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INTERVIEW
ヤフーのスピード経営を支える上司と部下が率直にモチベートし合う仕掛け
INTERVIEW

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上司と部下が振り返りや目標設定の場を持つことは大切ですが、利害関係を超えて率直な意見を交わすことは難しいものです。読者のみなさんの中には、そうした振り返りの機会を個人の成長に活かしきれていないと感じている方もいるのではないでしょうか。

ヤフー株式会社は、「社員一人ひとりの才能と情熱を解き放つ」というテーマのもと、さまざまな取り組みを行っています。その中核となるのが、上司と部下とで行う週次のミーティング「1on1(ワン・オン・ワン)」。その場を有意義なものにするために、対話スキルの向上にも力を入れています。

上司と部下がフラットに会話をすることのできる「安全地帯」は、どのようにして築くことができるのか。同社で人財開発に携わる小向洋誌さんに伺いました。

ヤフー株式会社 ピープル・ディベロップメント統括本部 人財開発本部 組織・人材開発部 小向洋誌

PROFILE

ヤフー株式会社 ピープル・ディベロップメント統括本部 人財開発本部 組織・人材開発部 小向洋誌
小向洋誌
ヤフー株式会社 ピープル・ディベロップメント統括本部 人財開発本部 組織・人材開発部
2005年にヤフー株式会社に入社。「Yahoo!ショッピング」「ヤフオク!」などEコマース事業の企画・営業を担当。2012年4月に、人事本部(現ピープルディベロップメント統括本部)に異動。現在は組織開発や人財育成に携わる

経験を深掘り、次の具体的なアクションを探る

—「1on1」導入のきっかけを教えてください。

数年前、弊社はいわゆる「大企業病」に悩んでいました。世の中では勢いのあるITベンチャーが新しいサービスを次々と生み出している一方、弊社は組織が大きくなったために意思決定のプロセスに時間を要するようになっていたのです。

2012年4月に新経営体制となり、掲げられたのが「爆速経営」。その爆速化を叶えるために、現場に権限を委譲し、社員が主体的に動ける環境をつくろうとなったのがきっかけです。

社員が主体的に働く環境をつくるためには、一人ひとりの「才能と情熱を解き放つこと」が必要です。しかし、もともと弊社の管理職には、「背中を見てついて来い」という職人気質のひとが多く、部下の話に耳を傾け、モチベートすることは注目されてきませんでした。

そこで、上司と部下が対話をする機会を増やし、部下の成長をサポートするための手段として1on1が始まりました。

 

—具体的には、どのような取り組みですか?

上司が部下の話を聞く場であり、社長から新人までグループ約5500名が週に1回、約30分の対話の時間を設けています。

例えば、この一週間でうまくいったことやうまくいかなかったことなどを聞きます。ポイントはなぜうまくいったのか、うまくいかなかったのかと、その要因を深掘りすること。そして、そこで得た教訓から課題解決のためにいつから何を始めるのか、次のアクションを実務レベルで決めていくことです。

一般的に人の成長は、7割が「仕事経験から学ぶ」、2割が「他人から学ぶ」、1割が「研修や書籍から学ぶ」と言われています。内省の機会を頻繁につくることで、実際の業務経験から学び、成長を促す。この「経験学習」のサイクルを習慣化することもねらいの一つです。

 

—1on1導入後、社内にどのような変化がありましたか?

社員一人ひとりに内省する習慣がつきましたし、上司とのコミュニケーションの機会が増えたことで、半期ごとの評価や目標設定の場で、上司の期待値と部下の結果や意識に大きなズレが生じることがなくなりました。また、会社の柔軟性を高めることにもつながったと感じています。

また、1on1を通して普段からトップの考えを社員に伝え、現場の状況を吸い上げていることで、有事の際に臨機応変に対応する体制ができました。つまり、対話によって促される相互理解による信頼関係がヤフーのいまのスピード経営を支えているのです。

率直な意見を引き出す、対話スキルの磨きかた

ーしかし、利害関係のある上司と部下が率直に話すのは簡単ではありませんね?

導入時はさまざまな意見がありました。部下のなかには、普段は口数も少なく厳しい上司が、突然「最近どう?」なんて聞いてくるものだから、「何かしてしまっただろうか・・・」と不安になったひともいたようです。

マネジャー層からは、自分に対話のスキルがないために、単なる業務の進捗報告の場や部下の不満のはけ口の場になってしまうのではないか、という悩みの声も聞きました。

 

—そのような対話スキルに関する悩みに対して、どのような工夫をしましたか?

