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INTERVIEW
リモートワークでチームを育てる―新しいアイデアが生まれる仕組み
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場所や時間にとらわれず働くことのできる「リモートワーク」。テクノロジーの進化によって、導入を検討する企業も増えています。

しかしリモートワークは、柔軟性が評価される一方で課題もあります。たとえば、オフィス勤務に慣れているために心理的な抵抗があること。顔を合わせないことが、企業の生産性にどのような影響を与えるのかわからないこと。そして、企業文化の醸成などです。

では、実際にリモートワークを導入している企業は、どのような工夫をしているのでしょうか。社員の半数がリモートワーカーであり、リモートワークを円滑にするためのツール開発も行っている、株式会社ソニックガーデンの倉貫義人さんにリモートワークで組織運営するポイントについてお話を聞きました。

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人

PROFILE

株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長 倉貫義人
倉貫義人
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長
1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープンソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOで株式会社ソニックガーデンを創業。「リモートワーク」に関するセミナーで多数講演。

リモートワークで「マネジメントしない」チームをつくる

ー倉貫さんは近年、リモートワークに関するセミナーで講演されています。なぜ今、リモートワークへの注目が高まっているのでしょうか。 

優秀な人材を確保したいという理由から、多くの企業が注目しています。特にIT業界では、普段からチャットやビデオ会議のツールに慣れているために、リモート環境をつくりやすく、導入も進んでいます。

ただ、中にはまだ「リモートワーク」=「フリーランサーに、決まった作業を発注する」とイメージしているひとがいるかもしれません。これは従来型の考え方です。いま注目されているのは、離れているとはいえ、オフィス勤務と同じように正規雇用で、仕事内容も同じ「リモートワーク」です。

仕事の本質とは、決まった仕事をただやるのではなく、会社の一員として自分たちが何をすべきなのかを考えることにあります。同じビジョンに向かい、仲間として事業をやりたいと思ったときに、相手がどこにいるかはそれほど重要なのでしょうか。おそらく課題は、環境整備や一人ひとりの意識にあると思います。

 

ーソニックガーデンがリモートワークを導入したきっかけを教えてください。

会社の立ち上げ当初から「マネジメントをしないチームをつくりたい」という想いがありました。誰かが指示をして、進捗管理をするというしくみは、クリエイティブな仕事には向かないからです。

そんなことを考えていた矢先、ある社員が「海外を旅しながら、今の仕事を続けたい」と言い出しました。しかし、彼には辞めて欲しくない。ならば、試しに離れて仕事をしてもらうことにしました。まずは在宅勤務から始めて、次にカナダから3ヶ月、その後アイルランドで1年間、それぞれリモートで働いてもらったところ、問題なく仕事ができたんです。

離れていても仕事ができると体感できたのは、大きな収穫でした。後に起きた東日本大震災では、本社が被災してしまったのですが、すでにリモートの経験があったので、社員全員を在宅勤務に切り替えることで、乗り越えることができました。これをきっかけに本格的にリモートワークを導入し、今年で5年目になります。

倉貫さん自身も現在はリモートワーク中心で、オフィス勤務は週に1、2回だそうです。
倉貫さん自身も現在はリモートワーク中心で、オフィス勤務は週に1、2回だそうです。

リモートワークのメリットと難しさ

ー企業やマネジメントする側にとって、どんなメリットがありましたか?

採用の幅が広がることです。弊社はブランドのある大きな会社ではないため、優秀な人材の採用は容易ではありません。その際に、本社のある東京近郊にこだわらず、日本全国あるいは世界全体で募集することができます。

中途採用の応募者には、20代後半~30代前半で「家族ができて地元に帰りたいけれど、ITの仕事を続けたい」と考えているひとがたくさんいます。キャリアがあって仕事の熱意があるひとを、場所が遠いという理由だけで諦めなくてもいいのは会社にとって大きなメリットです。

実際に、兵庫県から応募してリモートワークで働いている社員がいますが、本人は優秀でやる気も人一倍あるし、兵庫県なら時差もありません。正直、アイルランドと東京間で仕事をした時は、時差が大変でしたから。

 

ー「マネジメントをしないチームをつくりたい」ともおっしゃっていました。

弊社では、勤怠管理、目標管理、売り上げ管理を一切していません。そうした社風なので、自律的に動ける人材が求められます。セルフマネジメントができて、自発的に考え、仕事ができるひとです。よく、リモートだとサボるのでは……と心配するひとがいますが、オフィスでもサボることはできるので、リモートだからといって特別なことはありません。

社員の一人ひとりが、各自で自分のマネジメントをできれば、マネジメントは不要になり、自己組織化されたチームが出来上がります。そうすれば、マネジメントのコストを最低限に抑え、生産性を高めることができるでしょう。

今では、採用面談もリモートで行うようにしています。東京在住なら直接会う方がいいかもしれませんが、地方からの応募者と不公平になるのもいけないし、採用後はリモートで同僚やお客さんと仕事をすることにもなるので、オンラインでのコミュニケーションスキルも確認したいからです。

ーではリモートワークにはどのような課題があるのでしょうか?

