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INTERVIEW
心から打ち込める仕事にまだ出会えていない人たちへ 「没頭力」のメカニズム
INTERVIEW

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「自分が心から打ち込めるものを見つけたい」、そう願う一方、忙しい毎日に流され、またインターネットやSNSで膨大な量の情報にさらされるうち、自分がほんとうに興味があるものは何なのか、見失ってしまったことがある人は少なくないでしょう。

今回のテーマは「没頭力」・・・これ、と思える何か一つのことを見つけ、それに情熱を注ぎ続けられる力。私たちはどうすれば取り戻せるでしょうか。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

お話を伺うのは、合田真(ごうだ・まこと)さん。「世界で最も貧しい国」と言われるアフリカ・モザンビークで、再生可能エネルギー事業や金融サービスなど、持続可能なビジネスの開発に取り組んでいます。

合田さんは、途上国に進出する日本企業として国連に招かれ、世界各国の要人たちを前に講演し、商談を行うなど、今最もアグレッシブで注目すべき起業家の一人。

しかし、日々現場では、自身が経営するキオスクで従業員が店のお金を盗む、店の近所で殺人事件が発生し犯人は今も見つからないまま・・・など、日本では信じられないような問題が「毎日」何かしら起こるのだそう。

別にアフリカが好きだからと使命感に駆られているわけじゃない。だけど、次は10年くらい自分の時間を使ってもいいと思える仕事をしたかった。

合田さんはなぜ、今の仕事に打ち込もうと決心したのか。没頭が途切れてもおかしくない状況にありながら、なぜ情熱を注ぎ続けることができるのか。現代人に欠けている「没頭力」の正体を探りますーー。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

PROFILE

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真
合田真
日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO
1975年長崎生まれ。京都大学法学部中退。2000年日本植物燃料株式会社を設立、アジア・アフリカを主なフィールドとして事業を展開、2003年にバイオ燃料の生産を開始。2012年モザンビークに現地法人ADMを設立、無電化村で「地産地消型の再生可能エネルギー、食糧生産およびICTを活用した金融サービス」の開発に取り組む。医療ベンチャーも立ち上げるなど、幅広く活躍。

常識を覆すモザンビークの暮らしとその可能性

合田さんは現在、モザンビークなどアフリカで事業を展開されていますが、ブログを拝見して、率直に、とても大変なところでビジネスをされているんだな・・・と感じました。

そうですよね、アフリカでは毎日何かしら起こりますから(笑)。

例えば、モザンビークの農村で日用品や食料を売るキオスクを経営しているんですが、その運営を現地の人にまかせていると、帳簿とお金が必ず3割ほど合わなくて、スタッフに聞いてみると「虫に食われた」「妖精がお金を取ったに違いない」と真顔で言われたり(笑)。

それとか、キオスクのすぐ近所に庭のキレイなお家があって、「すてきなガーデニングですね」と近くの人に話しかけたら、「この家の人、昨日人を殺して今逃げてるんだよ」と言われたり・・・だとか。

それにいちいちショック受けるような人だったら、正直つらいと思いますよ。でも僕にとっては、そんな非日常が面白いんですよね。自分の中の常識がガラッと壊れて、「おいおい、すげえな」みたいな。むしろテンションが上がります(笑)。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

そんな大変な状況を楽しめるくらいじゃないと、モザンビークでビジネスはできないかもしれませんね。なぜ、アフリカだったのですか?

最初はまったく興味がなかったんです。アフリカにたどり着くまでは、東南アジア、インド、スリランカ・・・と自分の意思で取引国を広げてきましたけど、アフリカは「なんでそんなところいかなきゃいけないの?」とさえ思っていました。

2007年ごろ、マレーシアで買いつけたバイオ燃料を東京都交通局へ卸していたときに、取引をしていたパートナー会社がたまたまモザンビークへ事業を展開するということで、コンサルとして関わることになったんです。

でもアフリカに通うようになると、リアルに大地の広がりを感じられて・・・バイオ燃料って、土地代も人件費も安いところでないと成り立たない面があって、経済合理性を考えるとアフリカは最適なんです。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

それに、無電化地域が多いので、バイオ燃料を電力化したらニーズがあるんじゃないかとか、バイオ燃料の原料であるヤトロファをつくる農民の村には売店がないから、日用品や食料を売るキオスクを建てよう。そうしたら「なぜか」金額が合わなくなるから電子マネー決済システムを導入して・・・。

