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INTERVIEW
産前がカギ、産褥期を迎える前に「プレパパ」に知ってほしいこと
INTERVIEW

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BOOK MARK
女性は妊娠から産休、出産、育休を経て、徐々にママになっていく。それに対して、男性は出産後に突然パパにさせられる感覚がある。

これは、以前『”未来を変える” プロジェクト』の編集会議である男性の口から飛び出した印象的なコメントの一つです。産前産後にあるパートナーとの思いのギャップは男性にとって計り知れず、女性のケアをどうしても怠りがちです。

今回は、そんな男性読者の代弁者として『“未来を変える” プロジェクト』の編集長で二児の父でもある三石原士が、「プレパパ」の時期の難しさを「独自の準備」と「パートナーとの対話」で乗り越えた、ある男性の方と対談します。

その男性とは、昨年妻の産前産後期の体験を夫の視点でブログにつづり、同世代の男性たちから共感を集めたNPO法人ブラストビート代表の松浦貴昌さん。男性がパートナーとともに「パパ」になっていくために取るべきアクションについて伺いました。

NPO法人ブラストビート 代表理事 松浦貴昌

PROFILE

NPO法人ブラストビート 代表理事 松浦貴昌
松浦貴昌
NPO法人ブラストビート 代表理事
写真左。一児のパパ。16歳~26歳までバンドマンとして過ごし、その間経験職種は30以上。その後、マーケティング会社を創業。2009年にはNPO法人ブラストビートの代表理事に就任し、音楽×起業×社会貢献でチャレンジする10代を増やす教育プログラムを立ち上げる。趣味は、仏教や神道などの探究、家庭菜園

ママをサポートできるのはパパしかいない

三石  私は奥さんの二人目の産休直前と、このプロジェクトの立ち上げ期がちょうど重なって心身ともに苦しいときに、松浦さんの「産褥期を明けた今だから言える、プレパパに知っておいてほしいこと」というブログ記事を読みました。

Facebookで約4万の「シェア」を集めた松浦さんのブログ記事:産褥期を明けた今だから言える、プレパパに知っておいてほしいこと – 松の盆栽

当時私は奥さんの変化に完全には気づけないまま、子どもが生まれたあと戸惑った経験をしました。特にプロジェクトが佳境の中で長男のご飯の準備、保育園の支度や送迎など、仕事も家庭も双方で大変な時期でした。そういう体験もあって、今回は松浦さんがパパになる前に気をつけていたところをお聞きしたいです。

松浦  はい。たしかに、多くの男性は子どもが生まれた「あと」、やっと「パパ」になりますよね。しかし、女性は子どもが生まれる前からつわりなど壮絶なママ体験をしている。そのギャップはすごいだろうなと思います。

僕の場合は、「結婚したらもうパパになる準備は始まっている」と考えていました。子どもができる前から、子どもができたあとの家事の役割分担ややり方を明確にしていったので、準備期間は相当ありました。

なぜそこまで考えて行動したのかというと、たまたまNHKの番組で妻の出産後に訪れる、夫婦の愛情が急速に冷え込む “産後クライシス” を知ったからなんです。このグラフが衝撃的でした。

(出所)東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜 著『夫婦の愛情曲線の変遷』
(出所)東レ経営研究所ダイバーシティ&ワークライフバランス研究部長 渥美由喜 著『夫婦の愛情曲線の変遷』

女性は出産直後に夫への愛情曲線がグッと下がるんです。なんとなく知っていたけれど、それをこんな具体的なデータで見るとすごくショックでした。そのまま何もしなければ妻からの愛情は低迷するけれど、関わり次第では回復するとその番組では伝えていました。

びっくりしたんですが、熟年離婚の理由が、出産直後にあった出来事や夫への不満であることが多いそうなんですね。60歳を超えて「あなた、産後で子育てに協力しなかったでしょう? 子どもも独立したし、一緒にいる理由がないから離婚しましょう」なんて、そんなの悲しいなと思いまして。それで気合いを入れて準備しようと思ったんです。

三石  料理教室にも通われたそうですね。

松浦  そうですね。産後クライシスに関する書籍は何冊も読みました。そこから得た答えの一つは、料理を作れることがにとって大事なサポートになる、ということでした。

というのも、ママたちは子どもが産まれると自分の食事なんか作っていられないんですね。おにぎりを片手に子どもに母乳をあげる、なんて話も聞きました。僕はそれまで料理はずっと自己流でしたが、それでは美味しくできるようにはならないし、からだにいいものを作ってあげたかったのでオーガニックの野菜を使う料理教室に通いました。

三石  「産前」を振り返ると正直私は当時者意識をしっかりともてていなかったという反省があります。検診の付き添いや、子どものためのものを一緒に買い出しに行ったりすることで準備した気になっていました。実は出産後に全然違う世界が待っているなんて、想像できなかったところがありました。あのとき想像力をふくらませていたらなと悔やみます。

松浦  僕もはじめは胎盤とか全然何のことかわからなくて。出産後ママは骨盤がグラグラのまま家事をやるんだって聞いて、どれだけ大変なんだろう?という感じでした。出産した友だちの女性にいろいろな話を聞いても、“旦那が何もしてくれなくて大変!” と、だいぶ脅されましたね。生の声を聞けて心の準備ができたのはよかったです。男同士って子育ての話をしないじゃないですか?

