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INTERVIEW
「アマチュアは考えていろ。プロは動く」アジアの連続起業家 小林慎和の行動原理
INTERVIEW

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BOOK MARK

「小林慎和さん」という連続起業家をご存知でしょうか。「自分」の枠にとらわれない生き方、という言葉がまさに当てはまるビジネスパーソンです。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

野村総合研究所で経営コンサルタントとして活躍した後、グリーに転職し、シンガポール現地法人の立ち上げに従事。グリーを退職し、そのまま現地で約5社を起業。モバイル、飲食、教育、医療サービスなど日系企業のアジア進出支援から、Eコマースサイトの運営まで、多岐に渡るビジネスの「ゼロイチ」を経験。

シンガポールをはじめ、アジア各国でイノベーションイベント「the CHAOS ASIA」を開催し、日本とアジアの橋渡しの功績が認められ、アジアの起業家を讃えるアワーディングイベント「Asian Entrepreneur」で日本人として初めて受賞しました。

そんな小林さん、現在はブロックチェーン技術を活用したデジタル通貨を開発する事業「c0ban(コバン)」に挑んでいます。この事業は、国内のクラウドファンディングの取り組みとしては史上最高(2016年9月末時点)の「1億700万円」超の資金を調達したことで、話題となりました。

「c0ban」のクラウドファンディングサイト
「c0ban」のクラウドファンディングサイト

一見、携わる事業に共通点が見当たらない小林さんですが、彼のこれまでの変遷、そこで得た教訓には、「変化の激しい時代のビジネスパーソンにこそ求められる行動原理」が散りばめられています。じっくりとお話を伺いました。

PROFILE

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和
小林慎和
株式会社LastRoots 代表取締役
大阪大学大学院でコンピュータサイエンスの博士号を取得し、野村総合研究所に入社。経営コンサルタントとしてIT、モバイル、エレクトロニクスなど100以上のプロジェクトに従事。在籍中、インド無電化の村にソーラーランタンを貸し出すNPOに参画。2011年、グリーに転職し、シンガポール法人の立ち上げを行う。その後、現地で起業。2016年6月、日本に帰国し、LastRootsを設立

「インターネット以上」の革命に打って出る

ー現在、取り組んでいる事業内容について教えてください。

今年6月に日本で立ち上げた株式会社LastRoots(ラストルーツ)で、ブロックチェーン技術を活用したデジタル通貨「c0ban」と、それを使った新しい動画広告サービス「c0ban広告」の開発・運用を行っています。

c0ban広告は、世界初、「100%視聴型」の動画広告を配信できるアプリ。起動すると15〜30秒のCMが再生され、その最後に「c0banボタン」が0.5秒間だけ表示される。ユーザーはそれをタップしてデジタル通貨を稼ぎます。動画は早送りも巻き戻しも一時停止もできません。

「c0ban広告」、現在は実証実験段階
「c0ban広告」、現在は実証実験段階

収益源は、企業の広告費。動画広告の配信は無料、ユーザーがc0banを稼いで初めて、広告費が発生します。動画視聴における企業広告は、ユーザーにとって目障りで、しかも途中で消されてしまう広告に企業はお金を払っています。それではとても非効率。

c0ban広告ならユーザーはc0banを稼ぐことをインセンティブに、動画をかならず最後まで見てくれます。まだ実証実験段階ではありますが、ユーザーはc0ban広告を視聴するだけで、時給にして1,000円から2,000円程度は稼げる見込み。稼いだc0banで遊べるような世界を作りたいと考えています。

ーその「ブロックチェーン技術」ですが、何が革新的なのでしょうか。

ブロックチェーンとは、分散型台帳技術、または分散型ネットワークのこと・・・ と言っても多くの人はピンと来ませんね。私は、「ブロックチェーンはインターネット革命の次に来る、しかもインターネット革命よりも大きなインパクトをもたらす革命だ」と言っています。

その本質は、「私たちの目の前にある “X” という巨大な数字やデータを、見えなくすることができること」。どういうことかーー。

例えば、全部で5000万超の口座があるメガバンクの決済システム。それを運用するには、これまでビル10階建てくらいの巨大なデータセンターを数千億円という費用をかけて作る必要がありました。それが、不要になります。

これまで、決済の取引情報は「銀行」という中央管理者とそのデータベースを介して、相手に通知されていました。ブロックチェーンの技術を使えば、それが「分散データベース」でやり取りされるようになる。ですから、物理的かつ巨大なデータセンターは要らなくなるのです。

農耕革命、産業革命、インターネット革命を経て、人類は巨大な何かを作り出すことができるようになりました。今度は、それを自らの手で「見えなくする技術」、それがブロックチェーン革命なのではないかと考えています。今はそれが主に、決済、デジタル通貨に活かされているというわけです。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

