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INTERVIEW
「重要だが緊急ではない仕事」こそ会社で活躍できるブルーオーシャンだ
INTERVIEW

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BOOK MARK
会社では、自分の意志のとおりに仕事を選ぶことは難しい。それを望むなら、「重要かつ緊急を要する仕事」で成果を上げ、一定のポジションを確立してからだ。

多くの方が、新社会人のころからこう叩き込まれてきたのではないでしょうか。しかし、その “常識” を覆し、大企業で理想の働き方を実現している方がいます。

重要だが緊急ではない仕事にこそブルーオーシャンがあるんです。会社に貢献できているかぎり、自分の好きなことがやりやすい。組織の中で自由になれるということです。

こうビジネスパーソンの「意外な」キャリア戦略を語るのが、楽天市場の最古参スタッフで、兼業フリー・勤怠フリーの「フェロー風正社員」仲山進也さんです。

仲山さんは「夢中で仕事する大人を増やす」を個人の理念とし、それを叶えるべく、楽天大学学長、ECコンサルタントなど、楽天で常に新しい仕事とポジションを築いてきました。

しかもその傍ら、自らの会社を設立し、Jリーグクラブの横浜F・マリノスともプロ契約するなどどこまでも自由。そんな仲山さんに、「会社という場所で自分の意志で自由なキャリアを切り拓く仕事術」を伺いました。

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也

PROFILE

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也
仲山進也
楽天株式会社 フェロー風正社員
1973年北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、シャープを経て、楽天へ。楽天市場の最古参スタッフで初代ECコンサルタント。2000年に楽天大学を設立。社内外で「自走型人材・自走型組織」の成長を支援している。2004年ヴィッセル神戸の経営に参画。2007年に楽天で唯一のフェロー風正社員となり、2008年には自らの会社である仲山考材を設立。2016年から横浜F・マリノスでプロ契約スタッフ

「重要だけど緊急ではない仕事」こそ機会

—「フェロー風正社員」とはどのような働き方なのでしょうか。

「フェロー」というのは、リクルートだった藤原和博さんが始めた、いったん会社を辞めて専門領域でパートナーとして契約する人のこと。僕は兼業フリー、勤怠フリーですが、会社を辞めてはいないのでフェロー「風」。会社として制度があるわけでもないのでそう自称しています(笑)

僕はずっと「店舗さんと遊ぶ係」をやっています。全国各地にいる楽天市場の出店者さんと、どうすればよい商売ができるか、よい会社ができるかをおしゃべりしながら一緒に考える係。だからオフィスにいなければいけない必要性もあまりないので、最近の主な勤務場所はSNSです。

楽天の仕事のほかに、自分で創業した会社もあります。横浜F・マリノスにもプロ契約社員として所属。これは「個人事業主」として会社と契約する形です。

いろんなことをやっているように見られますが、すべての仕事は一つにつながるようにやっているつもりです。

僕には理念があって、それは「子どもが憧れる、夢中で仕事する大人を増やしたい」ということ。小学校の文集で将来の夢に「イチロー選手みたいになりたい」というのはよくあるけど、そこに身のまわりにいる大人の名前が挙がったらいいなと思うんです。

そのために「いかに仕事を遊べるか」「仕事を遊ぶ人を増やせるか」ということをいつも考えています。

—「店舗さんと遊ぶ」ということですが、どのような仕事をしているのでしょうか。

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也

店舗さんが「夢中で仕事をしやすい」ように、考える視点を提供したり、横のつながりを作るのが仕事です。それを進めるにあたって、チクセントミハイ博士が提唱する「フロー理論」を参考にしています。

人がモヤモヤするのは「不安」なときか「退屈」しているとき。夢中になれるのは「ちょうどいい難易度の挑戦」をしているときです。ネットショップの店長業を「孤独な闘い」としてやっていると、不安や退屈ゾーンに陥りやすいです。

これまで、「売り上げを10倍にする方法を考える合宿」や「大金星を挙げられるチーム作りを考える3カ月プログラム」などをやってきたことで、同じような問題意識を持っている店長仲間が生まれました。すると講座が終わっても切磋琢磨できる関係性が続いていって、「不安」や「退屈」から脱出しやすく、「夢中」でいられやすくなるんです。

「この人とこの人がつながったら面白そうだな」と思うような人同士が集まりやすいテーマで企画を立てて、化学反応が起こりやすくする・・・ということを繰り返しています。

イメージは「店長コミュニティという “ぬか床” をかき回す係」みたいな感じです。だけど、他の人から見ると「あの人、ちゃんと仕事してる? 店舗さんと遊んでるだけじゃない?」と思われているかもしれません(笑)

—確かに「店舗同士のコミュニティ作り」は、成果として評価されにくいのでは?

