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INTERVIEW
部下が伸び悩む原因は上司の「聴き方」にあった。無意識にやってしまう「人の可能性を潰す12の聴き方」
INTERVIEW

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BOOK MARK
良い上司ほど、しゃべらない。ぐっとこらえて部下の話に耳を傾け続けるものだ

社会の変化と共に、上司のあるべき姿がアップデートされ、こんな言葉を耳にするようになりました。しかし、耳を傾けるにあたっても「やってはいけない聴き方」があるようです。

以前、こんな画像がTwitterで大きな反響を呼びました。プロフェッショナルコーチ小寺毅さんが作成した「人の可能性を潰してしまう聴き方 12」の図解です。

人の可能性を潰してしまう聴き方 12

部下の話を聴いているつもりで、自分の考えを伝えることに意識が向いている。部下をコントロールしたい気持ちが聴く姿勢に表われて、話しづらい雰囲気になっている・・・。無意識のうちに、このような聴き方になっているケースは少なくありません。

では、どうすれば、部下の可能性を引き出す聴き方ができるのでしょうか。この図解の作成者であり、Uber日本法人やDeNAの幹部向けにも組織コンサルティングを提供してきた株式会社はぐくむ代表取締役の小寺毅さんにお話を伺いました。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

PROFILE

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅
小寺毅
株式会社はぐくむ代表取締役
慶應義塾大学卒業後、株式会社フィッツコーポレーションにて新規商品企画を経て、2006年に株式会社はぐくむを創業。脱・ヒエラルキー、脱・指示命令コントロール型の組織を目指す企業に向けて、組織コンサルティングを行う。プロフェッショナルコーチとしても活躍。セムコスタイル・インスティテュート・ジャパン認定コンサルタント。

聞き手には、話題になったツイートの投稿者であり、自身もコーチングを学びながら「聴き方」に向き合っているというガイアックス社の管大輔さんをお迎えしました。

「話を聴けていない上司」が部下の可能性を潰す

―小寺さんは多くの企業の組織づくりに携わっていますが、「聴く」ことができているか否かで組織のパフォーマンスはどれほど変わるものなのでしょうか。

大きく変わります。基本的に、上司が部下の話を聴かなければ、部下が自分の可能性を最大限発揮することはできません。

話を聴いてくれない上司との会話って、部下から見ると「答え合わせ」のようなもの。「どうせあなたが正解を言うんでしょ?」と思ったら、自分で考えたり、意見を言ったりする気がなくなりますよね。

それってつまり、部下が自分で考える機会を奪っているんです。上司が話を聴かずに喋っている時間は、部下の言葉をスルーしているというより、ダメージを与えているというイメージに近い。その結果、部下の自主性を引き出せず、指示待ち人間を作り出してしまいます。

それなのに、「部下が自分の意見を言わない」と思っている方は多いのではないでしょうか。

―気づかないうちに、部下の自主性を潰していると。

その通りです。例えば今は1on1を実施している企業も多いですが、上司が話を聴けていなければ、「部下がダメージを受ける時間」が増えてしまうだけ。

良い対話から部下の可能性を引き出していくのか。相手の声に深く耳を傾けることができず、才能や可能性を潰してしまうのか。どちらのサイクルを回すのかは上司次第です。上司はある意味、部下からも力量を試されているのだともっと自覚すべきでしょう。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

やってしまいがちな「部下の可能性を潰してしまう12の聴き方」

―では、部下の可能性を潰す聴き方を具体的に教えてください。

これが、私が提唱している「人の可能性を潰してしまう12の聴き方」の一覧です。

人の可能性を潰してしまう聴き方 12

見ていただければ分かると思いますが、意外と当たり前にやってしまっているものがあるのではないでしょうか? ただ、こういう聴き方をされると、話す側は「聴いてもらえていないな」と感じる可能性が高まります。

―正直、身に覚えがあるものがいくつかあります・・・。多くの人がやってしまいがちなものなどはありますか?

