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INTERVIEW
あなたのスキルとマインドをつなぎ、人を動かす「Why?」の力と活かし方
INTERVIEW

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BOOK MARK

国立社会保障・人口問題研究所が2010年の国勢調査を踏まえ、2011年に公表した「日本の将来人口推計」によれば、2030年時点で65歳以上の人口が全人口の1/3近くとなるそう。これに伴う生産年齢人口の減少によるGDPの低下が危惧されています。

こうした背景から、企業ごとに生産性を高める取り組みや多様なワークスタイルの推進などがなされているものの、既存のやり方や方法論ではもはや通用しない、競争の激しい、変化の時代が目前に訪れようとしています。

そこで、企業で次世代リーダーの育成に携わりながら、グロービス経営大学院でも教鞭をとる伊藤羊一さんを迎え、これからのビジネスパーソンに必要なスキルやマインドについて話を伺いました。キーワードは「Why?」。

グロービス経営大学院 講師 伊藤羊一

PROFILE

グロービス経営大学院 講師 伊藤羊一
伊藤羊一
グロービス経営大学院 講師
これまで銀行、製造流通、ITなどさまざまな業種に、営業、海外事業企画、事業再建・再生、物流、マーケティング、新規事業開発、経営、教育などさまざまな職種として従事。現在は、企業では主にリーダーシップ開発、各種アクセラーレータープログラムにはメンターやアドバイザーとして携わりながら、グロービス経営大学院でリーダーシップ科目の教壇に立つ

適切にイシューを設定することからスタートする

ー伊藤さんが仕事やビジネススクールでさまざまなビジネスパーソンと触れあう中で、今、多くの方に欠けているスキルやマインドはなにかとお考えですか?

何かを考え実行するときや問題解決するプロセスにおいて、「なぜ?(=Why?)」を徹底的に詰めることがなかなかできていない人が多いのではないかなと感じています。

「解決すべき課題(=イシュー)」を設定すること、つまり「何に対して答えなければならないか」を考えるところから問題解決が始まります。そしてそのイシューに対して、どこに問題があるか(=Where?)を分析し、なぜそのような構造になっているか?(=Why?)を詰めて、「じゃあどうすればいいか?(=How?)」を決めていく流れになります。この中で「Why?」を徹底的に追求することがまずは重要だ、ということです。

ですが、私がお伝えしたい「Why?」が大事だ、というのは、問題解決のプロセスの中での「狭義のWhy?」だけではなく、「そもそもなぜこのようなイシューを設定するのか?」とか、「そもそもなぜこういった問題箇所の分析を行うのか?」、もっと言えば、「なぜこういったことを解決しなければならないのか?」というところに至るまで、プロセス全体で「広義のwhy?」を考えながら思考を進めていくことが大事だということです。

具体的な例で考えてみます。「自社のトータル残業時間を減らすにはどうしたらよいか」について考える必要があるとしますね。その際、多くの人は、そもそも「残業」の定義をし、分解して細かく見ると、どこに問題がありそうか(Where?)の分析までは割としっかりと行えます。「どの部署で残業が多いか?」とか、「残業時間の長さで分けると、どんな分布になっているか?」とか、「どういうタイプの残業が多いか?」など、問題を指摘するところまではしっかりできる人が多い。これは訓練すればできるようになります。

ですが、「なぜ残業が減らないのか?」というメカニズムの考察が浅く、表面的な思考に止まる場合がほとんど。そしてすぐに「どうしたらいいか」という「How?」の検討に入ってしまったりする。「Why?」をすっ飛ばして「How?」に行ってしまうのです。そうすると何が起きるかーー。「どこの部署で残業が多いのだろう?」と各部署の数字を見て、「おっ、営業部と開発部で残業が多い」とわかると、「なぜそういうことになっているか」を深掘りせずに、「営業部と開発部だけ、責任者に指導する」という、対症療法的な解決法(=How?)が出てきたりします。

しかしそれでは、抜本的な解決に至りづらいのです。ここで、「なぜこの2部署で残業が多いのだろう?」と考える。そうしてさらに深く分析を行うと、例えば営業部は人による偏りが多く、開発部はおしなべて残業が多いということが見えたりする。ではそれはなぜそうなっているのかといえば、営業部では、取引先から夜に連絡が来ることが多い担当者は残業が多く、開発部は常に納期で追われていることがわかったりする。さらに「なぜそうなっているか?」と考えると、「ステークホルダーのニーズには何はおいてもすばやく対応する」というオーナーの意向が浸透していたから。結果、いくら残業を削減せよと言われても減らなかった、ということが見えてきたりします。すると、オーナーにその方針を撤回させることで、残業が一気に削減されるということがありえるかもしれない。これが「狭義のWhy?」の深掘りです。