会社のなかには、「足元の数字を固めること」を最優先にしている人たちがたくさんいます。なので、一人くらい、今日明日の数字のことは考えないで、ひたすら将来の成果のために土を耕すような社員がいてもいいのかなと。その成果を収穫するのは他の人なので、評価はされにくいです(笑) でも、ちゃんと見てくれている人は必ずどこかにいます。

店舗さんと交流する仲山さん(写真中央)
店舗さんと交流する仲山さん(写真中央)

仕事を重要性と緊急性のマトリックスで分類すると、多くの人は「重要かつ緊急な仕事」だけに追われます。みんなが着手できていない「重要だけど緊急ではない仕事」があるなら、それを自分がやろうと思います。

仕事は「気づいた者負け」だと思っていて(笑)、「なんでこれ誰もやってないんだろう」と気づくということは、自分にとって強みを活かせる仕事の可能性があります。他の人は気づきもしないのに、自分には見えちゃうわけです。

そこはいわゆる「ブルーオーシャン」なんです。誰の業務範囲にも直接は干渉していないから、少なくともお客さんの役に立つことであれば、自分の好きなことがやりやすい。組織の中にあっても自由にやれるということです。

当然、成果は大事です。僕の場合は幸いにも、月商30万円のころから一緒に試行錯誤してきた店舗さんが数年を経て月商1億円を超えるまで成長したり、一人で始めた事業が10人、30人、100人という所帯に成長したりするストーリーに伴走させてもらうことができて、なにか「同志」のようなつながりになれているのが一つの成果だと思います。

なにより、「楽天市場に出店して商売が楽しくなった」と言ってくれる店舗さんがまわりにたくさん増えてきているのが最大の成果です。

もしお客さんが評価してくれているなら、少なくとも会社からは怒られずに済むと思います。そして、社内にも必ずちゃんと見てくれている人がいるものです。

「楽天大学チームビルディングプログラム16期」の様子
「楽天大学チームビルディングプログラム16期」の様子

仕事を遊ぶには、経営・企業理念への深い理解から

—新しい仕事や働き方を認めてもらうため、会社にどのように働きかけたのでしょうか。

「認めてもらおう」とか「働きかけた」ということはないのです。「どうやったらそんな働き方になれるの?」とよく聞かれますが、「こんな働き方がしたい」と訴えたわけではなくて、自然な流れで行き着いた結果、こうなりました。

普段から店舗さんと経営やチーム作りの話をしていて、相手はみなさん経営者なのに、自分だけサラリーマンというのがしっくりこなくなってきて、「やっぱり経営者の立場になってみないと分からないことがある。自分でも会社を作ってみたい」と思うようになって。

それで会社に相談したところ、「兼業フリー・勤怠フリーの正社員でどうか」という提案をもらったんです。

新しいことを始めるときは、許可を得ないで始めます。というのも、僕がやりたいことは「それをやったらKPIにどのくらい影響するか」「費用対効果はいくらか」みたいな視点からだと判断不能なものが多いので、相談された上司のほうが困ると思うんです(笑)

だから、楽天の店舗さんと何かをやるにしても、立ち上げは社外の活動としてやって、もし軌道に乗りそうな手応えが出てきたら楽天社内に話をもっていく、というスタイルを取るようにしています。とってもやりやすいです。

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也

それと三木谷社長がよく言っていたのですが、「効率化の目的は、空いた時間を使って顧客接触時間を増やすこと」だと。なので、顧客接触時間を増やす活動を会社の理念や行動規範に沿う形でやっているかぎりは、許可を得ていなくても怒られることはほぼありません。

