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INTERVIEW
大企業若手の会「One JAPAN」発起人はなぜ26社、120名を巻き込めたか?
INTERVIEW

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BOOK MARK

今年9月、26の企業・団体に所属する20〜30代の若手有志の会「One JAPAN」の設立発表会が行われました。会には、トヨタ自動車、NTTグループ、富士ゼロックスなど錚々たる企業の有志社員120名が参加しています。

発表会にはNHKのカメラも入り、マスコミで大きく取り上げられました。「これから何を仕掛けていくのか」「どうすれば自分も入れるのか」、主に大企業の若手の間で大きな反響を呼びました。

「One JAPAN」の発起人でその中心人物が、パナソニックの濱松誠さん(33歳)。4年半前、同社で若手有志の会「One Panasonic」を立ち上げ、これまで2000名を超す社員をつなぎ、社内交流の活性化を推進してきた人物です。

今回はその濱松さんに、どのようにOne JAPANの組織作りを行ってきたか。大企業やそこではたらく人たちを巻き込む「ハブ人材」に求められる資質についてお話を伺いました。

One JAPAN 共同発起人・代表/One Panasonic 発起人・代表/パス株式会社 CEO室/コンサルティング事業 プロジェクトマネジャー/パナソニック株式会社 コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務  濱松誠

PROFILE

One JAPAN 共同発起人・代表/One Panasonic 発起人・代表/パス株式会社 CEO室/コンサルティング事業 プロジェクトマネジャー/パナソニック株式会社 コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務  濱松誠
濱松誠
One JAPAN 共同発起人・代表/One Panasonic 発起人・代表/パス株式会社 CEO室/コンサルティング事業 プロジェクトマネジャー/パナソニック株式会社 コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務
1982年京都市生まれ。大阪外国語大学卒業。2006年に松下電器産業(現・パナソニック)入社。海外コンシューマー営業やインド事業推進を経て、2012年にコーポレート戦略本社・人材戦略部へ異動し、パナソニックグループ全体の人材戦略立案や人事制度の設計・運営を担当。部門横断で社内交流を図り、オープンイノベーションに取り組む有志の会「One Panasonic」を立ち上げる。2016年3月より化粧品事業、旅行事業、コンサルティング事業を手がけるパス株式会社へ出向中。資本関係にないベンチャーへの出向はパナソニックで初めてのケース

「若手が自分ゴト化できる団体を作りたい」

―「One JAPAN」の概要について教えてください。

一言で表すなら、「大企業の若手有志が集まるプラットフォーム」です。今年9月10日時点で、26の企業・団体から120名が参加しています。自動車・電機メーカー、通信、製薬、鉄道、教育、マスコミなどさまざまな業種から若手有志が集まりました。

活動の推進役である事務局は、共同発起人の3人が担っています。富士ゼロックスの有志ネットワーク「秘密結社わるだ組」を運営する大川陽介さん、NTTグループの有志ネットワーク「ODEN」(おでん)を運営する山本将裕くん、そして私です。

参加できるのは、「大企業ではたらく20~30代の社員」で構成される、「有志で活動する団体」。つまり参加するには、仲間を集めてチームを作る必要があります。これまでは「3名以上」が条件でしたが、今後は「5名以上」にしようと考えています。

One JAPANの「One」には、異なる業界・企業の社員が志やビジョンの下「一つになろう」というのと、参加する個人一人ひとり、個々の団体が自分ゴトとして動こうという理念が、「JAPAN」には、「日本を良くしたい」「日本から、世界をより良くしよう」というビジョンが込められています。

―会発足の背景、活動内容についてお聞かせください。

自前主義で縦割り、機敏に経営できない「大企業病」への危機感があったんです。同じ思いは、パナソニックの他の若手も感じていて、それで2012年から「One Panasonic」としてパナソニックグループ内の交流を促す活動を続けてきました。

その活動を続け、社外の人とも話すうち、「パナソニックの課題は、他の大企業の課題とほぼイコールなんだ」と気づきました。「大企業あるある」と言われているようなことで、「組織が縦割りになっているため、組織を超えた横の連携やつながりがない」とか。

他にも、「内向き」とか「モノカルチャー」とか「空気を読む」とか。こうした大企業病に対して、思いのある若手たちで立ち向かっていこうと。

「空気を読む」のではなく、「空気をつくる」集団でありたい。経団連(日本経済団体連合会)もありますが、会長・副会長の平均年齢は60代後半です。年齢構成自体の良し悪しを言いたいのではなく、大企業の若手が「自分ゴト」として参加できる場所が他になかった。だから、自分たちで作ろうと思ったのです。

