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INTERVIEW
「日本人は世界最強になれる」テラモーターズ代表、徳重徹さんが断言する理由
INTERVIEW

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BOOK MARK

日本企業が世界に名を馳せたのも今は昔。そのブランド力は衰え、苦境に陥る企業も出てきています。

やり玉に挙げられるのは、「日本人的」な集団主義や同調圧力、そこからくる意思決定の遅さや責任感の欠如・・・悲観的な意見ばかりが飛び交っています。

しかし、そんな閉塞感はどこ吹く風とばかりに、グローバルに活躍する40代の日本人経営者がいます。電気バイク・ドローン事業を展開し、売上の海外比率は約8割というテラモーターズ、テラドローン代表、徳重徹さんです。

過去にはアメリカでMBAを取得し、シリコンバレーではベンチャー企業の成功請負人として活躍するなど、常に世界と戦い続けてきた徳重さんはこう断言します。

「日本人は、本来備わる気質と、今時代が求めている起業家精神とを掛け合わせることができれば、世界で最強の存在にもなりうる」、と。

徳重さんが着目する「私たち日本人の強み」とはーー。日本人がグローバルビジネスの舞台で活躍する術を伺いました。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

PROFILE

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹
徳重徹
テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長
1970年山口県出身。九州大学工学部卒業。住友海上火災保険株式会社(現・三井住友海上火災保険株式会社)にて商品企画・経営企画などに従事。退社後、米Thunderbird経営大学院にてMBAを取得、シリコンバレーのインキュベーション企業の代表として IT・技術ベンチャーのハンズオン支援に従事。帰国後2010年4月にテラモーターズ株式会社を設立。2016年にテラドローン株式会社を設立

日本は負けたーー海外のビルボードに感じた「敗北感」

—徳重さんが現在取り組んでいる事業についてお聞かせください。

2010年、EV(電気自動車)の可能性に着目し、テラモーターズを創業しました。「それまで続いてきたガソリンエンジンの時代が終わり、ドラスティックな変化がやってくる」と当時確信したのです。

当初から国内のみならず海外市場へ向けて事業を展開し、この2、3年でようやく軌道に乗ってきました。ベトナム、インド、バングラデシュで電動バイクや電動三輪車などを販売し、累計3万台ほどになっています。

テラモーターズ・バングラデシュ工場立ち上げ時に現地のキーマンたちと
テラモーターズ・バングラデシュ工場立ち上げ時に現地のキーマンたちと

それから2016年にドローン事業を手がけるテラドローンを創業しましたが、こちらは当初から引き合いが多く、オーストラリア政府との共同事業も始めました。現在、両社売上の約8割が海外市場で生み出されています。

—創業当初から海外志向だったのはなぜでしょうか。

ある種の「責任感」というものでしょうか。私が学生だったころ、まだバブルの名残があって、日本は余裕のある時代だったんです。

1989年の「世界企業の時価総額ランキング」では上位30社中、実に21社が日本企業。1位から5位まで日本企業が独占していた。初めてロサンゼルスに渡ったときにも、ビルボード(屋外の看板広告)にはソニーやパナソニックの文字が躍っていたんです。

けれども起業した2010年前後は特に中国や韓国系企業の勢いが目覚ましく、海外出張で目に飛び込むのはサムソンやLGの広告ばかりで、世界企業ランキングに入るのはトヨタぐらい。どうしてこんなに日本は「負けて」しまったのだろうと、怒りにも似た憤りがあったんです。

シリコンバレーではベンチャー支援に従事していましたが、彼らは初めから世界を見据えてモノゴトを考えていました。いかにスケールを出し、世界へインパクトをもたらそうか、と。熱量高くハングリー精神を持って、強いメッセージを発している。

かたや、日本の起業家は売上10億、時価総額100億円を目指して、上場して、ハイ終わり。あとはとりあえず横ばいで・・・みたいな。起業家の志が低く、モチベーションが継続しないんです。企業は起業家の想い描く以上の規模には絶対になりません。大企業の経営者も自分の任期の間、「何も起こりませんように」と身をすくめたまま、リスクを取ろうとしない。

私はアメリカでMBAを取り、シリコンバレーで5年働いて、東南アジアでEV事業、オーストラリアでドローン事業を仕掛け、戦ってきました。その経験を武器に、日本発のメガベンチャーを創り、日本の技術力をまた世界に轟かせる。それが使命だと思っているのです。

経営者でさえ調整にまわるーー今の日本人に「ないもの」

—「怒り」を覚えるほど感じている、日本人に対する不甲斐なさというのは?

