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INTERVIEW
テラグループ代表 徳重流、日本企業が海外出張・視察で大きな成果を挙げる方程式
INTERVIEW

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BOOK MARK

海外でEV・ドローン事業を展開するテラグループ代表取締役社長、徳重徹さんは、毎月何カ国も海外をまわりながら、各国で政府要人・財界大物らキーパーソンとの会合を重ね、ビッグビジネスの機会へとつなげています。

一方、多くの日本企業の海外出張・視察について、「同じグループの現地社員が手厚くおもてなし」「誰も読まない視察レポートを作って終わり」・・・と、お金の無駄遣いに感じられるエピソードを山ほど耳にします。

今回は、そんなまったく成果につながらない、「ぬるすぎる日本企業の海外出張・視察」について、徳重さんから熱い提言をいただきます。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

PROFILE

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹
徳重徹
テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長
1970年山口県出身。九州大学工学部卒業。住友海上火災保険株式会社(現・三井住友海上火災保険株式会社)にて商品企画・経営企画などに従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得、シリコンバレーのインキュベーション企業の代表として IT・技術ベンチャーのハンズオン支援に従事。帰国後2010年4月にテラモーターズ株式会社を設立。2016年にテラドローン株式会社を設立。

日本企業の海外出張は「No Action Talk Only」でビジネスにならない

Facebookでは頻繁に海外へ出張されている様子を更新されていますね。どういった方とどんな目的で打ち合わせされているのでしょうか。

今年に入って1カ月で2度の海外出張を行っていますが、明日からもまたインドへ向かいます。この4年間は月の半分を海外、残りを東京、というルーティンを続けていますね。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

私自身、積極的に海外展開する起業家、経営者ということもあり、EVやドローン事業を展開するにあたって、可能性のある国はどこなのか情報収集から始め、マーケット動向や産業構造、政府の方針など、国を選定するために必要な材料を集めるため、国の要人や専門家、パートナー(代理店)企業候補、競合他社などさまざまな人にお会いします。

EVなら中国はもちろん、ベトナム、ネパール、バングラデシュなど東南アジアや南アジアのあらゆる国々、そしてドローンはヨーロッパ各国にイスラエル、アメリカ、オーストラリアなど。「可能性のある国はすべて回る」という方針です。

そして国を選定し、ビジネスを立ち上げるとなると、生産拠点の決定やパートナー企業との交渉、政府とのネゴシエーションなど、ボトルネックになりそうな要因をすべて詰めて、51パーセントまでは私主導でディールを進めます。そこまで行けば、あとは拠点をまかせる社員へバトンを受け渡す、という流れです。

よく、海外拠点の立ち上げを若手・中堅にまかせる企業もありますが、上流工程をしっかり詰めていなければ、どんなに優秀で意欲的な社員でもうまくいかない。私自身、海外とのやり取りの中で、痛い目を見たこともありましたから、それを実感しているんです。

海外出張は、視察ではなく実業を前に進めるものなんですね。海外でさまざまな方と会う中で、「日本企業の海外出張・視察」に対する悪評を見聞きしたこともあるとか。

本来、日本人に対するイメージは決して悪くありません。「信頼できる国民だ」と。ただ、「意志決定できない」「具体的なビジネスの話に発展しない」という実例もあるようで、東南アジアでは「日本企業はNATO(=No Action Talk Only)だ」と揶揄する声も聞かれます。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

一時、日本企業の間で「ミャンマーブーム」が起こったことがありました。最初はミャンマーの企業も「よくぞ来てくれた」と歓迎ムードだったのが、いっこうに具体的なビジネスの話をせず、視察やヒアリングだけで終わってしまう日本企業に失望し、どんどんプレゼンスが下がってきてしまいました。

新興国であればあるほど、今すぐにビジネスになる話をしたい。具体的な投資やパートナーシップ提携になんとしてでも結びつけたい貪欲さがあるのです。

それに、どんなに意欲的な駐在員が手を尽くしても、日本と海外で売れるものも違いますし、そもそもの商習慣も異なる。ローカライズが成功を左右するにもかかわらず、本社の重役たちは「それは難しい」と首を横に振ってばかり。

