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INTERVIEW
メンバー全員がリーダー。Yahoo!アカデミア流「リーダーシップの総量」で勝つための場づくりとは?
INTERVIEW

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BOOK MARK

不確実性が高い今の時代、メンバー一人ひとりがリーダーシップを発揮して動ける、「リーダーシップの総量が大きい組織」こそ、高いパフォーマンスを挙げられるーー。

こうした認識が、今まさにマネジメントに取り組む人たちの間で広がりつつあります。

けれども、どうすればメンバーからリーダーシップ・・・つまり、自律性、熱意、自身の考えや価値観に基づいた意見・意志決定を引き出すことができるでしょうか?

「Yahoo! Academia Conference 2018」、最前列・中央に伊藤羊一さん
「Yahoo! Academia Conference 2018」、最前列・中央に伊藤羊一さん

ヤフーの企業内大学「Yahoo!アカデミア」で学長を務め、グロービス経営大学院でも教鞭を執る伊藤羊一さんは、そんな「リーダーシップの総量が大きい組織作り」に取り組む第一人者。

そんな伊藤さんが2018年2月14日に主催し、リーダーシップの総量を大きくする場として体現したのが、「Yahoo! Academia Conference 2018」でした。

カンファレンスの背景にある設計思想、今回採り入れた「オープン・スペース・テクノロジー(OST)」という斬新な手法について伺い、年齢や肩書きを問わず、全員がリーダーシップを発揮する会議など場づくりのヒントを探ります。

PROFILE

Yahoo!アカデミア 学長 伊藤羊一
伊藤羊一
Yahoo!アカデミア 学長
1967年東京都生まれ。東京大学経済学部卒業後、1990年に日本興業銀行に入行。企業金融、事業再生支援などに従事。2003年にプラス株式会社に転じ、流通カンパニーにてロジスティクス再編、グループ事業再編などを担当した後、2011年より執行役員マーケティング本部長、2012年より同ヴァイスプレジデントとして事業全般を統括。2015年にヤフー株式会社に転じ、Yahoo!アカデミアの学長として次世代リーダー育成を行う。グロービス・オリジナル・MBAプログラム(GDBA)修了。グロービス経営大学院でリーダーシップ科目の教壇に立つ。

目指したのは、誰もがリーダーシップを発揮する「白熱教室」

伊藤さんが主催された「Yahoo! Academia Conference」とはどのような場でしたか。

Yahoo!アカデミア 学長 伊藤羊一

そもそもヤフーでは2014年4月に「次世代リーダーの創出を目的とした企業内大学」としてYahoo!アカデミアを設立しました。僕自身は2015年からその学長を務めており、そこでは年間で選抜クラス100名、オープンクラスとしてのべ数百名の社員が学んでいます。

そのアカデミアも創立から4年を迎え、今後の新たな展開を考える中で、ヤフーという壁を取り払い、Yahoo!アカデミアを「公共財」として、インターネットのみならず日本のための「リーダーズ・ベースキャンプ」にしたいと考えたんです。

そのために、これまでオープンクラスとして社内から希望者を募っていたところを、社外にも一般公開にし、「希望すれば誰でも学べる場」として広げようとしています。そのキックオフとして行ったのが、「Yahoo! Academia Conference」でした。

カンファレンスにはさまざまな業界から錚々たる顔ぶれが参加
カンファレンスにはさまざまな業界から錚々たる顔ぶれが参加

公共財ならば、ということで、まずはジャンル問わず各界のリーダーとYahoo!グループの有志を100名程度招待しようということを決めました。

みなさん、普通のカンファレンスではスピーカーとして登壇されるような方々ばかり。でも、誰かが基調講演をして、いくつかパネルディスカッションをやって・・・というのは、もったいない。それに、私もいろんなカンファレンスに参加しますけど、最近は登壇者の話を聞くだけでは物足りないんです。

そこで、各界のリーダーが集まって、フラットにディスカッションする場にしようと決めました。あちこちで、ハーバード大学で最も人気があると言われるマイケル・サンデル教授の哲学の授業、「白熱教室」みたいなことが起こる場を作りたい、と。

つくりたかったのは、「Free, Flat, Fun」な場
つくりたかったのは、「Free, Flat, Fun」な場

伊藤さんが目指した「白熱した場」は、多くの上司・マネジャーが会社でつくりたいと常々感じているはずです。どのようにして、実現したのでしょうか。

まず、みなさんで集まってディスカッションする「テーマ」を、主催者である僕ではなく、参加者のみなさんで決めていただくことにしたんです。

大テーマとしては、「明日の日本を創るリーダーシップ」を据えましたが、「明日の日本を創るリーダーシップ」って、つまり「なんでもアリ」ってことじゃないですか(笑)少子化対策なのか、教育問題なのか、働き方についてなのか・・・ありとあらゆることが考えられる。

Yahoo! Academia Conference

この「テーマを自分で決められる」ということが、参加した全員からリーダーシップを引き出した最大の要因なんだと思います。具体的には、「オープン・スペース・テクノロジー(OST)」という手法を使いました。

