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INTERVIEW
女性連続起業家平野未来さんに聞く、海外ではたらく始め方と待ち受ける課題とは
INTERVIEW

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グローバル化が進む世界で、海外で働ける機会が増えています。一方で、海外に出たいと思いつつも躊躇してしまうひとがいるのも、また事実。その理由の一つはおそらく、いざ海外に出た自分の身に何が起こるのか想像がつかないからではないでしょうか。

この記事では、アジアで起業に挑戦する女性起業家平野未来さんのパーソナルヒストリーを通じて、海外でのビジネスを疑似体験していただきます。起業家にかぎらず、海外赴任や転職を考えている方にも、海外で外国人と働くことについて想像を膨らませていただければと思います。

旅行で「自分に合う国」を探す

今回取材した平野未来さんは、日本で設立したIT企業をミクシィに売却し、現在はアジアを舞台に二度目の起業に挑戦しています。シンガポールで写真チャットアプリを提供する会社を立ち上げ、ベトナム、タイ、台湾に拠点を拡大させました。

急速に経済発展が進むアジアに飛び出し活躍する平野さんですが、もともとは海外で起業することを考えていたわけではなかったといいます。そんな彼女に、まずは海外でビジネスをしたいと思ったときに「最初にしたこと」からお伺いしました。

シナモン代表取締役 平野未来さん

PROFILE

シナモン代表取締役 平野未来さん
平野未来
シナモン代表取締役
東京大学大学院在籍中に自身の研究がIPAの育成事業「未踏ソフトウェア創造事業」に採択。在学中に設立したIT企業 ネイキッドテクノロジーを2011年にミクシィに売却。2012年に共同創設者と2人でシナモンを設立。写真チャットアプリ「Koala(コアラ)」の事業を、事業統括をシンガポール、開発をベトナムとタイ、マーケティング・営業を台湾でそれぞれ行う4拠点の体制で運営している。

―海外で仕事をするために、平野さんはまず何をしましたか?

海外で仕事をすることは考えていなかったのですが、今になって良かったと思うのは、大学生の頃に「自分に合う国」を見つけたことです。バックパックで旅行をしたときに、欧米ではなく、エネルギーを感じたアジア。特に、タイとベトナムが合うと感じました。

海外で仕事をしてみたい方は、まずは旅行でもよいので、自分が仕事をしてみたいと思う国に行ってみるのがよいでしょう。旅先でその国に住んでいる人と話したりして、その土地に根付いた文化や価値観、食べ物などを自分の肌で感じてみるのがよいと思います。

 

ー自分に合う国を見つけても、海外で働くという実際の行動に移せないひとはどうすれば?

なにか行動に移す前、多くのひとはその「リスク」にとらわれてしまいます。ですがその正体は、ただ「怖い」という感情だったりもします。自分が抱えているリスク、そしてそれを回避してでも守らないといけないことというのは、実はそんなに多くはありません。

ですから、あまり「考え過ぎないこと」です。海外で仕事すると想定外のことが起こるのは日常茶飯事。であれば、まずは実行してみて、起こったことに対処することの方が大切です。私も、まずは実行してみることで自分自身にプレッシャーを与えるようにしています。

海外で起業する/事業を展開する可能性を模索

ー旅行の経験が海外での仕事につながった経緯は?

旅行から帰国し、大学を卒業した後、もう少し勉強を続けたいと思い、東京大学院工学系研究科に進学しました。ここでの経験が、その後の私の人生を大きく左右しました。

まず、自分のまわりには天才的なひとが多く、同じ土俵で勝負しても負けると痛感したのです。また、自分は学校や研究室など、自分が所属するコミュニティーの外で活発に動くことに向いていると思っていたので、このまま博士課程に進むより、ビジネスの世界に行ったほうがよいと感じ始めました。

その後、大学4年生と大学院1年生のときに、政府主導の「未踏ソフトウェア創造事業」プロジェクト(*1)にエンジニアとして参加。そこで出会ったひとたちにエネルギーを感じ、ビジネスの世界でゼロからイチをつくりたいと強く思うようになったのです。そして、ビジネスをやるならグローバルで勝負したいとも。