ーすでに「ビットコイン」というデジタル通貨が世の中に流通しています。なぜ、独自で「c0ban」を開発しているのでしょう。

ビットコインは、世界中ですでに1750万枚くらい発行されていて、その価値はすべてで1兆2000億円にも上ると言われています。しかし、その価値の20%は初期にビットコインに関ったわずか100名がいまだに握っているのです。

ビットコインが盛り上がれば盛り上がるほど、喜ぶのはその100名だけ。しかもそのほとんどは、アメリカ人。つまり、今「ビットコイン」で何かをしようと、勝負を仕掛けた時点で「負け」ているんです。ですから、新しく和製のc0banを作って、この革命に打って出てみようと。

「アマチュアは考えていろ。プロは動く」

ーc0banの着想に至るまでの連続起業家としての変遷について教えてください。

大学、大学院時代はコンピュータの研究者として、毎晩3〜4時くらいまでプログラミングをする日々でした。就職活動の時期になって「経営コンサルタント」という職種があることを知り、それが自分に合っている気がして野村総合研究所(以下、野村総研)に入りました。

野村総研でコンサルタントとしてはたらいていた7年目にBOPビジネスに携わったことがきっかけで、インドの無電化の村にソーラーランタンを貸し出すNPOを手伝うことに。ちなみにインドでは、人口12億人のうち4億人が無電化の生活をしています。そんな村を散歩しているときに、ある「おじいちゃん」に声をかけられたんです。

”Hey, you!” と片言の英語で。何を言われるのかと思ったら、突然、”Japan, great!” と。

”Japan, great!”

今でこそ「そうだろう、Greatだろう!」と胸を張れるのですが、当時、33歳だった私は、「そんなことないよ」ととっさに謙遜してしまいました。しかし、よく考えてみたらこれはすごいことだなと。

無電化で、英語もまともに話せないような村のおじいちゃんが、たまたま見かけた日本人に放った言葉が、”Great!” って(笑) 戦後焼け野原だった頃から頑張ってきた昔の日本人が、日本の良さを伝えてきたからなんだろうなと。

それに比べて、自分はどうだろう? 「そんなことないよ」なんて謙遜してしまった自分は、なんて小さいやつなんだって。それにこのままだと、あのおじいちゃんの「孫たち」は大人になっても絶対、”Japan, great!” なんて言ってくれないんだろうな・・・とも。

それで、「日本人は、俺は、もっとグローバルに打って出ていかないといけない」と、危機感を抱くように。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

海外に挑戦するきっかけをつかむため、当時アジア進出を目論んでいて、声をかけてくれたグリーに移りました。結局、野村総研では9年間はたらいたことになります。グリーのシンガポール現地法人の立ち上げをまかされて、移住することに。

立ち上げが終わって、そのままシンガポールで起業しました。アジアの起業家が集まるイノベーションイベント「the CHAOS ASIA」の運営や、日系企業のアジア進出支援など、とにかく海外でビジネスを「ゼロイチ」で作るということを、ひたすら進めてきました。

「the CHAOS ASIA」
「the CHAOS ASIA」

かと思いきや、自分で運営したthe CHAOS ASIAをきっかけにブロックチェーンのことを知り、「これは今やるしかない」と思って、家族をシンガポールに置いたまま自分だけ日本に戻ってきたんです。家族で引っ越しなんかしていたら、機を逃すと。

ー企業の海外進出支援からブロックチェーンまで、携わるビジネスが多岐に渡っています。ご自身の中で何か共通点は。

イベントにしても、コンサルにしても、ブロックチェーンにしても、「ずっと前からそれをやりたかった」わけではないんです。誰かに「やれ」と言われたわけでもない。「思いついたらやっていた」のほうが表現としては正しくて、事業内容に何か軸を設けてはいない。

強いて言うなら・・・ 皆さんも、たまに誰か、「すごい人」に会うことってありますよね。私もあって、それであるとき、「自分が『すごい』と感じる人と、自分との違い」について考えたんです。そうしたら、「アマチュアは考えていろ。プロは動く」という言葉が浮かんできて。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

「新しいアイデア」って、客観的に評価するとかならず粗が見つかって、10個あればほとんどすべて、NGになるんです。普通に考えたら、やらないほうが賢い。だから、多くの人はやらないで終わる。

しかし何かを成し遂げて、相手に「すごい」と思わせる人に共通することって、「そのアイデアを実行している人」なんです。そのことに気づいてから、私は「思いついたらやる」ことにしています。

