」を明確にすることが大事なのですね。

女性は「働きやすさ」や「ダイバーシティ」など、普遍的な課題があるからこそつながりやすい面はあるかもしれませんね。

ただそれ以外でも、例えば大企業の若手有志が集まった「One JAPAN」に象徴されるように、共同発起人の濱松誠さんの「One Panasonic」という活動から始まって、「大企業の中から変革を目指そう」という目的があったからこそ、あれだけの規模の人がつながったわけです。

目指したい方向ややりたいことを明確にして、そこへ旗を立てると、人と人はつながりやすくなると思います。

—「これは失敗する」という人脈の作り方はどのようなものでしょうか。

正直なところ、交流会とか、立食パーティに行くほうが難度も高いと思うんですよね。「人脈を作る」ことに満足してしまいがち、というか。人脈って結局、それを作ることが目的じゃなくて、それをどんなことに発展させるかどうか、だと思うんです。

とある場所で講演をした後、名刺交換をした男性はこう話していました。「〇〇さんとつながりたくて、彼が通ってるレストランを調べて、名刺交換の機会を窺ってるんです」と。それで、「〇〇さんとつながって、何がしたいの」と聞いてみると、「いや、特に具体的に何か考えているわけじゃないんですけど」って。それでは意味がない。

私の場合、雑誌や記事という成果物があるから、紹介する側もされる側にも警戒感がありません。『AERA』のときもそうでしたし、今はBUSINESS INSIDER JAPANでも、企画会議のときに「この人知ってる? この人は?」と編集部員にどんどん人を紹介して、記事化していけるわけですから。

—ただ、多くの人は、なかなか明確な成果物に結びつけづらいのも確かです。

けれども、スタートアップでも大企業でも、何か果たしたい目的があったり、取引をしたいと考えていたりするのなら、やることは一緒ですよね。

その目的のためには何が必要で、何をどうすればいいのかを考えて、そのために誰かとつながる必要があるなら、それを明らかにする、ということです。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

C Channelの森川さんが先日、オフィスを移転されていたのですが、その同じビルにジャパネットたかたが入居しているんです。そこで森川さんがFacebookで「どなたか社長とつながりのある方いませんか。お会いしたいです」と書き込んで、すぐにつながっていました。

つながりは「おせっかい」すると不思議と巡ってくる

—浜田さんご自身は、これからどんな人脈を作っていきたいと考えていますか。

人脈を作ろうと思って作ってきたわけではないので、特に戦略的なことはないんですけど、やはり自分が「こういうメディアを作りたい」「こういうメッセージを読者に届けたい」というものがはっきりしてくると、そのメッセージに共感してくれる人が集まってきてくれると思ってます。

そして今は、せっかく朝日新聞社を辞めたのだから、あえてまったく違うキャリアを歩んできた人たちとつながってみたいな、と考えています。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

一つは、スタートアップで活躍する人や、テクノロジー分野に取り組んでいる人。BUSINESS INSIDER JAPANの関心分野に近い人びとですね。もう一つは、自分と世代も性別も異なる人。そういう人に意外と助けてもらえたりするんですよね。

AERA時代に助けてもらった中の1人が、コルクの佐渡島庸平さん。彼はAERAで連載してくれていた漫画家の安野モヨコさんの担当編集なんです。それで、ぜひ一度お会いしたいと挨拶に行ったんです。

そのとき、「ぜひ何か新しいことをAERAで一緒にやりませんか」と、いろんなアイデアを交換し合いました。その半年後、佐渡島さんから連絡がきて、リクルートとの広告企画につながったんです。

NewsPicksの佐々木紀彦さんもそうで、彼が東洋経済オンラインの編集長をやっていたとき、普通に編集部のお問い合わせメールに私が作った本の書評をお願いしたんです。それが縁で、会食することになって、働く女性のためのイベントを開催することになりました。彼がNewsPicksに移ってからも、一緒に企画をしました。

不思議なんですけど、「自分を出し惜しみする人」は、なかなかつながりを得られないんですよね。惜しみなく分け与えてくれる人とはつながりやすいです。こちらも惜しみなくいろいろ出しますし。おせっかいすると巡ってくるんですよ(笑)

AERAのときは先輩として、Giveするばかりのことが多かったんですけど、外へ出てみると与えられることのほうが多かったんです。取材もいわば、相手を頼っているわけですよね。ですから、頼られたら、基本的には断らないようにしています。

ライフネット生命の出口治明さんも「10名以上集まれば、どこでも話します」とおっしゃってますけど、私も今はとにかくBUSINESS INSIDER JAPANを知ってもらいたいので、自分の知識や経験を伝えることが何かためになるのなら、どんどん外へ出て行こうと思っています。

株式会社メディアジーン BUSINESS INSIDER JAPAN 統括編集長 浜田敬子

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
・21世紀のビジネス基礎知識「弱い絆の強い価値」
人脈がビジネスに与える影響、活用の仕方を深掘りします。

[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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