まず、みんなで飲み会ができないことは問題でした。最近はオンライン飲み会を開いています。意外と楽しいですよ。好きな飲み物とおつまみを用意できるし、居酒屋で一緒に飲んでいるような気持ちになってきます。

つい最近困っていたのは、社員の人数が増えるにつれて、ビジョンの共有が難しくなってきたことでした。一般の会社だと、朝礼などで会社の状況や方向性を確認しますが、弊社は時間拘束もしていないので、一同に会するのは難しい。

そこで、半年前から「社長ラジオ」を始めました。私が毎朝5分程度、会社の状況や私自身の考えなどを録音して配信し、社員には各自好きな時間に聴いてもらいます。気軽に聴いてもらえるよう、専用アプリも作りました。親近感がわくと社員には好評です。

勤務中の社員の様子を常に確認できるようにしています。
勤務中の社員の様子を常に確認できるようにしています。

リモートワークでアイデアを生むコツは「雑談」と「一体感」

ーそうした新しい取り組みやツール開発など、会社の文化醸成が積極的にできる理由を教えてください。

新しいアイデアというのは、何気ない会話から生まれてくるものです。会議で「さあアイデアを出しましょう」と言われても難しいですよね。「社長ラジオ」もアプリ開発も、雑談中に「やってみたらおもしろいんじゃない?」となったのがきっかけです。

けれど、これはさっきの話に続きますが、リモートワークの大きな課題に、気軽な「雑談」ができないことがあります。オフィスであれば、近くの席の誰かと偶然目があって、雑談が始まったりしますが、リモートだとそういうわけにもいきません。

社員同士が常につながっている環境が重要だと考え、Skypeをつなぎっぱなしにしたり、チャットを使ったり、色々と試行錯誤を繰り返しました。けれど人数が増えるにつれて既存のサービスは使いにくくなってしまい、結局、自社でリモートワーク用のツール「Remotty」を開発しました。

開発にあたり工夫したのは、離れていてもみんなで働いているような「一体感」「空気感」を感じられること。ツール内では、勤務中のひとの様子を確認することができたり、誰かの仕事を邪魔することなく、個人同士で雑談することもできます。仕事中はオフィスにいようが自宅にいようが、全員Remottyにログインすることを徹底し、くだらない話が気軽にできる環境づくりを心がけています。

 

ー最後に、チーム育成のポイントを教えてください。

弊社では、半年に一回、社員全員参加の「ビジョン合宿」を行っています。地方でリモートワークをしているひとのために、オフィス見学も兼ねています。一泊二日の合宿で何をするかというと、全員で会社の経営や戦略、ビジョンについて語り合います。

ただ「パソコンを使わないこと」を決まりにしています。今は、面接も仕事も飲み会もなんでもリモートでできてしまうので、合宿ではあえて、リアルな場でしかできないことをしようと考えました。合宿中は、決められたテーマについて3〜4人のチームでディスカッションをするのですが、パソコンがないと、ひと対ひとでコミュニケーションをしなければいけません。これを繰り返すことで、お互いのことを深く知ることができます。

実際の業務を通して信頼関係を築くことは大切です。それに加えて、気軽に雑談をしたり、ときには意志を語り合うことも必要でしょう。そうした信頼関係が築けてこそ、お互いに関心が生まれ、助け合う風土と切磋琢磨できるチームが育つのではないでしょうか。

「くだらない話から面白いことが生まれる」と語る倉貫さん。社内はいつも明るい雰囲気に包まれています。
「くだらない話から面白いことが生まれる」と語る倉貫さん。社内はいつも明るい雰囲気に包まれています。

ーITツールの工夫だけでなく、風通しのいい環境づくりと、ひと同士のつながりを大切にする取り組みが印象的でした。貴重なお話をありがとうございました。

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[取材・文] 早川すみれ

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