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INTERVIEW
本田圭佑の「リトル・ホンダ」が必要だ!伊藤羊一さんが語る学習テーマの見つけ方
INTERVIEW

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本誌が6月に公開した、学習を好きになるための方法に関する記事「変化の時代の必須スキル 〜「5分で分かる学習好きの作り方」は、おかげさまで読者の皆さんから「3400いいね!」を超える大きな反響をいただきました。

この記事について、後日、これまで主にIT業界の新規事業創出分野で活躍されてこられ、現在はそうした百戦錬磨の経験を通じて培ってこられた専門性を生かしてヤフー株式会社で人財開発に携わる伊藤羊一さんと編集部が対話したところ、

すでに学習するテーマを見つけているひと、もしくは企業のマネジメント層で部下に学習を促したいひとにはとても響く内容だった。一方で、学習したいテーマをまだ見つけられていない読者もいるはず。そのような方々に学習のきっかけを提供できるコンテンツがあってもよいのでは?

という議論に展開しました。そこで、編集部はその伊藤さんご本人に「学習するテーマを見つけるためのマインドの育て方についてご取材で語っていただけませんか」と突撃。快くお引き受けいただき、お話をお伺いすることができました。

ヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部 Y!アカデミア本部長 伊藤羊一

PROFILE

ヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部 Y!アカデミア本部長 伊藤羊一
伊藤羊一
ヤフー株式会社 ピープル・デベロップメント統括本部 Y!アカデミア本部長
東京大学経済学部を卒業後、日本興業銀行に入行。その後、プラス株式会社に転職し、ロジスティクス再編、グループ事業再編などに従事。執行役員マーケティング本部長、ヴァイスプレジデントとして、事業統括も担う。2015年4月にヤフー株式会社に転職し、現在は次世代リーダーの育成に携わる。グロービス経営大学院ではリーダーシップ科目の教壇に立つ。

学習に値するテーマの条件

ー記事へのコメント、ありがとうございました。

いえいえ。あの記事に書かれている学習を好きになるためのアプローチには、まさに、と共感させられました。きっと、企業の上司がある学習のテーマを部下に夢中になって学習してもらいたいときなどに使えそうですよね。

一方で、学習したいテーマを自分で見つけたいと感じているひと、もしくは部下に自ら見つけてもらいたいと感じている上司などには、あのアプローチを実践するための前提となる、ある「マインド」を持つべきだということをお伝えしたいです。

 

ー学習したいテーマを見つけるためのマインドとは。

それは「自分の価値観を知ること」です。価値観とは、自分はなにが好きで、なぜいまの仕事をしているのかという、自分の軸のこと。それさえ知ることができれば、ひとは自発的に学習を行動に移せるようになるでしょう。

しかし、自分の価値観を知るというのは決して簡単なことではありません。一人で唸りながら考えたからといって知れるものではありませんし、またそれは変わっていくものだからです。私自身も、自分の価値観に気づけたのは最近のことなんですよ。

 

ー伊藤さんが自分の価値観に気づいたきっかけは。

私はこれまでのキャリアパスを背景に、まわりのひとから「新規事業で企業にイノベーションを起こす企業人」と言っていただけることがあります。それはとてもありがたいことなのですが、実は私は、世の中を変えるような新しいプロダクト、サービスなどにワクワクするというより、人々が笑顔になり、幸せになるとか、情熱をもって取り組むとか、そういったことに深い感心があるな、と。

そのことに明確に気づいたのは、ARアプリの「セカイカメラ」やメガネ型ウェアラブル端末の「テレパシー」などを開発して有名な井口尊仁さんとお話したときでした。

井口さんに進行中のプロジェクトについてお話をお伺いしたとき、プロダクトや技術に対してすごいと感じたのもあるのですが、もっと強く感じたのは、彼自身にの発想力やバイタリティーに対して本当に凄いなと。そのときに、自分は「ひと」が好きで、井口さんのように情熱やバイタリティーを持ってものごとに取り組めるようなひとを育てることに携わりたいんだなと確信しました。

