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INTERVIEW
「過去ではなく未来、役職ではなく役割を語れ」働き方の論者2人が新時代の自己紹介を考える
INTERVIEW

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副業の解禁などにより、組織の枠を超えた働き方をする人が増えています。そうなるともはや、これまでどおり所属や役職で自分を語るのは難しくなるはず。わたしたちは「自己紹介のアップデート」を迫られていると言えるでしょう。

そこでご登場いただくのが、横石崇さんです。横石さんは、新時代の働き方を探求するカンファレンス『TOKYO WORK DESIGN WEEK(以下、TWDW)』を2012年から毎年主催。さまざまなビジネスパーソンと接点を持つ中で得られた自己紹介に関する知見をまとめ、著書『自己紹介2.0』を上梓しました。その中で横石さんは「役職ではなく役割で自分を語れるようになろう」と呼びかけています。

今回は横石さんからのリクエストで、『”未来を変える” プロジェクト』編集長・三石原士との対談という形式をとりました。今、どうして自己紹介が重要で、あるべき自己紹介とはどのようなものなのか。そして、どうすればいい自己紹介ができるのか――。組織を超えて人がつながる、「越境」の時代の自己紹介のあり方を探りました。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

PROFILE

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇
横石崇
「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役
1978年大阪市生まれ。多摩美術大学卒業。広告代理店、人材コンサルティング会社を経て、2016年に&Co., Ltd.を設立。ブランド開発や組織開発をはじめ、テレビ局、新聞社、出版社などとメディアサービスを手がけるプロジェクトプロデューサー。主な仕事にグーグル、ソニー、アドビ、ポーラ、東急電鉄、ワイアード日本版などとプロジェクト実施多数。毎年11月に開催している国内最大規模の働き方の祭典「Tokyo Work Design Week」では6年間でのべ3万人を動員した。鎌倉のコレクティブオフィス「北条SANCI」支配人。著書に『これからの僕らの働き方』(早川書房)、『自己紹介2.0』(KADOKAWA)がある。

「越境」が重要な時代。だが、自己紹介する人が減っている?

三石 どうして自己紹介本を書くことにしたのか、その経緯から伺っていいですか? 横石さんはなぜ、自己紹介が重要になると考えたのか。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

横石 理由はふたつあります。まず、ぼく自身は自己紹介が大の苦手。でも、『TWDW』というイベントを主催している関係上、いろんな人と会うので、自己紹介をする機会自体は多いんです。その中で次第に、うまくいく自己紹介にはどうやら原理原則がありそうだぞ、と気がついた。ならばそれをまとめてみるかと思ったことが、この本を書いた経緯のひとつです。

もうひとつは、自己紹介をしない人がどんどん増えてきているのではないか、と思ったことで。もともと自己紹介といっても、名刺を渡して「なになに社のどこそこ部署の誰それです」という定型で済ませてしまう人が多かったと思うんですが、それに加えて、最近は気心の知れた人同士、身内で集まって、なにかをやろうとする人が増えていますよね。それはそれである程度成立するところもあるから、どんどん自己紹介の機会自体が減っているんじゃないかと思うんです。

だから、ぼくとしてはこの本を通じて「もっと外に出かけて行こうぜ」と、実践に向かって後押しするようなメッセージを発信したかった。本の中では「越境」という言葉を使って語っていますが。

三石 自己紹介に着目した背景のひとつが「自己紹介の機会が減っていること」というのは、意外な切り口で面白いですね。

そういう意味では、『Linkedin』のようなポートフォリオサイトが出てきたことも、あらたまって自己紹介をする機会が減っている一因じゃないでしょうか。『Facebook』の「共通の友達」みたいなものの存在も手伝って、「初対面なのにすでに知っている」という関係性も生まれてきていますし。

横石 確かに、インターネットの力によって、プライベートにおいてもビジネスシーンにおいても、人と会う感覚が10年前とまったく違うものになってきているとは感じますね。三石さんとも、こうやってしっかりとお話しするのは今回が初めてですけど、すでになにをやっている人なのかは知っている、というように。

でも、それは三石さんの表層的な側面でしかない。そうやって出会いのオンライン化が進めば進むほど、フェイス・トゥ・フェイスの関係が大事になってくるというのは、当然の帰結です。だからこそ、あらためて自己紹介について考えてみる必要があるのではないかと思った、ということです。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

相手を動かしてこその自己紹介。「その先」を意識していますか?

