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INTERVIEW
ビジネスの社交辞令なんて平和ボケです ChatWork代表 山本敏行さん
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新規事業を成功させるためには、常に正しい選択をし続けねばならず、そのためには自分の考えをチームメンバーに率直に伝える必要があります。しかし一方で、チームワークや人間関係を壊さないためにと、間違っていると感じる相手の意見に同調してみせたりしてしまうこともあるのではないでしょうか。

ビジネス、特に新規事業において「社交辞令」に意義はあるのかーー。今回はこのテーマについて「兄弟」という間柄で起業、会社を経営されてきた、グループウェア「チャットワーク」を提供するChatWork株式会社代表の山本敏行さんにお話を伺いました。同社では、弟の正喜さんが専務取締役兼CTOを務めています。

ChatWork株式会社 代表 山本敏行

PROFILE

ChatWork株式会社代表 山本敏行
山本敏行
ChatWork株式会社代表
留学先のロサンゼルスにてビジネスをスタートさせる。帰国後の2004年、法人化するものの儲け重視の経営スタイルに限界を感じる。そこで、経営を学ぶべく1000人の先輩経営者に会いに行き「経営の本質は社員満足にある」と気づき、労働環境を良くするためにITを経営に徹底活用。現在、事業拡張のためシリコンバレーを拠点に経営を行っている。著書に『自分がいなくてもうまくいく仕組み(クロスメディア・パブリッシング)』など。

始まりは、兄「なんとかして」 弟「そんなの無理・・・ しゃあないなあ」

ーまずは、ChatWork社の事業内容について教えてください。

ITはすべての人に光を当てられる技術だと考えています。その技術を活かし、特にひと・モノ・金という経営資源が潤沢ではない中小企業の経営や業務を効率化し、目指す社風を実現するために、グループウェアの「チャットワーク」を開発しました。提供開始から4年が経ち、これまでに7万3000社、183カ国のお客さまに利用されてきました。

チャットワークの事業アイデアを着想したきっかけは、実は私たち自身の業務を効率化する必要があったという課題感からでした。ドットコムバブル当時に中小企業向けのネット営業支援ビジネスに携わり、30名で5万社の顧客を相手にしていました。徹底的に業務を効率化する必要があったのですが、導入の敷居が低く、効果が得られるものがなかったのです。

 

ーしかし、事業を「兄弟」で起こすというのは珍しいのでは。弟で、専務取締役兼CTOでもある正喜さんとは、ご兄弟としてはどのような関係ですか。

幼少期は、私が体育会系、弟はオタクで、お互いのノリがまったく分かり合えませんでした。しかも、圧倒的な主従関係。私が格闘技の部活動に従事しており、弟をその練習相手にしていました。弟(正喜さん)は「特に中学時代は地獄だった」と言っていました。

そのような関係に変化が現れ始めたのは、私が学生時代にIT業界を志すことを決めたときからでした。IT業界を志すのに私はITが苦手、弟は得意でしたので、それで会話をするうち少しずつ関係が近づいていきました。

そして私がITビジネスの道を志すと決めたときに、弟に無理やり「なんとかして」と協力を依頼。弟もしぶしぶ引き受けてくれることに。私にはアイデアがあり、弟にはそれを形にする技術があったため、2人で始めるに至ったのが経緯です。提供するサービスで私が実績を残していくのを見るうちに、弟の私への信頼も徐々に高まっていったのだと思います。

兄の山本敏行さん(左)と弟の正喜さん(右)
兄の山本敏行さん(左)と弟の正喜さん(右)

お互いの良し悪しではなくゴールにだけ意識を集中

ー創業してからこれまでを振り返って、ご兄弟で乗り越えた最大の困難は何でしたか。

社内で唯一のエンジニアであった弟が一度別の企業に就職してしまったことです。

学生時代に弟が開発したチャットワークの前身となるサービスのシステムを基盤に運営し、エンジニアリングは弟まかせでしたのであのときは本当に困りました。説得したのですがそれでも聞かなかったので、午前はうちの仕事をさせてもらい、午後は勤めている会社の仕事をするということで了承してもらいました。

しかし、それから一年ほど経ったころ、当時提供していたサービスのユーザー数が急激に増えまして、会社がまったく回らなくなりました。そこで、当時切り盛りしていた5名ほどの社員に一人ずつ、音声で「正喜が戻ってきてくれないと会社がつぶれる!」という趣旨の音声を録音して送りつけたところ「3年は他の会社に勤める」と言っていた弟が「そんな音声送りつけられたら戻ってくるしかないでしょう」と怒りながらも戻ってきてくれました。