 

ーご自身でも意外だったのではないですか。

はい。これまでずっと新規事業の創出に携わってきましたし、事業を作り、育てて行きたいとは常に思っています。ただ、いまはひとを育てることに強い興味関心があり、ヤフーに転職して人財開発をやっているわけですが、これは少し前には考えもしなかったことです

自分の価値観を見つけるのが難しい理由の一つは、正解がないからだと思います。井口さんのような「起業家」を一つとってみても、独自のテクノロジーで社会を変えることにやり甲斐を感じるひともいれば、お金や雇用を生み出すことに感じるひともいます。

どの価値観の方がレベルが上か下かなんてことはまったくありません。自分が思い切り突っ込んでいける好きなことを見つけられるか。もし見つけることができたら、自分はこれで行くんだと思えるかが大切なんです。

テーマの強度を確認するために即行動

ーどうすれば伊藤さんのように自分の価値観を知ることができるでしょう。

自分の価値観を知る方法にウルトラCはなく、自分が本能的に気持ちがいいと感じられることをやってみるしかありません。私の場合は、この経験は自分にとって岐路になると感じたグロービス経営大学院の講師をやらせていただいたことが大きかった。そうして生徒の皆さんが成長する姿に喜びを感じるにつれ、人財開発をもっと学ぼうと思うようになったし、その後の井口さんとの出会いで、自分の決断は正しかったのだと確信しました。

ですから、自分が学習したいテーマはこれかなと感じたら、それに近しい活動に週末の時間を使ってボランティアとして参加してみたり、いろんな人と話してみたり、書籍を読んでみるなど、そのテーマに触れる機会を作ることです。引きこもっていているだけでは、その発見は生まれづらいのかもしれません。

 

ー行動に移すことで自分の価値観を確認するのですね。

そうです。もう一つ重要なことは、そのように新しいテーマに触れる機会を作ることと同時に、一人きりで自分を客観的に見つめる、言ってみれば「メタ認知の時間」を定期的に持つことです。

いま自分はこんな人生を歩んでいるけどどうなんだろう。自分はどのように社会に貢献したいのだろう。事業家なのか、それともサポーターでありたいのだろうか。自分は果たして、どう思っているのだろうか、ということを客観的に振り返ることで、自分の学習するテーマを見つめなおすことができるのです。

私は、たまに夜に自宅の近所を一人で散歩して、この時間を持つようにしています。

 

ー自分の価値観に自信を持てなくなることもありますよね。

そうですね。特に学習したいと感じているテーマが、いますぐには仕事にはならないようなことである場合にはそうでしょう。自分の価値観に向き合う過程は苦しい。そして、それに自信を持てるようになるのは時間がかかることです。

私も、転職して初めて人財開発を仕事にしていますが、約5カ月(取材実施時点)が経ってようやく、自分の確信がやはり正しかったんだと思えるようになってきました。自分の価値観を知り、それを行動に移し始めると、頭と体は自然と動くようになるものです。

また、行動する過程で、いま自分の頭に浮かんでいることをとにかくやみくもにでもよいのでひとに話すことが自分の価値観を認識することにつながります。ひとに話して、フィードバックを受けたり対話することで、自分の考えが言語化されて、イメージがよりシャープになってくるからです。

過去の人生からテーマをあぶり出す方法

ー同じ日常を過ごしていても学習したいテーマに気づけないときもあります。

ありますね。特に仕事が忙しすぎるなどの理由で、自分のコンディションがよくないと感じるときは、気づきにくいでしょう。そういうときは、コンディションを整えることに専念するべきです。そうでないと、悪循環が起こりドツボにはまってしまいます。

メタ認知の時間を持つことに加えて「ライフラインチャート」を書いてみることも、自分の価値観を確認する上でお薦めです。

これは、横軸が自分の人生の時系列、縦軸がその当時は自分にとってよいときだったか、悪いときだったかの起伏を表す、2軸のグラフです。

 

