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INTERVIEW
完全リモートワークでも社員を管理しない。マネジメントを手放しても毎年20%成長を続ける会社の働き方
INTERVIEW

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BOOK MARK

リモートワークの推進や女性の活躍など、働き方改革に注目が集まる今、社員が生産性高く、幸せに働ける環境づくりに取り組む企業は増えています。しかし、組織である以上、働き方を変革するのは想像以上に難しいもの。

リモートワークの社員をどう管理するのか、彼らに適切な労働時間で働いてもらいながらも業績を伸ばすにはどうすれば・・・。マネジメントコストがどんどん上がってしまうように感じる経営者・中間管理職の方も多いでしょう。

では「マネジメントコストを増やさずに」働き方改革を実現するにはどうすればいいのか――。そのヒントは、スタートアップやベンチャー企業に特化した広報・PR会社「株式会社ベンチャー広報」に見て取ることができます。

社内で唯一の上司である社長がマネジメントにかける時間は全稼働時間のたった5%。それでも直行直帰可、リモートワーク推奨、時短勤務でも報酬の変動なしなど、自由な働き方を実現しながら、売上は毎年20%増と好業績を続けています

今回は、ベンチャー広報の代表取締役、野澤直人さんにお話を伺い、「マネジメントコストを抑えながら、社員の自由な働き方と業績向上を両立する組織運営の秘訣」を深掘りします。

聞き手には以前配信した大反響をいただいた記事「離職率0%で売上5倍に。26歳、最年少事業部長が疲弊したチームを完全復活させた方法」でご出演いただいた、ガイアックス社の管大輔さんをお迎えしました。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

PROFILE

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人
野澤直人
株式会社ベンチャー広報 代表取締役
写真右。出版社勤務を経て入社したベンチャー企業を自らの広報の力によって短期間で成長させた経験から、「ベンチャー企業にこそ広報の力が必要だ」という思いに至る。2010年、当時は異例だった中小・ベンチャー企業専門の広報・PR会社を立ち上げ、従来の会社の1/2以下の月額料金で高品質なサービスの提供を実現。業績の順調な伸びもさることながら、リモートワーク推奨、仕事の進め方はメンバーに完全にまかせるという経営スタイルも注目されている。

時短でも減給なし「正社員とフリーランスのいいとこ取り」という働き方

―ベンチャー広報では創業当時から自由な働き方を志向していたそう。そのきっかけは何だったのでしょうか?

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

広報・PRとは企業とメディアをつなぐ仕事。企業が伝えたい情報を記者や番組制作者に魅力的に感じてもらい、メディアを通じて消費者に伝えるのが役目です。

その仕事はフリーランスで広報をされている方も多くいるように、「個人」でも十分に成り立ちます。そんな中で「あえて」会社に所属する理由を考えたとき、「会社員とフリーランスのいいとこ取り」ができる組織であれば、所属する価値はあるなと思いました。

「そもそも、広報・PR会社にオフィスって必要なのか?」というのはずっと感じていたことではあるんです。クライアントや記者と面談するにしても、プレスリリースを書くにしても、先方のオフィスや自宅、出先のカフェでなんでもできてしまうんですね。

それに、満員電車で通勤なんて誰だってしたくないし、全社員集まっての朝礼とか無駄じゃないですか。いろんな場所を行き来する移動時間なんてもったいないし、非効率。それだったらその時間や労力をお客さまのために使ったほうがいいんです。

―「会社員とフリーランスのいいとこ取り」とは?

フリーランスのような自由な働き方をしつつ、会社員として安定的な雇用がされるということです。

例えば、報酬。フリーランスは体を壊して働けなくなると収入がゼロになるリスクがありますが、会社員にはその心配はありません。一方で、フリーランスは1案件での実入りが良く、案件を増やすことで報酬を上げやすいメリットがありますよね。

その点、ベンチャー広報ではメンバーが担当するクライアントの数と報酬とが連動しています。つまり、業務量が増えれば、その分報酬も上がる仕組みになっているので、メンバーの納得感も大きいのではないでしょうか。

大切なのは、連動するのは「担当社数」であり「稼働時間」ではないということ。クライアントに満足してもらえる仕事ができているかぎり、週3勤務でも週5勤務でも給与は一緒。クライアントに提供する「価値」が増えるほど報酬が上がる仕組みです。

賞与も会社が利益を出しているかぎり、夏冬それぞれ2カ月分出します。会社が赤字になるリスクを抑えながら、最終的に社員に還元しているんです。

もう一つ、フリーランスにとってデメリットとなるのが、ナレッジが共有されないため、仕事の質が属人化しやすいこと。

うちでは各メンバーが持つメディアに関する情報をデータベース化し、そのデータにもとづいてディスカッションをする勉強会を月1回開いています。そうやって人脈を共有したり、データベースにないことでもサポートし合ったり。

そういうことって、お互いにフリーランス同士だったら分かりやすい利害関係があってなかなか難しいと思うんです。会社の同僚だからこそ持てる「助け合いの精神」もいいとこ取りと言えるかもしれませんね。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

マネジメントはしない、その効用とは。組織にゆとり、社長も複業可能に!?