始まりはいつも、「気づいた人の責任」

ー小林さんはどうして没頭できるアイデアに次々と出会えていると思いますか。

「気づいた人の責任」という言葉を大切にしています。

自分が世の中の問題に直面したとき、それに対して見て見ぬ振りをするのではなくて、「その問題に気づいてしまった、自分はどうするか? 自分に責任は何かないか?」と自問する姿勢のことです。

では、なぜ多くの問題、つまりアイデアに気づけるかというと、それは「自分の知見の広さも狭さも知っているから」。

若い人でよく、「自分のやりたいことが分からない、決められない」と悶々して、自己分析に走る人がいます。しかし、残念ながら、自分という狭い世界の中で自己分析をしても、答えはなかなか見つかりません。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

逆に広い世界を知って、その中で自己分析をすると、「あれも、これも、面白そう。今はどのゴールに向かうべきか」と思える。

若い人に「自分の世界を広げるためには何をしたらいいか」とよく聞かれるのですが、そのときは「映画を1000本、本を1000冊、バックパックで10カ国以上旅をしろ」と言っています。「それでも見つからなかったら、また声をかけてくれ」と。

良いアイデアに出会ったり、良いアウトプットを出すためには、今の自分の3倍はインプットしないといけません。かぎられたインプットの中で、アウトプットを出そうとすると苦しい。そんなときはアウトプットを一旦忘れて、インプットに没頭するべきです。

本を書くことにしたのも、他のビジネスパーソンの視野を広げるため
本を書くことにしたのも、他のビジネスパーソンの視野を広げるため

ー問題やアイデアに気づけたとして、「自分には解決できなさそう」と躊躇しませんか。

私も、「それはさすがに無理だ」と、まわりに止められることはあります。しかし、無理をどうにかしてクリアするから、「価値」が「付加」されるんです。仕事に無理なことが存在しないとしたら、それはただの「作業」です。

また、自分が躊躇して諦めないためにもう一つ決めているのは、「怖いと思ったらやる」ということ。「これは本当に上手くいくか?」なんて、少し時間を置いて考えたからといって、より賢い判断をできるようになるわけでもない。

「怖いと思ったらやる、迷ったらやる、失敗しても、気にせずまたやる」、です。

「未熟な自分が立てた計画、PDCAなんて要らない」

ー決断し、事に当たるとき、どのようにして計画を立てますか。

ひたすら “Do, Do, Do, Do.” です。計画とか、PDCAなんて要らないですよ。もしその仕事が、「ここに高速道路を作る」のような「膨大な作業」であれば、計画は必要です。計画がないと建設できません。そうではなく、起業とか、何かまったく新しいことに取り組むのだったら、意味がない。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

逆に皆さんに質問したいのですが、今ご自身のことを「未熟」だと思いますか? もし未熟だと思っているとして、そんな自分が立てたプランなんて信じる意味ありますかーー。

もし自分が未熟だとしたら、「立てたプランが正しいかどうか」すら判断できません。そして、事前に立てたプランというものは、間違っていることのほうが圧倒的に多い。

ならば、一日でも早く失敗し、またそれと異なることをやったほうが良い。失敗して困難な課題が出てきたら、それは自分が成長した証拠。課題って、何かに挑戦して、成長した人しか出会えないもの。

課題に悩んでいる人を見たら、「お前、絶好調だな(笑)」と声をかけるようにしています。

「課題に悩んでいる=前に進んでいるということ」
「課題に悩んでいる=前に進んでいるということ」

ー課題を克服し、成し遂げるための秘訣は何でしょう。

「成し遂げたければ言いふらせ」です。先ほどは「気づいた人の責任」なんて言いましたけど、それだけで最後までやり切れるほど、聖人君子ではありません(笑)

グリーを辞めてシンガポールで起業したときだって、あれだけ「グローバル、グローバル」とまわりを煽ってしまった手前、まずは自分が海外で起業して、ある程度のところまで行かないと示しがつかなかったんです。

それに東京で起業したほうが、成功確率は確実に高かった。子どもも二人いましたから、自分でも「バカだなあ」と思いながら、シンガポールで起業しました。「まわりに散々言いふらしてきたことを、実行している自分でありたい」と思っていたから。

問題に気づいて、アイデアに出会えたら、それをまわりに言いふらす。すると、迷っても怖くても恥をかきたくないから、なりふり構わずやり始める。やり始めたら、当然失敗して、でもそこで新しい課題に気づける。失敗なんて気にせず、またやる。計画なんて要らない。

変化の激しい時代のビジネスパーソンにこそ求められる、新しい行動原理だと思います。

株式会社LastRoots 代表取締役 小林慎和

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[取材・文] 岡徳之、大矢幸世

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