横石 ところで、三石さんは自己紹介が得意ですか?

三石 いや、全然。そもそも人見知りなので。共通項がある人との会話はすごく盛り上がるから好きだし、臆せずやれるんです。でも、まだまだ共通項が見いだせない人との会話とか、一見しただけでは雰囲気的に自分と合うかが分からないところから、会話の糸口を見つけるのがすごく苦手で・・・。

ただ、ぼく自身、人とのつながりに助けられた経験がたくさんあるし、一見合わなそうに見える人との関係が思わぬプラスをもたらしてくれるというのも分かるので、つながりたいという気持ちもある。だから、いわゆる異業種交流会のような場だと、端っこのほうで「誰となら話せそうかな」とずっと見定めている感じになってしまうんです。

横石 ぼくも同じです。なんならパーティーとか異業種交流会に呼ばれてもほとんど行きません。行っても絶対にひとりぼっちになるのが目に見えているから。あそこにはその場に溶け込めるようなにか努力しようという気さえなくしてしまう魔物が住んでいます。

で、ある日気づいたのは、自分が幹事だったら話せるな、ということです。それこそ、ぼくのやっている『TWDW』だって異業種交流会の最たるものかもしれないけれども、あの場では「ぼくが主催者です」と言えるから、お互いにスムーズに意見交換ができる。

思うに、自分の中で「役割」が明確じゃない時に、人は自分のことを説明したり、つながったりすることが難しくなるのではないか、と。たまにいるじゃないですか、名刺を渡しまくる人が。でも、そういう人は、手元に名刺は残っても、記憶には残らない。「過ぎ去る人」みたいになってしまうのはもったいないと思うんですよね。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

三石 その文脈でいうと、ぼくは、むやみやたらに自己紹介をしないということを大切にしています。例えば、トークイベントの会場とかで、イベント後に名刺交換の長蛇の列ができることがありますが、ああいう列に並んで自己紹介をしたところで、どうしてもワン・オブ・ゼムみたいになってしまうじゃないですか。それよりは、ちゃんとお互いのことを伝えられるよう場を整えてから、自分の話をしたほうがいいのではないか、と。

これは逆の立場でも言えて、誰かに「あの時に名刺交換させていただいた誰それです」と言われて、まったく思い出せなかったら、相手に恥をかかせることにもなってしまう。そういうことはあまりやりたくないなと思っているんです。

横石 どうりで、この前イベントで会ったときにも、ぼくと名刺交換してくれなかったわけだ(笑)。でも、その話のポイントは、三石さんは相手の存在を認めて、自己紹介なり名刺交換なりの「その先のステップ」をちゃんと見ていることです。

ぼく自身は、「この人と会いたい」と思った時には、こういうメディアの取材でとか、登壇のお願いをするとか、なにかしらのお願いごとを持っておきたいと思っていて。それを相手が嫌がるかどうかは置いておいて、まず自分から思い切ってお願いしてみる。その関係をどう作るかを考えていますね。

三石 ぼくもメディアの人間なので、その気持ちは分かります。人と会う時には「ぼくはこういう者で、世の中に対してこういう価値を提示したい。だからあなたなんです」というストーリーラインをちゃんと持っておきたいと思っています。