⑫の「ノンバーバルな否定」は、ほぼ無意識にやっている人が結構いらっしゃいます。部下から「なんとなく怖い」と思われているタイプです。

例えば、何気なくやっている腕組みや後ろに反りかえるような座り方、への字の口元など、何も言わなくても喋りにくい雰囲気を感じさせてしまう態度はいろいろとあります。考え込むと自然に眉間にシワがよってしまうような人は要注意です。

話を聴くためには、できるだけにこやかに、やわらかい表情を心がけたほうがいい。前傾姿勢を心がけると、より話を聴こうとしているのが伝わるでしょう。相槌うなずきも大切です。

―なるほど。あと例えば、⑥の「重要性の否定」などは、上司としては当たり前にやってしまいそうなものですが、NGなんですね。

自分が経験してきた悩みを部下から聴いたとき、励ますつもりで「気にしなくて大丈夫だよ」なんて言ってしまうことはよくありますよね。でもこれは、相手にとって重要な問題を尊重できていません。たとえ自分からすれば些細に思えることでも、まずは相手が話を出し切るまで聴いてあげるのが重要です。

―確かに、自分にとっては重要な問題を軽く扱われたら決していい気持ちはしないですね。この12のNGリストを避けて、話を聴けるようになるためにはどうしたらいいのでしょうか。

まずはリストを見て、自分がやっているか、自覚があるかどうかを1から5点で自己評価してみるのをおすすめします。

さらに勇気がある方は、ご自身の部下にも各項目を評価してもらってください。聴き方の点数をつけてもらったり、コメントつきでフィードバックしてもらうのもいいでしょう。「アドバイスするの早すぎです」といった部下からのリアルな声は、普段の聴き方を見つめ直す機会になりますよ。

ただ、そこで「点数が高いからいい、低いからダメ」と一喜一憂してほしいわけではないんです。というのも、このリストはあくまで表面的なもの。自分の聴き方を見直すきっかけに過ぎません。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

本当の問題は「なぜ可能性を潰す聴き方をしてしまうのか」にある

―聴き方を見直すきっかけ・・・。12のリストを完璧に意識できたとしても、本当に「聴ける」ようになるとは限らないということですか。

そうです。なぜなら、本当に相手の話を聴けるかどうかは、「聴く側のスタンス」にかかっているからです。上司として部下をどう捉えるのか。この捉え方によって、聴くスタンスが決まります。いくら表面的に聴き方を改善しようとしても、本質的には変われません。

―NGな聴き方をしてしまう根底には、どのようなスタンスがあるのでしょう?

「部下をコントロールしたい。正しい道に導いてあげなきゃ」、そんな思考で部下に接している方が多いのではないでしょうか。これは、実は「大人と子供の関係性」です。

このスタンスでは、大人が子供に指示を与え、正しい方向に導いていくべきだと考えます。「自分のほうがよく分かっている、正しいんだ」という前提があるので、部下がやろうとしていることを否定して、自分のやり方を押しつけてしまう。それが上司として当たり前の責任、義務だと思っているわけです。

しかしそうではなく、対等な大人同士の関係を築く必要があります。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

対等な大人同士の関係、ですか。

自分も相手も大人。だから、その考えや行動を尊重する。相手の可能性を信じて、最大限引き出そうとする関係性です。

常に「相手の中に答えがあるかもしれない」という前提を持てれば、部下の話を聴く姿勢は大きく変わっていくはずです。そうなれば、部下は安心して自分の話をできるようになり、その中で思考が深まり、行動が促進される。そうやって、対話を通して自分の内面を耕していけるようになるんです。

それまでに積み上げてきた対話によって大人と子供の関係性になってしまい、部下が上司の顔色を伺ったり、答え合わせをするような姿勢になっていたりする場合、どうやって関係性を変えていけばいいのでしょうか。

部下が上司の顔色を伺って正解を探しているということは、部下のフォーカスは上司にあたっています。しかし上司は、そのフォーカスを相手に返してあげなければいけません。そのために有効なのが、「オウム返し」です。

部下の口から出た言葉を、そのまま返してあげる。これによって、相手は自分の言ったことを吟味でき、また新しい考えが浮かんでくるようになります。その過程こそ「自分の内面を耕す」ことにつながります。