そんなふうに、毎年通っていれば新しい課題もビジネスアイデアも見えてきて、利害関係者だって増えていくじゃないですか。最初は、「一緒に行ってもいいけど、報告書は1文字も書かないよ」って言ってたくらいアフリカは関心外だったんですけど(笑)。

そうして徐々に本腰を入れるようになった、という感じ。だから、別に「アフリカが好きだから」と使命感に駆られたわけでもなければ、今だって「アフリカがすごい好きだぜ」というわけでもないんです(笑)。

では、どんなことがモチベーションになったのでしょうか。

さっきの「常識が揺らぐとテンションが上がる」もそうだし、既存の仕組みを組み替え直して、新しい「お金を生み出す仕組み」をつくり出すことに、僕は面白さを感じるほうなんだと思います。そういうことはバイオ燃料に目をつける前にもやっていて。

例えば、物流系の事業で、昔は郵便物を月200万通以上出すと日本郵便から大口割引が受けられたんですよ。それでいろんな会社から郵便物の差出代行を受託して、その割引分が利益になるみたいなビジネスモデル。

そんなふうに、既存のシステムの利権というか、お金が貯まってるところから、流れを少し変えてお金を違うところへ流す、ということが楽しくて。

でも、新しいシステムって一度きちんとしたものが組み上がると・・・飽きてしまうんですよ(笑)。それで、儲かるかどうかは別として、「次の10年くらいは腰を据えて、自分の時間を使ってもいいと思える仕事をやろう」と始めたのが、バイオ燃料事業だったんです。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

なぜ、バイオ燃料だったのですか?

僕自身、原爆が落とされた長崎出身ということもあって、小さいころから戦争やエネルギーについて考える機会は多かった。紛争の原因になりがちな石油資源ではない、別のエネルギーシステムを構築すれば、少しは平和になるんじゃないかなって。

でも、2001年当時あった資本金の2000万円はあっという間に底を突いて、従業員も雇えなくなって、1年半くらい「ニート」をやっていたんです。

近くで会社をやっている友達のところへ毎日通って、500円をもらって毎日チキンラーメンで空腹を満たして、あとはひたすらバイオ燃料について考えるような生活・・・まぁ、マズいですよね(笑)。

けど、他に何か興味のあることもないし、「バイオ燃料」という旗を立て続けていれば、何らかのアドバンテージにはなるだろう、と。実態は、ただの一日500円を他の人にもらって生活している人だったんですけど(笑)。

そんなとき、マレーシアのバイオ燃料会社を紹介してもらって、日本への輸入元として国内で燃料を販売することになったんです。そうこうしてるうちに、京都議定書やイラク戦争があって、一気に再生可能エネルギーに対する追い風が吹いてきた。それも本当に偶然でした。

現在はバイオ燃料だけでなく、フィンテック事業も手がけているんですよね。

合田さんがキオスクに導入した電子マネーシステムの端末機
合田さんがキオスクに導入した電子マネーシステムの端末機

はい。「アフリカでフィンテックなんて成立するの?」と意外に思われるかもしれませんが、モザンビークは2012年時点で携帯電話がつながらなかったのが、翌年にはつながるようになりました。この10年くらいの間に世界中で毎年3億人のペースでネットワークに接続している「コネクテッド(connected)」な人が増えているんです。

お金の流れというものは、金融というよりむしろ情報産業的な側面があって、情報インフラが整備され、モバイルマネーが生まれてきたことで、これまでとは異なる金融システムが成り立とうとしています。

今はモザンビークでキオスクを経営して、現地の人には電子マネーで決済してもらってるわけですけど、彼らが育てたヤトロファを買い取るときにも電子マネーで決済しますから、僕らの会社では彼らの収入と支出をいずれも把握できるシステムを構築していることになります。

ちなみに、電子マネーなので、「店のお金を妖精に取られた」り、「虫に食われた」り、現金と違ってお金の量が目に見えないので、道で誰かにたかられるなんて、めちゃくちゃなこともなくなりますからね(笑)。

合田さんが経営するモザンビークのキオスク
合田さんが経営するモザンビークのキオスク

世界には20億人以上の「アンバンクト(unbanked)」=銀行口座や現金に代わる決済手段を持たない人がいると言われてますけど、他の国にもこのビジネスモデルを展開すれば、その20億人のうち数億人でも金融サービスを届けられるようにできるのではないかと考えています。

