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INTERVIEW
天才集う未踏の竹内郁雄プロジェクトマネージャーが語る、若手の才能を開花させる上司の絶対条件
INTERVIEW

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”天才クリエイター” そう呼ばれる若いIT人材を発掘・育成するのが、独立行政法人情報処理推進機構が展開する「未踏IT人材発掘・育成事業」、いわゆる「未踏」です。

本誌で過去に取材させていただいたシナモンの平野未来さんも、未踏の出身者。社会で活躍する1600名以上の人材を輩出してきました。

未踏を率いるのが、統括プロジェクトマネージャの竹内郁雄さん。今回は、”天才” とまで評される若者たちの才能をどのようにして開花させているのか、お話を伺いました。

そこから見えてきたのは、ITだけでなくあらゆる業界で通用する、「優れた上司の絶対条件」でしたーー。

IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャ 竹内郁雄

PROFILE

IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャ 竹内郁雄
竹内 郁雄
IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャ
1969年に東京大学理学部数学科を卒業。1971年に同理学系研究科数学専攻修士過程を修了。同年、NTT研究所に入社。以来、主に基礎研究部門において、記号処理プログラミング言語などを研究・開発してきた。1997年に電気通信大学情報工学科教授、2005年に東京大学情報理工学系研究科教授、2011年に早稲田大学基幹理工学研究科教授を歴任。現在は、IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャなど。東京大学名誉教授、博士(工学)

才能開花の条件1:若手に嫉妬せず、「すごい」と認める

ー未踏に集まる天才エンジニアにジェネレーションギャップを感じることはありますか?

若いひとたちと一緒にお酒を飲むことがありますが、ジェネレーションギャップを感じることはないですね。彼らは感じているかもしれないけれど(笑)

 

ー”天才” が集まると言われる未踏ですが、竹内先生が考える 優秀な人材の基準は?

2つあります。1つめは、技術的背景や基礎がしっかりしていること。技術の基礎が分かり手が動くひとであれば、あとはアイデアさえあればパッと作ってしまいますし、アイデアは誰でも思いつきますからね。

2つめは、自己主張ができること。技術がしっかりしないのに自己主張はよくするというのは困りますが、逆に技術はしっかりしているのに自己主張ができないと、他人の意見に左右されがちで、企業など組織においては使われてしまうこともあるでしょうね。

 

ー未踏に集まる若い天才クリエイターたちにどのような印象をもっていますか?

若いひとはよく「ゆとり世代、ゆとり世代」と言われますが、私自身はあまりそう感じたことはないですね。それにアメリカだって、言ってみたらゆとり教育ですよね。しかし、日本との大きな違いは、アメリカの場合は大学に入った途端にすごく勉強するところ。

日本だと、ゆとり教育とはいえ受験勉強に疲弊して、大学に入った途端に燃え尽き症候群になってしまうひとも少なくない。鉄は熱いうちにではなく、ジワジワと熱したほうがいい。子どものころにちゃんと遊んでいたひとは強いですよ。

最近のIT業界のトレンドとして、サービスを作ることに情熱を傾ける風潮があるなとは感じます。上の世代として私はそのトレンドを否定せず、「流れに棹さす」。つまり、若いひとの努力を止めるようなことはせず、彼らの流れに乗ることを大切にしています。

その上で、アドバイスします。成功するためのセオリーはトレンドとは無関係ですから。

 

ー若いひとたちをマネジメントする際に心がけていることは?

そもそも、「上の世代、特に中間管理職に就いているひとは若いひとをマネジメントしないといけない」というのは、強迫観念だと思うんですよね。そしてみなさん、自分の与えられた範囲の中で若いひとたちをコントロールしないといけないという “タガ” をはめられたように見えます。

まずは、若いひとたちがのびのびとやれることが組織の利益につながるという経済原則を認識しないといけない。そして、彼らをコントロールするのではなく、「上司の背中を見てついてこい」ぐらいの気持ちで、自分は前を向いてとことん仕事をしないと。

もちろん、後ろを振り返ると誰もついてきていなかったとならないように、きちんと手綱は引いておかないといけませんが。そして、一見自律しきれていない若いひとをブレイクスルーさせることも、上の世代のひとたちの役割だと思います。

 

ーどのようにブレイクスルーさせるのですか?

そのためには、とにかく話をすることが大事ですね。特に趣味の話なんかを聞くと、そのひとが本当に好きなこと、隠れた長所など、思わぬ発見があります。もし発見があったら、それを素直に「すごい」と認めてあげましょう

自分のすごいところは、自分ではなかなか見つけられません。しかし見つかって、それに仕事と重なる部分があれば、自分のやるべきことがクリアになってくる。上の世代には、若いひとたちがその重なりを日常の中で見つける助けをすることが求められます。

しかし、この「若いひとをすごいと認めてあげること」は、日本の社会全体の課題なのかもしれませんね。日本のIT業界から世界で通用するひとがなかなか出てこないのは、日本ではITエンジニアは「オタク」というレッテルを貼られてしまうからだと思います。

シリコンバレーなんかでは、清掃員のおばちゃんですら、若いエンジニアの肩をたたいて「APPLE BOY!!」(ITに強い将来有望な若いひとを指す言葉)と声をかけるそうですよ。それが日本だと、嫉妬したり、「あの子、オタクみたいよ」となってしまう。あれはよくない。

IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャ 竹内郁雄

才能開花の条件2:「自分は成功した」なんて思わない

ー竹内先生が尊敬する上の世代のひとはどなたですか?

NTT研究所に勤めていた頃の池野さんという上司ですね。私は若い頃から、研究はともかく、真面目なサラリーマンとは思えない奇行が多くて、よく「変な研究員がいる」と社内外で陰口を叩かれていました。

それでも、池野さんがいつも守ってくれて、好き勝手やっても責任をとってくれていたんです。上司の仕事は、部下にとって最良の環境を作ってあげること、そして何かあったときは自分が責任を取ること、というのは池野さんから学んだことです。

 

ーしかしそれを実行できる上司は少ないですよね?

たしかに。例えば、最新のトレンドや技術は若いひとのほうが知っている。しかし、上の世代の上司が、自分でも気づかないうちにそれまで培ってきた技術に凝り固まり、部下もだれも指摘してくれないけど、そのような物言いで受けつけようとしない・・・。

どの業界にも当てはまることだと思います。私は、それは「成功体験の復讐」だと思っています。過去の成功体験が、将来、自分にリベンジを仕掛けてくるということ。小さい成功にいつまでもすがって、その成功から復讐される上司だけにはなってはいけないですね。

 

ー成功体験にとらわれないためにどうすればいいのでしょうか。

「自分の技術はすでに陳腐化している」ことを謙虚に認めることでしょう。そして、自分の成功体験はとっととレガシーにしないといけません

昔、沖電気工業と一緒に商品開発をしたことがあります。当時まわりからは「大企業と商品化までこぎつけるなんてすごい」と賞賛されたのですが、自分では当時もいまでも成功体験だとは思っていません。やり残したことがあると思っているから。

しかし、私もあれを成功体験だと思っていたら、もしかしたら成功体験に復讐されていたと思いますね。

スティーブ・ジョブズのような世界で成功しているベンチャー起業家のようなひとたちも、「自分たちは成功した」とは思っていないと思いますよ。だから、2度目、3度目と挑戦を続けて、そのたびに事業が大きくなっていくのです。

自分の成功体験に復讐されないために、自分は成功した」なんて思わない。起業家にとっても、上司にとっても大切な考え方だと思いますね。

IPA未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャ 竹内郁雄

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[取材・文] 大井あゆみ

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