ライフラインチャート

グラフの横軸に人生の出来事をプロットして、過去の出来事に対して自分がどのように反応し、変化したのを振り返ると、自分がどのような人間なのかが徐々に分かってきます。なぜなら自分の価値観というものは、それまでの出来事に影響して形作られるものだからです。

すると、例えば、いま自分が好きなことに一歩を踏み出せずにいるのは、実は過去に自分が受けたマイナスの影響から解き放たれていないからではないか、といったことが分かってきます。

ー自分でも気づかないうちにトラウマになっていると。

そうです。ソフトバンクの孫さんはいまでも、ご自身の幼少期のことを話すそうです。いまの彼があるのはつらい当時を経験して、その経験から解き放たれ、プラスに変えたからなんではないかと思います。

自分はこれまでなにも経験してこなかった、と口にするひともいます。しかしライフラインチャートを書いてみると、実はただつらい過去を思い出さないよう、自分を抑圧しているだけなのではないか、とか、自分のプラスになるような経験でも、忘れてしまっていたな、などと気づくこともあります。

もし、自分はこれまで人生を揺るがすような大きな経験をしてこなかったと分かったとしても、そのことに悩んだり、多くを経験してきたひとをうらやましいと思う必要はありません。たしかに、多くの経験をしてきたひとの方が活躍しているケースは多いですが、それは仕方がありません。

理想は、自分がいまやっていることが最高、だから現在に集中するんだ!という状態を作ること。一方で、理想の状態にはない場合でも、いまの自分を受け入れられる、気楽に構えられる強さを持つことも大切です。

ー真剣に葛藤するからこそテーマが見つかると。

そうです。よくよく考えると、自分の人生は他のひとが保証してくれるわけではありません。自分の人生を自分で作らないのはもったいないですよね。

本田圭佑選手の「リトル・ホンダ」にヒント

ー方法論を知ってもなお学習のテーマを見つけられないこともあります。

「とはいえ、学習に身が入らない・・・」という状態ですね。そのひとが悪いのではなく、誰にでもそういうときはあります。そしてこれは学習だけにかぎったことではなく、仕事全般においてもそうですね。

私もモチベーションが高いときなんてせいぜい全体の3割ぐらい。低いときも2割ぐらいあって、そんなときは「今日こそ会社を辞めてやろう」ぐらいの状態です。仕事で消耗してそうなるときもあれば、逆に前向きなエネルギーが出すぎて抜け殻になってそうなるときも。

ひとってモチベーションが低いときにそれを高めようと思ってもなかなかできません。大切なのは、自分がモチベーションが低い状態であることを自覚すること。自覚したら安全地帯に逃げること。そこで焦らず、自分の中で嵐が過ぎ去るのを待つこと

そして、そんな中でも最低限のパフォーマンスを出すことです。

 

ー「これかもしれない」と見つかりかけたテーマに対して確信を持つためには。

サッカーの本田圭佑選手がイタリアのクラブチームのミランへの移籍会見で、ミランに行くことを決断した理由について聞かれたとき、

心の中のリトル・ホンダに聞きました。そうしたら『ミランでプレーしたい』と答えた。

と言っていました。「自分の心の声に従う」とはまさにこのことで、自分はどうあるべきなのかを知り、ある意味「二面性」を持って、それを演じればよいのです。

演じるというのは、演技をするということではなく、自分を客観的に見て、よく知るということです。私も「リトル・イトウ」の声を聞くようにしていますよ。これは学習のテーマにかぎりませんが、そうすることで、ひとは決断できるのです。

【 本記事の読者にはこちらもお薦めです 】
変化の時代の必須スキル 〜「5分で分かる学習好きの作り方」
変化の激しい時代に「学習」の目的やプロセスはどのように設計すればよいのでしょうか。
https://mirai.doda.jp/theme/learning/how-to-like-learning/

[取材・文] 岡徳之

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