「鏡」と「武器」という2つの仕掛けを用意しました。

鏡とは、部下からのフィードバックのことで、3カ月に1回、1on1の内容についてのアンケート調査を行っています。そこでは、1on1の頻度や、対話の際に適切なコミュニケーションが行われているかなど上司の面談の仕方や対話のスキルが評価されるため、上司は改善点を知ることができます。

武器とは、対話スキルのことで、コーチング、ティーチング、フィードバックなどの対話のアプローチを学ぶ研修を設けています。前者は部下からのアセスメントは緊張感を生み出しますが、これだけでは対話の質を担保することはできません。「鏡」を見て「武器」を磨くことで、対話スキルの向上につなげています。

 

—対話のスキルについて少し具体的に伺います。例えば、うまくいかないことがあったとき、上司はどのように内省を促しモチベートするのでしょうか?

もしも部下が何かうまくいかないことがあったとき、上司は、「もしも、もう一度トライしてみるとしたら?」「もう1人自分がいたら、どう声をかける?」などと聞きます。これがコーチングのアプローチです。もしも業務経験が浅い社員のように的確なアドバイスが必要な場合にはティーチング。状況によっては、私にはこう見えたというフィードバックのアプローチをします。

 

対話が思い通りにいかないこともあるのでは?

対話のスキルを磨くには、回数を重ねて “筋トレ” を続けるしかありません。

弊社では、対話のスキルを磨きたいひと向けに、「筋トレ道場」というコーチングをするためのスキルを磨く場を設けています。1日を通してコーチングを練習する場で、数名のグループに分かれてマネジャーと部下の役割となり、ロールプレイングを繰り返します。

このときに数名のオブザーバーも付いており、約10分間の実践の後に、「あのときの質問やアプローチは答えにくかった」「部下はこんな表情をしていたのに、気づいていなかった」「なぜ、あのタイミングで足を組んだのですか?」など、言葉遣いから表情まで一挙手一投足についてフィードバックを受けます。これはとても疲れるトレーニングですが、もっとも筋力がつく方法です。

 

—対話のトレーニングにものすごく時間や労力を割いているのですね。

ある社員が「よい上司に恵まれるということは、毎日よい研修を受けられているのと同じ」と話していました。まさにその通りだと思いますし、個人の成長が組織を支えると信じて取り組んでいます。

「筋トレ道場」の様子
「筋トレ道場」の様子

上司と部下がフラットに話せる「安全地帯」の築きかた

率直な話ができる関係づくりのコツを教えてください。

当たり前のことですが、ひととの信頼関係やチームワークは一足飛びで築けるものではありません。しかし、上司としてはすぐにでもいいチームを作りたいし、いいマネジャーになりたいので、突然、「こんなにあなたのことを信頼してるから、何でも話して。」と話し始めたりします。これでは、部下は「私のことを何も知らないくせに」と違和感を感じてしまうでしょう。

信頼関係の構築のためには、まずは上司自身が自己理解をするところから始める必要があります。どのようなマネジメントスタイルを目指していて、どんなスキルを持ち、これまでどんな経験をしてきたのか。しっかり時間をとって自分自身に向き合うことが大切です。自分のことを理解したうえで、相手の特徴を理解しようとしなければ、自分のやり方を押し付けてしまうことになりかねません。すると共通のビジョンを持っているのに、チームワークが発揮されないという状態に陥ってしまうのです。

 

—率直な話ができる関係づくりにおいて気をつけたいポイントは?

1つめは、約束を守り、嘘をつかないこと。メールの返信をきちんとするなど、些細なことでも気にかけることは大切です。こうした積み重ねが「安全地帯」の土台になります。

例えば、上司の都合によって1on1が急遽実施できなくなる場合があります。重要な会議が長引いたり、優先順位の高い業務が入ってしまうことは仕方ありません。ここで大切なのは、スケジュールを変更した側が責任を持って、次の日時を提案することです。これを履き違えてしまうと、上下のパワーバランスが生まれ、フラットな関係から遠のいてしまいます。

2つめに、上司と部下の間で対話のやりかたについて合意がとれていること。上司の支援を求めているひともいれば、自分にまかせてほしいというひともいます。振り返りや目標設定の場を設けることは有意義ですが、その場を何のための時間にしていきたいのか、その目的を共有しておくことが重要です。

 

—最後に、企業が「安全地帯」を作る際の注意点を教えてください。

弊社やほかの企業の取り組みをそのまま導入しないことです。企業ごとに社歴も文化もそれぞれですから、かならずしも「1on1」というやり方が安全地帯をつくるためのベストであるとはかぎりません。自社のありたい組織を明確に描き、経営課題を見据え、それぞれに対話できる環境を提供することが大切でしょう。

ヤフー株式会社 ピープル・ディベロップメント統括本部 人財開発本部 組織・人材開発部 小向洋誌

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[取材・文]早川すみれ、岡徳之

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