  1. 参加者が任意で自分が話し合いたいテーマ(課題・アイデア)を発表する。
  2. 上で発表されたテーマの中から、自分が議論に参加したいものを選択する。
  3. テーマごとに輪を作って座り、議長を決めてディスカッションを行う。
  4. 全体で各テーマで挙がった意見やアクションプランの共有を行う。

会社のように「テーマを出せ」「議長をやれ」と強制されることはない。しかも、このテーマはやっぱり違うな、と思ったら、途中で別のグループに移ってもいい。疲れたらお茶飲んで休んでいてもいい。

つまり、議論のテーマだけでなく、参加するか否かも一人ひとりの自由意志に委ねました。だからこそ、参加する時には「自分が思っていることを吐き出そう」「この場に貢献しよう」と、前のめりになる感覚を味わってもらえたんだろうと思います。

開始前は正直、「どれだけテーマが出るんだろう」と心配していましたけど、立候補でテーマを募ると、わぁっと10名以上が殺到して、最終的には20くらいのテーマが挙がりました。その瞬間、僕はカンファレンスの成功を確信しましたね。

全員からリーダーシップを引き出すとき、必要な「信念」

今のお話を会社に置き換えると、メンバーがチームの課題を出し合って解決策を導き出す会議などに適用できそうです。しかし、カンファレンスには錚々たる方々が参加していました。そのやり方を、普通の会社や職場に適用してもうまくいくのでしょうか。

カンファレンスの開催前にはアカデミアのメンバーと一緒に練習ラウンドを行いましたが、実は当日に負けないくらい熱い議論が生まれたんですよ。

僕は場づくりに、「ある信念」を持っています。それは、「意見を表明したいという思い」は年齢、肩書き、老若男女を問わず、誰もが持っていると信じること。もともとそういうポテンシャルはみんなが持っている。だけど、普段の職場では引き出されていないだけ、と。

Yahoo!アカデミア 学長 伊藤羊一

これは、僕が前職で経験したことですが、私が経営幹部になるにあたり、約350名の社員と1on1ミーティングを行ったんです。とにかく、「どんなことでもかまわないから、話そう」ということで、全国各地の拠点や部署に出向きました。

ある時、地方の支店で「事務方一筋20年余」という社員に会ったのですが、彼女はメモにびっしり、事務関連にかぎらず営業など他部署に関する現状課題や改善案などを書いていて、ていねいに説明してくれました。

そして、「今までこんなふうに私の話を聞いてくれる人なんて、誰もいなかったんです」と、涙ぐみながら話してくれた。そこでもう、ほんとうに感激して、「何かを成し遂げたいって思いは、みんなが持っているんだ」と、ビビッと来たんです。

この信念は、ソフトバンク(グループ会長の)孫(正義)さんから学んだことでもあります。以前、ソフトバンクの孫さんの後継者を見いだすことが目的の「ソフトバンクアカデミア」で、孫さんにプレゼンする機会がありまして。

孫さんはiPadを片手にメモを取りながら、「一言も聞き漏らすまい」という表情で僕の話を聞いていたんです。「孫さんが、ほんとうに僕の意見を聞いてくれてるわ・・・」って。こういう人が上に立ってくれたら、メンバーも頑張ろうと思えるはず。

マネジャーのように上に立つ人にとって最も大切な仕事って、1対1で対話して、一人ひとりの持ち味を最大限に引き出すことですよ。そのためには、「昨日、飲みすぎちゃって二日酔いなんですよね」って打ち明けられるくらい、何を言ってもいい信頼関係をつくらないと。

今は、それを許容してくれるマネジャーがいなさすぎるのかもしれません。リーダーシップの総量が大きい組織をつくりたいなら、「誰もが意見や課題意識は持っている。誰もが変わろうと思えば変われる」、そうメンバーのことを信じることから始めてもらえればと。

参加者一人ひとりがリーダーシップを発揮したカンファレンス、その後の反響は?

カンファレンスに参加したpalletの羽山暁子さんがその手法を用い、地元・仙台で開催したディスカッションの様子
カンファレンスに参加したpalletの羽山暁子さんがその手法を用い、地元・仙台で開催したディスカッションの様子

懇親会も含めて延べ6時間の長丁場でしたが、みなさん本当にフラットに議論してくれて、楽しんでくれました。

このOSTというスタイルが、さっそくさまざまな場所で行われ始めています。例えば、当日参加いただいたpalletの羽山暁子さんは、仙台に戻ってすぐ、ご自身が主催されるSHL(Sendai HR Labo)という集まりで、「HRから創る、明日の東北」をテーマにOSTのスタイルでディスカッションされたそうです。

参加者は仙台でHRに関わる方や学生、お寺の住職さんなどさまざまですが、かなり真剣な議論がなされて、具体的なアクションが挙がったようです。彼女とSNSでやり取りしましたけど、もう写真から前のめりなのが伝わってくるんです。まさに、起こるべきコラボレーションが起こっている感じでした。このように、OSTというスタイルが伝播して、さまざまな場所でFree, Flat, Funな議論が行われ、アクションにつながればすばらしいですよね。

僕自身、これからもYahoo!アカデミアに集まるメンバーとともに、「明日の日本を創るリーダーシップ」を発揮していきたいです。

Yahoo!アカデミア 学長 伊藤羊一

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[取材・文] 大矢幸世、岡徳之 [撮影] 伊藤圭

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