人工知能時代に求められる「レゴ型人材」 近づくために必要な学びとは?

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野村総合研究所(以下、野村総研)が2015年年末に発表した10〜20年後に、日本の労働人口の約49%が人工知能やロボットなどで代替可能」という英オックスフォード大学との共同研究の結果は、社会に衝撃をもって受け止められました。

その未来予測に携わった野村総研の寺田知太さんに前編では、本当にそのような将来が訪れたとき、「企業の組織体制」はどのように変わっていくのか、それまでに各人はどのような備えが必要か、伺いました。

後編では、人工知能時代に企業組織に求められる「学び」についてお聞きします。

PROFILE

野村総合研究所未来創発センター 2030年研究室 上級研究員 寺田知太
寺田知太
野村総合研究所未来創発センター 2030年研究室 上級研究員
情報通信・メディア産業における戦略立案、M&A支援に従事。Duke University Fuqua school of BusinessにてMBA取得後、さまざまな業種の企業に対して、デザイン思考ワークショップ、ベンチャー企業との連携プログラムのプロデュースを通じた、イノベーション創造の実務に携わっている。京都大学デザインスクール非常勤講師。

求められる人材は「ジグソーパズル型」から「レゴ型」へ

ー前編(リンク)のおさらいになりますが、あらためて人工知能による企業の組織体制の変化はいつ、どのように起こっていくのでしょうか。

前出の研究結果では、クリエイティブな力が要求される職業や、調整、説得、サービス志向が求められる職種は代替が難しく、データの分析や秩序的、体系的操作が求められる職業においては代替できる可能性が高い傾向が確認できました。

例えば、工場や建設、土木、農業の現場でも、ロボットだと24時間稼働してくれるので、昼間に細かい部分のチェックを人が担当するなどの分担が生まれるかもしれません。

従来の組織構造は機能ごとに役割分担する組織構造ですが、それを業務改革をすすめて効率化していこうとすると、基本的な考え方としては業務の内容を戦略部門とオペレーション部門とで二分して、これまではオペレーション部門を外部に委託しようという考え方でした。

人の役割の二極化

これからは付加価値の低い業務もそうですし、それだけではなく付加価値が高いと言われている事業計画、業績診断など戦略・コア部門の業務もテクノロジーで実現できるようになります。そうなると意思決定のようなコアの部分だけが残り、その部分だけは人がやらないといけないだろうとなります。

責任の所在として人間でないと果たせない役割も生き残ると思います。例えば、電車の運転はすでに自動化できる技術がありますが、鉄道会社がそうしないのは何かあったときに責任を取るためにひとが操縦桿を握っている必要がある、という考え方からですね。

そんな中でこれから重要なのは、それを解くことで社会にインパクトを、企業に利益をもたらすようなユニークな問いを生み出せること。そして、ユニークな問いというものは、なにかとなにかをつなぎ合わせるような発想で人間の嗜好を真に理解することが得意な人から生まれるものです。

 

ー「つなぎ合わせるような発想」とはどのようなことでしょうか。

複数の情報を組み合わせて、これまでになかったようなアイデアや多くの人が納得する答えを生み出すことです。

元リクルートの藤原さんの言葉を借りれば、情報処理や正解を当てるような「ジグソーパズル型」ではなく、情報を編集し、納得解を出す「レゴ型」の思考が求められるということです。要は、レゴブロックを組み合わせて、これまでになかったものを生み出す思考です。

そのような思考をするには、いろんなレゴを使いこなす力も必要ですし、こんなものを作りたいという出来上がりの姿をイメージする力も必要となります。

「つなぎ合わせる」発想ができる人

レゴ型人材に必要な「学び」とは

ー企業組織における教育の仕方も人工知能によって変わっていきますか。

さまざまな専門知識を詰め込み、それに基づき間違いなく業務を遂行するといった業務は、どんどんコンピュータにまかせることができます。したがって、そういった教育の必要性はどんどん薄れていくことになります。

 

ーずばり、レゴ型人材を育てるカギは何でしょうか。

多様な「原体験」を積み重ねることだと思います。ここで、例え話をさせてください。

餓死しそうなくらいお腹が空いている人がいるとします。まわりにある食べ物はすべて食べつくしてしまいました。ふと空を見上げると、鳥が飛んでいます。過去に鳥を食べたことがある人、もしくは動く動物を食べたことがある人だったら、その鳥を食べたいと思いますよね。でも、野菜しか食べたことのない人が鳥を見て、はたして食べたいと思うでしょうか。

さまざまな体験、人生の引き出しといってもいいかもしれません。それがあるからこそ、新しい組み合わせ、新しい解き方を思いつくことができるのです。

つまり、同じ何かを見たとしても、それをどのような視点で眺められるか、大切な何かに気づけるかということが大切です。

 

ーそれに気づけるのが、レゴ型人材ということですね。

そうです。ですから、企業や上司にとってこれから大切なことは、社員や部下にさまざまな原体験を蓄積する機会を提供することだと。

では、多様な体験はどのように生み出されるか。これは、著名な経営コンサルタントである大前研一さんの言葉をお借りしたいと思います。人間が大きく変わる方法は、「住む場所を変える」「時間配分を変える」「付き合う人を変える」につきる。

住む場所を変えるは、転職、転勤というのはインパクトが大きいでしょう。そこまでいかなくても出張、旅行で自分が置かれる環境を変えることはできますね。時間配分を変えるは、例えば、社会人大学や社内外の勉強会に参加して、学び直すことも有効かもしれません。

付き合う人を変えるは、いろいろな人と出会って、何か一緒にやってみるのが一番ですね。会社同士、部署同士でなにか協業するのは難しくても、個人同士で勉強会を企画、開催してみるのは有効だと思います。肝心なのは、越境しないと出会えない相手をより深く知ることです。

もしどれか一つだけを選ぶとしたら、時間配分を変えることがもっとも効果的でしょう。なぜなら、業務が決まっていても、業務外の時間配分は変えられるでしょうし、その時間で付き合う人も変えられますから。

そうして原体験が、自分や他人をより理解することにつながり、これまでにないレゴの組み合わせを生み出します。それがイノベーションと呼ばれるものだと思います。

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[取材・文] 狩野哲也、岡徳之

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