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INTERVIEW
人脈で会社を成功へと導く、「コネクタ」が実践する成果につながる関係構築術
INTERVIEW

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BOOK MARK

取引先や旧知の間柄など、すでに強いつながりのある相手なら、商談などを持ちかけるのも容易ですが、知人や顔見知り程度の「弱いつながり」では、そうはいきません。

ましてや相手が業界のキーパーソンともなると、講演会や異業種交流会で名刺交換をしても、また会って、話すことさえままならないこともあるでしょう。

僕は、そんな「弱いつながり」を仕事に活かす実践者です。

こう話すのは、そんな弱いつながりのプラットフォームと言える個人向け名刺アプリ「Eight」を運営するSansan株式会社で、「コネクタ」という肩書きで働く日比谷尚武さん。

コネクタとは、人脈で業績に貢献する専門職。会社の垣根を越え、社内外の人をつなげることで、新たなビジネスの創出や課題解決へと導きます。

その活動が奏功し、一昨年にはSansanの法人向け名刺管理サービスが「経済産業省」で試験導入。それが弾みとなり、大企業各社でも導入が進むなど、事業に大きく貢献しています。

そんな「コネクタ」である日比谷さんは、どのように人とつながりを作り、ビジネスに活かしているのでしょうかーー。コネクタとしての心構えや具体的なテクニックを伺います。

Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト 日比谷尚武

PROFILE

Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト 日比谷尚武
日比谷尚武
Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト
1999年に慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、NTTソフトウェアに入社。2003年に株式会社KBMJへと転職し、取締役として開発マネジメント・営業・企画・マネジメント全般を担う。2009年からSansanに参画。マーケティング・広報機能の立ち上げに従事。現在はSansan コネクタ/名刺総研所長/Eightエヴァンジェリストとして活動中。株式会社PRTable 社外取締役、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会 広報委員、一般社団法人 at Will Work 理事も兼務

「弱いつながり」の有無がビジネスパーソンの差を生む

ー「コネクタ」という仕事について教えていただけますか。

コネクタとは、今ある人脈、もしくは会社にとってそのとき必要な新たな人脈を構築することで、新規事業の創出や課題解決へと導く専門職です。

「コネクタ」と言い始めたのは2012年くらいからですが、それまでもわりとそういう動き方をしてきたかもしれません。大学時代からホームページ制作を請け負って、先輩経由でさまざまな案件を紹介してもらって。

新卒で入った会社を退職してから入社したベンチャーでは、まず事業に集中してという感じでしたが、それでも会社が10名から150名規模に成長する過程で、業務を通じてたくさんの人とつながりました。

それから入社したSansanも立ち上がったばかりのベンチャーでしたから、事業成長を少しでもショートカットしようと、それまで培ってきた人脈をどんどん取り入れて、その人脈が持っている社内にはない知見を持ち込むようにしていたんです。

ただ、自分の仕事はあくまでマーケティングと広報だったので、コネクタの仕事はその延長線上にある感覚でした。一方で、仕事とプライベートはあまり分けないようにしていて、私設図書館やロックバーを仲間内で開いて、そこで出会った人と仕事につながったこともありました。

とはいえ、「人とつながろう」と明確に意識して行動するようになったのは、やはりコネクタを名乗り始めてからであることは確かです。

ー日比谷さんが「強いつながり」よりも「弱いつながり」に力を注いでいるのはなぜでしょうか。

交換した名刺をその場で「Eight」アプリでスキャン
交換した名刺をその場で「Eight」アプリでスキャン

今はビジネスにおいて「オープンイノベーション」の流れが大局としてあって、社内だけでなく社外の人たちの知見も活かさなければやっていけないというのは自明の理。

また、これだけSNSが普及し、弱いつながりをすぐに「可視化できて」、それを簡単に「維持し」、「活用できる」。この3ステップが一気に短縮できるようになっているんです。

すでにそのことに気がついて、個人で組織に風穴を開けて、どんどん社外とつながっていくような人も現れています。一方で、気づいていない個人や企業は取り残されている。その差は歴然となってきているのではないでしょうか。

ー特に大企業に勤める人の場合には、社外に弱いつながりを求めることで、社内に無用な摩擦を生んでしまうことへの恐れもあるのかもしれません。

はい。そのジレンマは、特に大企業で新規事業を担当している人たちが強く感じているようです。

ある一部上場の大企業でオープンイノベーション事業に取り組んでいる知人を手伝ったことがあるのですが、一般的には「イケてる」とされているような企業でも、さまざまな抵抗があると聞きました。