現地でがんばっている駐在員からは「OKY(=おまえ、来てやってみろ)」という嘆きがよく聞かれますよ。私からすれば、現地の状況も背景も分からずに、非常に重要な意思決定をただ「承認印を押す」ように行うなんて、とんでもないことだと思います。

日本では「とりあえず会う」ことに重きが置かれ、「一回挨拶すれば信頼関係が築ける」なんて思われているけど、新興国でたった2、3回会っただけで信頼関係が築けるなんて、ありえない話です。

その2、3回のミーティングを、具体的なプロジェクトやジョイントベンチャーを始めるための実のある内容にすれば、感触も変わってきますが。

海外出張・視察を意義あるものにする「徳重流の方程式」

形骸化しがちな海外出張・視察を意義のあるものにするため、必要なのはどんなことでしょうか。

私は「アポの頻度 x アポの質 x アポのインスパイア力=イノベーションを生み出す突破力」という方程式を立てています。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

まずは、アポの頻度。一般的に海外視察となると、せいぜい1日3社ほど回れたら「上出来」と考える企業が多いでしょう。午前に1件、午後に1件回って、あとは「現地視察」という名の観光を始める場合もありますよね。特に新興国は公共交通機関も不十分で、ひどい渋滞にハマると移動することもままならない。

ですから、私たちはホテルのラウンジなど、現地に1カ所ミーティング場所を確保して、入れ替わり立ち替わり相手に来てもらうことにしています。そうすれば1日5〜8件のミーティングをこなすことができます。

このようにミーティングを集中させることによって、何を聞くべきか「勘所」が分かってきます。3人目くらいからもうすっかり現地の事情も分かってきて、相手も「よくご存知ですね!」という前のめりな反応になってくるわけです。

ですから、ミーティングの順序も大切。重要度が高い交渉先とのミーティングは終盤の時間帯で設定し、それに万全の体制で臨むため、序盤のミーティングで要点をつかむのです。ただ単にたくさん会えばいい、というわけでもないんですね。

インド出張中のアポの様子
インド出張中のアポの様子

それと、アポの質。わざわざ高い金を掛けて海外へ足を運ぶわけですから、「調べれば分かる」程度の情報は事前に調べ尽くしておくべきです。

私たちはシンクタンクやコンサル会社などの報告書やマーケットレポートを購入して、どこを攻めてどこを押さえておくべきか、仮説を立ててアポイントの精度を高めます。前提となる知識は身につけたうえで、現地でどんな人からどんな話を聞けば、より深い理解につながるのか、事前準備の時点でアポが成功するかどうかは決まっているのです。

そして、アポのインスパイア力。相手とどんなことをやりたいか、どんな関係性を築いていきたいのか・・・目的を明確にすることで、相手にとっても「当社と組むことでどんな未来が描けるのか」を想起させるのです。

今の時代、あらゆる領域においてディスラプティブ(創造的破壊)が標準となっています。そのために必要なのは、意思決定のスピード。どんなに優れたアイデアも、社内調整に時間がかかっているうちにあっという間に陳腐化してしまう。

ですから、当社ではタフなネゴシエーションが要求される上流工程では、私自らリスクを取って即断即決、資本を固定費に回すより、新たな市場開拓へ、というスタンスをとっているのです。

アポの頻度について、「相手に来てもらう」となると、関係性が築けていないうちには難しいような気がしてしまうのですが・・・。

もちろん、すべての企業や政府に通用するわけではありませんが、実は私たちのアポイントはほとんど「LinkedIn」で取っているんですよ。

インターンにアポイントリストを作成してもらって、各社に「刺さる」ようなメールを送る。そこにあるのは、当社がこれまで培ってきた実績と、「相手のために特化した」スペシフィックなストーリー。

「日本ブランド」に対するポジティブなイメージと信頼のもと、いかに相手のビジネスを理解し、どんな仮説を立てて、どう協力関係を構築すれば、ビジネスをスケールさせることができるのか、詳細に筋道を立てるのです。相手もそこまですれば、ジャンクメールとは思わない。成功への匂いを嗅ぎつけて、「ぜひ会おう」となるわけです。

