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INTERVIEW
高橋俊介 キャリアの転機に「パートナー」の理解を得るには?
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キャリア志向のあなたは、仕事が忙しいといってパートナーとのコミュニケーションをおろそかにしてはいませんか。もし「パートナーとのコミュニケーションが不足しているな」と思ったのであれば、少しだけこの記事を読み進めてみてください。

ご存知のとおりキャリアで成功できるかどうかは多くの要素によって決まります。しかし、多くの要素がある中で、パートナーとの「コミュニケーション」が重要であると認識しているひとはどれほどいるでしょうか。

では、なぜ、パートナーとのコミュニケーションが重要か。それはキャリア上の困難に直面したときに、パートナーが支援してくれたり、精神的な支えになるからです。そして、そのコミュニケーションの質は「絶対量」によって決定されると指摘するのが、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授の高橋俊介さんです。

今回はパートナーとのコミュニケーションについて、どのような心構えを持ち、どのようなコミュニケーションを取ることが望ましいのかについて、高橋氏に語っていただきました。

PROFILE

高橋俊介
高橋俊介
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授
マッキンゼーアンドカンパニ-東京オフィスで大手日本企業の事業戦略策定や組織設計に従事した後、組織・人事コンサルティング会社ワトソンワイアットの代表取締役社長を歴任。その後、ピープル・ファクター・コンサルティングを開業し、人事コンサルティング活動に従事。2000年5月から慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授としてキャリアに関する研究を行う。

夫婦間のコミュニケーションの絶対量が鍵

―リスクを取ってキャリアを目指すひとが増えてきましたが、そのようなキャリア志向のひとがパートナーの理解を得るために必要なことは何でしょうか。

もっとも重要なのはコミュニケーションを取ること。さらにいうと、コミュニケーションの絶対量が多いことが重要です。

パートナー(結婚相手)はあなたと結婚するまで異なる体験をしてきたため、価値観、考え方、認識が違います。異なる価値観を持つパートナーから支援してもらったり、精神的に支えてもらったりするためには、コミュニケーションによって価値観や考え方のすり合わせをする必要があります。たとえば、パートナーが働いている場合、自分と異なるキャリア上の刺激を受けているため、仕事観に関してもすり合わせる必要があります。

コミュニケーションは、価値観・考え方・認識をすり合わせるだけでなく、夫婦感の満足度を高める効用もあります。雑誌「プレジデントファミリー」の創刊初期に日本国内の夫婦1万組2万人を対象に実施した夫婦満足度調査があります。この調査で、コミュニケーションの多さと夫婦の満足度の高さには正の相関があることが示されました。

調査では、夫と妻のどちらが、どれくらいの割合で家事を担当しているかを10段階で評価し、それぞれの平均満足度を調査。調査結果で興味深かったのは、夫と妻どちらかの家事分担率が10の場合、分担しているほうの不満度合いが最も高かった。一方で、1〜9の場合、満足度はそれほど変化がなかったこと。つまり、家事を100%任せてしまうと、任せられた側の不満が爆発するが、ある程度分担することで、不満は概ね解消される。さらに調査では、コミュニケーションが多い夫婦の満足度が高いことが示されました。

一方で分業しすぎると、コミュニケーションが減り、相互理解に支障をきたすため注意が必要となります。この根本的な問題は、分業すればするほど感受性が下がってしまうことにあります。

「ゴミ出しは夫」など明確に分業している夫婦を「職務記述」型夫婦関係と呼んでいます。このタイプは、コミュニケーションが減るため、満足度の低下につながります。とにかく、コミュニケーションの絶対量が重要ということです。

しかし、現実にコミュニケーションを十分に取っている夫婦は多くないのが現状です。

ある大学の教授が専業主婦のいる夫、共働きの夫、共働きの妻を対象に実施した聞き取り調査で、「家族が大事」との回答は専業主婦のいる夫の割合がもっとも高かったのですが、コミュニケーションの量がもっとも少なかったのも専業主婦のいる夫でした。

この調査から、専業主婦のいる夫は、家族が大事だから残業などをして一生懸命働いているのだが、忙しいあまり家ではコミュニケーションが取れていないことが明らかになったのです。

―コミュニケーションを取る上で、どのようなことに気をつけるべきでしょうか。

お互いの感受性を高め相互理解を深められているか、精神的な支えとなれているか、適切な期待値を持ってもらっているか、が重要です。

お互いに適切な期待値を持っていると、夫婦関係はうまくいきます。これまでとは違った人生を歩むひとたちを特集するテレビ番組「人生の楽園」で、うまくいっている夫婦は、妻が夫に対して適切な期待値を持っている場合が多いです。たとえば、夫が早期退職し突然新しい事業を始めると妻に告げるとき、妻は最初驚くが、最終的に妻も一緒になって事業をやっている場合が多い。このような妻はたいてい「夫はこんなことをやりかねないひとだと思っていた」といいます。これは妻が夫に対して適切な期待値を持っていることを示しています。