*1 「未踏ソフトウェア創造事業」:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が運営する、IT技術を駆使してイノベーションを創出することのできる独創的なアイディアと技術、これらを活用する優れた能力を持つ突出した若いスーパークリエイターを発掘育成することを目的とした事業。

そして、大学院1年生のときに、自分にとって1社目となるネイキッドテクノロジーを設立しました。この頃にももちろんグローバルビジネスに挑戦したいと思っていましたが、ここでは叶いませんでした。

しかし、自分が本当にやりたいことを追求すべきと思い、ネイキッドテクノロジーをミクシィに売却。最初からグローバル展開をねらうべく、2社目となるシナモンを2012年にシンガポールで立ち上げました。

海外での起業について語る平野未来さん
海外での起業について語る平野未来さん

海外で初めての起業:「初期メンバーをリストラ」 組織づくりで苦戦

―海外で起業して、最初の苦労は何でしたか?

まず、アプリの開発拠点としてベトナムを選び、エンジニアの採用をしたのですが、そこで大きな課題にぶつかりました。最初に雇った社員とのミスマッチです。

彼らは受け身の姿勢で、大学を卒業しているから高額な給与をもらうべきと考えるひとが多かった。仕事が終わっていなくても定時で帰宅してしまうので、なかなか計画通りプロジェクトが進みませんでした。

最終的に、最初に雇った数名の社員全員に辞めてもらうことになります。開発プロジェクトの途中で全員がいなくなると会社として前に進めなくなるので、苦渋の決断でした。その後再度、社員を採用していき、なんとか体制を立て直しました。

 

―起業したときから、社員の採用基準を変えたりしましたか?

はい。この経験から人を採用する際にはスキルではなく、新しいモノをつくっていきたいという志をしっかりと持っているか、入社後にエキサイティングに仕事をしてもらえるかを見るようにしました。

そして、それまでは諦めていたベンチャーマインドを持ったひとの採用も、現地のエンジニアコミュニティーに入り込み、熱心に口説けば可能だということも分かりました。

シンガポール、ベトナム、台湾―国を跨いだマネジメントに挑戦

ータイ、台湾と拠点を増やしていきました。拠点が複数になることで変化はありましたか?

拠点間のメンバー同士の連帯感を強めることが重要だということに気がつきました。しかし、それがとても難しいのです。

拠点間は主にスカイプを使ってコミュニケーションを図っているのですが、それだけだとすべては伝わらず、また意図していなくてもネガティブに伝わってしまうなど、ミスコミュニケーションが起こりがちでした。

それはよく、台湾のマーケティング拠点からベトナムの開発拠点に対してアプリのフィードバックをする際によく発生していました。また、私自身の仕事が各拠点の社員に理解されておらず、距離を置かれていると感じることもありました。

 

ー拠点と職種を越えたマネジメントが求められるのですね。

はい。チームの連携を強めるためにシンガポール、ベトナム、台湾のメンバー全員をタイに呼んで合宿を行っています。そこでは社員が混合チームを組んで、サービス企画プレゼンのような、私が投資家に向けて行っているようなピッチを合宿のメインイベントとして行います。

ピッチをしてもらうことで、私が経営者として行っている仕事を理解してもらい、また社員同士の連帯感を高めています。また、アプリユーザーの気持ちをより理解し、どうすれば自分の言葉が聴衆にフィットするかを学んでもらうこともできます。

実際、毎回合宿を行う度に業務でのミスコミュニケーションは減り、よりスムーズに業務が行えているように感じます。一度対面でお互いの性格を理解しているので、離れていても自分たちの思っていることが伝わりやすくなったのだと思います。今でも四半期に一度は合同の合宿を行うようにしています。

ー現在は、最新の拠点、台湾での草の根的なマーケティング活動に注力している平野さん。「サービスが世界中のユーザーに使われる」ことを目標に、彼女のグローバルでの挑戦は続きます。

タイでの合宿の様子
タイでの合宿の様子

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[取材・文] 細谷元

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