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INTERVIEW
業界のタブーにも切り込む寺田倉庫 イノベーションの原動力は?
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倉庫という歴史ある業界で、大手企業との価格競争、市場の飽和状態に巻き込まれることなく、急成長しているのが「寺田倉庫」です。

寺田倉庫はこれまで主力としていたBtoB事業ではなく、BtoCの新事業を立ち上げ、さらには後述する「業界のタブー」にも切り込むことで、新たな市場を創り出してきました。

同社の躍進を牽引してきたのが、執行役員の月森正憲さんです。既存の枠にとらわれることなく、「攻めの姿勢」で商機やキャリアを切り拓いていくためにはーー。果敢に挑み続ける月森さんに、お話を伺いました。

寺田倉庫株式会社 執行役員/minikura担当 月森正憲

PROFILE

寺田倉庫株式会社 執行役員/minikura担当 月森正憲
月森正憲
寺田倉庫株式会社 執行役員/minikura担当
1975年生まれ。98年寺田倉庫に入社。約5年間、物流現場で重貨物の積み下ろしやフォークリフト操作など現場系作業に従事する。その後、営業職を経て企画担当へ。2012年に顧客自身が預けた荷物をWeb上で管理できるクラウド収納サービス「minikura(ミニクラ)」をリリース。2015年からは、minikuraのシステムを活用しサービス展開するスタートアップ・ベンチャー企業4社の社外取締役も務める

BtoBからBtoCへ 「箱を開ける」業界のタブーにも切り込んだ

—寺田倉庫に急変革をもたらしたクラウド収納サービス「minikura(ミニクラ)」について教えてください。

寺田倉庫は長年、年扱い数量の多い「法人顧客」に向けて保管・物流事業をやっていました。

次世代の倉庫ルームとして「minikura」が生まれたのは、2012年9月。お客さまからお預かりした箱を開けて、中身の写真を撮り、クラウド上にアップロードすることで、預けた荷物をいつでも確認できるというもの。

この事業の大きなチャレンジは、「個人顧客」向けであることと、預かったものを閉じたままではなく、それまではプライバシーの観点から「業界のタブー」とされてきた、「箱を開ける」ところにまで踏み込んだことでした。

なぜそうしたかというと、膨大な量を預けているお客さまの中には、その中身すら忘れてしまう方もいます。箱を開けて一点一点写真を撮り、クラウドのマイページに上げることでお客さまが預けている内容を忘れてしまう課題を解決できました。

それも、これまで企業のワインや精密部品、またビジネス機密文書も含まれる大切な物品やデータを、人為的なミスや災害によって破損・紛失しないための、専用保管センターなど各品目に最適な環境作りのノウハウと、積み重ねてきた実績から来る信頼があったこそだと思います。

—新事業に取り組もうと考えた背景は何だったのでしょうか。

当時、トランクルーム市場は不動産業界からの参入企業も多くて飽和状態でした。大切な物品を預かって保管する場合も道端のコンテナだったり、テナントビルの空きスペースだったり、業界全体の印象も良くなかった。

また、倉庫の保有面積が大きいロジスティックスの大手と肩を並べていくと価格競争にさらされ、中堅会社である自分たちの良さが失われてしまうという危機感もありました。彼らがやらないことに挑戦して、その新しい領域でナンバーワンになろうと思ったのです。

—新たな事業に踏み出すことで起こったかもしれない社内の抵抗には、どう向き合ったのでしょうか。

これまでの事業は対法人、BtoBのものでした。お預かりしていたのは、企業の商材や持ち物などです。それが「BtoCになるとリスクが高くなる」といった指摘がありました。BtoBなら預かった品物を万一壊してしまった場合にも弁償可能ですが、個人から預かった一品ものは代わりがありませんから弁償ができない。それに対しての反対意見、消極的な意見は社内から聞かれました。