三石  しないですね。弊社は平均年齢33という若い会社で独身が多く、私みたいに結婚して子どもが二人いるのはめずらしいケースだと思います。社内にパパ友が少なくて、奥さんのママ友に紹介されてパパ友の輪が広がっていきました。

松浦  男性の場合は意識しないとパパ友やママ友ができないですね。

三石  興味をもたないとダメですね。それと松浦さんのブログを拝見して、奥さんのケアが足りなかったと反省しました。産前を考えると子どもの名前に関する本とか、どう育てるのかとか、いま思えば子どものほうにばかり目がいきがちでした。

松浦  特に子どもが生まれると子どもにばかり目がいきがちだと、僕も本を読んでいて気づきました。子どもの育児をするのはママとパパの仕事だけれども、ママをサポートできるのはパパしかいない。だから僕は、妻をサポートすることに集中しました。

産褥期の育児に参加し、家族・親せきの協力関係を築こう

三石  子どもが生まれた後に松浦さんが実践されてきたことはどんなことがありますか?

松浦  気合いをいれてスケジュールをあけました。日本で育休をとっている人は2パーセントしかいないそうです。僕の場合は自分で会社を経営しているので自由がきくのですが、育休ではなく時短のような働き方をしていました。事前にまわりのみんなに宣言して、育児に時間をかけられる状態を作ったというのが大きいですね。“おぎゃー” と産まれた瞬間からすぐにサポートできる状態にしていました。

三石  まわりの理解はいかがでしたか?

松浦  嫌な顔されたらどうしようと思っていましたが、みんながサポートしてくれたので、それは助かりましたね。まわりに恵まれていたんです。

三石  私の場合はプロジェクトの立ち上げ期と出産時期が重なりました。プロジェクトのリーダーだったので会議を休んだりするのは厳しいし、外の合間の時間で仕事する必要がありました。

松浦  僕の場合はわかりやすく妻と子どものほうを優先しましたが、はたらくお父さんの気持ちもわかるのでしょうがないよねとも思います。特にプロジェクトのリーダーであれば両立は難しいですよね。

三石  いよいよプロジェクトも大詰めという時期に思うところが二つありました。

  • 一つ目は奥さんとのコミュニケーションの頻度を多くとらねば、ということ。
  • 二つ目は自分の家族も含めてヘルプを素直に頼むということ。

検診に付き添っていたときの空き時間にスターバックスで奥さんと時間をとって話したんです。「最近どう?」とか。そうすると、「仕事に復帰したあとのことが不安なんだよね」とか産後の家庭や仕事の話になりました。立ち話だと流れてしまいがちなことが、固定した時間をとることできちんと話せたんです。それ以来、朝に話をする時間を設けています。それはよいキッカケになったかなと思います。

もう一つは私の場合は幸いだったことに、義理のお母さんが近くに住んでいたので素直に助けを求めました。「LINE」でつながり、感謝の連絡もLINEで送っていました。頼るところは頼る。ただし、感謝の気持ちは忘れないことが大切だと思います。

松浦  「頼れるものは全部頼る」というのは本当に大切ですね。旦那さんが直接メールを入れて感謝するとはすばらしいと思います。

三石  お子さんが生まれてからはどんな工夫をされたのでしょうか?

松浦  2、3時間おきに赤ちゃんが起きちゃうので、睡眠時間を確保するために、一人が活動しているときにもう一方は休めるよう役割分担をしました

そうすると二人でいる時間は貴重になるので、ふとしたときに二人で話せるように「体調はどう?」などと声をかけるようにしていました。

それと出産後、半年経ってからどうしても妻が海外出張に行かなければならないことがあり、名古屋にいた自分の母親に東京に来てもらったことがありました。出張中のサポートをお願いしたのですが、これは自分自身がどう育児されていたのかもわかり、とても勉強になりましたし豊かな経験になりました。

産後6〜8週間の産褥期からパパが育児に関わっていることのメリットは、ママがパパに頼りやすくなることです。大変な時期のプロセスを夫である自分が共有していることで、いつでも頼れる関係になってくる。

例えば寝かしつけの方法もミルクの時間もよくわかっているので、ママは「ちょっと出かけてくる」と言いやすいし、パパは「ちょっと美容院や整体に行ってきたら?」などと言いやすくなります。

三石  プロセスを知っていると頼りやすいと思いますね。

松浦  はい。落ち着いて対処ができるって大事ですね。「自分がやらなきゃ」という真面目なママが多いと思うので、パパからの働きかけが大事だと思います。例えば、「疲れているだろうしお弁当を買って帰るよ」と伝えて、なるべく負担を減らせるようにしています。