―働き方の自由度が高いのは社員にとってありがたいことですが、会社にもメリットはあるのでしょうか?

いちばんのメリットは優秀なスタッフが集まることです。広報・PR会社はプロフェッショナルな個人の集まり。複数のクライアントの状況と、他のメンバーが持っている強みを把握し、成果を出せる優秀な人の採用は常に重要な経営課題です。

本来、うちのような小さい会社は良い人をなかなか採れません。しかし、いいとこ取りな自由な働き方に惹かれて応募してくれる人の母数が大きいので、その中からハイレベルな人を採用できています。おかげで売上は毎年20%成長です。

それに、自由な働き方にして優秀な人が来てくれると、管理がいらなくなるんですよ。マネジメントはしない、基本放置です(笑)。

―放置ですか!? 案件の進捗状況や社員の稼働状況はどのように把握しているのでしょう?

全社員で集まるのは、月に1回、30分間の会議だけ。現在10名のメンバーがいるのですが、全員が顔を合わせるのはその時だけですね。その他に僕がメンバーと個別面談もしますが、それも月に2回くらいで、1回あたりせいぜい30分~1時間といったところです。

各スタッフの動きは、Googleカレンダーでみんなのスケジュールを共有しているので、それを見れば分かります。と言っても、メンバーが何時から働き始めて、どこでどんな仕事をしているのかなんて管理していないですし、子どもの送迎なども申請せず自由なので、僕がスケジュールを見ることはほとんどありません。社員を信頼しているので、見る必要がないんです。

―日報や活動報告書などは?

日報や報告書は一切ありませんよ。そうすることで、マネジメントにかかるコストも下がるんです。一般的な会社では上司がマネジメントにかける時間は全稼働時間の30%でも少ない、どんなに頑張って減らしても10%ほどと言われています。でも、僕は5%程度です

マネジメントを手放しているわけですが、そうすると上司の時間にもゆとりが生まれるんですよ。僕はその時間を営業やマーケティングに割いています。それに、社長ですけど複業もしていて、ガイアックス社の執行役や個人でコンサルティングを10社くらいやっています。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

中間管理職は要らない。必要なのは「最上の◯◯志向」のシェアだけ

―とても理想的なように見えますが、マネジメントの手放すことを躊躇する会社は多そうです。どうすればそんな組織をつくれますか?

仕事でいちばん大切なことって、クライアントにどれだけ大きな価値を提供できるかだと思うんです。それはつまり、裏を返せば、クライアントの満足につながらないことをどれだけやらないかということ。このことが実はすごく重要。

うちは無駄なことを省いていったら、結果的にこういう働き方になった、というほうが正しいのかもしれません。だから、働き方改革ありきでは決してないんですね

僕からメンバーへの指示は、「とにかくクライアントの満足度を上げてくれ」という顧客志向の共有、それだけ。それ以上、現場のことには介入しません。

上司として「この案件どうなっているんだ」とか1から10まで知りたくなったり、「すみません、うちのスタッフが・・・」みたいに早い段階で自分が出ていって、謝罪や火消しをしたくなる気持ちは分かるですけど、僕はやりません。メンバーがクライアントの満足度をうまく上げられていなかったとしても、介入しないんです。

クライアントが満足するポイントというのは、人、会社それぞれ。そのニーズをいちばん理解しているのは日ごろからコミュニケーションをとっている担当メンバーじゃないですか。それをよく分かっていない僕が変な指示を出すことで、余計おかしな状況になってしまうことだってあるわけで。

それに、クライアントの満足度は契約の更新率を見れば分かります。不満だったら更新されない、以上。「このメンバーはいい仕事しているか」「何か問題を抱えていそうだな」っていうこともそれで分かるから、事細かにマネジメントする必要もない。メンバーが自由に動いていたって、状況は常にクライアントが教えてくれるんです。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

―クライアントの満足度を高めるために、メンバーの教育はどうされていますか?

教育や研修も一切やりません。逆説的ではありますが、教えないほうがメンバーのスキルアップを促すことになると考えているからです。

例えば、スタッフがクライアントから怒られていたとき、上司がどう振る舞うかはとても重要ですが、僕はここでも介入しません。予想通り失敗することもありますが、それはそれでいい。自分の力で難しい状況を打破することが、本人の成長にいちばんつながるからです。

もちろん最終的な責任は僕が取るので、クレームになれば謝罪に行きますし、振り返りを一緒にすることもあります。ただ、失敗する芽を早めに摘むことはしません。ほんとうに、マネジメントは意図的にやらないようにしていますね。

ただ1つだけ、「働きすぎにだけは気をつけてね」とは伝えています。リモートワークで管理されないと、案件の状況によってはどうしても働きすぎてしまうこともある。働きすぎだなと感じたら、代休を取ってもらうとか、とにかく長時間労働はできるだけしないでくれと伝えています。

そんなふうに意図的にメンバーを「放置」していたら、中間管理職を置かなくても会社がまわるようになりました

―それは驚きです。

うちの組織はフラットで、僕が社長、あとは全員メンバー。今まで中間管理職を置かずに経営してきました。

そうして人件費、つまりコストが下がった分、クライアントや社員に価値を還元できるんです。他の会社に発注すると月額80〜100万円するサービスを、うちは40万円で提供しています。それで会社がまわるからです。それでいて、社員の給料は業界水準を上回っています。中間管理職がいたら、こうはできていないでしょうね。

ただ、こうしてフラットな組織で自由な働き方が実現できているのは、自分で考えて動ける優秀なスタッフが揃っているからこそです

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

会社は社員のための箱でしかない。それでも社員の内発的動機を引き出す方法

―教育や管理をしないのにメンバーが自発的に働いてくれるのはなぜでしょうか?