しかしそうやって停滞しているうちに、新規事業であっても顧客とのタッチポイントが競合に奪われたり、価格競争に入っていってしまう。それで寺田倉庫の物品を預かる技術力の高さという強みや本来やりたいことを思い出してもらい、そうした企業風土とやれるノウハウがある事実を社内で説得して回ったんです。

1950年の創業から66年間受け継がれてきた、「社員がイノベーションを起こすことに至上の喜びを感じる」という組織のDNAを伝えました。

寺田倉庫株式会社 執行役員/minikura担当 月森正憲

社外のパートナーも巻き込み ゼロから事業を立ち上げてもらった

—実際に新規事業を立ち上げてからは、どんな経過をたどりましたか。

立ち上げの当初にホビー誌などの媒体に広告を打ちましたが、反応は今一つでした。ターゲットにとって寺田倉庫という会社の認知度が低かったのでしょう。コミックマーケットでチラシを撒いたこともありましたが、こちらからアプローチしても近しい存在ではないので広がりませんでした。

自分たちだけでいろいろな荷物を集めるのには、すぐ限界を感じました。そこで「minikura」のAPIを開発し、他社との協力で新しいサービスを生み出す仕組みを2013年の9月に開発。フィギュアならバンダイ、海外とのCtoCの物流ならBUYMA(バイマ)という具合に、その文化を語ってもらえる人に広げてもらおうと。

今お預かりしている品物で一番多いのは洋服、次に本、それから趣味のフィギュアなどです。それらに倉庫会社を介することで、エンドユーザーにとっても安心感につながります。私たちがAPIのサービスを提供しているのは現在10数社です。他にも大手不動産会社とも協業しています。

大手の会社名を出しましたが、もう一つの軸としては、スタートアップやベンチャー企業に私たちのAPIの機能を提供し、まずはゼロから事業を起こしてもらい、成長させるという狙いがあります。

社外のパートナーを巻き込む際には、「自分たちこそ事業の主役」というメッセージを伝えました。どんどん変化しないといけない状態を楽しめる人、そのための実行力のある人が社内外で自然と集まってきています。

市場は変わる。だから組織の主役も変える

—新しい事業を展開していくために必要なチームづくりの極意とは。

常日頃から意識しているのは、市場は変化し続けているということです。それに対応できず変化しない事業に対しては、社内外からの評価がなくなっていくと考えていますから、変化に対して柔軟に対応できる準備が求められます。

そもそも会社の寿命は未来永劫ではありませんよね。さらに事業部の単位、提供サービスなどの寿命はもっと短いのですから、失敗を恐れて足踏みする必要なんて本来はないんです。

ービジネスパーソンが変化に対応すべく、一歩踏み出すためには。

われわれも旧態依然の商慣習や社内のルールが残っていて、動きにくい時期もありました。そのとき思っていたのは、「組織も世代で変わっていかないといけないのだろう」という予感です。

市場が変わっていくのであれば、主役も変わっていかないといけない。こうした意識を組織全体、特に若い人に向けて発信するうちに、変化をいとわないメンバーが集まり、われわれ10名ほどの「minikura」チームができました。

今でもその意識を失わないよう、チームではエンジニアから企画、管理系、リーガル、経理、オペレーション運用チームまで、横串で全体的な変化について共有して、それぞれが柔軟にまわるようにしています。

寺田倉庫として会社はどうありたいかを話し合い、「面白くない」という言葉を禁句にして、変化を楽しもう。今はそういう空気が会社全体でうまく作られていると思います。

若い人にも自分だけの強みがあるはずで、それを発信してほしいと思います。誰にでも何かがあるはずです。それを包み隠さず、どんどんアピールするといいのでは。そういう集まりでなければ、新しいイノベーションなど起こせません。

将来の夢、妄想だっていいと思うんですよ。それを持っていたほうが仕事にワクワクできるし、いい事業や職場にめぐり会えるんじゃないかと思います。

寺田倉庫株式会社 執行役員/minikura担当 月森正憲

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[取材・文] 神吉弘邦、岡徳之

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