良い聞き手とは、相手にとって鏡のように感じられる存在です。部下にとっての鏡になることで、己を深く知る時間を提供でき、部下は「話をちゃんと聴いてもらえている」と感じます。そこから信頼関係が生まれ、大人同士の関係性を築いていけるようになるでしょう。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

コントロールを手放し、お互いに聴けるサイクルを生み出す

―NGな聴き方をしてしまう根底に何があるのかはよく分かりました。一方で、これまで大人と子供の関係性で進んできた企業も多くあると思います。なぜ、従来のコントロール型のスタンスが機能しなくなっているのでしょうか?

大きな要因のひとつに社会の変化があると思います。これまでの大量生産が重要な工業化社会では、人的管理も機械的にコントロールするのが効率的でした。一定のアウトプットが期待できる、標準化されたフレームワークですね。今でもそのやり方が最適なケースもあると思いますが、それでは勝てない領域が広がっています。

社会の変化のスピードが高まっている今、より経験が多い上司だからといって、「こうやればいい」「このやり方が正解」と言えなくなっている。すべての正解を上司が知っていて、それを元に部下を指導するのは限界があります。

そこで重要なのは、常に「より良くできる余白がある」ことを意識できるかどうか。自分のやり方がベストとは限らず、盲点があるかもしれない。その余白が、相手の話を聴くスタンスにもつながります。

自分だけで正解を出さなくていい。それに気づけたら、上司自身も楽になれるんです。部下を子供扱いしてコントロールしたほうが楽だと思うかもしれません。しかし実は、大人同士で率直に意見を言い合い、聴き合う関係になったほうが、苦しまずに、より良い成果を出せるようになります。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

―思い返すと、私自身も「聴くことで楽になれた」経験がありました。以前、部署の数字が停滞して自分に余裕がなくなったとき、部下の話を聴かずにすぐ指示を出し、コントロールしようとしてしまって。でもそこで態度を改めて、グッとこらえて聴いてみたんです。

聴いてみて、いかがでしたか?

―そこで気づいたのは、数字が伸びない苦しみを感じているのは自分だけじゃないということでした。もちろんその重みは違うかもしれませんが、「ああ、この辛さは共有できるんだ」と。そこからは自然と自分の痛みや苦しみも聴いてもらえるようになったんです。

不思議なもので、相手の話を聴けるようになると、自分の話も聴いてもらえるようになるんですよね。それまで管さんは部長としての苦しみを自分だけで受け止めていた。でもメンバーの話を聴き、大人として扱うことで、自分のことも話せるようになったんです。

「こんなこと部下には話せない」と思うのは上司側の勝手な判断です。スタンスが変われば、もっとオープンに話していいと思えるのではないでしょうか。

そうですね。最近は立場に関係なく弱音を吐いたり、しんどいと言えたりする雰囲気があるし、お互いに手を差し伸べられているように感じます。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

大人と子供の関係性でいたら、得られなかった未来ですね。自分から聴くことでいいサイクルが回り始めたんでしょう。

ビジネスの現場でよくあるのですが、いわゆるできる上司、実績もあって完璧に見える上司って、部下から信任は得ているけれど、どこか話しづらく感じさせていることが多い。エリートで、頭が良くて、人間味を感じにくいんですよね。

それが、対話ができるようになると、皆さん人間らしくなるんです。よく聴けるようになることで、自分も心を開いて部下に話せるようになる。そうすると、部下も上司の話を聴けるようになるんです。

部下の可能性を最大限引き出すために自分の聴き方、というかスタンスを変えると、なぜか自分も今までは絶対しなかった話をしてみようという気持ちになる。そうすると、部下も上司の苦しみを理解して、「どうしたらサポートできるか、より良くなれるか」を考え出すんです。

一方通行ではなく、相互に影響を与え合うことで、良いサイクルが回るようになると思います。

株式会社はぐくむ代表取締役 小寺毅

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[取材] 管大輔 [文・構成] 青木麻里那 [企画・編集] 岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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