 

ー常に率直さを持って成長を遂げてきたのですね。

月並みですが、本当に綺麗ゴトでビジネスはやっていられないのですよ。特に会社や事業が小さいうちは、顧客に「うちはこんな会社です」と理想を語り、語ったからにはやるしかないというサイクルで進んでいきます。ですから「社交辞令」が今回のテーマですが、そんな悠長なことは言っていられないのです。

私はいまシリコンバレーを拠点にしていますが、海外からの視点でみれば、よく見かけられる日本の会議の風景も不思議でなりません。会議をしに来ているのに発言せず、情報共有のためだけに参加しているのだとしたら、議事録を自分の好きな時間に見るだけで十分ですよね。

率直に議論をする兄の山本敏行さん(右)と弟の正喜さん(左)
率直に議論をする兄の山本敏行さん(右)と弟の正喜さん(左)

ー率直なやりとりを続けるために、社交辞令をひとに言わせないこともリーダーに必要な資質だと思います。

チームが取り組むべき「共通の課題のすり合わせ」をしっかりと行うことがポイントです。メンバーの意識を、お互いの良し悪しではなく、目指しているゴールに向けさせること。経営者としては、そのようにメンバーの意識を導く必要があります。その方向付けができていなければ、会社は目的とは異なる方向に進んでしまいます。

 

ー山本さんはどのようにして社員の率直な話し合いを引き出していますか。

私は「どうすればチャットワークが世界中に普及するか」という課題に意識を集中し、自分がこの会社をやっていてよかったと思えるような会社運営を心がけて、社員とコミュニケーションをしています。そして社員にも、その意識を持ってもらうようにしています。

それでも社員が去ってしまうようなことがあるならば、それはそう思わせてしまった自分や会社の今後の改善点です。ときには誰かに裏切られたり、人間不信になりそうなこともあります。それでも、社員を信じ抜くことに尽きるのだと思うんです。たとえ、社員の数が半分になってしまったとしてもです。

当時、唯一のデザイナーの退職で苦境に立たされ、会議をしていたとき、本棚から偶然『逆境に勝る師なし』という本が落ちてきたそう。この出来事で「逆境だがもう一度頑張ろう」と思えたそうで、このときが一つの転換点だったと山本さんは振り返ります(2005年当時の写真)
当時、唯一のデザイナーの退職で苦境に立たされ、会議をしていたとき、本棚から偶然『逆境に勝る師なし』という本が落ちてきたそう。この出来事で「逆境だがもう一度頑張ろう」と思えたそうで、このときが一つの転換点だったと山本さんは振り返ります(2005年当時の写真)

ー率直すぎて、それがデメリットになることはありますか。

私は良くも悪くも空気を読めません。

経営者やリーダーの仕事は、めまぐるしく変わる状況で最適な選択をすること。ですから、チャットワークが世界中に普及するためなら、一度行った意思決定をくつがえすこともあります。会社にとってより最適だと思われる選択肢があるのであれば、軌道修正はためらいません。

「せっかく取り掛かっていたのに・・・」と軌道修正を回り道に感じてしまう社員もいると思います。ただ、変化の速い世の中では「一度決めたから」に縛られてはいけません。会社のビジョンは明確に設定していますが、それを達成するための調整は必要です。

そんな私と社員との調整役になってくれているのが弟です。エンジニアである弟には「モノづくりをする人間の気持ちが分かっていない」とよく指摘されますが、それでもいいと思っています。リーダーがメンバーの気持ちを汲み取って調整ばかりしていたら、もっとも大切なことであるはずの会社の方向性が定まりません。方向性を示すのがリーダーの仕事であり、調整は他のひととの役割分担でできると思っています。

チャットワーク全体合宿の模様
チャットワーク全体合宿の模様

ー山本さんと働くエバンジェリストの河野さんいわく「山本の話はいつでもストレート。だからこそ、社員も自然と率直さを引き出されるのかもしれません。また、率直な意見の背景にあるその理由にも耳を傾ける文化が会社にはあるので、率直かつ建設的な会話が生まれやすい」のだそうです。

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[取材・文] 赤江龍介

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