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INTERVIEW
サイバーエージェント流 部下のポテンシャルを引き出すフィードバックの技術
INTERVIEW

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BOOK MARK

ある部下にポテンシャルを感じて、プロジェクトに抜擢。しかし、期待通りの成果が挙がらず、どのように奮起を促すか、苦慮しているマネジメント層は多いのではないでしょうか。部下にとって成果や成績を問われることは、耳の痛いこと。適切にネガティブ・フィードバックを行い、成果につなげるにはどうすればいいのでしょうか。

株式会社サイバーエージェントでは新卒社員に新規事業をまかせたり、若手社員を子会社の社長に登用したりと、画期的な「抜擢人事」で多くの成果を上げる一方、価値観が合わない社員に対して警告を出し、改善が認められなければ部署異動あるいは退職勧奨を行う「ミスマッチ制度」の存在も明らかにしています。その結果、対象者の半数は業務が改善され、勤務を継続しているとのこと。

一見、社員にとっては厳しいように感じられる制度の本質は、「会社でそのままはたらき続けられている社員の存在」にあるのではないでしょうか。その制度の真意と、社員との対話の方法について、人事総括本部長の曽山哲人さんにお話を伺いました。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長 曽山哲人

PROFILE

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長 曽山哲人
曽山哲人
株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長
1974年横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。伊勢丹を経て、1999年サイバーエージェントに入社。インターネット広告営業を担当し、その後営業部門統括に就任。2005年、新設された人事本部に人事本部長として異動。現在は執行役員として「採用・育成・活性化・適材適所・企業文化」をモットーに人事全般を手がける。ブログやSNS、著書など個人としての情報発信や、人材マネジメントや組織活性化などをテーマに講演・教育活動も行っている

「褒めること」がネガティブ・フィードバックへの第一歩

ー「ミスマッチ制度」の存在を表明されていることは会社として真摯だと感じるのですが、いったいどういう意図があるのでしょうか。

「ミスマッチ制度」というと言葉が強いので、誤解されることも多いのですが、パフォーマンスや成果が判断基準なのではなく、価値観が判断基準なんです。

本人が意図せずにチームのパフォーマンスを下げてしまっているとすれば、それは本人にとってもチームにとっても不幸なこと。往々にしてそういうときは、本人が自分の課題に気づいていないことが多いんです。

そこで対話することで、その課題をクリアにし、組織とのミスマッチが発生しているのであれば、部署異動やはたらき方を変えることで、その人を活かせるようにはたらきかける、ということを行っています。実際に、この制度によって改善されたり、異動先の部署でMVPを穫ったりする人もいます。

ーその対話の中身は、どうしてもネガティブであることが多そうですね。その指摘の仕方について苦労しているマネジメント層は少なくありません。

「ネガティブ・フィードバック」そのものは、「ミスマッチ制度」に限らず、さまざまな局面で必要なときもあるのではないでしょうか。まず、「ネガティブ・フィードバック」のポイントを押さえておきましょう。それをうまく機能させるには、鉄則があるんです。

前提としてあるのは、「褒め>詰め」であるということ。誰かに対して厳しいことを言うときは、つい「指摘することですぐに改善してもらいたい」と思いがちですが、まずは褒めることが大切なんです。

もし、指摘してもなかなか響かない部下がいるとすれば、それは「褒めが足りない」ということ・・・ つまり「お互いに信頼関係がない」ということなんです。その信頼関係をつくることが、「ネガティブ・フィードバック」への第一歩です。

ー相手の悪いところはすぐに目につきがちですが、褒めるところを探すのは意外と難しそうですね。

そうですね。褒めるためには相手を知ることが重要で、そのためには相手を観察しなければなりません。褒めるところが見当たらないということは、観察が足りないということなんですよ。

究極には、指摘をしなくてもバリバリ成果を出して欲しいし、本人だってそう思っているはず。そのステージに行くために、その人のどんなところが強みで、どこに弱みがあり、課題なのかを観察し、フィードバックすることが大事なんです。

もちろん、緊急事態のときには容赦なく言うしかないこともありますが、「叱りたいときほど褒めろ」というのがベースとなってきます。

ーよく「部下にどれだけ指導しても、同じようなミスを繰り返されて、本当に聞いているのかどうかわからない」というマネジメント層の嘆きが聞かれます。

逆の立場で考えると、ずっと叱られつづけていると、部下は上司の話を聞きたくなくなるんですよね。右から左に流れてしまう。「この人は自分を褒めてくれる=認めてくれる人だ」という認識があって、「そんな人からこれほど叱られているのだから、ここはなんとかしないといけない」という思いにつながると思うんです。

「率直に伝えること」が重要

とはいえ、そういう関係性を築くのは時間がかかります。そういうときに鉄則となるのが、「まず率直に伝える」ということ。2016年4月に当社ではミッションステートメントをアップデートしましたが、その中にも『迷ったら率直に言う。』という言葉を入れて、このことの重要性を全社員に伝えています。

「これを言うと嫌われるだろうな」「言ったらきっと傷つくだろうな」というようなことでも言わなければ、部下自身が自分の課題に気づけないんです。上司としても、組織成果が出せず、部下が育たないという二重苦に陥る。だから率直に言うことが重要なんです。

また、その際に気をつけたいことは、原則、マンツーマンで面談すること。そして場所は個室にするということです。オフィスの外に出て喫茶店やカフェで面談するのでもいいですが、まわりの人は聞いているので、基本的には会議室やミーティングスペースを取ったほうがよいでしょう。

