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INTERVIEW
フォロワー数で人の価値が測られる社会に鳴らす警鐘ーーマクアケ代表 中山亮太郎
INTERVIEW

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数十万、数百万のフォロワーを抱えるYouTuberやインスタグラマーの影響力に注目が集まり、一方では「VALU」や「Timebank」など個人の価値をマネタイズするプラットフォームも次々と誕生。

文筆家の岡田斗司夫さんが著書『評価経済社会』で2011年に論じた、お金よりも個人の評価が重要視され、流通する「評価経済社会」が、ここ数年で現実のモノとなりつつあります。

クラウドファンディング国内最大手「Makuake」
クラウドファンディング国内最大手「Makuake」

実現したいプロジェクトのアイデアを表明し、それを支援したい個人から資金を集める「クラウドファンディング」もまた、こうした流れを後押しする仕組みの一つと言えます。

しかし、国内最大手の「Makuake(マクアケ)」代表、中山亮太郎さんは、評価経済社会が「偏った方向に勢いづきすぎて、恐ろしい」と、今の時代感に警鐘を鳴らします。

中山さんが、評価経済社会の偏りに募らせる「危機感」とはーー。本来のあるべき社会の姿、そんな社会で「これから活躍できる人の条件」について、お話を伺いました。

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

PROFILE

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎
中山亮太郎
株式会社マクアケ 代表取締役社長
慶應義塾大学卒業。2006年株式会社サイバーエージェントに入社後、藤田晋社長のアシスタントやメディア事業の立ち上げを経て、2010年ベトナム現地法人にベンチャーキャピタリストして赴任し、スタートアップへの投資活動に従事。2013年日本に帰国後、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング(現マクアケ)を設立し、代表取締役社長に就任。同年クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」をリリース

ソーシャルパワーの大きい人「しか」活躍できない社会

ー中山さんが「評価経済社会」に感じている危機感というのは?

今、一般的に「評価経済社会」と言われているのは、SNSのフォロワー数やチャンネル登録数の多い、ソーシャルメディアでの影響力が大きい人のみが活躍しやすい社会を指しているように思えます。

そのような人たちが活躍できるようになったこと自体は、とても良い流れだと思います。しかし、現状はそちらにのみ勢いづきすぎて、そういう知名度の高い人「だけしか」評価を上げられない社会に傾いているのではないか、と感じるんです。

反面、これまで愚直にモノづくりと向き合い、しかし一方で、ソーシャル上で発信したり、想いを言葉で伝えたりするのが得意ではない人たちが、評価されづらくなっているのではないか、と。

そうやって、経験のある人、何かをまとめ上げる能力のある人の価値が、ただ「ソーシャル上で発信力がないから」というだけの理由でどんどん下がっていくと、良いモノ、高度なモノが生まれにくくなる、というのが私の危機感なんです。

ーたしかに「職人」と呼ばれる人の中には、情報発信が苦手という人も少なくなさそうです。

先日、「One JAPAN」という大企業の若手社員が集まるイベントにお邪魔する機会がありました。そこで感じたのは、彼らは本当にすごいものを作っているということ。

けれども、そういう大企業の人たちはこれまで、起業家やフリーランスの人たちに比べて「個」として表に出る機会が少なかったので、SNSのフォロワーは1,000人にも満たないという人がほとんど。

地方で伝統工芸をやっている人にしても、外国のセレブがわざわざ買いに来るような下駄とかすごいものを作っているけれど、彼ら自身にとてつもなく発信力があるというわけではない。

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

良いモノを生み出している人というのが、みんながみんな、フォロワー数の多いインフルエンサーというわけではないんです。

そういうモノづくりに向き合っている人、企業で頑張っている人たちに対して、一様に「起業しろ」「Facebookをやれ」「ソーシャルでの発信力を上げろ」とかいうのは、いささか乱暴ではないでしょうか。

クラウドファンディングだなんだと言っても、集められる金額が、結局はファンの数、友人の多さに比例して決まってしまうのでは、一見「民主的」のようでいて、実際はそうとは言えません。誰でもできることではないという意味で、「ソーシャル集権的」だと感じます。

Makuakeが実現したい、本来あるべき評価経済社会の姿

ーでは本来、「評価経済社会」とはどうあるべきとお考えですか?

どうにかして、まずはアイデア、そしてその人自身の能力が評価される社会にしなければいけないと思っています。

Makuakeを立ち上げる前は、日本のクラウドファンディング全体が、それこそソーシャル集権的で、「友人からしかお金が集まらない」「アイデアで勝負できない場」だと思われていた。それで、メーカーなど企業も利用したがらなかったんです。

日本から新しい良いモノが生まれるためには、こうした今の状況を変えなければならない。Makuakeが生まれたのも、そういう問題意識があったからなんです。

ー発信力の小さい個人がアイデアで勝負できるようになるため、どんなことに取り組んできましたか?

