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INTERVIEW
学びを加速し、同じ意志を持つ仲間にも出会える。「自分をAI化する」これからの学習法とは?
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スマートフォンのSiriやGoogleアシスタント、Eコマースサイトでの商品推薦やホテル価格のリアルタイム設定など、今ありとあらゆる分野でAI(人工知能)の活用化が進んでいます。

そんなAI時代に私たち人間が求められる能力や資質については、これまで多くのメディアが取り上げてきましたが、「身体性」「人間らしさ」「クリエイティビティー」・・・ どれも抽象度が高く、つかみどころがないようにも感じられてしまいます。

そんななか、独自の「AI時代ならではの学習プロセス」を定義し、実践しているのが、元リクルートのAI研究所初代所長で、現在、AIを利活用したサービス開発を手がける株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長の石山洸さんです。

石山さんが考える新・学習プロセスは、「守:自分が能力を身につける」〜「破:その能力をAI化する」〜「離:そのAIをみんなにシェアする」の3段階からなり、学習した「自分」「自分のAI」「AIをシェアした人」の3者が共進化することだと言います。果たして、その真意とは――。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸

PROFILE

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸
石山洸
株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長
2006年リクルートホールディングス入社。同社のデジタル化を推進した後、新規事業開発制度を契機に新会社を設立。事業を3年で成長フェーズに乗せ、売却した経験を経て、2014年メディアテクノロジーラボ所長に就任。2015年リクルートのAI研究所であるRecruit Institute of Technologyを設立し、初代所長に就任。2017年3月デジタルセンセーション株式会社取締役COOに就任。2017年10月デジタルセンセーションとエクサインテリジェンスの合併を機に、現職に就任。

AI時代の学習プロセス、その「守破離」

―石山さんが私たち人間に必要な「AI時代の学習プロセス」について考えるようになったきっかけを教えてください。

エクサウィザーズのビジョンは「AIによる社会課題の解決」、そこに紐づいていますね。シンギュラリティー(技術的特異点)を迎える2045年の日本は、50歳以上の人口が6割にまで増加し、労働人口は不足して、課題が山積みになると言われています。

それに対して既存の学習プロセスでは、まずは自分が能力を身につけ、組織化し、スケールさせていくことで、課題を解決しようとしていました。ですが、それだけでは解決できない複雑で多面的な社会課題が多く残存しているんです。

今はAIを活用できる時代です。自分の仕事をAIに代替させ、なおかつAI化された他人の能力を使うことができる。すると、これまで困難だった社会課題を解決できる可能性も広がっていくのではないか。そう考え、AI時代ならではの学習プロセスを「守破離」で整理しました。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸

「守」は自分が能力を身につけること。「破」はその能力をAI化すること。そして、「離」はそのAIをみんなにシェアすることです。その後、また「守」に戻り、このループを繰り返すことで、「自分」と「AI」と「AIをシェアした人」の3者が共進化することを、AI時代の学習プロセスと呼んでいます。

―まず最初の「守」の段階はどういうものなのでしょうか。

「守」は、能力を身につけることです。人間がなにかしらの能力を身につけるには順番があると思うんです。これは、当社が今年度、新たに策定した「ミッション・バリュー・クレド」のバリューでもあるんですが、その順番というのが、まずはエンパシー(共感力)を持つこと、次にエボルブ(進化力)させていくこと、そしてエグゼキュート(実行力)することです。

エンパシー(共感力)は、自ら好奇心を持って学ぶ、能動的共感の意味合いで使っています。例えば、こうして取材に来てくださることもエンパシーの1つですよね。貧困・飢餓・教育などこれから山積みになるとされる課題に能動的に共感することが、能力を身につける出発点です。

自分自身の課題に照らし合わせて感情的に共感する、のとはまた違う意味合いなんですね。

そう、当事者意識やオーナーシップという言葉とも近いかもしれませんが、対象はあくまで社会課題。その上で必要なのは、エボルブ(進化力)。今まで先人たちが試してきた社会課題に対する施策を、AIを活用することで進化させ、課題解決につなげられないか、仮説を考えていくんです。

そして最後に、エグゼキュート(実行力)。実行しないと始まりませんから。これを繰り返すことで、まずは「守」、自分の能力を身につけていきます。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸

自分の能力をAI化し、シェアして、共進化させていく

―なるほど。「守」つまり能力を身につける具体的なステップが、エンパシー(共感力)、エボルブ(進化力)、エグゼキュート(実行力)の順番なんですね。次の「破」はいかがでしょうか。

ここが、属人的にしかスケールできなかった既存の学習プロセスとは違う、AI時代ならではのユニークな点です。「破」の段階では、自分の能力をAI化していきます。

自分の能力をAI化することで、人間が得意とする0から1を生み出す「クリエイティビティ(創造性)」と「ホスピタリティ(おもてなし)」に、AIが得意とする「サステイナビリティ(持続可能性)」と「スケーラビリティ(拡張性)」を掛け合わせることができるようになります。AIによって自分の学習がスケールしていくので、自分たちの能力は他者と共進化していくんですよ。

ただ、「AI化」と表現すると、途端に難しく感じてしまうかもしれないですが… まず最初にやるべきことは、普段やっている仕事のプロセスを「見える化」することです。どんな社会課題に共感し、それを解くためにどんなスキルを身につけ、今までどんな人と仕事をしてきたのか。実はこれ、ジョブディスクリプションをつくることと同義なんですよ。