リスクを取ってキャリア追求するときにパートナーからの支援を得るには、あなたが普段から適切な期待値を設定しておくことが重要です。

夫婦間のぶつかり合いを恐れない。

 ―コミュニケーションにおいて夫婦喧嘩をどう捉えるべきでしょうか。

夫婦喧嘩を個性と個性のぶつかり合いと考えると、それを通じて自己を成長させ、キャリア実現につなげることができます。

社会というのは、自分のやりたいこと(自分の個性を生かせること)だけで生きていくのは難しいですよね。ときには、やりたくないこともやらなくてはなりません。ただし、やりたくないことばかりやっていると個性を活かすことができず、人生が楽しくなくなる。そこには順番が必要だと考えています。その順番とは、まず個性を活かすことをして自己肯定感を得ることです。次に、自分の個性ではうまくいかないことを学ぶのです。

自分の個性では状況にうまく対応できないと感じたときは、個性をコントロールして状況を悪化させないようにすることが必要です。自分の個性が状況を悪化させているとき、きちんとパートナーから指摘してもらうことが大事となります。

さまざまな人間関係がある中で、もっとも理解しあっているのは夫婦です。さらに、上下関係がないため、辛辣なこともしっかり指摘できます。

しかし日本では昔から「沈黙は金なり」という考えが浸透しており、しっかり指摘するという文化がありません。これは成長を否定していることにほかならないのです。また沈黙しているとコミュニケーションの量は増えず、夫婦間の満足度は高まりません。

パートナーから個性を指摘してもらい、あなた自身の個性を客観的に見つめ直すことで、人間力を成長させることができます。夫婦喧嘩をした後は冷静になって、「なんでムッしたのか」を考えると、成長のヒントが見えてくるはずです。

個性を指摘し合える夫婦喧嘩はお互いの成長につなげることができますが、普段からコミュニケーションをとってなければ夫婦喧嘩は自己成長のない単なるケンカになってしまいかねないことを忘れてはいけません。中長期的に円満な夫婦関係を維持したいというコミットメントがあれば夫婦喧嘩をしても、お互いの成長とキャリア実現につなげることができるはずです。

また子供ができるまでにしっかりコミュニケーションを取ることが重要です。子供ができると育児にかかる時間が増え、コミュニケーション量が必然的に減ってしまうためです。ここでも分業しすぎ・ルール化の徹底は感受性が損なわれるためやめたほうがよいでしょう。

―結婚相手選びで、コミュニケーションの観点から注意すべきことは。

企業の採用と同じで、いいことだけでなく大変なことや厳しいことも伝えるべきです。また、結婚後のイメージのすり合わせをすることが非常に重要。

パートナーが自分と同じようにキャリアを追求する場合もあるでしょう。パートナーのキャリアを大事にするのであれば、自分が働く業界・職種によって奥さんのキャリアを支援できるかどうかが左右されることを理解しておくべきです。

以前、外資系医薬品メーカーで共働きの夫を対象にした聞き取り調査をしたことがあります。この調査では、家事・育児の分担ができるのは専門職が多いことが明らかになりました。一方で営業職では、そうではない傾向であることがわかりました。

日本の企業では、この傾向がより強いように思われます。共働きでパートナーが本気でキャリアを目指す場合、もう一人はそれを支援できるような環境に移るべきです。共働きでキャリアを目指す夫婦は、外資系に転職することが多い。今後このようなケースが増えてくる可能性が高いでしょう。

以前聞き取り調査した某日系大手証券の営業部で管理職だった共働きの男性はまさにこの事例に当てはまります。この男性は、支店長(年収1500万円ほど)に昇格する見込みでしたが、大手企業の総合職でキャリアを目指す妻のことを考え、専門職であるファイナンシャルアドバイザーに転職しました。

結婚前はわからなくても結婚後にパートナーの価値観との間にギャップが大きいことが判明する場合もあるでしょう。その場合でも、異なる価値観を受け入れられる寛容度を持つことで問題はおこりにくくなります。コミュニケーションの絶対量を増やし、パートナーからの指摘を受け入れることで、成熟度は高まるでしょう。

―ここまで人事・キャリア研究の第一人者である高橋俊介氏にキャリア実現における夫婦間のコミュニケーションの重要性を語っていただきました。

高橋氏の主張は「キャリア追求にはパートナーの支援が欠かせず、支援を得るためには相互理解を深めるコミュニケーションを普段からしっかり取るべき。また、お互いが良い関係を維持するというコミットメントを持ちコミュニケーションを取ることで、自己成長とキャリア実現を達成できる」とまとめることができます。 冒頭で「パートナーとのコミュニケーションが不足しているな」と思った方はぜひ、パートナーとのコミュニケーションについて考えてみてはいかがでしょうか。

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[取材]吉沢康弘 [文]細谷元

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