横石 でも、現実にはその「なぜあなたなのか」の説明がない人が結構多いじゃないですか。

本の中でぼくは「肩書きではなく未来を語ろう」と書いたんですけど、この「未来」という言葉で問うているのは、その人の信念や時代観、仕事へのスタンスのことです。お互いに「ぼくはこういうことを大切に思っている」というところから語り合ってベクトルを見定められるからこそ、「だったら一緒にやろう」という未来につながるんじゃないかと思うんです。

いまは、共創とか越境とかコラボレーションが大切な時代だと言われるけれども、そうやって未来を語れる人が増えない限り、なにもいいものなんて生み出せないと思うんです。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

まずはありもので料理せよ。意義は後からついてくる

三石 自分の中で「これがやりたい」という未来がはっきりと見えていれば、「だからあなたなんだ」とか、「あなたもこういう形で一緒にやりませんか?」みたいな言葉は、自然と出てくるものだと思うんですよね。そうならないのはなぜかと言えば、自分のやりたいこと、つまりは横石さんがおっしゃる「役割」がはっきりと見えてないからなんじゃないかな。

横石 そうそう。「役割」というのは、「ジョブ・ディスクリプション」のようなものです。世の中ではいま、ジョブ・ディスクリプションを持っている人と持っていない人とで二極化が進んでいるように見えます。

ジョブ・ディスクリプションを持っている人というのは、自分をメタで捉えられている人。自分の職業の価値はなんなのか。自分は社会に対してどういう役割を担っていて、どういう貢献ができるのか・・・。履歴書のような役職や肩書きの足跡ではなくて、自分の価値づけをストーリーに落とし込めているかどうかです。自分の役割を確認するだけで、その先のキャリアに起きることは大きく変わるはずです。

三石 自分が何者で、どういうことが強みで、どういうことを実現させたいと思っているのかを語っていると、「面白いじゃないですか。協力しますよ」みたいに言ってくれる人が現れて、やれることがどんどんと拡張していく。自分自身にはそういう実感があるので、いまおっしゃったことはとてもよく分かります。

でも、ということは、そもそも自己分析できていなければ、自己紹介なんてできないという話でもあって。これは今回、横石さんの本を読んでみて思ったことでもあるんですけど、求められる分析の量がすごく多いな、と。しかもかなり抽象度が高く、思考力が問われるものが多い。

三石の自己分析ワークシート。自分の性質や周囲に期待されていることなどを言語化していく
三石の自己分析ワークシート。自分の性質や周囲に期待されていることなどを言語化していく

ぼく自身は、どちらかといえば普段から自己分析をやっているほうだし、こういうメディアをやって、普段から言語化することにも慣れているほうだと思っていて。そのぼくが大変と思うくらいだから、そうでない人がいざ「自己紹介が大事」と思っても、自己分析からやろうとすると、心が折れてしまうんじゃないか、とちょっと思ってしまいました。

横石 実際、この本を読んだ方々から、「個人もビジョンを打ち立てないといけない時代というのは理解できたけど、自分にはビジョンも好きなこともないんです」と打ち明けられることが増えました。でも、そんな時は「後出しジャンケンでもいい」、ビジョンは後づけでも構わないという話をしています。焦らなくていいんだよ、と。

ビジョンと聞くと大それたものを想像してしまうけれども、ビジョンって実際は、今までにやってきたこととか、好きで没入していることから派生してできてくるものでもあるじゃないですか。そういう意味では、三石さんとお会いした時に盛り上がった「エフェクチュエーション」の話が、すごく関連するんじゃないかと思っています。あの話をもう一度してもらってもいいですか?