気づけば、社名も「日本植物燃料株式会社」のままでいいのか分からなくなってきました(笑)。

アフリカに傾倒できる「没頭力の正体」

アフリカ、モザンビークで合田さんがやられているビジネスにはものすごく意義と可能性を感じる一方、しかし日々現場は大変な状況なわけです。どうしてそこまで没頭できるのでしょうか。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

そもそも、没頭力というか、自分が興味がないことに時間を割くのが苦痛なんです(笑)。そのうえで、何かに没頭し続けるためには、「マクロ的な観点」と「ミクロ的な観点」の両方が必要だと思います。

どういうことでしょうか。

ビジネスはミクロ、つまり現場での出来事やニーズから始まることが多いですが、それに没頭するために必要な、「なぜ、それをやらないといけないのか?」という目的感は、マクロ、つまりその領域に対して大枠で興味関心を持っていないと生まれませんよね。

確かに。マクロとミクロの観点について具体例を挙げていただけますか。

例えば、エネルギーの領域で、「モザンビークのエネルギー不足」がミクロだとすると、マクロは世界の石油の産出量がピークを迎える「オイルピーク」。その「オイルピーク」をミクロだと捉えてみれば、「資源制約によって金融システムが崩壊する可能性」というマクロな気づきが得られます。

国連の経済社会理事会に招待され、講演する合田さん
国連の経済社会理事会に招待され、講演する合田さん

このように、エネルギー、そして食糧、金融にしても、それぞれの領域で起こっているミクロの事象を、あらゆる領域を統合させ、マクロな流れに当てはめて整理し直す。そうすることで、ミクロの事象にまた新たな意味を見いだし、さらに没頭できるようになる。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

一つの物事に没頭しながら、一方ではそれを俯瞰して適切な意思決定をしていく・・・。けれども通常業務に追われていると、ミクロ的、対処的な仕事ばかりで、マクロな観点から物事を考えられなくなってしまう気がします。

そうですよね。組織全体として何かやることや答えが決まってるときは、その作業効率を上げるために、右向け右、分業して、一人ひとりがミクロな仕事にだけ向き合うのがいいんでしょうけど。

だけど、これからはどんな組織、環境であっても、個人一人ひとりが何かに没頭し、新しい価値を生み出す力を持つこと、そのために自由度を担保することが必要になってくると思うんです。

だって、終身雇用なんてなくなっていつまでも会社が面倒を見てくれる時代ではなくなりましたし、60歳で定年を迎えたとしても、その後20〜30年は生きていくわけで、そのあいだ、どれだけ国が面倒見てくれるか、今は信じられない人が増えているじゃないですか。

だとすると、もし会社が自分に対して、ミクロな仕事、効率化ばかりを求める環境しか用意できないのなら、個人がマクロな観点を持ち続けられるような、他の環境を見つけるなりつくるなりしなければいけません。

どうすれば、マクロな観点を持ち続けることができますか。

日本で「没頭」というと、「これしかやらない」という姿勢に思われがちだけど、世の中のいろんなところに相似形はあって、意外と自分の仕事につながっていくようなものが見つかるんじゃないかなと思っています。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

例えば、モザンビークと日本の山間部にはフィンテックに関わる相似形を見いだすことができます。日本にもモザンビークと同じようにクレジットカードを持っていない人はいるし、金融機関へ行くのに車で数十分かけて、やっと数カ月に1回帳簿と突き合わせる、という人もいるでしょう。

そう考えると、東京に密集しているベンチャーや金融の中心にいる人が見えていない、日本でまだまだやれること、新しい仕組みをつくる余地はあるはずなんです。

そのためには、無駄をいとわず、自分にとって興味があるかないかも分からないまま、そこに身を置いてみる、というのも一つの手。やることや正解が決まっているミクロな作業ばかりやっていて、それがどう世界に広がるか、つながっていくのかを感じていないとワクワクできない、面白くないじゃないですか。

今の時点では「役に立たない」ことでも、いつか「役に立つ」ことになる可能性だってありますもんね。

そう。誰だってキャパシティはかぎられている中で、その学びは無駄なことなのか、あるいは本質的に自分の役に立つものなのか、それは直感的に考えていくことになると思いますけど、まずは「リアル」に触れることで、ミクロとマクロのつながりを感じられることはあるんじゃないでしょうか。

日本植物燃料株式会社 取締役社長/モザンビーク現地法人ADM CEO 合田真

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之    [撮影] 伊藤圭

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