「プロセスの中でしっかりとWhy?」を突き詰め続けるかどうかで、行うべき解決手段が大きく違ってくる可能性があるわけです。

「広義のWhy?」の深掘り方

私がお伝えしたいもう一つの論点、プロセス全体で「広義のWhy?」を考えることが重要というのは、「そもそもなぜこうしたテーマに取り組むのか」と考えることが重要だということです。「残業を減らす」のは何のためかというと、スタートは会社のコストを削減するためだったかもしれないですが、「そもそも」、社員の幸せのために、同じ仕事を短時間でやって、他の時間を余暇に使えるようにしたほうがよいから、と考えると、すべてすっ飛ばして「How?」に行った際、「ではコストがかかったとしても、しっかりと社員教育をして、社員の能力を上げた方がいいのではないか」という「How?」が出てくるかもしれません。

プロセス全部で「なぜこうした問題を考えるのか?」「なぜこういうイシューを設定するのか?」「なぜこのような分析をするのか?」「なぜこういう解決法になるのか?」としつこく問い続ける。これが重要だと。「なぜ? なぜ?」としつこいですね(笑)

ー常に「なぜ?」と問い続けることが、仕事をする際に常に重要になってきそうですね。

そうです。そして、実はこの「Why?」、常に「なぜ? なぜ?」と問い続けることは、自分を客観視する、ということとほぼ同義だと考えています。

成果を出している人は自らを客観視することに長けています。ビジネスパーソンだけでなく、イチロー選手や本田圭佑選手などスポーツ選手もそうでしょう? 自分に今、何が足りていないのかを客観的に把握していれば、それを補うための知識を吸収し、トレーニングを行うことができます。何かを考え、何かを実行する自分を客観的に見つめ続ける「メタ認知」ができることは、優れたアウトプットを出す上でも、自らを成長させる上でも、とても重要なスキルです。

学生時代ならただ学習していればよかったかもしれませんが、ビジネスの世界ではまさに毎日が本番。トライアンドエラーで常に改善しながら、結果を出し、そのサイクルの中で学んでいくことが必要です。何をやるべきか教えてくれる教師がいるわけではありませんから、自らの「メタ認知」が成長の源泉となるのです。

ただ、もちろん物理的に横から自分を見ることは不可能ですし、「メタ認知をする」ということは言わば観念的なもの。それを具体的にする上で重要な問いの一つが「Why?」なんです。そうすることで、「擬似的に自分を客観的に見る」ことができます。

「Why?」を問い続けることが仕事の原動力になる

ー具体的にどういったことを問いかけていけばいいのでしょうか。

例えば、企画を考えるとしましょう。その過程でわくわくしたり、どこかもやもやしたりするでしょうが、その都度「なぜ自分はそう感じるんだろう?」と考えるのです。無意識のものを意識上に浮かび上がらせるのが「Why?」という問いなんです。それに対する答えをきちんと言語化することによって、課題点や詰めるべきポイントを考える材料になります。そして、より根源的な問題意識になりますが、ビジネスパーソンとして、一人の人間として、「自分はこういう性格なんだ」「こういうことが好きなんだ」と、自身の価値観に気づくことができます。

さらにそうやって突き詰めていくと、「なぜこの仕事をしているのか?」が見えてきたりもします。それが仕事に対するモチベーションにもなります。

そうやって自分を見つめるだけではなく、できれば他者からのフィードバックはあったほうがいいです。自分から「私の今のアウトプットについて、どう思いますか?」と投げかけてもいいかもしれません。

逆の立場で考えれば、上司は部下に対してそういったコーチングやフィードバックを行うことが重要な仕事の一つとなります。業務指示や進捗管理などといったマネジメントと併行して、しっかりと部下が最大限のパフォーマンスを発揮できるように環境を整え、客観的に考えてコーチングやフィードバックをするのです。

「仕事を部下にただ振り、その達成を管理するだけ」な上司もいますよね。でも、それでは部下は育たない。部下に、自分自身が振り返るようなコーチング、フィードバックを行い、“自律的に育ってくれる”ような環境を作る。根気は必要だけれど、上司は部下を育てるのが仕事だと思ったほうがいいです。そして「育てること」にフォーカスしていくと、チームが有機的に機能しはじめます。

マイクロマネジメントで指示を与え続けて、短期的には結果が出るかもしれないけれど、長期的には難しい。そこを徹底できている上司は少ないですよね。そうやってチームをマネジメントしていくと、自主性をもった部下が育っていきます。

