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INTERVIEW
DeNA共同創業者 川田尚吾さんの「時の人」を生むメンタリングの言葉
INTERVIEW

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BOOK MARK

DeNAの共同創業者でエンジェル投資家の川田尚吾さんは、DeNA取締役会長の南場智子さんから講演などで、

若い人は川田さんに相談すると良い。私は苦しいとき、川田さんの「気の持ち方」に助けられた。

とたびたび名を挙げられています。

現在は日米欧のベンチャー企業への投資、支援を中心に活動されている川田さんに、有望な若手ビジネスパーソンを支援するメンタリングの秘訣について、お話を伺いました。

エンジェル投資家・DeNA共同創業者 川田尚吾

PROFILE

エンジェル投資家・DeNA共同創業者 川田尚吾
川田尚吾
エンジェル投資家・DeNA共同創業者
東京都立大学大学院にて博士号(工学)を取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、1999年に株式会社ディー・エヌ・エーを共同創業し取締役に就任。以降COOとして一連の事業立ち上げをリード。2008年に非常勤取締役、2011年より顧問。現在は日米欧のベンチャー企業への投資、支援を中心に活動

「若手を支援できる本物の資本家が、この国にはいない」

—現在のエンジェル投資家としての活動について教えてください。

投資先は30社~数十社、プロダクトにセンスを感じる起業家を支援しています。投資家の中には、「人柄」「コミュニケーション能力」を基準に挙げる人もいるけれど、「人と目を合わせて話せない、だけど優秀」というエンジニアは腐るほどいます。僕は気にしません。

支援する起業家と出会うのは、基本的には信頼できる人からの紹介が多いですね。ベンチャーキャピタルの人が「うちで扱うには早すぎるけど、川田さんならどうですか」と紹介してくれたり、友人の起業家から「おもしろい起業家を見つけたんだけど」と頼まれたり・・・。

この「友人の起業家」たちというのが、実は付き合いが古くて、僕と同様、学生の頃からビジネスをやっていて、ネット産業が立ち上がる同時期にITベンチャーを起業した「仲間たち」。当時は「街のゴロツキ」扱いされていたやつらと、今は若手起業家を支援している感じです。

—川田さんが投資家やメンターとして、若手を支援する動機は何ですか?

日本って、若い人がやるベンチャーに対するリスペクトがないでしょう。

(ソフトバンクの)孫(正義)さんだって、今となってはすごいけど、昔は「中小企業の社長さん」くらいにしか見られていなかった。アメリカに目を向ければ、ビル・ゲイツとかはアーティスト扱い。でも、もし日本にいたら「成金」扱いが良いところ。

日本とアメリカの差の原因としては「金融システム」が致命的で、日本には本物の「資本家」がいない。銀行が資本家的な立ち位置でいるんだけど、言ってもサラリーマン集団で、アメリカのような自由意思を持ったリスクマネーのダイナミズムとかはなくて・・・。

今の日本にとっては、「若い人を支援できる資本家、キャピタリストがいない」ことが最大のリスク。自分でビジネスをやって、それが分かってしまったからですね。

過去に苦しみを乗り越えた経験談が若手の精神安定剤に

—支援する若い人たちとはどのように接していますか?

メンターとして話すのは、基本的には出資している企業の経営者や、投資先として検討している人たちです。週に1回会って話す場合がほとんどですが、月1、2回のところもある。話す内容は人や会社の状況によってケース・バイ・ケースですが、大きく分けて2つ。

一つは経営ミーティングみたいな感じで、数字的な結果と定性的な事業の進捗を聞いて、「では次、どうしようか」とアドバイスしていくもの。もう一つは、なかなか社外に対しては話せないような、人材や資金調達、アライアンスに関する話ですね。

—どのようなアドバイスをされるのですか?

話していて、相手の方向性が正しいと感じた場合は、いろいろと議論しながら、あらゆる可能性や方法を探っていきます。

もし、その方向性に不安を感じた場合は、「なぜ僕はダメだと考えているか」という話をします。それでも、「この地雷を踏んだら即アウト」みたいなときを除いては、論破して止めさせることはありません。

なぜなら、失敗してはじめてつく筋肉もあるからなんです。DeNAもたくさん失敗したからこそ、大きく伸びたと思っています。

—失敗して、「つらい」と本音をもらす人にはどう接しますか?

傍目からは順調に成長しているようなベンチャーの経営者でも、痛みは伴うもの。そういうときに相談されることは、実は多いです。

そういう場合は、抽象的な話をしてもあまり意味がない。自分が生で見てきた具体的な事例や他の投資先の話をしたり、表にはあまり出ていない生々しい話をしたりします。

「自分がDeNAにいたときはこうだった。こういう選択肢も、可能性もある。まだ大丈夫だ」、と。そういう話が、本人にとって「精神安定剤」になって、相手が冷静に話を聞いてくれるようになる。

誰かのメンターの立場にある人なら、自分が過去に苦しかったときの振れ幅を示して、それを乗り越えた自分なりの成功体験を話すといいでしょう。それこそがメンタリングなのではないでしょうか。

エンジェル投資家・DeNA共同創業者 川田尚吾

キーワードは「ことに当たれ、われを忘れろ」

—DeNAの南場智子さん(取締役会長)が、「若い人は川田さんに相談すると良い。私は苦しいとき、川田さんの『気の持ち方』に助けられた」と。

僕も南場さんもきわめて考えが近いんだけど、若い人が何かに迷っているときは、とにかく「ことに当たれ」と言います。

若手がハマりがちなのが、「キャリアアップ、スキルアップをどうするか」という視点。僕が前にいたマッキンゼーでもよく、「自分の市場価値を高めるにはどうすればいいか」というテーマのセミナーがあったけど。

そうじゃない、「お前じゃなくて、お前が売るべきプロダクトを売れよ」と言います。

ー言われた人は頭を殴られるような思いがするでしょうね。

若い人はよく、自分とプロダクト、この順番を間違えるんです。そして順番を間違えると、まったく違う人材になってしまう。自分の時給をいかに上げていくかではなく、自分が属している会社の価値や売り上げをいかに上げていくかのほうが重要。

これはベンチャーにいても、大企業にいても同じこと。ビジネスは「修業をする場」ではないのだから、メンターや上司は、メンティーや部下に「プロダクトの価値を最大化する」ということに集中させなければいけません。

「お前が問題を解決して、成果を出せば、スキルアップ、キャリアアップは勝手についてくる。だから、常にことに当たれ」と。

そうやって、一個一個、目の前のプロダクトを良くするというゲームに目を向けさせていると、メンティーは「なんで自分は積み木を積んでるんだろう」とか、目的もなく「英語を学ばなきゃ」とか迷い始めることもない。

要はメンターの役割は、メンティーに「われを忘れさせる」こと。「必死にビジネスをやっていくなかで、普通の人生の100回分くらいのつらさ、悲しみ、喜び、そういうものに揺さぶられて、成長し、したたかになっていけ。そして、”いつの間にか”、時の人になれ」と伝えるようにしています。

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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