それに、産褥期から関わっていると、自分で自分の時間をコントロールできない大変さが理解できるし、負担も2分の1で済むんですよ。

例えばパソコンで仕事をしようとすると子どもが起きちゃったり、やっと寝たなと思ったらピンポンと郵便物がきて起きちゃうとか。そういう経験をママは毎日しているんだと体感できたのが良かったです。

NPO法人ブラストビート 代表理事 松浦貴昌

妻のキャリアの希望を知ろう

三石  育児に関する最近見たコンテンツのなかから、ひとつささったものをご紹介します。サイボウズのワークスタイルドラマという動画です。

育児と仕事の両立を考えるワークスタイルドラマ「声」全6話を公開中  | サイボウズ

松浦  あの動画はささりますよね。

三石  環境が変わる中でお互いの心境はすれ違いが起こりやすい。そんな気づきを与えてくれた動画です。それでお互いの今の心境をより理解できるように、子どもの朝の送りのあとに奥さんとコーヒーを飲みながら固定の時間を持つようにしました。私が夜はどうしても帰りが遅くなるので朝に固定の時間を持つようにしたんです。

1日5分でもとれれば、週5日×52週で年間を通せば、22時間ぐらいの会話時間になります。これは大きいなって。奥さんとじっくり会話する時間って意識しないとあるようでないですね。

松浦  確かにあるようでないと思いますね。は仕事の話をお互いに話すよう意識していまして、今は家の壁にシートのホワイトボードを貼って、シフトみたいに一覧で二人のスケジュールが見えるようになっているんです。「この時間帯は子どもをみるよ」と予定が重ならないように話すようにしています。

三石  弊社のキャリアコンサルタントと話したら「奥さんのキャリアも真剣に考えている人って少ないよね」って話になって、すごくショックでした。お互いのキャリアの方向性を確認しあう時間は共働きだからこそ、重要ですよね。

松浦  そういう意味ではうちの場合も意識していますね。あえてわかりやすくこういう言い方をしますけど、コーチングのような感じで聞いています。「今悩んでることある?」とか、仕事の話を聞いたり、悩みを整理してあげたり。どういうふうに仕事していきたいか、など知っていますね。

産後じゃなくてもできることは事前に準備しよう

三石  松浦さんのお話を伺って、産前の予備期間の重要さに気づきました。産後に今教えていただいた課題を全部やろうとすると、やることが多すぎて大変ですね。

松浦  たしかに。僕も “産後クライシス” を見たときに産後にやることの多さを知りました。じゃあ、産後じゃなくてもできることはすべて事前に準備しようと思いました。産前に努力することの重要性を奥さんとも共有しておいたほうがいいですね。しっかり話し合った土台があればあとは軌道修正だけですもんね。

三石  はい。ブログでは「育休を積極的にとろう」と提案されていますが、育休をとれないという方も多いと思います。産前産後の夫婦間の課題をどう乗り越えるべきでしょうか。

松浦  話してきた以外では、お金で解決するのも一つの方法です。頼れるものは頼ったほうがいい。ある程度、ほんとに。ママって大変じゃないですか。産後の半年はママにとっても子どもにとってもとにかく大事です。自分たちだけでできなければお金をかけてでも家事代行やベビーシッターさんにきてもらったほうがいい。通販なんかも活用できます。

ほかには時間短縮できるアイテムが世の中にはたくさんありまして、例えば、離乳食をつくるマシーンがあります。鍋を沸騰させて、野菜を切って、蒸して、すりつぶして、とやっているとものすごく時間がかかりますが、それをいっぺんやってくれる家電製品もあります。産後の重要性を考えると貯金を減らしてでも、そういうアイテムをフルに活用するタイミングだと思うんですね。

三石  そんな製品があるんですね、知りませんでした。最後に今後、奥さんとの間で考えているビジョンがあれば教えてください。

松浦  引き続きなるべく妻に過度な負担がかからないような認識でやっていきたいなと思っています。生涯、お互いに公私ともにサポートしていく気持ちを持ち続けたいです。また、毎年振り返りの時間や、今年こういう年にしようという抱負などを話す時間を作るようにしていて、今後も続けていきたいです。

話はずれますが子どもをどこの学校に入れるとか教育の話は、育った環境が違うもの同士なので、話し合い不毛になりがちになるなと。だから僕たち夫婦は話し合いを一旦保留するようにしています。最終的にはそのときのこの子の意思が重要だもんね、と。

いろいろ言ってしまいましたが、最後に、は第一子しか育てていませんし、しかも新米なので、世のほかのパパやママに対して恐れ多いという感じを持っています。これが二人になったり、イヤイヤ期になったらどういう大変さになるんだろうと思っているので、世のパパとママを本当に尊敬します。

三石  本日はありがとうございました。

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[取材・文] 狩野哲也、岡徳之

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