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INTERVIEW
予定調和、全会一致・・・破たんする日本企業の共通点「サイレントキラー」にどう立ち向かうか?
INTERVIEW

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破たんする企業には共通する「サイレントキラー」が潜んでいる――。かつて産業再生機構でカネボウの再生をリードした小城武彦さんは、自らの研究の中でこのことを明らかにしました。

「サイレントキラー」とは、会社の意思決定が予定調和と根回しで行われ、変化が訪れたときに急にハンドルを切れない仕組みのこと。しかしおそろしいのは、会社がその病にかかっていることに社員の多くが気づけないことだそうです。

会社を破たんさせるこの悪しき慣性に、中間管理職として対処するための心構えや具体的な方法を伺いました。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

PROFILE

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦
小城武彦
株式会社日本人材機構代表取締役社長
東京大学法学部を卒業し、1984年通商産業省(現経済産業省) 入省。1997年カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)入社。同社取締役を経て、2000年ツタヤオンライン代表取締役社長に就任、CCCの代表取締役常務を経て、2004年産業再生機構入社。カネボウ代表執行役社長(出向)、丸善(現丸善CHIホールディングス)代表取締役社長、西武ホールディングス社外取締役(現職)、ミスミグループ本社社外取締役(現職)、金融庁参与(現職)を歴任。プリンストン大学ウッドローウィルソン大学院修了、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。

破たんする企業に共通するメカニズム

―まずは破たん企業の事例研究を行うことにした経緯について、教えていただけますか。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

きっかけは、産業再生機構にいたころ「破たんする会社って似ていないか」と思ったこと。これを真面目に調べようと思って東京大学大学院に行きました。ビジネス書は持論や経験談が多いので、一度真面目に分析してみようと。

一方で、再生機構という公的な組織から給与をもらっていたので、そこでの経験を社会にしっかりした形で返したいという気持ちもありました。

―事例研究は具体的にどのような形で行ったのでしょうか。

実はアカデミックの世界には厳しいルールがあって、経営学の組織論では一つの会社にしかいたことがない人にはその会社の特徴を語れない、従ってそういう人にインタビューしてはダメだというのが常識になっています。

その点、私が再生機構にいたことはメリットになりました。再生機構は支援する会社に常駐する人を送って、再生の陣頭指揮や重要な意思決定に参画するポジションに就かせます。彼らは経営やコンサル経験者や会計士・弁護士で、これまでいろんな会社を見てきた。破たん企業だけでなく、当然いい会社も知っているわけです。

彼らが見てきたいろんな会社のいろんな景色、破たん企業と業績のいい企業の違いを中心に話を聞きました。また、客観性を担保するために自分自身の経験は分析の対象から外しています。

―破たん企業の事例研究の結果、明らかになったのはどんなことでしょうか?

まず「破たん企業は似ている」という先ほどの仮説が裏づけられました。そして、破たんする企業には「サイレントキラー」が潜んでいるーー。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

これは企業が破たんするときだけでなく、その企業のよかった時期にいた人にも話を聞いて分かったこと。つまり、同じ会社が同じように動いているのに、問題がない時期もあったんです。

それが何で急にダメになったのかな・・・と考えたときに「環境の変化」があったということが分かりました。

―環境の変化が起きたときに、会社が悪いほうに動いてしまう原因が「サイレントキラー」なんですね。

はい。サイレントキラーというのは、一言で言うと、ハンドルを急に切れないということなんです。経営学では「構造的慣性」と言われていて、これが強いと、環境が変化したときにそれに対応するために急にハンドルを切れない仕組みになっているんですね。

―どのような「慣性」が会社で働いているのでしょうか。

意思決定が予定調和的で、全会一致。誰かが反対すると意思決定できない。そうならないためにミドルが根回し調整をしていて、その根回しがうまい人が「できる人」と評価され、出世していく。

でもその人は調整しかしたことないので、前例踏襲しかできない。自分で戦略的なことを考えながらハンドルを切るというのができないんですよ。ですから「ぬるい意思決定のメカニズム」がぐるぐる回ってしまうんです。

―社内調整のうまい人が組織の階段を上がってしまうわけですね。

かわいそうなんですよね、彼らには悪気は一切ない。みなさん会社のことが大好きで、一生懸命仕事をしている。だけど、会社が破たんする。それが本当に辛い。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

考えてみれば、サラリーマンは組織に適応する動物で、そういう環境に身を置いたら自分もそうなってしまうと思いませんか? 会社の中で異論が出ないこと=「会社のため」。みんな全会一致で「よし、やるぞ」となることが嬉しい。

日本企業のサラリーマンに「『うちの会社』と言って何が思い浮かぶ?」と聞くと「人間の顔が思い浮かぶ」って人が多いんですよ。会社のミッションとか市場における位置づけとかではなくて、やっぱり仲間の顔、上司の顔。仲間との良好な関係を維持することが、会社のためになると勘違いしている。