例えば、よかれと思って社内の人同士をつなげたのに、「他の部署の手助けはいらない」とか、上司からも「なんで他の部署手伝ってるの」みたいな反感があったり。会社のカルチャーが、弱いつながり作りのボトルネックとなっていることもありますね。

コネクタが実践する、成果につながる人脈作りの手法

ーコネクタとして、何かKPIは設定しているのですか。

特に定量目標を定めているわけではありません。ただ、「コネクト帳」を作って、年間の名刺交換数、コネクト(社内へ外部人材や情報を紹介すること)件数、メディア露出件数、受注件数などは記録しています。

コネクト帳

それは数を増やすことが目的じゃなくて、紹介件数が多いのに受注につながっていない場合は社内フォローをより丁寧にしよう、とか、自分のイベント登壇回数を上げたらおのずと名刺交換数が増えたな、とか、あくまで振り返りの参考にする程度です。

僕が行っていることは必ずしもユーザー数や契約数に直結するわけではありません。数にはこだわりすぎず、それよりもSansanにとってその時々に必要なつながりというものを洗い出して、社外の人と社員を適切につなぐイメージです。

ー仕事の成果につながる人脈作りのために、日比谷さんはまず何から取り組んでいるのでしょうか。

やみくもに人脈の数を取りに行くよりは、やはり「コンバージョン率」を意識しています。

そのために、まずは社内事業の現状を理解し、半歩先で何が起こるか、何が課題になるだろうかも含めて考える必要があります。

僕の場合、Sansanで定期的に各部門のマネジャーやメンバーとミーティングして、「新たにこの領域を強化したい」「この分野の知見を得たい」など、業務上の課題をヒアリングする。

それに基づいて、今後に向けて得たい知見を定め、そのジャンルの第一人者をリサーチし、アプローチ。そのとき、まったくの異分野でも相手をしてくれそうな人かどうか、は意識します。

ただ、よく「アプローチするからには、相手のリターンになるようなものを準備する」という考え方がありますが、僕は必ずしもそれを用意しなくてもいいと思っています。

諸先輩やその道の第一人者の方に「何かお返しを」と思うほうがおこがましいというか、そうすると若手や若輩者がいつまで経っても先輩に声をかけられなくなってしまう。

その代わりに何か準備するとすれば、相手がどんなことに興味を持っているのか、課題に感じているのかを類推して、その面会を実のあるものにすること。

おそらく諸先輩方も、何らかのリターンを期待して若手と情報交換しようと思っているわけではないと思うんです。その時間が楽しかったり、その方の知的好奇心を満たすようなものであったりすればいいのではないか、と。

Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト 日比谷尚武

また、重要なのは出会いよりも、その後いかにそのつながりを太くしていくかです。出会ったときに自分の話をまくし立てるだけでは、つながりを太くしていくための材料やきっかけを得られません。

ー弱いつながりを少しずつ太くする上で、効果的な手立てはありますか。例えば、SNSで相手の投稿にいいねを押したり、イベントに招待したり。

相手にとってストレスにならないものなら構わないと思います。球を投げ込むほど可能性が高まるのは確かです。

ただし、どういう球が相手にとって心地よいのか、十分に推し量った上で行う必要があります。相手がまったく関心のなさそうなことを送っても、相手のストレスになるだけですから。

それを推測するために有効なのが、相手のSNS投稿やブログの内容。ですが、必ずしもすべての人が発信しているわけではないのも確か。

それなら、相手の登壇などかぎられた機会を逃さず、その講演内容からつぶさに相手の意図や思いを汲み取り、会ったときにそれを確認しつつ、自分の気になるポイントを聞いてみたり、深掘りしたりするのもいいでしょう。

「出会いの場は、つながりを太くするための材料を得る貴重な機会」
「出会いの場は、つながりを太くするための材料を得る貴重な機会」

弱いつながりを楽しめる人にチャンスは訪れる

ー日比谷さんご自身の経験として、弱いつながりが成果に結びついたことはありますか。

先ほど話したのは「つながりたい人を狙い定めてアプローチする」方法でしたが、まったく狙っていないのに思わぬ成果に発展したこともあります。

僕は名刺アプリ「Eight」のエヴァンジェリストとしても活動していて、2012年にとあるコワーキングスペースでイベントを行ったんですが、そのとき、スタッフに入ってもらっていた女性から声をかけられたんです。「私、昼間は実家で地域の方にクラウドやスマホアプリについて講座してるんです。今度、教えに来てもらえませんか」って。