なぜでしょう・・・。ただ、僕はよく「上司や会社というものはなぜ存在するんだろう」と考えていて、今時点での結論は、「会社のために社員がいるわけではない。社員のために会社がある」ということ。会社は社員に高い報酬とやりがいのある仕事を提供するための箱だと。

僕が初めて広報を経験したベンチャー企業では「社員は会社のためのもの」でした。入社する前には2億円だった売上が10倍になって、会社としては評価されたし、株主にとってもよかったんでしょうけれど、現場はすごく大変で、苦しい思いをしている社員も多かった。

それを反面教師にして、「自分で会社をつくるときはそうはしない」と決めて、メンバーがやりがいを感じられる仕事で、納得のいく報酬をもらえる環境をつくりたいと思っています。

―「社員のための会社を作る」という意識は、例えばどんなところに表れていますか?

「メンバーに無駄なことを一切させない」ということでしょうか。

2、3時間かけて往復する通勤をなくしたのもそうですけど、業務でいえば、クライアント向けの月次報告書を作らないとか。普通の会社は毎月ものすごいページ数の報告書を作成して、そのために前日徹夜するのが当たり前。でもその報告書って、クライアントの担当者が上司に言い訳するときにしか使われないんですよ。だったら成果でお返ししようよ、と。

それと「うちの会社とは相性が良くないな」と感じる会社の仕事は引き受けません。多くの会社は売上をつくるためにどんな案件でも引き受けてしまいがちですが、そもそも成果が出にくい案件だとしたら、どんなに頑張ったとしても結局クレームになったり、それが業界での悪評につながったり、クライアントのほうも疲弊したりするだけ。誰のためにもならないんです。

経営者として、会社の売上が凹んだときにそこを埋めに行きたくなる気持ちは分かるのですが、僕は「無理だな」と思ったら断るし、クライアントに「半年ならこういう結果は期待できると思うけど」と正直に話して、納得してもらえたら引き受けるようにしています。

―引き受けないようにする案件というのは、例えばどのような案件ですか?

引き受けるかどうかの基準は、クライアント、特に社長の人柄が大きいです。

特にうちは相手がベンチャー企業なので、社長と直接やり取りすることが多い。中にはどうしても「外注=下請け」という発想で無理難題を押しつけてくる人もいるのですが、そういう案件はたいていうまくいかないです。

お互いに気持ちよく仕事をしたいので、こちらが言ったことにしっかりと耳を傾けてくれるか、必要な協力をしてくれるかなど、社長や担当者のスタンスをしっかり見極めます。その選球眼はこれまでの経験で培われてきた気がします。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

―成長を優先し、案件を断る勇気を持てない会社は多いと感じます。

労働集約的なビジネスモデルなので、緩やかな成長のほうがメンバーに不要な負荷がかからなくていいんですよ。それに、中間管理職を置かないというのもそうですが、無駄をなくし販管費を抑えることで、会社のリスクを下げているからこそ断れる。

自分たちが大きな価値を提供できるクライアントだけを選び、業界水準の半額で良質なサービスを提供し、優秀な人が存分に能力を発揮できる環境を整える。そうすればクライアントは満足し、メンバーも報酬が安定、または上がり、働き方も自由で、幸福度は高まる。

むしろ、一緒に仕事をしたいと思えるお客さま、メンバーに喜んでもらおうと思うと、必然的にこういう案件の選び方、そして働き方にならざるを得ないんですよ。実際、うちは離職率は低いです。ここ2年間で退職者は1人だけです。

―これからも働き方の質を上げていくために、次の課題に感じていることはありますか?

今具体的に取り組んでいるのは「週休3日」にしようということです。水曜と土日を休みにできないかなと思ったのですが、実際はなかなか難しいので、まずは水曜の午後を休みにしようとしています。

週休3日になってもメンバーの報酬を減らすつもりはありません。その分、今まで週5日でやっていた仕事を週4日でやらなければならないので、生産性をあげなければならない。それが目下の課題かもしれません。

というのも、人生の豊かさって、家族とか、いち個人としてのプロジェクトとか、そういうことに時間を使うのも大切じゃないですか。だから、仕事の質を上げて週4日はしっかりと働いて、残りの3日は仕事以外のことに時間を使う。僕はそういう人生がいいなあと思うんです。

株式会社ベンチャー広報 代表取締役 野澤直人

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[取材・文] 管大輔、千葉こころ、青木まりな、岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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