そもそも、根本的には、日本人や日本企業がダメだとは思っていないんです。

日本の歴史を遡れば、ソニーの盛田昭夫さんや松下電器の松下幸之助さんはもちろんですが、アサヒビールの樋口広太郎さんや富士フイルムの古森重隆さん、古くは川崎製鉄の西山弥太郎さん、東芝の土光敏夫さんなど、いわゆる創業者ではない「サラリーマン社長」にも素晴らしい経営者がいた。

樋口さんなんて、資本金の数倍もの設備投資をして「スーパードライ」を一気にヒットさせた。古森さんも、それまで事業の根幹を担ってきた写真関連事業とはまったく異なる新規事業を育て上げ、会社の危機を救った。その決断は「独断」なんです。今の大企業経営者には独断ができない。

彼らは、「今変えなければ、明日はない」という思いでリスクを取って決断し、成し遂げたわけです。しかし、日本にとって不幸だったのは、バブル崩壊以降、長らく不況が続き、デフレマインドがこびりついた人が社長をやらざるを得なくなってしまったこと。

ファーストリテイリングの柳井正さんも「経営者が経営をしていない」とおっしゃっていましたけど、経営者でさえ「調整」にまわっている。でも、今の状況下で「普通に」やっていたら徐々に悪くなって、10年先にはすってんてんになるんです。

—決断できるリーダーと、そうでないリーダーを分けるのはなんでしょうか。

「信念」でしょう。成長頭打ちの危機を回避するためにどうすればいいのか、真剣に考えたら意思決定できるはずだし、強い信念を持ったリーダーであれば、社員たちを説得できるはずなんですよ。

ドローン事業を開始して一年を経たないうちに、日本の事業もドタバタしている中でオーストラリアでの事業の立ち上げに自ら邁進する徳重さん
ドローン事業を開始して一年を経たないうちに、日本の事業もドタバタしている中でオーストラリアでの事業の立ち上げに自ら邁進する徳重さん

だけど今は、「コンプライアンス」という概念が浸透して、間違いは減ったかもしれないけど、チャレンジしようという気概も減ってしまった。十分真面目な日本人に、失敗しない人が出世するような減点法、つまり「性悪説」を適用して、悪いほうに作用してしまっている。

その証拠に、最近は不祥事や問題が起これば、社長や役員が謝罪して、それが報道されて、「ありえないことだ」と批判される。CMもしょっちゅう炎上するじゃないですか。みんなミスを叩きすぎなんです。

でも本来、そうしてまで本当に伝えたい信念やメッセージがあれば、堂々としていられるはず。それがすぐに取り下げられて、謝罪して・・・というのは、そこまでの信念がないということでしょう。

世界で戦う突破口になる、日本人に備わる「2つの強み」

—そうした同調圧力、信念のなさなど今の「日本人的」な気質は、やはり今後の足かせになりますか。

確かに、私も日本特有の意思決定の遅さや年功序列の仕組みに失望して、一旦はアメリカに渡りました。でも、異国のアメリカで奮闘する中で認識を見直してきた部分が大いにあるんです。

まず一つ、海外の経営者たちのアニマルスピリット、ハングリーさには頭が下がる思いですが、その熱量はどこから来ているのかというと、多くは「金持ちになりたい」「名声を得たい」という「利己的」な感情。

けれども日本ではあまりそれは良しとされないし、世のため人のためという「利他的」な感情のほうが支持されますね。どちらのほうが、より人を惹きつけるでしょうか?