ー「部下が最大限のパフォーマンスを発揮できるようなコーチングやフィードバック」とは、どういうものでしょうか。

まず、コーチングでは、徹底的に自分で考えてもらう。「何が引っかかっているのか」「今どういう状態なのか」「特にどこに引っかかっているか」「なぜそのようになっているのか」「どうしたらいいか」というプロセスを問いかけ、徹底的に自分で考えるクセを付けさせる。フィードバックにおいては、そのプロセスを自分で行うきっかけとして、何か一緒に体験したことに関するアドバイスを行う、ということです。いずれにせよ、マネジメントにおいて大事なのは、部下が自ら「なぜ? なぜ?」と問い続けるプロセスを自主的に行うようにもっていくことが大事です。

グロービス経営大学院 講師 伊藤羊一

ロジックとパッションをつなぎあわせる「Why?」の力

こうやって整理してみると、ロジック面でもパッション、マインド面でも、「Why?」を突き詰めるのが重要です。ロジック面というのは、最初に申し上げた「狭義のWhy」ですね。

時間に追われていると、「ここが問題だから改善しよう」と対処療法になりがちです。実際、ビジネスの世界ではすぐにアウトプットを求められますし、時間をかけて事象を構造化するのは難しいことです。なかなか「そもそも」に立ち返ることができなくて、「AだからA、BだからB」という”リアクション芸人的な”仕事ぶりになってしまいます。

それが進んでしまうと、マインド面では自分自身を客観視できなくなるし、ロジック面では短絡的なソリューションに終始してしまう。そうすると、ムダ打ちが多くなるんです。解決しようと奔走したけど、そもそもの現状認識が間違っていて、解決まで余計に時間がかかってしまったり、こじれてしまったり・・・ とかね。ただでさえ毎日そんな事象は起こるわけで、それを繰り返しているといつしか大きな差が生まれてきます。

—「急がば回れ」ということなんですね。

そう、まさに。一見して「Why?」を考えることは時間もかかるし、遠回りに思えるかもしれませんが、それを習慣にすると、考えるスピードも上がってきます。無意識のうちに「Why?」を考えることができるようになるんです。

加えて「急がば回れ」ということでいえば、自分のキャリアについても同じことがいえます。「自分はこうなりたい」「こんなことを実現したい」と、唐突に未来を考える人も多くいますが、そうではなく、まずは過去、そして今を考えることが大切です。「過去と今に関連性のない未来を成し遂げたい」ということは、誰でも宣言できますが、今の自分は、あくまで過去の自分が歩んできた人生の積み重ねであって、それをよく理解していなければ、未来への思いに対して説得力が生まれてこないんですね。過去こう過ごしてきて、今の自分の座標はここだと把握し、その上で未来の座標を定め、その差分を埋めるために、何をするべきかを考えるのが重要です。

その際、「なぜ自分は、自分の未来に対してこう考えるのだろう?」とか、「なぜ今考えていることにワクワクしているんだろう?」とか、「なぜ今自分は違和感を感じているんだろう?」ということを問う。そして、過去に立ち返って、「自分は過去、そのように思うようになったきっかけはあっただろうか?」と考えてみる。すると、「過去からの連続性の中で」未来を考えることができます。

—たしかに、大きな夢ばかりを語る人の中には、実現可能性に疑問符をつけたくなるような人もいたりします。

「Why?」を問いかけ続けることはチームで動いていく際にも重要なんですよ。自分の中にたしかなゴールと、そのシナリオの前提となる「Why?」があることで、まわりに対する説得力が増すんです。リーダーがビジョンを決めた後、ソリューションに至るまでの道のりを設定し、解決するのは他の人でもいいわけで、それがチームで何かを成し遂げるということ。ゴールだけ共有するのではなく、「Why?」も共有することでチーム力は一気に高まります。

説得力というものはどこから生まれるかというと、「その人が心の底から実現できると思っているか」、そして「まわりがその人に共感している」ということ。実はゴールが何か、よりも、その人の「Why?」そのものに惹かれているんですよね。「なぜその人はそのビジョンを持っているのか」「なぜそこまでしゃかりきになっているのか」・・・ というところに惹かれ、「なるほど、そういうことか。それなら応援しよう!」となるわけです。誰にだって一人ひとり違う「Why?」はあるはずなんです。まったく同じ人生を歩んでいる人なんて、自分の他にはいませんから。

ーだからこそ、その人固有の「Why?」が重要なんですね。

そう。ロジックとパッションを結びつけるのが「Why?」なんです。「Why?」にフォーカスして、ロジックとバッションをつなぎあわせる。ロジックが欠けても、パッションが欠けても、人を動かし、事をなすことはできません。。

常に何かを考え、実行しながら、同時に「なぜ?(=Why?)」を問い続け、という形で振り返り、また考え、実行し・・・ というこのプロセスの精度を高めていくことが、これからのリーダーには必要なのではないでしょうか。

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之

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