こないだインドに行った際は、業界2位のボータフォンから、CTO以下6名とミーティングを設けましたし、シンガポールでは業界トップのシンガポール・テレコムの経営幹部6名とお会いしました。

アポイントメールの時点で、その本気度合いを見せるわけですね。

そうです。それに、実際会うときにも感動されるんです。なぜなら、たいていは私ひとりで乗り込むから。そうするとなんだか、「サムライ」みたいでしょう(笑)

向こうは「視察団みたいな一行が来る」と思い込んでるから、余計に感動されるんです。「お前、すごいな」と。そこで圧倒的に質の高い時間を共有できれば、後の展開も違ってきます。

覚悟が足りない大企業に必要なチャレンジ精神

徳重さんは「観光気分の海外出張・視察」が起こってしまう理由はどんなところにあるとお考えですか。

僕らのようなベンチャーなら、「この1回の渡航で必ず結果を出す」という覚悟がありますが、多くの日本の企業の場合、あくまで雇われの身なので、「視察に行って、レポートを書くのが仕事」というか、「仕事をするために仕事する」という本末転倒なことが起こりがち。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

僕らは、リスクを取っている以上、ぬるい仕事では会社が潰れかねませんからね。「1年以内に10億規模の事業を作る」などといった明確な目的があって、それを実現するためにどうあるべきか、どう動くべきか、といった行動指針があります。

じゃあそもそも、「何のためにそれをやるのか」と問われるなら、やっぱりこのままでは悔しいんですよ。年間の半分くらい海外を回っていると、どこに行ってもSAMSUNGやLG、HUAWAIなどの広告は目に入って勢いがあるけど、ソニーもシャープも見当たらない。「日本発・世界で勝つ」ことが、私たちにとっての目標なのです。

もちろん、それは厳しい局面も多々あります。国内のビジネスでは考えられないような失敗もありますし、騙されることもある。けれどもそこから学べることはとても大きいんです。

私にかぎらず、他の連中・・・「テラマン」も独立独歩で市場を切り拓いています。韓国のドローン事業を担当しているとある社員は、1日数件のアポをこなしながら、韓国の大手企業から集まった新規事業担当者に対して、ドローン事業の可能性や世界市場動向に関する講演を行っている。重役クラスなど私より上の年齢の方相手にも、対等に渡り合っているわけです。

韓国で講演するテラマンの様子
韓国で講演するテラマンの様子

彼から送られてくる報告レポートは、それは精度の高いものですよ。現地の企業と交渉して具体的な成果を上げているから、本質的な内容になるんです。

日本の企業に足りないのは、ベンチャー企業のような覚悟、というわけですね。

本業にまだそこまでシビアな危機感を持っていないのかもしれませんね。けれども、このまま国内市場のみを見ているだけでは、確実にシュリンクしていく。今のうちから、可能性のあるビジネスモデルを見つけて、資本を投じて、PDCAを最高速で回して、ドライブさせていかなくてはなりません。

新たな産業はやはり、先行者利益が大きい。「70〜80パーセント成功が見えている」ようなビジネスモデルでは、もはや取り掛かるには遅すぎるんです。私自身は、「成功確率は50/50かな」くらいのところでアクセルを踏んでいる。鴻海(精密工業)の郭台銘(テリー・ゴウ)会長なんて、「30パーセントでOK」とおっしゃっていましたから、私なんてまだ甘いもんですよ。

不確実性の高い時代では、どこに当たりがあるかなんて分からない。自ら探しに行くしかないんです。ある大手建機メーカーは、「ダメ元でやってみよう」と開発したGPS搭載建設機械が当たって、大きく業績を伸ばしたわけです。大企業にとっての10億円なんて、大した金額でもないでしょう? 僕らベンチャーからすれば、大金ですが。

それなら、捨てる覚悟で新規事業部や海外事業部へ資本を投じて、権限委譲してリーダーに意思決定をまかせてみる。仮に失敗したとしても、そのリーダーが得た経験値は、何にも代えがたいもののはず。私も心底痛い思いはしましたが、それが今の礎になっているのです。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

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[文] 大矢幸世、岡徳之

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