日本人のそのサムライ精神的な潔さは、本来グローバルでも通用するはずです。海外の経営者たちのような熱量を持ちながらも、パブリック、公のために考えて、信念を持ってメッセージを発し行動する。そうすれば、もっと世界的にも突き抜けられるはずなんです。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

もう一つ、ビジネスにおいては「信頼関係」が大事。海外の企業と交渉していると切に感じるのは、日本人は「過去の日本人」のおかげで信頼感がものすごく高いんです。納期を守る、性能を高める・・・基本的なことを守っているだけで、それが大きなアドバンテージになる。

インドの大手企業の経営者と話したときにも、「日本人の90%は信頼できる。残り10%はペテン師かもしれないけど。インドはその逆だからね」と(笑) 常に「裏切られるんじゃないか」とチェックしながらビジネスすることは、それだけでもコストは甚大です。

それに、海外の場合、リーダーは優れていても、インプリ(実装、実行力)がボロボロだったりするけど、日本は最強じゃないですか。やると決まったことについては、規律と道徳観で何としてでも高い水準で実行することができる。反面、リーダーがボロボロなんですが。

ですから、リーダーさえ変われば、うまくいくんじゃないかと思うんです。

日本人らしさに、チャレンジ精神とスピード感をアドオンせよ

—リーダー人材が「日本人的」な気質を良いほうに作用させるには。

堺屋太一さんが『第三の敗戦』という本を書いていましたが、まずは「負けを認める」ということ。その実感はなかなか得られないと思うんですよ。普通の人は普通に食えているし、食べ物も美味しいし、暮らしやすい。

でも思い返してみると、僕らの大学時代、バイトするのは旅行やバイクを買うためとかで、生活のためではなかった。今の学生たちは、奨学金をもらって、生活のために働きながら、学業に勤しんでいる。それだけ彼らの親世代に余裕がないということですし、先人たちの貯金を食いつぶしてしまったということなんですよね。

20年間でここまで劣化した。今のような社会の空気感でやっていたら、子ども世代の20年後が本当にまずいです。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

負けを認めるため、そして信念を持つために必要なのが、「修羅場体験」。なるべく若いうちから挫折したり、失敗したりできるといい。

日本のエリートは失敗を極度に嫌がりますが、早いうちに大ショックを受けるようなイベントを経験したほうがいい。彼らがシリコンバレーで戦う起業家に会うと、稲妻が走るほどの衝撃を受けて帰るんですよね。話す内容のレベルも視野も違う。

若いときこそ、あえてアウェーで不遇な状況に身を置いて、自分の使命を明確にし、信念を構築する。そうやって自分の殻を破って、レベル上げをすることは楽しいじゃないですか。

—企業もそれだけの覚悟で若手に他流試合をさせる、ということでしょうか。

イノベーションに必要なのはリスクを取ってシンギュラリティ(技術的特異点)に到達することなのに、それを目指さずに今と同じことや改善だけをやって、「どうすればイノベーションを起こせますか」って相談に来るのは、ロジック的におかしいんですよ。

「リスク」とはつまり、ボラティリティ(変動性)なのであって、失敗も大きいけど成功も大きい。リスクを取っていないんだから、大成功するはずがない。それでじりじりと業績が下がっていくことに危機感を感じていないのだとすれば、リーダーにどれだけ責任感がないのか、ということですよ。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

よく「マッキンゼー流」「ハーバード流」とか、欧米型のマネジメントやリーダーシップ論をありがたがって、テクニックやノウハウの部分から取り入れようとする人がいるけど、結局人間は人間。国が変わっても、人の心を動かすために必要なものはさほど変わらないんですよ。

日本人の本来持っている、「日本人的」な真面目さ、細部を突き詰める能力や利他の心は強みであり、変える必要はありません。それはそのまま伸ばしていけばいい。そこに、チャレンジ精神やリスクテイク、スピード感をいかにアドオンできるか、ということだけなんです。

これはベトナムで言われたことなんですけど、私が「なんでみんな、仕事がいい加減なんだ?」と憤っていると、現地の人にたしなめられたんです。「いや、それは違う。『いい、加減(いい塩梅)』なんだ」って。挑戦に伴うちょっとしたほころびを許容するような空気感と余裕があるんですよ。

それを企業全体にすぐ取り入れるというのは今の日本だと難しいけれど、一部のプロジェクトや新規事業部から適用すればいい。成功すれば、それを分析して横展開すればいい。それもまた、「日本人的」な得意分野だと思いますから。

テラモーターズ株式会社/テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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