—自由な働き方の前提には、企業理念への深い理解があるのですね。

僕の強みは、楽天で18年間、一貫して店舗さんたちと交流を続けてきたことで、楽天の原点や価値観のことも、店舗さんのことも、体に染み込んでいるレベルになっていることだと思っています。

例えば、その壁に掲げられている「成功の5つのコンセプト」。まだ社員数が30名ほどだったころに行った合宿で、2日目の朝に三木谷さんが発表したものです。

成功の5つのコンセプト

社員が増えていくプロセスで、研修担当としてこの行動規範や店舗さんのことを伝える仕事も多くやってきました。

また、ちょっと変わったところでは、ヴィッセル神戸のお手伝いに行ったときに、ある講座をやりました。前年まで神戸市役所から出向してきた方がマネジメントをしていたのに、いきなり真逆ともいえるベンチャー経営者に変わったわけです。

ヴィッセルのみなさんはこれから意味の分からないことが次々に起こって混乱するだろうと思い、「三木谷浩史ってどんな人?講座」を作って、話をしました。三木谷さんのエピソードをもとにクイズにして、価値観を共有できればと思って。

三木谷浩史ってどんな人?講座

例えば、ベンチャー経営者はよく「昨日と今日で言うことが全然違う」ということがあります。そうすると、メンバーは「社長がブレている」と不安になりがちです。

でも判断というのは、「入力情報×価値基準」なので、判断が変わっても「価値基準」はそのままで「入力情報(見えているもの)」が変わっただけの場合がある。

なので、「三木谷さんの言うことが変わった場合は、たいてい新しい入力情報があったからで、価値観はブレないタイプです」ということを事前に共有しておけば、みなさんをムダに不安に陥れなくて済むと思ったのでした。

ちなみに、そのとき作った講座の資料を見た楽天の役員が、「これいいね」と言ってそのあと新人研修に使われていました(笑)

会社で理想のキャリアを切り拓く「4つのステージ」

—仲山さんの話を聞いて、「創業期に楽天に入社したことで、会社の圧倒的な成長とともに現在のようなキャリアを築いた特殊ケース」と考える人もいると思いますが、そこはどう思われますか。

「環境が特殊すぎて自分にはあてはまらない」とか「仲山は変人だから参考にならない」と、よく言われます。

あまり人の行かないほうの道を選んでチューニングを重ねてきた結果として今にたどり着いたので、「すぐマネできるテクニック事例」を欲している方にはお役に立てないと思います。

ただ、自分のことも含めて、何万人という楽天出店者さんや楽天スタッフを見てきた上で「働き方」というところまで抽象度を上げて考えてみました。それで発見したのが「加減乗除の法則」です。働き方には4つのステージがあると考えています。

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也

まずは、「加(足し算)」ステージです。得意なことも苦手なことも選り好みせず、とにかくできることを増やす。それをキャパオーバーになるまで続ける。

次が、「減(引き算)」。できることが増えてキャパオーバーになるころには、自分の強みが浮き上がってきます。そこで苦手なことは他の人にお願いして引き算をし、自分の強みに集中することで、強みが磨かれてとんがっていく。

強みが確立すると、他の人から「あなたの強みが必要だから一緒にやらないか」と声がかかるようになります。自分の強みと他人の強みを「掛け算」する「乗」のステージです。

そうやって、プロジェクトベースでいろんなところから声がかかるようになると、プロジェクトが増えすぎてどれも中途半端になる、ということが起こりがち。そこで「除(割り算)」のステージに進みます。

仕事を因数分解することで、強みを活かした一つの作業をしていると、同時に他のプロジェクトも進んでいるような仕事の組み方をします。自分の強みが、すべてのプロジェクトの「共通の因数」になっているイメージです。

このように、まずキャパオーバーになるくらい仕事を増やして、「減」ステージで強みを確立した上で、「重要だが緊急ではない仕事」である顧客接触時間を増やす活動を「理念や行動規範に沿う」ようにして夢中でやり続ければ、気づいたときには「遊んでいるように自由に働けている」ようになると思います、たぶん(笑)

楽天株式会社 フェロー風正社員 仲山進也

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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