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

まず、個人のアイデアを埋もれさせず、きちんと世の中に届けるために、Makuakeというプラットフォーム自体の発信力を高められるよう、日々汗をかいています。

さらに、すべてのプロジェクトに「キュレーター」をつけ、アイデアの魅力が1本のストーリーとして伝わるようなお手伝いをしています。

キュレーターとは、実行者と二人三脚でプロジェクトの成功に向けて取り組むMakuakeのスタッフのこと。実行者と対話し、企画のコンセプトや情報発信の仕方などを磨き上げる役割を担っている。

実行者の中には、どうしても技術的なことなど「自分が伝えたいこと」を前面に押し出してしまう人もいます。ですが、それだけではアイデアの「本来の魅力」は伝わりにくい。

キュレーターがいるのは、実行者の視野の広さを補完するため。どこまでも「支援する人」の視座に立ち、資金を提供する上で知りたいこと・・・実現した先に待っている魅力的な世界を疑似体験できるストーリーを作るのです。

中山さんもキュレーターとの対話を通じて各プロジェクトをウォッチ
中山さんもキュレーターとの対話を通じて各プロジェクトをウォッチ

「右」から見ただけでは微妙に映るようなアイデアも、「左」から光を当てればキラリと光ることがあります。そこを丁寧に掘り下げていけば、どんなプロジェクトであっても伝えるべき魅力に気づくことができます。

評価経済社会におけるコアスキル「熱意」の正体

ー資金が集まり実現にいたるプロジェクトもあれば、資金が集まらず頓挫してしまうプロジェクトもあります。その違いは何でしょうか?

やはり、最終的には実行者の「熱意」です。この時代、「インターネットブラウザを介しても」伝わる、本人の熱意というものがあるように思うんです。

例えば、Makuakeで目標金額の180%に相当する、約4千万円もの資金を集めて実現し、公開後、大ヒットした『この世界の片隅に』という映画製作のプロジェクト。

Makuakeが人気を後押しした映画『この世界の片隅に』
Makuakeが人気を後押しした映画『この世界の片隅に』

片渕(須直)監督は、実はMakuakeにプロジェクトを掲載する何年も前から、この映画を実現させるための活動を続けていて、それを地道に発信していたという経緯があるんです。

そうしたプロセスがあったからこそ、いざ掲載して資金調達を始めたら、支援する人たちが雪崩のように集まった。「熱意」というのは、例えばそういうことだろうと思います。

ーつまり、「実現するためにやれることはなんでもやる」という気迫のようなモノ?

そうとも言えますね。それと、大事なのは「アイデアを形にする力」が実際にあることです。

極論、アイデアを出すだけであれば誰でもできるんです。それを形にする力がなければ、価値は生まれない。アイデアとそれを形にすることは、セットになって初めて意味を持ちます。

しかし、この2つは「無機的」につながっても機能しません。無機的というのはつまり、「誰かに言われたアイデアをただ作る」ようなことです。それでは、人を巻き込むような熱は生まれませんね。

「アイデア」と「それを形にすること」が、その人の中で「有機的」につながっているからこそ、そこに「熱」が生まれ、世の中に届くのだと思います。

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

これは、「会社員」であっても同じではないでしょうか? アイデアを実現するために会社の予算を引っ張ってきたり、上司を説得したりするのに最終的には必要なのは、「この仕事に人生を賭けている」という本人の熱意のはず。

私も、ここに来るまで事業撤退寸前の「ピンチ」が何度かありました。しかしそのたびに「もうワンチャンスほしい」と、株主であるサイバーエージェントの藤田社長や経営幹部に食い下がってきた結果、今があります。

アイデアやその人の能力が評価される時代においては、「自分はなぜこの仕事に取り組むのか」を自問し、それを伝えることがこれまで以上に重要になっていくでしょう。それが、人を巻き込む熱量を生むからです。

あなたのアイデアが埋もれるのは「世界」にとってもったいない

ーしかし、多くの会社には「自分の熱意が伝わらない、アイデアが評価されない」と嘆く人がいます。

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

会社が個人の熱意やアイデアを正当に評価するというのは、確かに難しいことなのです。

BtoBの企業であれば、競合と比較するなどしてまだ評価しやすいのですが、コンシューマ向け製品を作るBtoCとなると主観が混じりやすく、何が正解か分かりにくい世界でもあります。

では、どうすればよいかーー。クラウドファンディングサイトを運営する中でつくづく感じるのは、「何かを生み出すのに1社で完結する時代はもはや終わった」ということ。

「オープンイノベーションだ」「コーポレートベンチャーだ」と言われ始めているのは、そのことを読者の方も含めビジネスパーソンがみな、細胞レベルで感じているからではないでしょうか。

会社の「内」だけで評価されるのが難しいのであれば、会社の「外」に熱意を発信し、評価をゆだね、支援者を巻き込み、また「内」に戻ってくればいいんです。

私たちMakuakeが作ろうとしている評価経済社会は、まさに「アイデアと熱量を兼ね備えた内と外とをつなぐプラットフォーム」であり、個人を後押しする社会。

そんな時代に、会社の「内」というハードルのせいで新しいモノが生まれないというのは、キャリアという観点だけでなく、日本、世界にとって「もったいない」ことだと思いませんか?

株式会社マクアケ 代表取締役社長 中山亮太郎

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[取材・文] 鈴木陸夫、岡徳之

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