それを否定するつもりはないけど、優先されすぎて、負け戦を続けてしまったりしているんです。

―仲間のために・・・というのはとても日本的ですよね。和を尊ぶというか。

そうですね、悪いことではないんです。ただ、あまりにも強く出すぎてしまっている。

タバコルームの雑談、昼飯、飲み会の雑談のテーマを振り返るのは、いいセルフチェックになりますよ。しんどい会社は、ほとんど人事の話になりますね。内向きだから。あの部長はあの部長と仲が悪い、昔あんなことがあったから・・・とか、「ここだけの話」っていうのがいっぱいあって。

競合との関係を見ていれば、環境に変化が起きていること、明らかに劣勢になっていることに早い段階で気づけるはずなんですが、内向きだから市場とか見ないんですよね。いい会社では雑談にも、お客さんや競合、自社の製品やサービスの話が入るんですよ。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

優先順位の問題ですが、時には仲間感とかそういうのを犠牲にしないといけないときも来る。環境変化が起きたときに、仲間から反対意見が出ることを良しとしない。それはもったいないと思いますね。

会社には理念があって、みんなそれに共感してその会社に入ったわけで、会社の意思決定が社会に貢献しているのかどうかは「気づく」ことはできる。でも、それを「口にする」人は、破たんする会社では評価されない。

日本の会社は全部こうというわけではなく、いい会社は山ほどあって、ちゃんとそういう人を評価しているんですよ。

会社を背負う意識と突出した成功でサイレントキラーに対処

―サイレントキラーに対して、中間管理職にできる対抗の手立てというのはあるのでしょうか。

結局、企業や社会全体が変わるということは簡単ではないんですよ。だから突出した成功例を作るしかない。ミドルがやるべきことは、自分の部署でこっそりサイレントキラーとは違うことをやって、圧倒的な成果を出すこと。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

例えば「あの支店はなんか業績がいいなと思ったら、他の部署とは違うことをしている」とまわりが見に来るんですよ。これだと誰も文句は言わない。成果も出ないのにワーワー言うと潰されてしまうので、大事なのはひっそりやって成果を出すこと。

―成果を出すために、サイレントキラーではないやり方のヒントはありますか。

いい会社はどうしているかというと、ファクトをベースとしたロジカルな議論を徹底的にやる。普通の会社ではやられていることなんですが、現場・現実・現物をしっかり見て、最低限の経営論はみんなが学んで、そのセオリーに沿ってやる。それだけでも変わります。

それと、抵抗勢力というのはだいたい政治的なことです。正しいか正しくないかではなく、好きか嫌いか、白黒はっきりではなくて妥協したり。それに抵抗するには、データを基にした理論武装しかない。ぐうの音も出ないほどの理論武装をすることですね。

破たんする会社の幹部は本当に勉強していないんですよ。みんな持論と経験談しかなくて、自分の狭い範囲で語ってしまう。それで環境が変化すると、対応できないんですよ。すばらしい経営者は世の中にはベターな方法が絶対あるはず・・・と、寸暇を惜しんで勉強しています。それは差がつきますよね。

―他にも中間管理職や若手社員が個人レベルでできることはありますか。

まずは勉強することでしょうね。あと、社外を知って自分や会社の経営者の客観的な評価をすること。世の中にはすごい人がいっぱいいるので、見に行ったらいいですよね。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

それから愛社精神ではなくて「会社を背負う意識」を持つことですね。愛社精神って少し間違えると抵抗勢力になってしまって、新しい変化とか提案が出てきたときにそれを拒みかねない。でも会社を背負う人は長期的に見て、会社のミッションを実現するのに必要なことを考えられます。

会社を背負う=与党ですから。自分は野党みたいに文句ばっかり言っていないか? しんどい会社は、社員がよく経営陣の批判をするんです。だけどちょっと待て、「自分もその一役買っていたんじゃないか?」と。 一言で言うと、当事者意識ですよ。

これは会社を外から再建をするときも同じで、企業に派遣されると、僕らはまず「会社を背負う意識を持った人」を探しに行くんです。

そういう人って大体冷や飯を食わされていて、子会社の奥のほうにいたり、どこかの部署の端のほうに追いやられていたりしますが、何で今の会社がこうなったのか分かっていて「よくぞ聞いてくれました」と喜んで語ってくれる。社内のどこかにはかならずいるので、その人にメインステージに上がってもらうようにします。

原因の奥には真因があって、この真因を見つけないとまた同じことが起こってしまう。逆に真因を見つけると、一見違ういろんなことが同時に解決したりするわけです。いろんな問題をきちんと構造化した上で、奥にある本質的な問題を見極める力なんですけど、こういう背負った人ってそれが見えているんですよね。どこを直せばいいかという処方箋も見つかるんです。

背負う人は、自分とよく対話をしていますね、「自分はどういう人生を送りたいか」と。だって、背負うということは会社で嫌なこともたくさんあるわけだけど、それでも、その会社にとどまっているということですもんね。武闘派で、かっこいいですよ。

株式会社日本人材機構代表取締役社長 小城武彦

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[取材・文] 大矢幸世、山本直子、岡徳之

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