ー同僚や後輩、あるいは他部署の社員がいる中で叱咤することは避けたほうがいいということでしょうか。

そうですね。なんだか見せしめのようになってしまいがちですし、不必要に相手の尊厳を傷つける必要はありません。そして、面談の際には「今日伝えることを一つに絞る」こと。面談時間は30分でも1時間でもかまいません。他にも言いたいことはあるでしょうが、言うことは一つだけ。そしてそのひと言を一番はじめに言うんです。

面談に呼ばれる時点で、本人も薄々何を言われるか勘づいていますよね。だから先送りせず、開口一番、率直に言う。「自分も言いたくないし、相手も言われたくないことを、隠さずに言ってくれた」ということが、信頼関係につながるんです。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長 曽山哲人

会社に関わるすべての人がハッピーになる方法とは

ー部下の問題点や課題を指摘した後、それを具体的にどうやって課題解決につなげていけばいいのでしょうか。

本人がその問題点を認める場合と、そうでない場合と2パターンありますよね。まず素直に認めた場合は、一枚岩で目標に向かって進んでいけばいい。その目標は人によってそれぞれだけど、本人にとってチャレンジングであること・・・「チャレンジしよう」と思えるかどうかが大事です。

その人にとってあまりに高すぎる目標なら、下方修正することも必要。上司として、ときには「しゃがんで」あげるんです。なぜならば、いつまで経っても成功体験がもてないほうが、弊害が大きいからです。がんばって達成すれば、褒められる・・・ そうすると伸び方がわかるようになるんです。むしろいったん目標を下げたほうが、のびのびとできて成果を出すこともあります。

もし問題点を認めなかった場合は、論点をすり替えられたり、反論されても、結論を一番伝えたいことに戻し、「でもこの一点はやってほしい」と伝えることが重要です。

たとえば、上司が部下の問題点を知ったとき、その問題の証拠を持っていなかったり、誰かから伝言された内容だったりしますよね。その際、「こういうクレームを聞いてるんだけど、どうなの?」と投げかけて、相手の言い分を聞く。それで結局問題の原因がわからない場合もあるけれど、少なくとも「言い分を聞く」ということが信頼関係を築くことにつながるんです。

そして、双方の言い分を聞いて、成果を精査したうえで、上司として総合的に判断を下すのですが、そのときも結論は一つに絞るということですね。

ー傾聴することで、相手にとっても納得感につながりそうです。

信頼関係のさらに上位概念でいうと、人間は感情の動物なんです。感情を害するようなことをすれば、パフォーマンスは落ちる。怒られることそのものよりも、恥ずかしいことのほうが本人を傷つけるんです。

あと、面談に関してもう一つテクニックがあるとすれば、紙に書いて渡すことも効果的です。たとえば、僕が面談に際して行っているのは、A4の紙に「褒めたいこと」「変えてほしいこと」をそれぞれ3つずつ、箇条書きにして渡しています。

それぞれ「素晴らしい」「期待」という言葉を遣っているのですが、「いつもチームを盛り上げてくれていいね」「情報発信が積極的でいいね」など ”素晴らしい” と感じていることを書き連ねたうえで、「もっと報告の量を増やしたほうがいい」「専門知識をつけるために勉強したほうがいい」と ”期待” することを添えています。

これを僕は「ラブレター」と呼んでいるのですが(笑)、毎月面談のたびに、6行ほどのメモが溜まっていくわけです。自分のためだけにもらったんだから、なかなか捨てられない。そういうやり取りを続けていると、「3カ月前から同じこと言われてますよね、すみません」と本人から言ってくれるような関係性になるんです。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長 曽山哲人

ー一人ひとりにそういったフィードバックがあると、部下にとっても「ちゃんと見てくれているんだ」と励みになりそうですね。反面、多くの部下を抱えていたり、プレーヤーとしても忙しい上司だと、なかなかそこまで手厚くサポートできない気もするのですが・・・。

慣れてくれば、面談前のたった15分程度でも書けるようになりますよ。思い浮かんだことを書けばいい。そのためには普段からの観察が大切です。MBA用語で ”Span of Control”(スパン・オブ・コントロール)と呼ばれる言葉がありますが、正直なところ、一人できちんと見られる人数は5〜7名程度が精いっぱいだと思うんです。それならそうと決めて、5人単位で見ていく。今月はこの5名、来月はこの5名・・・ というのもアリでしょう。

ー部下が上司から「ネガティブ・フィードバック」を受けずに、自らを客観視できるようになるためにはどうすればいいでしょうか。

自らを客観視することは、厳密に言うと難しいのかもしれません。あえて自分で耳の痛い話を受け入れられる人は、そう多くはないでしょう。けれどもある一定のレベルに到達すると、自己否定が必要になってくるんですよね。

当社の幹部社員でよく周囲に「自分の今の仕事は何点ですか?」と聞いている者がいるんですが、直属の上司以外に自らの課題を尋ねることで、成長できるポイントを探すことは一つの方法かもしれません。自分で紙に書き出すよりも、信頼できる人に聞いたほうが手っ取り早いですし、自分が気づいていない課題を投げかけてくれることもあります。

ー自分よりもまわりの人のほうが、的確に判断できるのかもしれませんね。

自分の価値観を変えるということは、本当に難しいことです。「ミスマッチ制度」でも本人に意思があれば、会社としても真剣に向き合います。周囲の人に自分の課題を聞いて回って、2週間〜1カ月後に面談することを提案すると、課題の本質に気づいてくれることがあるんですよね。

結果として、異動という手段を選ぶことになっても、それはそれでいいんです。会社である以上、どうしたら会社に関わるすべての人がハッピーになれるかどうかを考えなくてはならない。組織と個人、”OR” ではなく、どちらともハッピーになる ”AND” の方法を考えなければなりません。そのためには、誰かに気を遣うのではなく、率直に言うことが近道なんです。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 人事総括本部長 曽山哲人

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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