One JAPAN 共同発起人・代表/One Panasonic 発起人・代表/パス株式会社 CEO室/コンサルティング事業 プロジェクトマネジャー/パナソニック株式会社 コーポレート戦略本社 人材戦略部 主務  濱松誠

ー大企業病を克服するためにどのような活動をしていくのですか。

「空気をつくる」ためには、「具体的なアウトプット」と「土壌をつくること」、この両輪を同時に回すことが必要だと考えています。

その両輪を回すテーマ・手段が「新規事業」と「新しいはたらき方」という2つの大きな軸。それぞれの軸で、ナレッジシェアリングと実践を続け、新しい試み・動きの後押し・底上げをしたり、社会に対して何らかの提言をできるようにしたいと考えています。

例えば、すでに実施した取り組みとしては、二つの大手新聞社の若手記者が参加したワークショップ。論調の異なる新聞社が、同じテーブルで未来のメディア・新聞について議論する試みでした。仕事ではこういった交流はなかなかありません。

他にも、関西や東海の「地区」というくくりで、大手の自動車や電機、部品メーカーなどの社員が参加する勉強会も。こうした活動を拡大しながら継続し、企業同士がタッグを組んでイノベーションを起こすための挑戦につなげていきたいです。

いつかはOne JAPANをきっかけに、新製品やジョイントベンチャーが生まれたらーー。それに、例えば10年後、One JAPANの中から各企業の経営層やミドルマネジメント層が出てくるようになったときこそ、この会が真価を発揮するときと、今からひそかに期待しています。

ハブ人材に浴びせられた「批判」と「孤独」

―パナソニックだけの活動からどのように社外へ広げていったのでしょう。

One Panasonicの初期の頃、大手自動車メーカーの若手有志の会と一緒に勉強会を開催する機会がありました。製品を通じて子どもたちに夢や憧れを提供することを目指し、「未来の製品」の開発を行っている集まりです。

勉強会が盛り上がったことをOne PanasonicのSNSなどで情報発信すると、「わるだ組」やホンダの有志団体「Be Honda」など、自分がそれまで知らなかった、同じ大企業ならではの悩みを抱え、自分と同じように活動している人たちが声をかけてくれるようになったのです。

それからはもう地道で・・・。「One Panasonicについて話を聞きたい」と言ってくれる人のところには、当時勤務していた本社がある大阪・門真から全国どこへでも飛びました。あくまでも「有志」の活動なので、動けるのは土日だけ。予算が出るわけでもありませんでした。

濱松さんは見返りを求めずOne Panasonicの意義を伝え続けた
濱松さんは見返りを求めずOne Panasonicの意義を伝え続けた

夜行バスを使って節約しながら、自分のお金と時間をつぎ込みました。One JAPANの構想らしきものが見えてきたのは、それからようやく2、3年が経った頃です。いろんな業界の人やメディアから声をかけてもらい、少しずつ「若手を盛り上げていける」と自信が芽生えてきたんです。

―企業の枠を飛び越えた活動に、周囲から批判の声もありましたか。

それはもう、いろいろありますね。「これをやって何の意味があるんだ」「フワッとしている」「ただのサークルじゃないか」「学生団体を思い出した」「自分も起業すればいいじゃないか」「これで本当に日本が良くなるの?」ーー。

私も人ですから、もちろんヘコみます。ヘコむこともありますが、「批判を受ける」ことこそ、何かを突き動かしていく挑戦の証。逆に批判が起こらないということは、「何もしていない」ということだと。もちろん建設的なアドバイスやコメントはしっかり受け止めて、トライ&エラーで進めます。

ただ、テスラやペイパルを立ち上げたイーロン・マスクさんも、「失敗していない人間は何もしていないことと同じだ」と言っています。批判するほうになるくらいなら、自分は批判されるほうになったほうがいいと思いました。

―大きな組織を動かす、ハブ人材ならではの覚悟ですね。

このやり方が正しいか正しくないかは、正直まだわかりません。まだキックオフから2カ月半しか経っていないので誰にも分からない。ただ、やらないよりやったほうが良いというのは声を大にして言いたい。

それに、先ほどの経団連の話もそうですが、自分たちがOne JAPANを作らなければ、いつまで経ってもこうした取り組みは生まれてこないと思いました。そして、すでに26団体・120人が集まるということは、少なくともその有志の中では意味があると、私含めてメンバーは感じています。

