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INTERVIEW
社会を変えるペイ・フォワードの実践法、エンジェル投資家 千葉功太郎さんに聞く
INTERVIEW

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BOOK MARK

「キャリアにつながる投資」と言えば、MBA留学など「自分自身」に投資するという選択肢が思い浮かびます。しかし、その他に選択肢はないのでしょうか。

今回は、「他の人に投資する」という新しい選択肢をご提案します。他の人への投資とは、例えば、応援する若者の起業を支援することなどです。

オンラインゲーム会社、コロプラの元副社長である千葉功太郎さんは、有望ベンチャーへの投資活動などを通じて、「他の人への投資」を実践しています。

千葉さんは、「他人に投資することで、『ギブ・アンド・テイク』を超えるものを得られる」と言います。果たして、他人への投資を通じて自分が得られるものとはーー。

また、かならずしも豊富な資金がなくとも実践したい、とても大切な他人への投資の仕方があるそうです。

エンジェル投資家 千葉功太郎

PROFILE

エンジェル投資家 千葉功太郎
千葉功太郎
エンジェル投資家
1974年生まれ。1997年に慶應義塾大学環境情報学部を卒業し、リクルートに入社。ネット黎明期よりWebサービスなどの立ち上げに携わる。2000年よりモバイル系ベンチャーCYBIRD社へ。2001年にはKLab社創業取締役に就任。その後、2009年に創業メンバーとしてコロプラ社に参画、2014年には東証一部上場を果たした。2016年7月に取締役を退任。現在はエンジェル投資家として活動、慶應義塾大学SFC研究所上席所員も務める

最も大切な他人への投資は「時間の提供」

ーコロプラの取締役を退任され、現在は何に取り組んでいますか。

今は、「サバティカル期間」です。サバティカルとは、大学用語で “研究余暇” のこと。会社を離れて、まとまった時間がないとできないこと、研究をする期間です。期限は決めず、しばらくは興味のあることをとことん勉強していきたいと思っています。

自分の時間をおおまかに分けると、エンジェル投資家としての時間が3分の1、大学でドローンの研究をするなどフリーの時間が3分の1、父親として育児をする時間が3分の1。とはいえ、「これ」とあまり縛られず、いろいろなことをインプットしています。

ーエンジェル投資家としての活動に特に力を傾けている印象です。

そうですね。「エンジェル投資家」とはアメリカのシリコンバレー由来のもの。ベンチャーキャピタルなどから大きく出資されるようになる以前の未来ある若者に、少額の資金援助や経営のアドバイスをする人たちのことです。

投資活動は今から2年半ほど前、コロプラにいた頃に始めました。それを取締役を退任してからは加速。この半年で出資先は10社ほど増え、合わせて30社ほどになっています。出資額の規模は、一社あたり500~2000万円くらい、最大で1億円です。

ベンチャーキャピタル(VC)への出資も行っています。こちらの規模は、一つにつき数千万円から1億円くらい。これまで17のVCに出資してきましたので、国内のVCから投資を受けるベンチャーには十中八九、関わっていることになります。

千葉さんは支援する若手起業家の情報発信にも積極的
千葉さんは支援する若手起業家の情報発信にも積極的

ーエンジェル投資家になったきっかけは何でしょうか。

私自身、26歳の頃、エンジェル投資家の方に助けてもらったんです。学生の頃から起業したいと思っていて、実際に会社を作りましたが、お金もなければ、事業計画も甘い。今思えばとても恥ずかしいくらいの自分に、その方は気前良くお金を出してくれました。

しかもその方は、出資した後も「ああしろ、こうしろ」と言わなかった。「こんなに何も言ってこないの?」と驚くほどに。私から相談したときだけアドバイスをして、あとは暖かく見守ってくれて・・・。「慈善事業のようなことをする人がいるんだ」と感銘を受けました。

そんなことがあって、当時から「自分もビジネスで成功した暁には、次の世代の起業家を応援する人になりたい」と思うように。それで、今少し余力ができたのでやってみようとエンジェル投資家としての活動を始めたんです。

ー出資した起業家とはどのように接していますか。

「投資家=お金を出す人」と思われがちですが、お金を出すことは、実は誰かを支援するプロセスの中でも「後の方」のフェーズなんです。それよりも前に、その人に対して時間を投資しています。この「自分の時間を提供する」ということが、いちばん大切なんです。

この取材の直前も、22歳の起業家と話して、事業のアドバイスをしていました。彼らは「良い話を聞けたね」と帰っていき、それがゆくゆくはお金の投資につながったり、つながらなかったりする。長い人だと、出会ってから20年経って出資することだってあります。