それで引き受けて行ったのが、なんと蒲田のスナック。そこには主婦からご年配の方までいらっしゃっていました。

今度はそこで出会った別の方に声をかけられて、本業の傍ら、中小企業診断士の資格を取った方が主催される月一の勉強会の講師をすることになったんです。

僕が毎月Eightについて話して、参加者はそのビジネスモデルを研究して、最後に各自、新規事業を提案してもらう、というもの。地域の公民館みたいなところで講座をして、そのあとは近くの居酒屋に行くみたいなことを半年続けました。

日比谷さんが参加したまた別の勉強会での様子
日比谷さんが参加したまた別の勉強会での様子

それで最後の打ち上げで、あらためて名刺交換でもしましょうか、とやりとりしてみたら、大手自動車メーカーや都市銀行など、錚々たる企業の方ばかりで。その中の一人が、経済産業省でベンチャー支援をしている人だったんです。

「今ちょうどクラウド推進を検討してるから、プレゼンしてもらえないか」と打診されて。それでプレゼンしたところ、結果的に2015年に経産省へ法人向け名刺管理サービス「Sansan」が試験導入されることになったんです。

ーすごい偶然ですね。

狙ってできることじゃないです(笑)ノウハウ化もできないですし。

なんというか、いつもその状況を面白がれているというか、弱いつながりがどこでどうつながるか分からないから、とにかくどんな集まりでも、呼ばれたら行こう、と。小規模だろうが地方だろうが、軽重判断しないことにしているんです。

そういう意味で僕は弱いつながりの信者であり、実践者で、これまでにもそういった成功体験を得てきたからこそ、たまたまホームランが打てた、ということなんでしょうね。いや、ほとんどは空振りばかりですけど。

始まりは「常に相手にとって何が価値か」を考えること

ーこれから大企業で働く人が弱いつながりを作っていこうとする場合、どんなことから始めたらいいでしょうか。

Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト 日比谷尚武

相手にメールを送っても開いてもらえなかったり、よかれと思って情報提供したら嫌がられたり、社内からも「あいつは仕事と関係なく飲み歩いてばかり」と後ろ指を指されたりそういうある程度の逆境や不理解は仕方がないかと。

でもそこは自分なりの覚悟やロジックを持って、やり抜くこと。「気にすんなよ」っていう話です。

僕の場合、コネクタという仕事を作ったことである種開き直れたところがあったかもしれません。つまり、「宣言」することが大切なんです。「かっこいいから」「自由だから」じゃなくて、仕事に必要な技術、職能として捉え、コミットメントを周囲に伝える、ということ。

強いつながりはコミュニケーションコストが低くて、ストレスも低いのは当たり前です。逆に弱いつながりはコミュニケーションコストもストレスもかかる。「なんとなく」や「ノリの延長」ではなく、覚悟を持って、そのスキルを身につける必要があります。

ー弱いつながりを作るためのスキルは、どのように身につくのでしょうか。

繰り返しになりますが、「常に相手にとって何が価値かを考える」、ということじゃないですか? そしてその価値は、気づきや課題解決、相互理解など、人によっても異なります。

僕の場合、類推したり仮説立てたりして、訊ねることが多いです。「〇〇のような苦労がおありなのではないかと思うのですが、いかがですか」、「実は部下の育成に困っているのですが、あなたはどうしていますか」と聞いてみることもある。

初対面で「何かお困りですか」といったざっくりとした質問では、相手も答えづらいだろうし、「何も考えずにコミュニケーションしようとしてるのかな」とこちらの準備不足や雑さが見透かされて相手も警戒してしまいます。

ー「何か持ち帰ろう」と躍起になるのではなく、相手にとっての価値を考える、ということですね。

そうです。実は僕ももともとそうなのですが、「自分は人付き合いが苦手だ」という人ほど、弱いつながりを作るのに向いているのかもしれません。

相手をノリで引っ張れないから、常に相手が何を考えているかを考えるしかない。しかしそのことが、相手の話をひたすら聞くことだったり、相手の課題を引き出すことだったりにつながるのだと思います。

とにかくまずは、相手が何を求めているのかを考え、引き出すこと。人脈作りはそこから始まります。

Sansan コネクタEightエヴァンジェリスト 日比谷尚武

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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