三石 エフェクチュエーションというのは、起業家の思考法を理論立てて説明したもので、いま海外で注目が集まっている考え方です。どういうものかというと、連続して新規事業を生み出すような起業家は最初からすごいビジョンを持っていて、そのために必要なものを計画的に準備していると思われがちだけれど、実は違う、と。実際は、ありものを使ってなんとなく手を動かしているうちに、次第にわらしべ長者的に大きくなっていく意義はあとから生まれてくるものである、というもので。

横石 まずビジョンありきではなく、「冷蔵庫のなかにあるもの」で料理を始めればいい。

三石 そうです。そうするといつの間にか、それを交換したり支援してくれたりする人が現れて、だんだんと形になっていく。

でも、そういう連鎖を起こすためには、まず、私が何者で、どういうスキルや経験があって、どういう人とつながっているのかを開示するところがスタートになる。

だから、あるべき自己紹介というのは、まさにエフェクチュエーションの最初のステップである、と言えるんじゃないかな。最初は自分のありものの考えでいいから、少し整えて出してみる。それをきっかけとしてアクションを起こして・・・というところから、より深く自分を知るための、新たな気づきが生まれるんじゃないかと思うんですよね。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

結局、自分を知るには他人の目を借りるしかない

横石 ぼくも参加させてもらいましたが、三石さんが手がけている『タニモク』はまさにそのための場だと思いました。他人に目標を立ててもらう機会なんて、普段暮らしているとありえないじゃないですか。ビジョンも目標も、自分で立てないといけないものだと思っている。でも、実際にやってみて分かったのは、あれをやると、自分の考えが複眼的になるし、整うということです。その経験は稀でした。

タニモクの風景
タニモクの風景

三石 あの企画の大前提にあるのは、自分のことは、意外にも自分だけでは分からないということです。どんなにスキルがある人でも、自分で自分のことを理解するのは難しい。であれば、他人の目を生かしてみてはどうか、という発想から生まれたのがタニモクです。

横石 目標を立ててもらおうと思ったら、初対面のまったく知らない人に、自分のことを開示して伝えなきゃいけないんですけど、これが結構大変なんです。「どうやらこの人にはこの言葉使いや伝え方では伝わらないぞ」という場面も当然出てくる。そこに生まれる恐怖心みたいなものこそが、自分が何者なのかを知るいい機会なんですよね。

自己紹介もそうで、知らない人と話すことで視座が整う側面がある。その意味では自己紹介もまた、自分を認識するいい機会であることは間違いありません。これをうまく活用していくことが、今必要とされる「越境する力」を養うことにつながってくるはずですよね。

三石 いい自己紹介をするためには、その前提として自己分析ができていなければならないのは確か。でも、自分ひとりで自分を分析し、理解するのは難しい。だから、まずは知らない人のいる環境に飛び込んでみて、どうにかして自分を伝えようと努力してみるその中で得られた気づきをさらに深掘りしていくのがいい、という感じですかね。

横石 そのとおりです。繰り返し言っているように、ぼくは、最終的には一人ひとりが自分のビジョンをもって、それをお互いに語り合うことでつながっていく世の中になるのがいいと思ってるんですが、誰もがいきなり「自分はこうあるべきだ」という天啓が降りてくるわけではない。

じゃあ、自分の中の欲求や違和感に気づく能力はどうやって身につけたらいいのか。その答えは、やっぱりいろんな業界とか領域の友達をもつことです。身内から学べることは少ない。

そうすることで、自分のやっていることのなにが一般的で、なにが逸脱しているのかが見えてくる。自分のモノサシを持てるようになります。一方では、目の前の人がどういう人なのかも以前より解像度高く見えるようになるので、「なぜあなたなのか」ももう少し語れるようにもなるんじゃないでしょうか。

三石 そうですね。

横石 だから、いきなりでっかいビジョンを語ろうなんて思わなくていい。それよりも、まずは自分のもっているデコボコした個性をちゃんと愛でてあげることのほうが大切。新しい価値創造が求められる時代だからこそ、エフェクチュエーションの考え方を取り込むことで、世の中は今よりもっと楽しいものになっていくんじゃないかと思います。

「TOKYO WORK DESIGN WEEK」発起人・オーガナイザー/&Co.代表取締役 横石崇

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[取材・文] 鈴木陸夫 [企画・編集] 岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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