おこがましい言い方かもしれませんが、「僕の一時間をどうぞ」と。僕にとって何か感じる人であれば、年齢問わず、学生でも、年上の人でも、職業とか肩書きも問わない。会ったり、家に呼んだりして話して、それでときどき花が咲けば良い。

「ペイ・フォワード」すれば社会を変えられる

ーそれによって千葉さんが得ているものは何でしょうか。

彼らと接していく中でいろんな刺激を受けたり、自分が勝手に何かを学ぶことはあります・・・ いや、でも、「それが何の役に立つのか」という疑問や、「相手とギブ・アンド・テイクしよう」という欲求を持って、他の人に投資しているわけではないんです。

それは出資した後も同じで、私を助けてくれたエンジェル投資家の方のように、私も支援する起業家に対して何か言うことはありません。もし起業家から経営に関する悩みを相談されたらアドバイスをすることはしますが、経過報告のようなことはいっさい求めません。

ー誤解を恐れずに言えば、自分は何も得られなくても良い・・・?

その人が頑張った結果、市場が活性化して、自分が持っている株式の価値が高まって・・・ ということはあるのかもしれません。でも、それよりも「相手が喜んでくれたらそれで良いじゃん」というサービス精神に近いというか。

時間にしてもお金にしても、誰かに投資するときは10〜20年という単位で「人」を追いかけています。だから、たとえ今やっているビジネスがダメだったとしても、この人なら一度はどこかで面白いことをしてくれるはずだ、と。

エンジェル投資家 千葉功太郎

私の根本には、「日本を元気にしたい」という思いがあります。

みなさんは毎日、「iPhone」などAppleの製品を使いますよね? Facebook、Amazon、TwitterなどWebサービスも使うでしょう。では、日本発の製品やサービスで、海外でも毎日使われているものはあるでしょうか。

ソフトバンクや楽天など、IT業界で頑張っている日本の企業もありますが、時価総額が一兆円を超えるのは日本では数えるほど・・・。一方、アメリカのシリコンバレーを見わたすとそんな会社がゴロゴロあります。

株式市場に上場しているIT企業の時価総額も、日本とアメリカとでは一桁違う。つまり、世界から見ると今の日本のIT企業は、その存在が「見えない」くらいの規模なんです。そういう現状が悔しくて、なんとかしたいーー。

そのために、自分の時間やお金を、「ペイ・フォワード」の精神で他の人に投資しているんです。

ペイ・フォワード(Pay it forward)

特にお金は「経済の血」みたいなもので、自分が受け取ったら、自分の知見と合わせてすかさず次の世代にどんどん渡していくことで、より循環していく。それによって市場が活性化して、日本が盛り上がるーー。それがやり甲斐であり、私が “得られるもの” でしょうか。

ー自分以上に「社会」のために、今できることに徹しているのですね。

そうですね。ですから、投資した人に対しては、経営にこそ口出しはしませんが、できるだけ「大きな夢」を抱かせるようにしています。そして、人としての誠実さも求めます。「お金だけ持って消えてしまった」では悲しいですからね。

起業家たちもそれをよく分かっていて、「普通のベンチャーキャピタルなら投資金額の数倍でお返しすれば満足してくれそうだけど、千葉さんはそんなんじゃガッカリしそうなだけに、逆に良い意味で強いプレッシャーになって頑張れます」と言ってくれます。

実際、ペイ・フォワードの輪というか、エンジェル投資家の裾野はここ2〜3年で広がってきたと実感します。時間やお金を他の人に投資する人が増えている今の状況があと5〜10年続けば、日本は変わると信じています。

身の丈に合った「もてなし」から始めよう

ー他人への投資は豊富な資金がある人に限られてしまいませんか。

いいえ。先ほど言った通り、「お金」は他の人を支援するためのリソースの一つです。最も大切なのは、他人に時間を提供すること。つまり、それは「人をもてなすこと」です。

私はこのことを両親から教わりました。「大切な人を、自宅の食事でおもてなししなさい」と。別に豪華なレストランに連れていけというわけではありません。自分の家に仲間を呼ぶなど、身の丈に合ったものでかまいません。

ただ、ちゃんと手間暇をかけてもてなすことが大切です。そういえば、私の家には昔から人がよく集まっていました。

ー投資すべき人にはどこで出会うと良いですか?

今ならFacebookでも、おもしろそうな勉強会はいくつも見つかります。興味があるところに顔を出して、人とどんどんつながる。

そして、そこで自分の持っている時間や知識、人脈などで他の人をもてなしてください。そういう時間を意識的に作って、習慣化することが “投資家” として、社会を変えるペイ・フォワードの輪に加わるための第一歩です。

エンジェル投資家 千葉功太郎

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[取材・文] 井上晶夫、岡徳之

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