9月10日に行われたキックオフでの集合写真
9月10日に行われたキックオフでの集合写真

実際、少しずつですが「何かを生み出せている」感覚があるんです。

先日、One JAPANに参画する各団体の代表者、約20名が集まって、あらためて各々の活動やキックオフ後の社内外からの反応について、シェアしました。それによって、大企業の中で活動を続けるための肝、「当事者の熱量」を各人があらためて自覚できた。

いろいろなメディアに取り上げていただいたおかげで、新たに「参画したい」という人や団体も増えていて、次回12月17日の開催時には、30社、200名を超える予定です。

企業の若手だけでなく、行政やミドルマネジメント層や経営者も巻き込む「うねり」となりそうな手応えも少しずつですが感じています。キックオフイベントで経済産業省のベンチャー支援の担当課長の方が、「大企業とベンチャー間のアライアンス」に関する実践的なお話を引き受けてくださったり。

また、これはOne Panasonicの話ですが、つい先日行われた会にパナソニックの伊藤(好生)専務が来て、「個の力」についてスピーチしてくれたことも。One Panasonicにしても、これまで4年半続けて来られたのは、「必要だ」という強い思いをメンバーそれぞれが持っていたからなんです、私だけでなく。

しかし、正直、「時には一部の人に嫌われても仕方ない」くらいの割り切りがないと、大企業・大組織で周囲を巻き込む「ハブ人材」にはなれないと思います。不安とか葛藤とかっていうのとは少し違うんですけど、ときどき「孤独」は感じるし、それに屈しない必要はあります。

「何か新しいことに挑戦すると、いろんな批判の声が上がるのは知っています」
「何か新しいことに挑戦すると、いろんな批判の声が上がるのは知っています」

ハブ人材の孤独に打ち克つ3つのポイント

―ハブ人材ならではの「孤独」とどう向き合いましたか。

新しい取り組みを始めるときって、まず、最初の2、3カ月までが特にしんどい。仲間が集まらないとか、活動が続かないとか。次に、社内の関係者の巻き込み。でもそこを乗り越えたら、「命は取られないし、クビになるわけじゃないんだ」と気づく。そして、「ならばいっそ、出過ぎた杭になろう」という思いが、自分の中で芽生え、定着していきました。

―「出過ぎた杭」としてまわりを巻き込むために必要なことは何でしょう。

3つあります。1つは、自分のやりたいこと、やるべきことを突き詰めて考えて動くこと。最初は5〜10名、次に20名程度の小規模なグループでも、愚直にやり続けることが「信頼」の構築につながります。「やりましょう」と口では言っていても実際に動かない人のところには、当然、人は集まってきません。

2つ目は、批判や孤独をおそれずに発信し続けること。ときには社内の関係者とぶつかることもあります。世代間や組織間ギャップ、ミスコミュニケーションのせいで、何をやっているのか理解してもらえないときが、どうしてもある。

それでも、「どんな相手とも対話し続ける」という姿勢を持ち、それでもダメなら最後の手段として「開き直る強さ」も大切。「クビになっていないんだから。基本的に良いことをしているんだから、大丈夫(笑)」と。

3つ目は、人間味を伝えること。リーダーができるだけ素の自分をさらけ出すことで、メンバーが安心してリーダーと関われるようになると思っています。メンバーの前やSNSでもバカな役を買って出たり、弱い自分をさらけ出したり。

他の大企業を動かしたい若手には、普段何と声をかけていますか。

「あきらめないで」、ですね。「あきらめない強さを持つために、熱量の高い人に会ってください」「あきらめそうになったらOne JAPAN、One Panasonic、もしくは濱松に連絡してください」と言い続ける。

「何かをしたいと思ったり、あきらめそうになったら、いつでも声をかけてください」
「何かをしたいと思ったり、あきらめそうになったら、いつでも声をかけてください」

これが大企業じゃなくて「ベンチャー」なら、熱量の高い人が自然と集まっているからいいんです。でも大企業だとかならずしもそうではなくて、どうしても取り組みを始めても途中で疲弊してしまうんです。だから、「熱量の高い、『社内外の人』に会ってください」と。

私自身、たまに「いっそのこと、起業したほうが楽なんじゃないか」と思うこともあります。でも、その選択肢は残した上で、今は自分ができることをやる。これまで誰もやったことのない、自分たちにしかできないことをやろうと思っています。それが、未来の日本をつくると信じているから。

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[取材・文] 多田慎介、岡徳之

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