例えば、自分の能力をAI化したものとして、先日、プレゼン作成支援AI「Ishiyama-kun」というものをつくりました。

プレゼン作成支援AI「Ishiyama-kun」
プレゼン作成支援AI「Ishiyama-kun」

これは私がプレゼン資料を作る思考プロセスをAI化したものなんです。現在はα版(エクセル版)ですが、項目に従ってプレゼンで伝えたい内容を入力すれば、魅力的なプレゼンになるように台本が出力される代物。

私がこれをつくる際には、クライアントへの営業のときに、自分はどんなふうに考え、どう語っているのかという思考プロセスをまずはエクセルに書き出して、整理をしました。ジョブディスクリプションと同じ形で始まっているんですよね。

今は、非公開のFacebookグループでテストユーザーに公開しているのですが、今後はその人たちがフィードバックをくれたり、改良を加えてくれたりして、AI「Ishiyama-kun」は共進化していくことになります。

「AI時代の学習プロセス」をトレーニングするには

―同じ学習プロセスを疑似体験できる、なにか他の手立てはありますか。

同じことはなにもエクセルじゃなくても、アナログな「カードゲーム」でもできるんですよ。これは、私自身が社会課題を解決するうえでの思考プロセスをカードに落とした「エクサウィザーズカードゲーム」です。

「エクサウィザーズカードゲーム」
「エクサウィザーズカードゲーム」

進め方は、次々とカードをめくっていくのですが、まず1つ目のカードは、先ほどお伝えした通りエンパシー(共感力)から始まります。エンパシー(共感力)のカードをめくると書いてあるのは、貧困・飢餓・教育などSDGsの17の目標。めくったカードが解決すべき課題になるんですよね。

2つ目に、エボルブ(進化力)をめくると、社会課題の解決のためにエクサウィザーズで過去に行った事例が書いてあります。例えば、日本気象協会と共同開発したAIを使った気象ソリューションなど。要は、そうした過去事例が、エボルブに必要なインスピレーションの種になってくれるんです。「気象を予測して、農業の生産性を高めれば、飢餓を解決できるかも」みたいに。

そして、3つ目に、エグゼキュート(実行力)のカードをめくります。エグゼキュートするうえで活用できる自社の経営資源が書いてあります。「外資系コンサルティング会社から転職してきた社員」のカードを引いて、彼に戦略を立ててもらう、といった具合に。

「エクサウィザーズカードゲーム」

―なるほど。たしかにこのカードゲームも、自分(自社)はどんな課題に、なにを、どう活かすのか・・・という仕事のプロセスの「見える化」そのものですね。

そうです。これにさらに、「クライアント」カード・・・顧客企業が持っている人・もの・お金などの経営資源を示すカードを混ぜ合わせることもできます。ちなみに今、カードの掛け合わせは全部で4万通りあります。

4万通りを超えると、カードゲームとして処理するのが大変になるじゃないですか。SDGsとか言っているのに紙のゴミも出てしまう(笑)。すると、自然にデジタル化していこうという流れになっていきますよね。

つまりそうやって、自分の頭の中だけにあった自分の能力がカードゲームになりデジタルになってAIで自動的にスケールし、その自分自身のAIをみんなにシェアする段階が、「離」に当たるんです。

食べログくらい気軽に「自分自身のAI」を投稿できる日が来る

―「守」は、自分が能力を身につけること。「破」は、その能力をAI化すること。「離」は、そのAIをみんなにシェアすること。なるほど、全体像が見えてきました。

ちなみに、「離」の次にはまた「守」を繰り返すんです。このループを繰り返すことで、「自分」と「AI」と「AIをシェアした人」の3者が共進化することが重要。

実はこのプロセスってすごく気持ちがいいんですよ。なぜなら、学んだ能力はAIにしてしまえばいいし、AIを使えば自分がすべてを身につける必要もない。つまり空き時間ができて、新しいことを学べるようになるんです。なにより、シェアをする過程で、同じ社会課題に意志を持った仲間に出会えますからね。嬉しいことです。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸

―たしかに。ただ、最後に疑問なのは、自分の能力をAI化したいと思ってジョブディスクリプションを作成したとしても、エンジニアリングの技術がなければ、「破」の段階のAI化は安易ではないと思うのですが・・・。

確かに今は、AIエンジニアじゃないと作れないかもしれないですが、今後は変わっていくと思いますよ。例えば、「Kaggle(カグル)」という世界中の機械学習・データサイエンスに携わっている人が集まるコミュニティがあります。ここでは、企業や政府などの組織と、機械学習エンジニアやデータサイエンティストがマッチングできるんですよ。

今後、次世代のKaggle(カグル)のようなコミュニティが生まれていく可能性は大いにありますよね。「自分の能力を100万円でAIにしてください」と気軽に頼めるようになるかもしれない。自分のAIをつくってみんなにシェアするのが、食べログにグルメ情報を投稿するのと同じくらい日常的になる日が来ると私は思いますよ。面白いですよね。

こうしたAI時代の学習プロセスが浸透することで、まずは、社会課題を解決するAIのプロダクトをつくれるソーシャルプロダクトマネジャーが増えてほしい。そして最終的には、この守破離のループを泳ぎこなす、社会起業家を増やしていきたいですね。

株式会社エクサウィザーズ代表取締役社長 石山洸

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[取材・文] 水玉綾、岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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